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新規抗腫瘍剤及び新規抗腫瘍剤のスクリーニング方法

国内特許コード P150012679
掲載日 2015年12月25日
出願番号 特願2013-521531
登録番号 特許第6046618号
出願日 平成24年6月12日(2012.6.12)
登録日 平成28年11月25日(2016.11.25)
国際出願番号 JP2012064964
国際公開番号 WO2012176651
国際出願日 平成24年6月12日(2012.6.12)
国際公開日 平成24年12月27日(2012.12.27)
優先権データ
  • 特願2011-138981 (2011.6.22) JP
発明者
  • 原田 浩
  • 平岡 真寛
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 新規抗腫瘍剤及び新規抗腫瘍剤のスクリーニング方法
発明の概要 新規抗腫瘍剤を提供する。また新規抗腫瘍剤のスクリーニング方法を提供する。更に悪性腫瘍の新規治療方法を提供する。イソクエン酸脱水素酵素3(IDH3)抑制物質を有効成分として含む新規抗腫瘍剤による。IDH3の活性抑制を指標とする、新規抗腫瘍剤のスクリーニング方法による。さらに、IDH3を構成するサブユニットの少なくとも一つを標的因子として抑制することを含む、腫瘍の新規治療方法による。固形腫瘍内に常在する低酸素環境での低酸素誘導因子1(HIF-1)の活性化を介してがんの治療抵抗性が亢進することに着目し、HIF-1の活性化を制御しうる物質を探索したところ、IDH3がHIF-1の活性化に寄与していることを初めて見出し、本発明を完成した。
従来技術、競合技術の概要


厚生労働省が公表した資料によると、日本人男性の約2人に1人、女性の約3人に1人が一生のうちに"がん"と診断され、肝臓がん、すい臓がん、肺がん患者の5年生存率はわずか20%にも満たないことが報告されている。生命予後不良の主因は、腫瘍内の不均一(ヘテロ)な微小環境下で、一部のがん細胞が抗がん剤や放射線治療へ抵抗性を獲得することにあると考えられている。例えば悪性固形腫瘍内の低酸素環境下では低酸素誘導因子1(Hypoxia Inducible Factor-1:以下、単に「HIF-1」という場合もある。)が活性化し、がん細胞の治療抵抗性、転移・浸潤能、血管新生が亢進することが知られている(非特許文献1)。また、抗がん剤や放射線治療後の腫瘍内微小環境変化に応答してHIF-1が活性化し、がんの治療抵抗性が亢進することが報告されている(非特許文献2、3)。



正常組織内部と異なり、固形腫瘍内部は極めて異質な微小環境で構成されている。腫瘍血管の遠位には十分な酸素や栄養源が供給されない低酸素、低栄養な環境が存在する。その一方で、解糖系や乳酸発酵によるATP産生が盛んな領域には酸性(低pH)環境が存在する。がん細胞はこれら過酷な微小環境を生き延びるために必要な遺伝子の発現を誘導する。例えば、低酸素環境に存在するがん細胞は、HIF-1という転写因子を活性化して低酸素環境でのエネルギー産生(グルコース代謝経路の変換)、低酸素環境の改善(血管新生)、低酸素環境からの回避(転移・浸潤)を図る。このような、がん細胞の環境応答システムが、がんの治療抵抗性においても重要な役割を果たしていることが報告されている(非特許文献3)。すなわち、抗がん剤や放射線治療によって腫瘍内微小環境が変化し、HIF-1が活性化することで、血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor:VEGF)の発現を誘導し、VEGFが腫瘍血管内皮細胞の放射線障害を軽減し、腫瘍血管系が崩壊を免れ、がん細胞への酸素と栄養源の供給が保障され、最終的に放射線治療後のがん細胞の生存が保障されるという作用がはたらく。



固形腫瘍内に常在する低酸素環境下(固形腫瘍内低酸素領域)では、放射線感受性が著しく低下するため、腫瘍低酸素はがんの放射線治療成績不良の一因とされている。また近年、低酸素は特異的な遺伝子発現を誘導することにより、腫瘍増殖、血管新生、転移を促進する可能性が指摘されている。事実、子宮頸がん、頭頚部がん等の腫瘍内酸素分圧測定を施行した国内外の臨床研究において、低酸素分画の多寡と治療効果や生命予後との間に強い相関が報告されている。



HIF-1は、細胞に対する酸素供給が不足状態に陥った時や細胞が過剰な活性酸素種にさらされた時に誘導されてくるタンパク質であり、転写因子として機能する。がんの病巣においては栄養不足や細胞外pHの低下、血流不足による酸素供給不足(低酸素)状態が認められるが、がん細胞が生き延びるためには新たに血管網を形成することにより病巣への血流を確保し、低酸素状態を脱する必要がある。そのための機能を担うべく低酸素条件において誘導される転写因子がHIF-1であり、種々の遺伝子の転写を亢進させる。HIF-1は様々な遺伝子発現の制御に関与しており、たとえば血管新生や細胞増殖、糖代謝、pH調節やアポトーシスなどに関わる遺伝子が挙げられる。HIF-1による発現制御を受ける遺伝子としてエリスロポエチンやVEGF等が挙げられる。HIF-1は、αとβの2つのサブユニットから構成されている。HIF-1αはアドレノメデュリンやマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)、エンドセリン(ET)-1、一酸化窒素合成酵素(NOS)2など様々な遺伝子の制御を行っているといわれている。HIF-1αは有酸素状態の細胞内でユビキチン化を受け、タンパク質分解酵素複合体である26Sプロテアソームにより速やかに分解される。



上記メカニズムに鑑み、HIF-1を抑制する抗腫瘍剤について開発が進められている。例えば、HIF-1遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(Enzon、National Cancer Institute、Santaris Pharma)やHIF-1活性を抑制する低分子化合物(Abbot社)が挙げられる。またHIF-1抑制剤として、HSP90阻害剤等も報告されている(非特許文献4)。しかしながら、HIF-1がどのような機序で活性化するのか、また治療抵抗性に関わるHIF-1陽性がん細胞が腫瘍内のどこに局在し、どの様な病態・挙動を示すのかは明らかにされておらず、がんの完治を目指すうえで大きな障害となっている。



イソクエン酸脱水素酵素(isocitrate dehydrogenase:以下、単に「IDH」という場合もある。)にはいくつかのアイソフォームがあり、クエン酸回路(TCA回路)において、イソクエン酸からαケトグルタル酸への代謝に関わる酵素としてIDH1が公知である。IDHとがんの関係では、IDH1遺伝子やIDH2遺伝子に特定の変異がある場合にIDH1やIDH2の正常な機能が抑制され、腫瘍の悪性化に寄与することが報告されている(特許文献1、非特許文献5-7)。しかしながら、変異型でないIDHについて腫瘍の悪性化に関わる報告はなく、IDH1は腫瘍に対してむしろ良好な予後因子であると考えられている。

産業上の利用分野


本発明は、新規抗腫瘍剤に関し、また新規抗腫瘍剤のスクリーニング方法に関する。さらに悪性腫瘍の新規治療方法に関する。



本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2011-138981号優先権を請求する。

特許請求の範囲 【請求項1】
イソクエン酸脱水素酵素3(IDH3)活性抑制物質を有効成分として含む抗腫瘍剤であって、有効成分としてのIDH3活性抑制物質が、アンチセンス核酸、リボザイム核酸、siRNA、shRNA及び抗体より選択される少なくとも1種のIDH3αの発現抑制物質及び/又はIDH3αの機能抑制物質であることを特徴とする、新規抗腫瘍剤

【請求項2】
抗腫瘍剤がIDH3活性を抑制し、低酸素誘導因子1(HIF-1)活性の抑制作用を有することを特徴とする、請求項1に記載の新規抗腫瘍剤。

【請求項3】
HIF-1活性を抑制することが、HIF-1αの発現抑制又は機能抑制による、請求項に記載の新規抗腫瘍剤。

【請求項4】
腫瘍が、難治性悪性腫瘍である、請求項1~のいずれか1に記載の新規抗腫瘍剤。

【請求項5】
難治性悪性腫瘍が、放射線治療抵抗性がん及び/又は抗がん剤抵抗性がんである、請求項に記載の新規抗腫瘍剤。

【請求項6】
IDH3活性抑制物質を有効成分として含み、有効成分としてのIDH3活性抑制物質が、アンチセンス核酸、リボザイム核酸、siRNA、shRNA及び抗体より選択される少なくとも1種のIDH3αの発現抑制物質及び/又はIDH3αの機能抑制物質であることを特徴とする、HIF-1活性抑制剤。

【請求項7】
IDH3の活性抑制を指標とする、新規抗腫瘍剤のスクリーニング方法。

【請求項8】
以下の工程を含む、請求項に記載の新規抗腫瘍剤のスクリーニング方法:
1)IDH3αを発現しうる細胞株を候補物質で処理する工程;
2)候補物質で処理した前後で、上記細胞株についてIDH3αの発現量又はIDH3の活性を測定し、IDH3αの発現量又はIDH3の活性からIDH3の活性抑制を評価する工程。

【請求項9】
IDH3αを発現しうる細胞株が、HIF-1依存的にレポーター遺伝子を発現する細胞株であり、IDH3αの発現量又はIDH3の活性の測定が、レポーター遺伝子産物を計測することによる、請求項に記載の新規抗腫瘍剤のスクリーニング方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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