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多剤排出ポンプ阻害剤 新技術説明会

国内特許コード P150012668
整理番号 AF38P001
掲載日 2015年12月14日
出願番号 特願2015-238703
公開番号 特開2017-105714
出願日 平成27年12月7日(2015.12.7)
公開日 平成29年6月15日(2017.6.15)
発明者
  • 山口 明人
  • 加藤 修雄
  • 井上 雄太
  • 山崎 聖司
  • 樋口 雄介
  • 櫻井 啓介
  • 中島 良介
  • 西野 邦彦
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 多剤排出ポンプ阻害剤 新技術説明会
発明の概要 【課題】多剤排出ポンプの排出能を阻害する活性を有する化合物、及び当該化合物を有効成分とする医薬用組成物の提供。
【解決手段】一般式(I)[式中、Rは、1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいチアゾール基、アダマンチル基、又は炭素原子数3~6のアルキル基を表し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは、アミノ基又は水素原子を表し、nは1~4の整数を表し、Rは、1個の水素原子がアミジノ基で置換されていてもよいアミノ基又はイミダゾール基を表す。]で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
[化1]



【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


細菌による感染症の予防や治療のために、現在までに多くの抗細菌剤が開発され、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、キノロン系、マクロリド系、テトラサイクリン系等の化合物が医薬として実用化されて来た。しかし、近年では、これらの抗細菌剤に対する耐性細菌の出現が、臨床現場で重大な問題になっている。薬剤耐性細菌による感染症の中でも、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、多剤耐性アシネトバクター(MDRA)、カルバペネム耐性腸球菌(CRE)等のグラム陰性多剤耐性菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等のグラム陽性多剤耐性菌とは異なり、対処できる治療薬がほとんど無い。このため、グラム陰性多剤耐性菌による院内感染が大きな問題となっている。グラム陰性多剤耐性菌の感染症に対し、新たな抗細菌剤により対処する方法では、新たな耐性細菌の出現を招くおそれがあり、根本的な解決方法とはなりにくい。多剤耐性グラム陰性細菌感染症克服のためには、新規な概念に基づく予防/治療戦略の創出が喫緊の課題として、社会的に要請されている状況がある。



細菌の多剤耐性化は、複数の耐性因子の獲得によって生じる。耐性因子の獲得の態様としては、例えば、カルバペネマーゼの産生やDNAジャイレース変異の蓄積等がある。これらの耐性因子の個々の耐性スペクトルははっきりしているのに対して、近年の多剤耐性細菌は、非常に広範な、ほとんど全ての抗生物質に耐性を示す点に特徴がある。グラム陰性細菌におけるこのような広範囲な多剤耐性の基礎になっているのは、多剤排出システムの高発現である。グラム陰性細菌の多剤排出システムは、マルチコンポーネント型排出タンパク質複合体であり、大腸菌におけるAcrAB-TolCや緑膿菌におけるMexAB-OprM及びMexXY-OprM等が知られている。これらのうち、AcrB、MexB、及びMexYが、グラム陰性細菌内膜上に存在するRND(resistance/nodulation/division)型多剤排出ポンプであり、プロトン駆動力を利用して多様な薬剤を排出する(非特許文献1)。これらの多剤排出ポンプによる薬剤の排出は、細菌体中の薬剤濃度を低下させて薬剤への感受性を著しく減ずるという直接的効果に加えて、低濃度の薬剤環境下に他の耐性因子を獲得する機会を与えるという間接的効果をもたらし、細菌の多剤耐性化の要因となっている。



以上の背景から、多剤耐性化の要因となっている多剤排出ポンプの排出能を阻害することによって既存の抗細菌剤を有効にする併用剤なる概念が提出され、その開発がなされて来た。例えば、ピリドピリミジンを母核とするABI-PP(D13-9001)が、大腸菌のAcrB及び緑膿菌のMexBの排出能を阻害し、既知抗細菌剤に対する細菌の感受性を高めることが報告されている(特許文献1)。また、フェニルアラニン、アルギニン、及び3-アミノキノリンがアミド結合によって連結したオリゴペプチド型化合物(PAβN)並びにその関連化合物(特許文献2~5)や、分子両端にアミジン基を有する化合物群(ペンタアミジン類)(特許文献6及び7)が、多剤排出ポンプが高発現している緑膿菌株に対する既知抗細菌剤の最小発育阻止濃度(MIC)を低下させることが報告されている。しかしながら、これらの化合物はいずれも医薬応用には至っておらず、現在までに、多剤排出能阻害剤の医薬としての応用例は皆無である。



近年、合理的医薬分子設計(ラショナルドラッグデザイン)が創薬における重要なアプローチとして認識されるに至っている。特に、薬剤標的となるタンパク質の3次元構造情報を結晶構造解析によって明らかにし、その立体構造情報に基づく医薬設計(SBDD)が確度の高い手法として盛んに試みられている。SBDDのためには、薬剤と標的タンパク質の共結晶構造を取得する必要があるが、膜タンパク質である多剤排出ポンプの結晶構造の取得は困難である。本発明者らは世界に先駆けてAcrBの結晶構造解析に成功し(非特許文献2)、また、AcrBの基質となり排出される数種の既知抗細菌剤とAcrBの共結晶構造解析も達成し、多剤排出ポンプの薬剤排出機構を分子レベルで解明することに世界で初めて成功した(非特許文献3及び4)。更に、排出阻害剤ABI-PP(D13-9001)とMexBとの共結晶構造解析を行い、阻害剤の結合ポケットの存在を明らかにし、ABI-PPが緑膿菌のもう一つの多剤排出ポンプであるMexYの排出能を阻害できない構造的要因も明らかにした(非特許文献5)。

産業上の利用分野


本発明は、細菌感染症、特に多剤耐性細菌感染症の予防又は治療に有用な化合物、より詳細には、多剤耐性細菌に高発現している多剤排出ポンプの排出能に対する阻害能を有する化合物、及び当該化合物を有効成分とする医薬用組成物に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】


[式(I)中、Rは、1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいチアゾール基、アダマンチル基、又は炭素原子数3~6のアルキル基を表し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは、アミノ基又は水素原子を表し、nは1~4の整数を表し、Rは、1個の水素原子がアミジノ基で置換されていてもよいアミノ基又はイミダゾール基を表す。]
で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。

【請求項2】
前記Rが1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいチアゾール基であり、Xが水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、Rがアミノ基である、請求項1に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。

【請求項3】
が、無置換のアミノ基又は1個の水素原子がアミジノ基で置換されたアミノ基であり、nが3又は4である、請求項1又は2に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。

【請求項4】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(H-31)、(H-32)、(H-34)~(H-37)、(H-39)、(H-46)、(H-47)、(H-50)、又は(H-51)
【化2】


【化3】


で表される化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。

【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物のうち1種又は2種以上を有効成分とし、多剤排出ポンプの薬剤排出能を阻害する活性を有する、多剤排出ポンプ阻害剤。

【請求項6】
MexBの薬剤排出能とMexYの薬剤排出能の両方を阻害する活性を有する、請求項5に記載の多剤排出ポンプ阻害剤。

【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物のうち1種又は2種以上を有効成分とする、医薬用組成物。

【請求項8】
細菌感染症の予防及び/又は治療に用いられる、請求項7に記載の医薬用組成物。

【請求項9】
さらに、1種又は2種以上の抗細菌剤を含有する、請求項8に記載の医薬用組成物。

【請求項10】
前記細菌感染症の病原細菌が、グラム陰性菌である、請求項8又は9に記載の医薬用組成物。

【請求項11】
前記細菌感染症の病原細菌が、緑膿菌である、請求項8又は9に記載の医薬用組成物。

【請求項12】
前記細菌感染症の病原細菌が、抗細菌剤に対する耐性を獲得した細菌である、請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術 領域
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