TOP > 国内特許検索 > 薄膜作製用スパッタ装置

薄膜作製用スパッタ装置 新技術説明会 実績あり

国内特許コード P160013063
整理番号 H18-095
掲載日 2016年6月29日
出願番号 特願2002-207263
公開番号 特開2004-052005
登録番号 特許第3936970号
出願日 平成14年7月16日(2002.7.16)
公開日 平成16年2月19日(2004.2.19)
登録日 平成19年4月6日(2007.4.6)
発明者
  • 諸橋 信一
出願人
  • 国立大学法人山口大学
発明の名称 薄膜作製用スパッタ装置 新技術説明会 実績あり
発明の概要 【課題】高速、且つ低温スパッタが可能な従来の対向ターゲット式スパッタ方法の長所を生かしながら、構造の小型化、隣接するターゲット汚染を防止し、しかもコスト的に有利にできる薄膜作製用スパッタ装置を提供する。
【解決手段】回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲット13を配置した多角柱型ターゲットホルダー11一対を対向して配置し、しかも、多角柱型ターゲットホルダー11のそれぞれの隣接するターゲット13の間に薄膜作製時のターゲット13の表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板14を設ける。
【選択図】    図1
従来技術、競合技術の概要


単層又は多層構造の薄膜からなる電子材料とその応用である電子デバイス作製においては、真空状態下での薄膜作製装置が重要である。乾式での薄膜作製方法には、大別して真空蒸着、スパッタ等の物理蒸着法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)の化学蒸着法等がある。なかでもスパッタは、基板材料の種類を問わずにどんな材質の膜でも有毒なガスを使用しないで安全に比較的簡単な装置で薄膜を堆積できることから、各方面において広く使用されている。



スパッタの原理は、真空チャンバー内でプラズマを発生させ、そのプラズマ中のイオンをターゲットに衝突させターゲット表面の構成原子や、分子をはじき飛ばして、基板上に堆積させて薄膜を作製するものである。



スパッタ装置には、衝撃イオン源であるイオン化ガス、又は放電プラズマの発生方法、印加電源の種類、電極の構造からイオンビームスパッタ方法、2極スパッタ方法、マグネトロンスパッタ方法、対向ターゲット式スパッタ方法等の各種の方法を用いたものがある。
イオンビームスパッタ方法を用いたものは、イオン室で形成した照射イオンをスパッタ室へ導出し、その照射イオンでターゲットをスパッタして薄膜を堆積させたもので、放電圧力が10-4Torr以下と低くてもスパッタが可能である。薄膜への放電ガスの混入が少なくスパッタ粒子のもつ運動エネルギーが大きいために、表面平滑性の優れた緻密な薄膜形成が可能となるが、薄膜堆積速度が小さいことが欠点であり、工業用の適用の難点となっている。



2極スパッタ方法を用いたものは、プラズマ内のイオンが陰極降下内で加速されてターゲットを衝撃してスパッタをおこし、対向した基板上にスパッタされた粒子を飛来させて薄膜を堆積させている。印加電源の違いにより直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。装置の構成は簡単ではあるが、次のような欠点がある。(1)プラズマの効率が悪く、プラズマを発生させるために導入するガス圧力を高くしなければならので、薄膜へのガス混入が大きくなる。(2)プラズマ効率が悪く、結果的に薄膜堆積速度が小さい。(3)イオンガスがターゲットを衝撃する時に生成される高エネルギーのγ電子(2次電子)が正対している基板を直撃するので、基板温度が堆積中に数百度にも上昇する。(4)ターゲットと基板が正対しているために、ターゲットを衝撃したイオンの一部が基板を直撃する(反跳イオン)ために基板へのダメージ及び多成分の薄膜での積層ずれが発生する。



2極スパッタ方法の欠点を解決するために、マグネトロンスパッタ方法が考案された。図13に示すその代表的なプレナーマグネトロンスパッタ方法を用いたものは、印加電源の違いにより直流と、交流スパッタがある。2極スパッタで述べた、ターゲットをイオンガスが直撃する時に生成される高エネルギーのγ電子は、基板直撃による基板温度上昇の大きな原因ではあるが、高エネルギーのためにガスをイオン化してプラズマ放電を維持する上で重要な役割をしている。そこで、ターゲット裏面に図のように永久磁石を備えるマグネトロンを配置してターゲット表面に平行な磁界(磁束線で示す)を作り、ターゲット表面から放出されたγ電子をターゲット表面近くに閉じ込めるようにして雰囲気ガスとの衝突回数の増加を図ることによって、次のような長所がある。(1)雰囲気ガスのイオン化を促進してプラズマ効率を高めることができる(高速スパッタ)。(2)磁束線が閉じた移動経路であるので、高エネルギーのγ電子の基板衝撃による基板温度上昇を抑制できる(低温スパッタ)。



このプレナーマグネトロンスパッタ方法は、マグネトロンの配置により2極スパッタ方法の欠点が大幅に改善され、構造が比較的簡単で、高堆積速度で薄膜形成可能なために、この方法による装置は広く用いられている。しかしながら、基板とターゲットが正対しているために、次のような欠点がある。(1)γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全には抑制することができない。(2)強磁性体をターゲットにした場合、マグネトロンの磁束線が強磁性体の部分を通り、γ電子を閉じ込めるのに十分な大きさの磁界がターゲット表面に印加できないため、強磁性体の低温スパッタ及び高速スパッタが困難である。



図14に示す対向ターゲット式スパッタ方法を用いたものは、マグネトロンスパッタ方法のもつ欠点を更に改善するために考案された。2つのターゲットが対向する位置にあり、それぞれのターゲット裏面には、永久磁石が互いに反対磁極をもつようにマグネトロンが配置されている。雰囲気ガスのイオン化ガスのターゲット衝撃によりターゲット表面から放出された高エネルギーのγ電子は、対向するターゲット間に閉じ込められた高密度プラズマを発生する。基板は、対向するターゲットの横のプラズマ外に置かれているので、γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全に抑制することができ、低温及び高速スパッタが可能となる。また、この対向ターゲット式スパッタ方法は、γ電子を閉じ込めることによる高密度プラズマにより、雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能で(真空度10-4Torr台)、薄膜への雰囲気ガス混入も小さく、強磁性体の低温及び高速スパッタも可能であるという長所を持っている。なお、対向ターゲット式スパッタ方法にも、印加電源の違いにより直流スパッタと、交流スパッタがある。



しかしながら、図13に示した、プレナーマグネトロンスパッタ方法は、ターゲット裏面に配置されたマグネトロンの発生する磁束線が閉じているのに対して、図14に示した、対向ターゲット式スパッタ方法の場合は、対向するターゲット間の向き合う面のマグネトロンの磁極は反対であるために、ここで発生する磁束線が閉じているが、マグネトロンのターゲット反対面は、閉じた磁束線を形成できず、磁束の漏洩が生じている。裏面で磁束が漏洩するということは、その分だけ対向するターゲット面間に磁束線が廻らないことを意味し、マグネトロンから発生する磁束を有効に対向するターゲット面に導いていないことになり効率のよいマグネトロンの使い方になっていない。



この影響を小さくするために、ターゲットと反対側の磁極後ろには、漏れ磁束を小さくするために鉄ヨークを設置する必要があり、装置の構造が大きくならざるを得ない欠点がある。通常、対向するターゲット間の磁束は、およそ150~250エルステッド(Oe)が必要であり、大きな磁束を発生させるためには、ネオジム磁石を用いているが、ターゲットと反対側の磁極での漏れ磁束の発生から、有効に磁束を導かないために磁石の厚さを厚くしなければならない。しかも、鉄ヨークの飽和磁化は有限であるので、鉄ヨークをあまり薄くすると磁気的に飽和してしまい、鉄ヨークの裏面に磁束を漏洩させてしまう。従って、漏洩磁束を小さくするための鉄ヨークの厚みを厚く設計しなければならない。図13で示した、プレナーマグネトロンスパッタ方法では、磁束がマグネトロンの表面及び裏面両方とも閉じているためにマグネトロンと鉄ヨークを合わせた厚みが30~50mm程度で済んでいる。これに対して、図14に示した、対向ターゲット式スパッタ方法では、マグネトロンと鉄ヨークを合わせた厚みが100mm程度になってしまう。更に、図15に示すように、この対向ターゲット式スパッタ方法で多層構造の薄膜を同一真空装置で作製する場合には、大きな構造の装置にしなくてはならず、対向ターゲット式スパッタを治める真空装置が大きくなるという問題が生じる。真空装置が大型になると、同じ到達真空度を作るためにはより排気速度の大きな真空ポンプを装置に設置しなければならず、コスト面からも問題となる。



また、従来の対向ターゲット式スパッタ方法は、スパッタ時に発生するγ電子がターゲット間を往復運動することで雰囲気ガスとの衝突確率が高くなり、結果的に高密度プラズマ化により雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能(真空度10-4Torr台)で、薄膜への雰囲気ガス混入も小さくできるという優れた長所をもっている。しかしながら、より高性能な電子デバイス作製のためには、雰囲気ガスの薄膜内への取り込み量を更に小さくすることが必要であり、そのためには真空度をより高く(10-5Torr台)して高密度プラズマ化を計り、スパッタすることが求められている。これらの薄膜作製用スパッタ装置に係る状況を鑑みて、高速及び低温スパッタが可能で、磁束漏洩を防止して、構造の小型化、マルチターゲット化、及びそれに伴う真空装置の小型化を計って、コスト的に有利とし、更に、より高密度プラズマ状態でのスパッタを実現し、多層薄膜が同じ位置にできる高真空、高速、低温スパッタが可能な薄膜作製用スパッタ装置を提供することを目的として特願2001-385645号が提出されている。



図16に示すように、この薄膜作製用スパッタ装置は、回転できる多角柱型回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱回転式対向ターゲットスパッタ方法からなり、その一例として、回転できるターゲットホルダーがボックス型になっており、それぞれの面に4枚のターゲットが設置されて、一対のボックス型回転式対向ターゲットホルダーが対向している。ボックス型ターゲットホルダーのそれぞれのターゲット裏面に配置されている磁石の作る磁束線が、ボックス型ターゲットホルダー内面において完全に閉じるように、磁石の極性が交互に変わるように配置してある。これによって、ターゲット面と反対面の磁石の作る磁束線がオープンにならず、交互に反対の磁極をもつ4つの磁石で閉じた磁束線を形成することが可能になっている。これまでの対向ターゲット式スパッタ方法では、漏洩磁束を防ぐために、磁石に鉄ヨーク貼り付けた厚みが100mm程度必要であったのに対して、この装置では、磁石の裏面で磁束線を閉じることができるので、原理的には磁束の漏洩を防ぐための鉄ヨークは必要なくなり、取り付けるとしても磁石に鉄ヨーク貼り付けた厚みは、30~50mm程度で、非常に小型化にすることができる。

産業上の利用分野


本発明は、エレクトロニクス、電子工業、時計工業、機械工業、光学工業等ににおける薄膜をスパッタで形成するスパッタ装置に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置し、しかも、前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの隣接する前記ターゲットの間に薄膜作製時の該ターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設けることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項2】
請求項1記載の薄膜作製用スパッタ装置において、前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている磁石の作る磁束線が前記多角柱型ターゲットホルダー内面で完全に閉じるように前記磁石の極性が交互に変わるように該磁石を設けることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項3】
請求項1又は2記載の薄膜作製用スパッタ装置において、一対の対向する前記多角柱型ターゲットホルダーの対向するそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている前記磁石の極性が反対で、しかも対向するそれぞれの前記ターゲット間で磁束線が閉じていることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、対向する前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれを回転して別の面を対向させ、対向するそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている前記磁石の極性が回転前と反対になり、一対の前記多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ回転することで前記多角柱型ターゲットホルダーについている前記ターゲットの数だけの多層薄膜が同じ場所で作製できることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、往復運動する誘発電子ビームを励起する一対の対向する前記多角柱型ターゲットホルダーの間に電子ビームガンで入射できる自発電子ビーム機構を設けた、自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを利用することを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項6】
回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上の前記モジュールを配設することを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項7】
回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上の前記モジュールを配設する複数の前記真空チャンバーを真空が共通にできる連結体を介して連結し、しかも、該連結体には開閉機構を有することを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項8】
請求項6又は7記載の薄膜作製用スパッタ装置において、それぞれの前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの隣接する前記ターゲットの間に薄膜作製時の該ターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設けることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている磁石の作る磁束線が前記多角柱型ターゲットホルダー内面で完全に閉じるように前記磁石の極性が交互に変わるように該磁石を設けることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、一対の対向する前記多角柱型ターゲットホルダーの対向するそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている前記磁石の極性が反対で、しかも対向するそれぞれの前記ターゲット間で磁束線が閉じていることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、対向する前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれを回転して別の面を対向させ、対向するそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている前記磁石の極性が回転前と反対になり、一対の前記多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ回転することで前記多角柱型ターゲットホルダーについている前記ターゲットの数だけの多層薄膜が同じ場所で作製できることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項12】
請求項6~11のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、薄膜を形成するための基板を多角柱型基板ホルダーカセットに最大で該多角柱型基板ホルダーカセットの多角柱の側面の数だけ装着し、対向する一対の前記多角柱型ターゲットホルダー間に垂直に設けたロードロック室から、前記多角柱型基板ホルダーカセットを対向する一対の前記多角柱型ターゲットホルダー間に挿入と、取り出しができる機構を備えることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。

【請求項13】
請求項6~12のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、往復運動する誘発電子ビームを励起する一対の対向する前記多角柱型ターゲットホルダーの間に電子ビームガンで入射できる自発電子ビーム機構を設けた、自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを利用することを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2002207263thum.jpg
出願権利状態 登録
山口TLOは平成11年11月に山口大学の教官50名の出資により設立された、リエゾン一体型のTLO活動会社です。山口大学を主とし、山口県内の大学・高専の研究成果をご紹介致します。特許の内容に興味を持たれた方は、下記までご連絡ください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close