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エルシニア症ワクチン

国内特許コード P160012749
整理番号 S2014-0935-N0
掲載日 2016年2月5日
出願番号 特願2014-096323
公開番号 特開2015-214493
出願日 平成26年5月7日(2014.5.7)
公開日 平成27年12月3日(2015.12.3)
発明者
  • 宇根 有美
出願人
  • 学校法人麻布獣医学園
発明の名称 エルシニア症ワクチン
発明の概要 【課題】エルシニア症ワクチンの製造に伴うなどの欠点を解消する、組換え型のタンパク質によるエルシニアワクチン組成物の提供。
【解決手段】Y.pseudotuberculosisのYadAタンパク質を、遺伝子組み換え法を用いて大腸菌中で生産し、その組み換えタンパク質を免疫原として使用して動物を免疫し、効果的にエルシニア症に対する抵抗性を付与するエルシニア症ワクチン組成物。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


エルシニアは腸内細菌科に属するグラム陰性通性嫌気性菌で、低温発育細菌であるYersinia属菌には現在14菌種が分類され、病原性Yersinia属菌として、Y. pestis(ペストの病原体)、Y. pseudotuberculosis、Y. enterocoliticaの3種類があり、いずれも人獣共通感染症である。このうち、Y. enterocoliticaとY. pseudotuberculosisの2菌種により生じる急性腸管感染症をエルシニア症という。Y. enterocoliticaは食中毒菌として知られ、Y. pseudotuberculosisはしばしば動物から分離される。



ヒトにY. pseudotuberculosisが感染すると、多くの場合、発熱、下痢、腹痛などの胃腸炎症状を生じる他、多彩な臨床症状を示すことが知られている。しかしながら、死に至ることはほとんどない。これに対して、動物では、ヒトと異なる病態を示し、家畜、野生動物などの多くの動物種においては、Y. pseudotuberculosisに不顕性感染し、保菌動物となる。一方で、ニュージーランドなどの海外では幼若な牧畜でしばしば流行し、経済的な損失が報告されている。



国内では、以前より全国各地の動物園で、エルシニア症が突発的に発生したり、周期的に流行している。宿主域が広く、哺乳類、鳥類を問わず流行し、致死的に働き、リスザルに見出される感染症の45%以上がエルシニア症で、オランウータンやチンパンジーなどの類人猿でも発生している。さらに、カピバラ、マーラ、ハイラックス、ニホンリス、コウモリなどの哺乳類のみならず、鳥類(例えば、オオハシ、ジュウシマツなど)でも、致死的集団発生がおき、動物園動物の損耗に拍車をかけている。特にサル類は、この病原体に対して感受性が高く、ときに飼育動物の半数が死亡するといった流行を引き起こしている。



サル類をめぐる現状としては、世界各地で種数、個体数が減少しており、特に類人猿は危機的状況にある。このため、種の保存対策が急務とされている。また、医学・生物学の分野の研究に欠かせない動物で、バイオリソースとして重要である。加えて、国内の問題として、サル類の輸入は、感染症法によって厳しく制限されていて、実験用の特定の種類のサル以外の輸入は非常に困難な状況にある。このため、国内の動物園では、種の保存を目的とした繁殖技術の確立にも支障があるばかりか、展示する動物の確保もままならない状況にあり、エルシニア症によるサルの死亡数の増加が非常に大きな問題をなっている。よって、我が国においては、動物園におけるエルシニア症の発生は、公衆衛生上の問題のみならず、動物衛生上および種の保存面でも問題となり、また、発生阻止が難しい流行病として位置づけられている。



Y. pseudotuberculosisの主たる感染経路は、家畜や野生動物などの健康保菌動物の糞便とともに排出された菌が感染源となり、これに汚染された飼料、水を感受性動物が摂取することにより生じ、動物間で水平伝播が成立すると考えられている。これまでに保菌が確認されている動物として、ブタ、イヌ、ネコなどの家畜やタヌキ、野鳥など野生動物があるが、感染源としてネズミが最も重要である。このため、保菌動物・感染源との接触を完全に阻止することが必要であるが、展示施設といった動物園の性質から、屋外または半屋外の飼育施設が多く、物理的な障壁による対策は困難で、保菌動物であるネズミや野鳥が、飼育施設内に容易に侵入し、環境を汚染し、高感受性動物との間接的接触が生じ、感染が成立している。このため、物理的な障壁以外の手段で、エルシニア症をコントロールすることが求められている。



このような代替手段として有望と考えられているのは、サル類をはじめとするY. pseudotuberculosisに感受性の高い動物に対して、免疫学的抵抗性を付与して、感染症の発生を防止する方法である。



病原性Yersinia属菌の病原性に関連する因子には、エルシニアの病原性プラスミドにコードされているもの(YadA(Yersinia adhesion A)、Yops(Yersinia Outer Membrane Protein)、Lcr、Yscなどのタンパク質)、染色体DNAにコードされているもの(INVASIN、YPM(Yersinia pseudotuberculosis derived mitogen)、および鉄取り込みタンパク質)がある。



病原性Yersinia属菌は、これらのタンパク質を利用して宿主細胞に感染する。具体的には、INVASINを足がかりにして腸管のM細胞に接着し、腸管上皮細胞への付着、マクロファ-ジの食作用の阻害、食細胞内での殺菌作用に対する抵抗性などに関与すると考えられているYadAが、マクロファージを引き寄せ、その後、III型分泌装置(TTSS)を介して、エルシニア外膜タンパク質であるYopsを宿主細胞に移入する。このYopsは、宿主細胞にとっては毒素としても機能するため、結果的に宿主細胞はアポトーシスを生じて細胞死する。そして、これらの因子が免疫原として検討されてきている。



病原性Yersinia属菌のうち、Y. pestis(ペスト菌)は感染症法1類に掲載される非常に危険度の高い病原体で、ペスト(黒死病)の原因菌で、生物兵器としても重要視されている。このため、Yersinia属菌のワクチン開発分野で、先行するものとして、ペストワクチンが開発され、盛んに研究が行われている。また、ペスト菌の全ゲノム解析より、ペスト菌は Y. pseudotuberculosisの血清型O:1bから進化した菌であることが明らかにされている。そして、いくつかの共通の病原因子を有している。よって、ペストワクチン研究は、エルシニア症ワクチン開発の参考になる。



その現状として、現在、世界で使用されているペストワクチンは、ホルマリンで死菌化したペスト菌を免疫原としていて、ワクチン接種後の局所症状(副反応)が強く、効果が必ずしも十分でないとされている。このため、3日間隔で3回の接種が必要とされ、ペストの流行地での医療従事者や、濃厚な感染の危険性の高い人以外には推奨されていない。また、最近の研究では、感染防御抗原として、Yopsの宿主細胞への注入装置(III型分泌装置TTSS)に注目し、これに外来抗原遺伝子を挿入して、免疫を賦与するものや、TTSSの一部を構成するLerVを大腸菌によって合成し、免疫原とするものがあるが、後者では、宿主の免疫機能が抑制されるという副作用が指摘されている。また、宿主細胞への接着に関与する病原因子であるinvasinに注目した研究もあるが、病変形成をほとんど阻止できない(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。さらに、病原性プラスミドを脱落させた弱毒生ワクチンに関する研究も多い(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。しかし、いずれも実用に至っていない。



医学領域では、Y.pseudotuberculosisに対するワクチンの研究はほとんどなされていない。動物では、ニュージーランドで牧畜にY.pseudotuberculosis死菌ワクチンが使用されているが、2回の皮下投与が必要で、その効果について検証した学術論文が見当たらない。

産業上の利用分野


本発明は、動物におけるエルシニア症の予防のためのワクチンを提供することに関する発明である。

特許請求の範囲 【請求項1】
組換えYadAタンパク質(SEQ ID NO: 2)を免疫原として含む、エルシニア症ワクチン組成物。

【請求項2】
組換えYadAタンパク質が、大腸菌中で発現されたものである、請求項1に記載のエルシニア症ワクチン組成物。

【請求項3】
組換えYadAタンパク質が、大腸菌発現ベクター中にエルシニアYadAタンパク質をコードする核酸を組み込んだ発現ベクターを大腸菌中に組み換えることにより、大腸菌中で作製されたものである、請求項1または2に記載のエルシニア症ワクチン組成物。

【請求項4】
組換えYadAタンパク質が、大腸菌内において封入体中に封入されたものまたは可溶化されたもののいずれかである、請求項1~3のいずれか1項に記載のエルシニア症ワクチン組成物。

【請求項5】
皮下投与または経口投与により投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載のエルシニア症ワクチン組成物。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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