TOP > 国内特許検索 > 組織線維化スクリーニング方法および抗組織線維化薬剤ならびに機能性食品

組織線維化スクリーニング方法および抗組織線維化薬剤ならびに機能性食品

国内特許コード P160013054
整理番号 S2016-0147-N0
掲載日 2016年6月21日
出願番号 特願2015-229481
公開番号 特開2017-096785
出願日 平成27年11月25日(2015.11.25)
公開日 平成29年6月1日(2017.6.1)
発明者
  • 倉原 琳
出願人
  • 学校法人福岡大学
発明の名称 組織線維化スクリーニング方法および抗組織線維化薬剤ならびに機能性食品
発明の概要 【課題】TRPA1チャネルを介して抗組織線維化物質のスクリーニング方法ならびに抗組織線維化測定用スクリーニングキットを提供すること、および抗組織線維化薬剤ならびに機能性食品を提供すること。
【解決手段】本発明の抗組織線維化物質のスクリーニング方法は、TRPA1チャネルを発現する間葉系細胞を用いてTRPA1チャネル活性化作用を有するTRPA1チャネル活性化物質をスクリーニングし、得られたTRPA1チャネル活性化物質を線維化サイトカインTGF-β1刺激下で組織線維化マーカーを抑制することにより抗組織線維化物質をスクリーニングすることからなる。本発明の抗組織線維化薬剤および機能性食品は、抗組織線維化物質であるローズマリー、セージまたはメースのアルコール抽出分を主成分として含有する。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


間葉系細胞(主に線維芽細胞や筋線維芽細胞)は臓器線維化の過程で重要な役割を果す。臓器の線維化は肝臓・心臓・肺臓・腎臓・血管・消化管・皮膚など多くの組織に見られる。線維化病変は、放置すれば死の機転をとる重篤な慢性疾患である場合も多いけれども、現在ところ選択的な治療薬は存在しない。



肝炎に伴う肝硬変で見られる肝臓の線維化には、甘草の抽出成分であるグリチルリチン、膚の瘢痕化・消化管瘢痕狭窄・肺線維症にはステロイドが用いられ、他に肺線維症に用いられるピルフェニドンなど作用ターゲットが不明な抗線維化薬が存在する。しかし、いずれの薬の抗線維化の作用機序は明らかにされておらず、ステロイドの強い副作用が問題となっている。



一方、一過性受容器電位(Transient Receptor Potential)イオンチャネルのスーパーファミリーに属する非選択性陽イオンチャネルの一つとしてTRPA1(Transient Receptor Potential Ankyrin 1)チャネルが知られている。



このTRPA1チャネルは、侵害受容ニューロンにおいて低温受容器(17℃)として見出された(非特許文献1)。またTRPA1チャネルは、リガンド依存性イオンチャネルであり、リガンドが結合することにより構造変化を惹起し、その結果チャネルが開口し、カルシウムイオンやナトリウムイオンなどの陽イオンを細胞内に流し、細胞の膜電位を調節する作用を有している。



TRPA1リガンドとしては、例えば、アリルイソチオシアネート(AITC)、シンナムアルデヒド等の刺激性天然物、ホルマリン、アクロレイン等の環境刺激物などが挙げられる。さらにTRPA1チャネルは、冷刺激、細胞内カルシウムイオンなどによっても活性化されることも知られている(非特許文献2)。



またパラベン類やアルカリ剤が配合された化粧料などの外用剤を皮膚に用いた場合、使用者によっては皮膚に不快な刺激を感じることがあるが、かかる不快な刺激にTRPA1チャネルの活性化が関連していることが報告されている(例えば、特許文献1~4参照)。



このようにTRPA1チャネルがパラベン類やアルカリ剤に応答することから、TRPA1チャネルはこれらの化合物による刺激を抑制する物質のスクリーニングに利用することが可能であることが報告されている(非特許文献1、3)。



このように様々な物理化学刺激によって活性化されるTRPA1チャネルついて研究の結果、本発明者らはTRPA1チャネルが組織の線維化に深く関与することを見出した(非特許文献4、5)。



TRPA1チャネルは筋線維芽細胞に多く発現しており、AITCなどTRPA1を活性化する刺激は線維化マーカーを抑制し、抗線維化作用が確認された。また、TRPA1チャネルは細胞外のコラーゲンの濃度の増加によって発現が増し、抗線維化作用を示して自らのコラーゲン産生を抑制することから、コラーゲンのネガティブフィードバック調節因子であることが分かった。



さらに、これらの知見から、本発明者らは、TRPA1チャネルを活性化する化合物や物質から組織線維化予防・治療に有用な化合物や物質をスクリーニングすることが可能ではないかとの仮説を立てて研究を開始することにした。



まず、胃腸の機能回復やイレウス・線維化狭窄の緩和に良く使われる薬であって、乾姜・人参・山椒の乾燥エキスや日局コウイによって構成されている大建中湯という漢方薬は、消化管運動促進や血流増加、ホルモン分泌促進などの効果が報告されている上、その薬効が即効性であることから、この漢方薬は消化管へ直接作用する可能性が強く示されている(非特許文献4)。そこで、大建中湯について粘膜上皮化に発現するこの筋線維芽細胞に対する直接作用を検討した。



この結果、大建中湯およびその構成薬である乾姜、人参、山椒エキスのエタノール抽出成分においては、TRPA1チャネルは筋線維芽細胞InMyoFib細胞に対し効果を有することが確認された。また、大建中湯や生姜、山椒の抽出成分はTRPA1を介するカルシウム流入を惹起することも確認された。



さらに、大建中湯によるTGF受容体下流の線維化シグナルに対するTRPA1チャネルの影響について検討した結果、大建中湯エキスの濃度に依存してTGF-β1(5 ng/ml, 24 hr)刺激下のSmad-2リン酸化レベルが有意に抑制されることも確認された(非特許文献4)。



ところで、自己免疫異常に起因する難治性疾患として、クローン病(CD)や潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患(IBD)がある。IBDは、若年で発症し頑固な下痢や便秘を繰り返す経過を辿ることから、長年に亘り生活の質を劣化させる難治性の疾患として問題になっていた。



このIBDの治療法として抗TNFα抗体療法が現在最も注目を浴びている。この抗TNF抗体療法は、IBDの炎症に対しては顕著な効果を奏するが、線維化による腸狭窄という大きな問題が解決されずに残されたままである。



そこで、クローン病患者の組織を生検して、非狭窄部位(non-stenosis)と狭窄部位(stenosis)におけるTRPA1およびその他の遺伝子のmRNA発現量をマイクロアレイ解析して比較したところ(図1)、線維化芽細胞や筋線維芽細胞が狭窄部に多く集積していて、それらの細胞の多くで見られるTRPA1、I型コラーゲン、α-SMA(平滑筋型アクチン)、N-CadherinのmRNA発現が線維化狭窄部位で著しく増加していることが確認された(図2)。



さらに、組織の線維化を評価するモデルとして非常に有用である細胞として、消化管筋線維芽細胞(InMyoFib)が知られている。この細胞は、TGF-β1で刺激すると、細胞が敷石状の形態から細長い線維状の形態に変化し(図3)、線維化マーカーの上昇が観察される(Kurahara, L.H., et al. Inflammatory Bowel Diseases, 21(3):496-506, 2015)。この細胞を用いてTGF-β1で刺激したところ、この細胞で最も多く発現するTRPチャネルがTRPA1チャネルであることがマイクロアレイ解析で示唆された(図4)。



上記知見から、本発明者らは、TRPA1チャネルが、組織の線維化を評価する1つの有力な指標となりえるとの前提のもとに、本発明を完成するに至った。

産業上の利用分野


本発明は、組織線維化スクリーニング方法および抗組織線維化薬剤ならびに機能性食品に関するものである。更に詳細には、本発明は、間葉系細胞TRPA1チャネルの活性化を介する組織線維化スクリーニング方法および抗組織線維化薬剤ならびに機能性食品に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
TRPA1チャネルを発現する間葉系細胞を用いてTRPA1チャネル活性化作用を有するTRPA1チャネル活性化物質をスクリーニングし、得られたTRPA1チャネル活性化物質を線維化サイトカインTGF-β1刺激下で組織線維化マーカーを抑制することにより抗組織線維化物質をスクリーニングすることからなる抗組織線維化物質のスクリーニング方法。

【請求項2】
請求項1に記載のスクリ-ニング方法であって、前記間葉系細胞が線維芽細胞または筋線維芽細胞であることを特徴とする抗組織線維化物質のスクリーニング方法。

【請求項3】
請求項1または2に記載のスクリ-ニング方法であって、前記間葉系細胞が消化器由来の間葉系細胞であることを特徴とする抗組織線維化物質のスクリーニング方法。

【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスクリ-ニング方法であって、前記TRPA1チャネル活性化物質が、TRPA1チャネルが活性化されるもしくは活性化している物質であることを特徴とする抗組織線維化物質のスクリーニング方法。

【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスクリ-ニング方法であって、前記TRPA1チャネル活性化物質が、TRPA1チャネルが活性化されるもしくは活性化している植物抽出物または化合物であることを特徴とする抗組織線維化物質のスクリーニング方法。

【請求項6】
請求項5に記載のスクリ-ニング方法であって、前記植物抽出物が、植物の水、アルコールまたはこれらの混合物による抽出物であることを特徴とする抗組織線維化物質のスクリーニング方法。

【請求項7】
請求項6に記載のスクリーニング方法であって、前記アルコールがエタノールであることを特徴とする抗組織線維化物質のスクリーニング方法。

【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスクリ-ニング方法であって、前記TRPA1チャネル活性化物質が、ローズマリー、セージ、メースまたは甘草の抽出物であることを特徴とする抗組織線維化物質のスクリーニング方法。

【請求項9】
ローズマリー、セージまたはマースの抽出物であって、該抽出物がTRPA1チャネル活性化作用を有すると共に、抗組織線維化作用を有する抽出物を主成分とすることを特徴とする抗組織線維化薬剤。

【請求項10】
請求項9に記載の抗組織線維化薬剤であって、前記抽出物がアルコール抽出物であることを特徴とする抗組織線維化薬剤。

【請求項11】
請求項9または10に記載の抗組織線維化薬剤であって、前記抽出物がエタノール抽出物であることを特徴とする抗組織線維化薬剤。

【請求項12】
ローズマリー、セージまたはマースの抽出物であって、該抽出物がTRPA1チャネル活性化作用を有すると共に、抗組織線維化作用を有する抽出物を主成分とすることを特徴とする抗組織線維化機能性食品。

【請求項13】
請求項12に記載の抗組織線維化機能性食品であって、前記抽出物がアルコール抽出物であることを特徴とする抗組織線維化機能性食品。

【請求項14】
請求項12または13に記載の抗組織線維化機能性食品であって、前記抽出物がエタノール抽出物であることを特徴とする抗組織線維化機能性食品。

【請求項15】
TRPA1チャネルを発現する間葉系細胞および線維化サイトカインTGF-βを含むことを特徴とする抗組織線維化測定用スクリーニングキット。

【請求項16】
請求項15に記載の抗組織線維化測定用スクリーニングキットであって、前記間葉系細胞が線維芽細胞又は筋線維芽細胞であることを特徴とする抗組織線維化測定用スクリーニングキット。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、「問合せ先」まで直接お問合せ下さい。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close