TOP > 国内特許検索 > 油煙デポジットの発生を防止する方法及びシステム

油煙デポジットの発生を防止する方法及びシステム コモンズ

国内特許コード P160012984
整理番号 N15081
掲載日 2016年5月11日
出願番号 特願2016-076389
公開番号 特開2017-186961
出願日 平成28年4月6日(2016.4.6)
公開日 平成29年10月12日(2017.10.12)
発明者
  • 水口 仁
  • 高橋 宏雄
  • 金子 正彦
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 油煙デポジットの発生を防止する方法及びシステム コモンズ
発明の概要 【課題】内燃機関に代表される燃焼室およびその排気通路の内壁に油煙またはその炭化物が付着してデポジットが発生することを、剥離などの問題を生ずることなく、安価な方法で防止する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】内燃機関の燃焼室または排気通路の内壁がFeまたはFeを含む合金で構成されている場合に、内壁の表面に酸化処理を施すことにより内壁表面に酸化鉄被膜を形成しておけば、酸化鉄のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度領域で、正孔の酸化力を利用して内壁に接触する油煙は分解除去され、油煙またはその炭化物が酸化物被膜に付着してデポジットを発生することが防止される。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


燃料等の不完全燃焼等により燃焼室内の部品の表面に油煙またはその炭化物が付着してデポジットが発生すると、種々の問題を引き起こすのでデポジットの発生を抑制、防止する技術が求められている。燃焼室からの排気ガスを導く排気通路においても、同様に排気通路の内部壁面に油煙またはその炭化物が付着してデポジットが発生するのは好ましくなく、デポジットの発生を防止する技術が求められている。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関においては特に、デポジットは深刻であり、その抑制、防止技術が強く望まれている。



エンジン・デポジットの発生箇所は、燃焼室、排気系、ならびに吸気系にもおよび、摺動部の作動不良や固着、目詰りを誘起する。そのデポジットの発生源は、不明な点も多いが、燃料、エンジン・オイル等に起因すると考えられている。特に、昨今の過給器付エンジンにおいて高過給化が進む中、コンプレッサ―内でブローバイ・ガスのオイルミストに起因するデポジットが原因となり、過給圧(ブースト圧)が低下することが問題となっている。この理由からデポジットを分解し、過給圧低下を抑制することが求められている。
こうしたデポジットの付着、堆積を抑制するために、特許文献1には、ターボチャージャの内壁に遷移金属の酸化物を溶射法によりコーティングし、触媒として作用させる技術が開示されている。また、特許文献2にはスパッタリング法によりLiNbOを形成するなど、リチウム元素を含むセラミックス被覆層を形成してデポジットの付着、堆積を抑制する技術が開示されている。他には光触媒を用いる方法も開示されている(特許文献3)。しかしながら、これらの技術のデポジット抑制効果は限定的であり、膜の剥離の問題に対しても万全ではない。



本発明者の一人は有機物、ポリマー、ガス体等の被処理物を分解する方法として、半導体を真性電気伝導領域となる温度に加熱して電子・正孔キャリアーを大量に発生させ、被処理物を加熱処理により発現した強力な酸化力を持つ正孔に接触させ、酸素の存在下において被処理物を(炭酸ガスと水に)完全分解する処理方法(半導体の熱活性法,Thermal Activation of Semi-Conductors,以後TASCと略称する)について提案した(特許文献4、非特許文献1)。TASC分解の素過程は、次の3つの素過程から構成される:1. 強力な酸化力により、被分解物(例えば、ポリマーのような巨大分子)から結合電子を引き抜き、被分解物の中に不安定なラジカルを生成する、2. この不安定なラジカルが巨大分子内を伝播し、巨大分子を不安定化し、巨大分子は自滅するような形で小さな分子に裁断化される、3. 裁断化された分子は空気中の酸素と反応して、水と二酸化炭素に完全分解される。TASC法で用いる半導体を触媒と呼ぶことがあるが、通常の化学触媒とは根本的に機能が異なっている。つまり、化学触媒は、ある化学反応種に作用して、活性錯合体(遷移状態における活性物)を生成し、見かけ上の反応障壁を低下させて反応を進行させるものである。これに対して、TASC法では被分解物を不安定化させ、小分子化を誘起して、完全燃焼を行なうものである。
TASC法で使用できる半導体は高温、酸素雰囲気で安定な半導体であれば良い。従って、酸化物半導体が好んで用いられる。酸化物半導体の例として、BeO、CaO、CuO、CuO、SrO、BaO、MgO、NiO、CeO、MnO、GeO、PbO、TiO、VO、ZnO、FeO、PdO、AgO、TiO、MoO、PbO、IrO、RuO、Ti、ZrO、Y、Cr、ZrO、WO、MoO、WO、SnO、Co、Sb、Mn、Ta、V、Nb、MnO、Fe、Fe、YS、MgFe、NiFe、ZnFe、ZnCo、MgCr、FeCrO、CoCrO、CoCrO、ZnCr、CoAl、NiAl等がある。この中で、酸化クロム(Cr)は高温安定性(融点:約2200℃)に優れ、さらに飲料用のガラス瓶の染色にも使われる安全な材料である。また、酸化鉄(α-Fe:ヘマタイト)は安全で廉価な材料であるので実用性が高い。



ミスト状の油煙を小分子化し、分子状のガスとする能力のある触媒で、かつ、剥離しにくいものが求められている。これらの機能を備えたTASC触媒を用いることを考えた。



本発明者の一人は非特許文献2において、発熱体であるニクロム線(Ni-Cr)を湿潤水素で選択酸化(Ni-Cr/Cr)し、この上に酸化チタンを約3μm電着した触媒素子を用いたVOC分解装置を試作し、トルエン濃度7,500ppm、空気流量50ml/minの条件でTASC法を適用したところ、トルエンが完全に分解することを報告している。ここで酸化チタン(TiO)はTASC法で使用できる酸化物半導体として用いていた。Ni-Crに直接TiOを付けると両者の熱膨張係数が大きく異なることからTiOが剥離し易くなるため、TiOとの熱膨張係数の差が小さいCrを介してTiOを付けたのであり、膜厚が約0.5ミクロン程度と薄いCr層にはTASCの働きを想定していなかった。



しかし、デポジットの発生を防止するためであれば、燃焼室または排気通路を通過する有機物のすべてを分解する必要はないので、TiOのないNi-Cr/Crだけでも使える可能性がある。しかしながら、内燃機関の燃焼室に今なお多く使われているのは鉄であり、鉄の酸化物はバンドギャップが小さいために比較的低温でTASC効果を期待できる。また鉄の表面に形成される酸化鉄被膜は非常に強固な被膜であり、剥離の恐れが全くないという利点がある。このような考えの元に、鉄/酸化鉄被膜のTASC効果によるデポジットの付着防止を検討することにした。

産業上の利用分野


本発明は、内燃機関に代表される燃焼室およびその排気通路の内壁に油煙またはその炭化物が付着してデポジットが発生することを防止する方法及びシステムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
FeまたはFeを含む合金の表面に酸化処理を施すことにより前記Feまたは前記合金表面に酸化物被膜を形成し、前記酸化物のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度領域で、前記酸化物被膜に接触する油煙を正孔の酸化力を利用して前記油煙を分解除去することにより、前記油煙またはその炭化物が前記酸化物被膜に付着してデポジットが発生することを防止することを特徴とする油煙デポジットの発生を防止する方法。

【請求項2】
前記酸化物はFeであることを特徴とする請求項1に記載の油煙デポジットの発生を防止する方法。

【請求項3】
内燃機関の燃焼によって生ずる油煙またはその炭化物が燃焼室及び排気通路の内壁に付着してデポジットが発生することを防止するシステムであって、前記燃焼室及び前記排気通路の少なくとも一か所にFeまたはFeを含む合金が配置され、前記Feまたは前記合金の表面には酸化処理により酸化物被膜が形成されており、前記酸化物のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度領域で、前記酸化物被膜に接触する前記油煙を前記正孔の酸化力を利用して分解除去することにより、前記油煙またはその前記炭化物が前記内壁に付着して油煙デポジットが発生することを防止するシステム。

【請求項4】
前記酸化物はFeであることを特徴とする請求項3に記載の油煙デポジットが発生することを防止するシステム。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2016076389thum.jpg
出願権利状態 公開
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、下記「問合せ先」まで直接お問い合わせください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close