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クロマチン構造を制御する組成物 新技術説明会

国内特許コード P160012711
整理番号 (S2012-0656-N0)
掲載日 2016年1月27日
出願番号 特願2014-512738
登録番号 特許第6004499号
出願日 平成25年4月24日(2013.4.24)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
国際出願番号 JP2013062737
国際公開番号 WO2013162054
国際出願日 平成25年4月24日(2013.4.24)
国際公開日 平成25年10月31日(2013.10.31)
優先権データ
  • 特願2012-099302 (2012.4.24) JP
発明者
  • 川上 浩良
  • 朝山 章一郎
  • 硲 健一
  • 浅羽 祐太朗
  • 野口 太甫
出願人
  • 公立大学法人首都大学東京
発明の名称 クロマチン構造を制御する組成物 新技術説明会
発明の概要 本発明は、クロマチン構造を制御するための組成物を提供することを目的とする。本発明の組成物は、
1)特定の主鎖骨格を有する、両性高分子、アニオン性高分子、及び非イオン性高分子からなる群から選択される、高分子、
あるいは、
2)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子等の遺伝子を含む発現ベクター、又はヒストンアセチル化阻害剤等の阻害剤、からなるグループから選択される、2種類またはそれ以上の物質を包摂する担体
を含む。
従来技術、競合技術の概要


エピジェネティクス
細胞の働きを調節するタンパク質の発現には、遺伝子の転写・翻訳が関わっており(ジェネティクス)、遺伝子の転写・翻訳の調節にはエピジェネティクスが寄与している。さらにエピジェネティクスは、タンパク質により制御されていることから、生命機能に関わるジェネティクス-エピジェネティクス-タンパク質の統合的調節機構は、生命現象の中心的役割を担っていると考えられる。



ひとつの受精卵が増殖分化することで、組織・器官そしてひとつの個体を形成する過程が発生であり、その後、個体は成長し、時間経過とともに老化し、時には癌や生活習慣病などの病気を患うこともある。しかし、細胞や組織の異常が起こっても、自然治癒又は医療を受けることで再生されることがある。また、個体は生殖細胞を通して次の世代にゲノムを伝える遺伝現象がある。これらは、基本的に、同じゲノムをもつ細胞が性質の異なる細胞に変化するというエピジェネティックな生命現象であると理解することができる。



多種多様の細胞の個性はその細胞の遺伝子発現のパターンで決められると考えられている。ゲノム上の総遺伝子数を3万個とすると、ひとつの分化細胞では、約1万個の遺伝子が発現し、残りの遺伝子は不活性化されている。つまり、ゲノム上の遺伝子を選択的に活用することによって、細胞個性がエピジェネティックに確立・維持・消去されることを意味している。



エピジェネティクスの制御システムには、DNAのメチル化、クロマチン、タンパク質の修飾・脱修飾、転写調節因子が遺伝子制御に重要な役割を果たしている。現在までに、DNAメチル化酵素、メチル化DNA結合タンパク質、ヒストン修飾酵素、クロマチン構造因子、クロマチンリモデリング因子、クロマチンインスレーター(クロマチンの境界)等の新しい分子群や機能的な複合体が相次いで発見されている。これらのエピジェネティクス機構によって、遺伝子制御とクロマチン構造の形成がなされるのである。さらに、ゲノム上の個々の遺伝子は、組織特異的に、分化特異的に、状況特異的に発現していることは、遺伝子が独立して制御される仕組みがあることを示している。



クロマチン構造
真核生物の染色体DNAはクロマチンとよばれる高次構造をとっている。クロマチンは、ヌクレオソームの繰り返し構造がらせん状につながったものである。ヌクレオソーム同士はヒストンに巻きついていないリンカーDNAを介してつながっており、さらにパックされた30nmクロマチンファイバーとなる。ヌクレオソームは、H2A、H2B、H3、H4ヒストンタンパク質が2分子からなるヒストンオクタマーに146塩基対のDNAが約2回巻きついた構造をとっている。例えば、ヒトの1個の細胞にあるDNAを引き伸ばすと、約1.8mにもなり、このDNAはヒストンタンパク質に巻き付いてクロマチン構造をつくっている。クロマチンが凝縮して、細胞の核の中に収納されている。高度に凝縮したクロマチンは、ヘテロクロマチンと呼ばれている。



遺伝子が活性化される、即ちオンになるには、このような凝縮したクロマチン構造が緩み、ヒストンが外れたり位置がずれたりしてDNAの二重らせんがほどかれる必要がある。ほどかれることにより、遺伝子の塩基配列が転写されて、RNAとして読み取られる状態になる。



ヒストンタンパク質に、アセチル基やメチル基などさまざまな化学物質が付く修飾が行われていることが知られているが、その役割は分からず、あまり注目されていなかった。近年、ヒストンの特定の場所にアセチル基が付くと、クロマチン構造が緩み、遺伝子がオンになり得る状態になることが示された。ヒストンのメチル化と、メチル基を認識してヘテロクロマチンが形成される過程については、その過程で複雑な仕組みが働いていることが発見されている。分裂酵母のHP1タンパク質には、少しだけ形が異なった2種類のものが知られている。一方はヘテロクロマチン化を促進させ、もう一方は逆にヘテロクロマチン化を抑制する機能を有する。機能が正反対の2種類のHP1が、ある一定のバランスで集まらないと、ヘテロクロマチンが形成・維持されないことが見出されている。なぜこのような複雑な仕組みが必要なのか、明らかにされていない。



ヒトのような高等生物では、ヒストンではなくDNAを直接メチル化することで遺伝子を強く抑え込む仕組みも存在する。このDNAメチル化もヒストン修飾と密接に関連していることが分かってきた。



ヒストン修飾
ヒストンはリジンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸を多数持つタンパク質で、アニオン性であるDNAと堅く結合している。ヒストンのN末端はヒストンテールとよばれ、ヌクレオソームコアから少し離れて存在している。ヒストンは主にこのN末端の部分で様々な修飾を受ける。



近年、転写誘導の際に、ヒストン修飾によるクロマチン構造変化が重要な働きをすることが知られてきている。まず、DNA結合性転写活性化因子が、標的遺伝子に結合すると、PCAFやCBP/p300などの転写コアクチベーターがリクルートされる。転写コアクチベーターはヒストンアセチル化酵素(Histone Acetyl Transferase: HAT)活性をもっており、周辺のヒストンをアセチル化する。これが引き金となり、クロマチンリモデリング因子がリクルートされ、クロマチンのリモデリングが誘導され、基本転写因子とRNAポリメラーゼによる転写が開始する。特に、転写誘導とよく相関するアセチル化として、ヒストンH3K9とK14のアセチル化が知られている。ヒストンのリジン残基のアミノ基がアセチル化されると、アミノ基の正電荷が中和され、ヌクレオソーム間の相互作用が緩むと考えられている。さらに、ヒストンはアセチル化以外にもメチル化やリン酸化などの修飾を受け、転写の制御・サイレンシング・クロマチン凝縮などを引き起こすことが知られている。



ヒストンを修飾する酵素としては、上述したHAT以外に脱アセチル化を触媒とするヒストン脱アセチル化酵素(HistoneDeAcetylase:HDAC)がある。細胞内ではHDACの活性が優位であり、クロマチンは通常脱アセチル化状態に保たれており、転写因子の働きで必要な時だけアセチル化され、開くと考えられる。



ヒストンのメチル化は、ヒストンメチル化酵素(HistoneMethylTransferase: HMT)によって誘導される。現在、よく解析されているのはヒストンH3K9のメチル化である。メチル化されたK9をHP1(Heterochromatin Protein 1)が認識して結合する。HP1はDNAメチル化酵素やHDACをリクルートし、また、HP1同士が集合化することにより、周辺クロマチン領域を閉じた状態に変換する。このような機構により、遺伝子座のサイレンシングが起こることが知られている。一方、ヒストンH3K4のメチル化は、反対に、転写の活性化と相関することが知られている。



一般に、メチル化反応とは逆の脱メチル化反応は非常に起こりにくいと考えられていたが、近年ヒストンの脱メチル化酵素も報告された。



DNAメチル化
真核生物ゲノムDNAのメチル化修飾は遺伝情報の発現を制御する機構として進化を遂げてきた。ゲノムDNAのメチル化はエピジェネティックな要因の一つであるが、その状態は塩基配列を新たにメチル化して模様を描く、細胞が増殖する過程で維持する、必要に応じて消去するという過程の総和として決定される。特にDNAのメチル化修飾に関わるDNAメチルトランスフェラーゼとその相同分子としてこれまで5つの遺伝子が報告されている(Dnmt1、Dnmt2、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3L)。しかし、ゲノムのどの領域がどのように認識されてメチル化されるのかについては、これからの解決されるべき問題が多く残されている。



DNAのメチル化修飾は、遺伝子の実体である塩基配列を変えることなく、すなわち、遺伝子のコードするアミノ酸配列情報を変えることなくその発現を制御する。また、いったん付けられたゲノム上のメチル化模様は安定に次世代の細胞に受け継がれる。一方でメチル化修飾は必要に応じてはずされる可逆性ももっている。遺伝情報の発現制御機構を理解するうえで、ゲノムDNAのメチル化がどのように調節されているのかを理解することは重要である。



真核生物では一部の生物の例外を除いてゲノムDNAのシトシン塩基(C)の5位がメチル化修飾をうける。動物では脊椎動物に進化を遂げたときゲノムの塩基量が増加したのと時を同じくしてゲノム中のシトシンメチル化修飾の程度が増えた。脊椎動物のゲノムDNAのメチル化はシトシン塩基の次にグアニン塩基が続くCpG配列中のシトシン塩基に付加される。マウスのゲノムDNAではCpG配列の約80%がメチル化修飾を受けている。このメチル基はS-アデノシル-L-メチオニンからDNAメチルトランスフェラーゼの働きで転移される。



マウスのゲノムを俯瞰してみると、G+C含量が相対的に高い領域が島状に散在しこれをCpGアイランドと呼ぶが、多くの場合、ハウスキーピング遺伝子のプロモーターとなっていて低メチル化状態にある。一般に、転写されている遺伝子のプロモーター領域は低メチル化状態にあり、不活性な遺伝子は高度にメチル化されている。プロモーター領域に存在する転写因子の結合モチーフがメチル化されると、Sp1など一部の転写因子を除いてほとんどの転写因子はDNAに結合できなくなる。また、メチル化されたDNAを特異的に認識して結合するタンパク質が存在し、このメチル化DNA結合タンパク質とヒストン修飾を介して転写が阻害される。DNAメチル化は長期的に遺伝子をサイレンシングするための一種の記憶として機能している。



メチル化されたDNAを特異的に認識して結合するタンパク質の多くはヒストン脱アセチル化酵素を含む転写抑制複合体の一員か、あるいはこれら複合体と結合して、最終的にはヒストンを脱アセチル化、メチル化することにより転写を抑制する。DNAメチル化とヒストン修飾には密接な関係が存在することは確かであるが、お互いの間の相互作用に関わる分子機構についてはわからないことがまだまだ多く、解決されるべき重要課題である。



以上、クロマチン構造変化の制御はヒストン又はDNAの修飾が関与していると考えられているが詳細は明らかではない。クロマチン構造を人為的に制御するための手段も確立していない。

産業上の利用分野


本発明は、クロマチン構造を制御するための組成物及び、当該組成物を用いたクロマチン構造の制御方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の
i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
v)ヒストンアセチル化阻害剤;
vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;及び
vii)ヒストン脱メチル化阻害剤
からなるグループから選択される、2種類またはそれ以上の物質を包摂する担体、
並びに、
カルボキシメチル化ポリビニルイミダゾール
を含む、クロマチン構造を制御するための組成物。

【請求項2】
2種類またはそれ以上の物質が、以下の
i)ヒストンアセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iii)ヒストン脱アセチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
v)ヒストンアセチル化阻害剤;及び
vi)ヒストン脱アセチル化阻害剤;
からなるグループから選択される、請求項に記載の組成物。

【請求項3】
2種類またはそれ以上の物質が、以下の
ii)ヒストンメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
iv)ヒストン脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター;及び
vii)ヒストン脱メチル化阻害剤
からなるグループから選択される、請求項に記載の組成物。

【請求項4】
担体が、ポリエステル、リン酸カルシウム、又はポリアミノ酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。

【請求項5】
担体が、さらに、DNA脱メチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター、DNAメチル化酵素をコードする遺伝子を含む発現ベクター、あるいは、DNAメチル化酵素阻害剤、を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。

【請求項6】
担体がリン酸カルシウムである、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。

【請求項7】
クロマチン構造を弛緩するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。

【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物をin vitro又はex vivo投与することにより、クロマチン構造を制御する方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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