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イオンセンサ用触媒およびこれを用いたイオンセンサならびに定量法

国内特許コード P160012723
整理番号 (S2014-0268-N0)
掲載日 2016年1月27日
出願番号 特願2015-529364
登録番号 特許第5804484号
出願日 平成27年2月4日(2015.2.4)
登録日 平成27年9月11日(2015.9.11)
国際出願番号 JP2015053112
国際出願日 平成27年2月4日(2015.2.4)
優先権データ
  • 特願2014-024895 (2014.2.12) JP
  • 特願2014-229330 (2014.11.11) JP
発明者
  • 盛満 正嗣
出願人
  • 学校法人同志社
発明の名称 イオンセンサ用触媒およびこれを用いたイオンセンサならびに定量法
発明の概要 本発明は、水中のリン酸水素イオンを検出し、その酸化電流密度からリン酸水素イオン濃度を決定できるイオンセンサ用触媒において、従来よりも検出感度が高く、また高い検出感度を幅広いリン酸水素イオンの濃度範囲において維持できるとともに、濃度と酸化電流密度に比例関係が成り立つことで、濃度範囲に関わらず精度よく濃度を決定することが可能で、かつ酸化電流が短時間で定常値に達して電流密度の決定までの時間が短く、したがってリン酸水素イオンを定量するまでの時間が短時間であり、リン酸水素イオンの酸化に対して繰り返し安定に応答する安価なイオンセンサ用触媒、イオンセンサ、定量法を提供することを課題とする。
この課題を解決するために、本発明のイオンセンサ用触媒は、水中のリン酸水素イオンを電気化学的に酸化するイオンセンサ用触媒であって、酸化ルテニウムと酸化タンタルの混合酸化物を含むことを特徴とする。
従来技術、競合技術の概要


リンは岩石中に存在し、あらゆる動植物やその排泄物などにも含まれている。また、リンは肥料、農薬、合成洗剤などにも含まれており、環境水(河川水、海水、湖沼など)中のリンの増加は、家庭排水、し尿、生活排水、工場排水、農業排水、畜産排水などの混入に由来する場合が多い。例えば、通常の排水処理(二次処理まで)ではリンはほとんど除去されないため、し尿処理場や下水処理場からの放流水が、環境水中のリンを増加させる原因となる場合がある。リンは生物の栄養素の一つであるが、リンの濃度が増加すると、河川・湖沼・海域・水産用水などの富栄養化を促進し、結果としてプランクトンの大量発生や赤潮などの環境問題を生じる。したがって、環境水、工場排水、農業排水、家庭排水、生活排水、畜産排水、排水処理水、養殖用などの水産用水、し尿や下水処理場などからの放流水などに含まれるリンの濃度を測定することは環境保全の面で重要かつ必要である。
一方、生体系において、リンはリン酸イオンやDNAやRNAをはじめとした様々なリン酸エステル体として存在する。リンの化合物は、生体系環境における重要な制御因子であり、生物のエネルギー代謝に不可欠なATPやDNAは、リン酸を分子の一部に含むヌクレオチドからできており、生物の現存量は環境中から得られるリン酸の量から大きく制約を受けている。さらに、血液中のリン濃度も重要であり、成人の血しょう無機PO濃度の基準範囲は2.5~4.5mg/dLとされ、これよりも低いと低リン酸血症と呼ばれ、筋力低下、呼吸不全、心不全、けいれんや昏睡を生じる場合があり、反対に高い場合には高リン酸血症と呼ばれ、慢性腎不全、副甲状腺機能低下症などによって生じる。



ここで、リン化合物の形態は、無機態と有機態に区別され、さらに無機態リンはオルトリン酸態リン、重合リン酸態リンに分けられる。水中に存在するオルトリン酸態リンは、pHによって存在状態が変化し、亜リン酸HPO(pHが2以下)、リン酸二水素イオンHPO(pHが2~7)、リン酸水素イオンHPO2-(pHが7~12)、リン酸イオンPO3-(pHが12以上)が各pH領域での主な形態となる。重合リン酸態リンとしては、ピロリン酸(P4-)などがあるが、これらは加水分解などによって、リン酸水素イオンに変化する。また、有機態リンには、前述の他、エステル類やリン脂質など様々な含リン有機化合物がある。例えば、合成洗剤に含まれていたトリポリリン酸塩や下水処理剤も有機態リンの例として挙げられる。



わが国では、生活環境の保全に関する環境基準や水質汚濁防止法による排水基準において、リン濃度の基準値および許容限度を定めている。ここでのリン濃度とは、一般に「全リン」として規定されるリン濃度であり、これは濃度測定の対象となる試料水中に存在するリン化合物を、強酸あるいは他の酸化剤、または加水分解などによって、すべてオルトリン酸態リンに分解した後に、所定の方法で求めた試料水1L中に含まれるリンの重量であり、通常mg/Lの単位で表示される。このような全リン濃度の測定方法として、ペルオキソ二硫酸カリウム、または硝酸および硫酸によって、試料水中の有機態リンや重合リン酸態リンを分解し、すべてをオルトリン酸態リンとした後に、モリブデンブルー法と呼ばれる方法で着色し、その吸光度から全リンの濃度を求める方法がある。この方法では、試料水を化学処理した後、リン酸イオンとモリブデン酸を反応させ、さらにアスコルビン酸のような還元剤を加えてモリブデン青を生成させて着色する工程と、吸光光度計を用いて吸光度を測定する工程が必要である。また、オルトリン酸態リンのみの濃度の決定については、上記のような化学処理ではなく、試料水のpHをリン酸イオンが存在するpH範囲に調整し、モリブデンブルー法と吸光光度法を組み合わせた上記の方法によるか、またはイオン交換樹脂を用いたイオンクロマトグラフィーでリン酸イオンを分離し、その濃度を電気伝導度測定または紫外線吸収測定によって求める方法がある。上記に述べた全リンおよびリン酸イオンの定量は、JIS K 0102にも規定されている。また、このほかに(特許文献1)および(特許文献2)には、リン酸イオンの濃度を測定する方法が開示されているが、いずれも試料水中のリン酸イオンと複数の試薬を反応させて発色または着色させてから、吸光度または透過率を測定するという方法で、前述のJISに規定されているものと類似の方法である。
なお、前述のように、環境基準や排水基準で定められているのは「全リン」の濃度であり、オルトリン酸態リンに関する環境基準や排水基準はない。また、これらの方法では、オルトリン酸態リンは、試料水のpHを調整することでPO3-として存在しており、有機態リンおよびオルトリン酸態リン(無機態リン)はすべて、PO3-の形で測定される。したがって、環境中のオルトリン酸態リンについて、その存在形態ごとに濃度を求めることは行われていない状況であり、またこのように存在形態ごとに濃度を決定できる方法は開発されていない。



ここで、わが国ではリンに関する排水基準として、水質汚濁防止法の排水基準の有害項目に有機リン化合物を挙げ、その許容限度を1mg/Lとし、また特定地下浸透水が有害物質を含む要件として全リンの濃度を0.1mg/Lと定め、これに該当する特定地下浸透水を地下に浸透させてはならないとしている。また、排水基準の生活環境項目では、リン含有量として全リンの濃度16mg/L(日間平均8mg/L)を許容限度としている。なお、生活環境項目での基準は、環境大臣が定める湖沼、海域、およびこれらの流入する公共用水域に排出される排出水に適用される。さらに、暫定基準ではあるが、畜産農業については30mg/L(日間平均24mg/L)、リン化合物製造業では40mg/L(日間平均10mg/L)としている。一方、環境基準では「人の健康の保護に関する環境基準」にはリンの規定はないが、「生活環境の保全に関する環境基準」では湖沼に関する基準値が設けられており、全リン濃度で0.1mg/L以下となっている。
上記の全リンの濃度範囲は、リンのモル濃度(mmol/L)で表わすと、10-3mmol/L~10mmol/Lの範囲となる。なお、環境基準は「健康を保護し及び生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準」であることから、排水基準よりも低い値に設定されている。上記のように、現在の全リンやリン酸イオンの定量には、試料水に化学処理を行い、すべてのリンをリン酸イオンの形態に変えたのち、リン酸イオンを着色・分光分析する方法か、リン酸イオンをイオンクロマトグラフィーで分離した後、リン酸イオンを含む溶液の電気伝導度を測定するか、または紫外吸収を測定する方法となっており、作業が煩雑で試料水の処理から最終的に濃度を求めるまで時間がかかっていた。また、これらの方法ではリンはすべてPO3-に変わるため、これ以外のオルトリン酸態リンの濃度については、個別に測定する手段がなかった。



一方、前述の方法とは異なり、例えば(特許文献3)では、芳香族酸および/又は芳香族誘導体から選択される少なくとも一種の化合物とリン酸水素イオンを接触させたのち、これを含む溶液について、紫外可視吸光光度法、蛍光りん光発光法、または核磁気共鳴分析法を用いて、リン酸水素イオンを定量するリン酸水素イオンセンサおよびその定量法が開示されている。このリン酸水素イオンセンサおよびその定量法は、前述のような環境中のリン濃度だけでなく、生体内のシグナル伝達系で、リン酸化タンパク質やリン脂質のリン酸基を介して、種々の情報伝達の制御が行われていることから、このような生体内のリン酸水素イオンを検出するセンシングシステムへの応用も意図したものとなっている。しかし、(特許文献3)に開示された発明においても、分光法または核磁気共鳴法といった大型の分析機器を必要とし、測定に時間がかかるとともに、芳香族酸、芳香族誘導体といった分析用試薬を必要とするものであった。すなわち、これまでに述べた従来の技術は、リン酸イオン(PO3-)、リン酸水素イオン(HPO2-)のいずれの場合でも、対象とするイオンのみを直接検出できる方法ではなかった。



これに対して、電気化学的な方法で、リンを検出する方法が研究されてきた。例えば、(特許文献4)にはフッ素化合物とリン酸化合物の濃度測定方法として、試料水の電気伝導度とフッ素イオン電極で測定したフッ素イオン濃度とともに、超音波伝搬度またはpHの測定値をあらかじめ作成されたデータテーブルと比較することで、間接的にリン酸化合物の濃度を決定する方法が開示されている。また、(特許文献5)には、リン酸イオンをリン酸イオンと反応して酸化物となる基質とこの酸化物を生成するための反応を触媒する酸化還元酵素の存在下で反応させるに際し、酸化型メディエーターを共存させることにより生じた還元型メディエーターをさらに酸化することにより生じた電流を測定することを特徴とするリン酸イオンの定性・定量法が開示されている。さらに、(非特許文献1)には、リン酸イオンを多段階の酵素反応で反応させ、最終的に生じる過酸化水素(H)を電極上で酸化して流れる電流から、間接的にリン酸イオンの濃度を定量する方法が開示されている。



また、リン酸イオン以外にも、電気化学的にリン酸水素イオン濃度を検出する方法が、(非特許文献2)乃至(非特許文献4)に開示されている。これらの方法では、試料水のリン酸水素イオンの濃度によって変化する電極の酸化電流またはインピーダンスを測定することによって、得られた酸化電流またはインピーダンスからリン酸水素イオンを定量している。これらの(非特許文献2)乃至(非特許文献4)では、リン酸水素イオンを電気化学的に検出する検知極の触媒として、ぺロブスカイト型酸化物、スピネル型酸化物、パイロクロア型酸化物といった複合酸化物(2種類以上の金属元素が酸素とともに原子レベルで固溶した状態にある酸化物)を用い、リン酸水素イオンを含む試料水で、この検知極の酸化電流またはインピーダンスを測定し、リン酸水素イオンの対数と検出された酸化電流またはインピーダンスの関係について報告している。



一方、本発明の発明者は、二酸化イリジウム(IrO)を検知極材料として、リン酸水素イオンを含む試料水での電気化学反応を検討した結果、この酸化物上でリン酸水素イオンの酸化電流が生じ、またリン酸水素イオンの濃度と酸化電流が比例することをすでに明らかにし、この時の酸化電流密度(検知極の単位面積当たりの電流)が(非特許文献2)乃至(非特許文献4)に開示されている値よりも、同一の濃度範囲で100~1000倍程度大きく、また安定した酸化電流が得られるまでの時間(検出時間)が短いことを明らかにしていたが、二酸化イリジウムを触媒とする検知極では、酸化電流と比例する濃度範囲が狭く(1mmol/L~10mmol/L)、定量できる濃度が限定されていた。

産業上の利用分野


本発明は、水中のリン酸水素イオンを定量するためのイオンセンサ用触媒,およびこのイオンセンサ用触媒を用いたリン酸水素イオンを定量するイオンセンサ、ならびに上記イオンセンサ用触媒を用いてリン酸水素イオン濃度及び/または全リン濃度を定量する定量法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
水中のリン酸水素イオンを電気化学的に酸化するイオンセンサ用触媒であって、酸化ルテニウムと酸化タンタルの混合酸化物を含むことを特徴とするイオンセンサ用触媒。

【請求項2】
前記混合酸化物におけるルテニウムとタンタルのモル比が30:70~80:20であることを特徴とする請求項1に記載のイオンセンサ用触媒。

【請求項3】
前記混合酸化物が非晶質の酸化ルテニウムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のイオンセンサ用触媒。

【請求項4】
水中のリン酸水素イオンを定量するためのイオンセンサであって、請求項1~3のいずれか1項に記載のイオンセンサ用触媒を用いた検知極を備えたことを特徴とするイオンセンサ。

【請求項5】
前記検知極によりリン酸水素イオンの酸化電流を検出する検出部と、前記検出部と電気的に接続され、前記検出部で検出した前記酸化電流から前記リン酸水素イオンの濃度を算出し、前記算出の結果を表示する制御部とを備えたことを特徴とする請求項4に記載のイオンセンサ。

【請求項6】
前記検出部が、前記検知極および対極からなるか、または前記検知極、対極および参照極からなることを特徴とする請求項5に記載のイオンセンサ。

【請求項7】
1つの絶縁性基体をさらに備え、前記検出部における前記検知極と前記対極、または前記検出部における前記検知極と前記対極と前記参照極とが、前記絶縁性基体上に形成されたことを特徴とする請求項6に記載のイオンセンサ。

【請求項8】
リン酸水素イオンを含む試料水のpH及び/または温度を測定する機能を備えたことを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載のイオンセンサ。

【請求項9】
水中のリン酸水素イオン及び/または全リンの濃度を決定するための定量法であって、請求項1~3のいずれか1項に記載のイオンセンサ用触媒を検知極に用いて、前記水中のリン酸水素イオンを酸化してその酸化電流を測定する電流測定工程と、前記電流測定工程で測定した酸化電流からリン酸水素イオンまたは全リンの濃度を決定する濃度決定工程と、を備えたことを特徴とする定量法。

【請求項10】
前記電流測定工程において、リン酸水素イオンを含む溶液を前記検知極の周辺で流動または前記検知極に送液することを特徴とする請求項9に記載の定量法。

【請求項11】
前記電流測定工程において、リン酸水素イオンを含む溶液を前記検知極に垂直方向から送液することを特徴とする請求項10に記載の定量法。
産業区分
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
出願権利状態 登録
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