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基底膜標品の作製方法

国内特許コード P03P000061
整理番号 Y00-P471
掲載日 2003年7月10日
出願番号 特願2001-292676
公開番号 特開2003-093053
登録番号 特許第4214287号
出願日 平成13年9月25日(2001.9.25)
公開日 平成15年4月2日(2003.4.2)
登録日 平成20年11月14日(2008.11.14)
発明者
  • 持立 克身
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 国立研究開発法人国立環境研究所
発明の名称 基底膜標品の作製方法
発明の概要 【課題】 基底膜形成能を有する同種又は異種の所定の細胞を播種・培養した場合に、細胞の形態、分化、増殖、運動、機能発現などを制御する機能を有する基底膜の標品を提供すること。
【解決手段】 基底膜を介して支持体上に接着している基底膜形成能を有する細胞を、0.1%トリトンX-100で処理し、細胞の脂質成分を溶解し、次いで、または同時に、50mMのNH3と蛋白分解酵素阻害剤の混合液を用いて細胞の基底膜表面に残存する蛋白質を溶解するとともに、細胞が溶解する際に遊離してくるリソゾーム中の蛋白分解酵素等の内因性プロテアーゼ活性による基底膜の分解を抑制し、基底膜形成能を有する同種又は異種の所望の細胞を播種・培養した場合に、細胞の形態、分化、増殖、運動、機能発現などを制御する機能を有する基底膜の標品を短時間に得る。
従来技術、競合技術の概要


動物の体の内外の表面を覆っている細胞層である表皮、角膜上皮、肺胞上皮、消化器系の粘膜上皮、腎臓子球体上皮、肝実質細胞等の上皮組織は、外界から異物(微生物、アレルゲン、化学物質等)が侵入するのを防いでいる。かかる上皮組織を構成する上皮細胞の外界面は上端面(apical)、内側下面は基底面(basal)と呼ばれ、かかる基底面直下には、蛋白質やプロテオグリカン等の細胞外基質(ECM)から成る(細胞を含まない)基底膜と呼ばれる50~100nmの薄膜の構造体が存在する。基底膜は、未成熟な上皮細胞が増殖し、成熟した細胞に分化して、本来の形態や、機能を発現するのに必須の構造体と考えられている。即ち、基底膜なしでは上皮組織は自分自身の維持や本来のパフォーマンスが達成できない。多層又は単層の上皮細胞層はバリアーとして外界からの異物の侵入を防いでいるが、基底膜自体も物理的なバリアーとして作用する。このように、上皮組織を構成する上皮細胞と基底膜が協働して、強固なバリアーを形成し、体内の生命活動を保護している。



上皮細胞の他、内皮細胞、筋細胞、脂肪細胞、シュワン細胞などの実質細胞と結合組織との界面に形成される細胞外基質の特異な膜状構造物である基底膜は、生体の各組織・臓器に普遍的に見い出される一方で、腎糸球体毛細血管ループや神経シナプス膜など高度に特化したものもある。したがって、細胞を間質に接着させるだけでなく、選択的な物質・細胞透過や細胞分化の誘導等の機能が明らかにされている。腎糸球体では、基底膜の陰性荷電が腎のろ過機能を担っているとみなされ、その陰性荷電は現在パールカンとよばれるヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)によることが古典的に知られている。HSPGは腎糸球体基底膜だけでなく、種々の基底膜に、IV型コラーゲン、ラミニン、エンタクチン等と同様に、その基本的構成分子としてひろく分布している。



細胞外マトリックス、特に基底膜は、上記のように個体の発生や分化等の生理現象だけでなく、癌の増殖転移や炎症などの病態形成にも深く関与していることが明らかとなりつつあり、その構成タンパク質の機能の解明が重要な課題となってきている。例えば、基底膜の主要糖タンパク質であるラミニンは、α、β、γの3種類のサブユニットからなる複合体で、15種類のアイソフォームが知られており、これらが組織特異的あるいは発生時の各段階で特異的に発現している。ラミニンは様々な生物活性を有し、20種類以上のラミニンレセプターが報告されている分子量90万の複雑な巨大分子である。



細胞が接着可能な薄い細胞外マトリックス層である基底膜の構成成分と上皮細胞との相互作用が、移動、増殖及び分化等の細胞機能に影響を及ぼしている(Crouch et al., Basement membrane. .In The Lung(ed .R. G. Crystal and J. B. West), pp53.1-53.23. Philadephia : Lippincott-Raven. 1996)。基底膜の主要成分としては、前記のように、ラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)及びエンタクチンが知られており(Curr. Opin. Cell Biol. 6, 674-681, 1994)、ラミニン及びIV型コラーゲンのアイソフォームを含む基底膜成分の合成には、間充織細胞が重要な役割を担っていると考えられている(Matrix Biol. 14, 209-211, 1994、J. Biol. Chem. 268, 26033-26036, 1993)が、上皮細胞の役割もまた、重要なものである。HSPGは、上皮細胞由来と考えられているが、ラミニン、IV型コラーゲン及びエンタクチンは、上皮細胞及び間充織細胞の双方によって、インビボで合成される(Development 120, 2003-2014, 1994、Gastroenterology 102, 1835-1845, 1992)。連続した緻密層(lamina densa)を示すインビトロでの上皮組織モデルを作製する試みが、今まで数多く行われてきた。腸(J. Cell Biol. 133, 417-430, 1996)及び皮膚(J. Invest. Dermatol. 105, 597-601, 1995、J. Invest. Dermatol. 109, 527-533, 1997、Dev. Dynam. 197, 255-267, 1993)等の組織モデルが研究されており、いくつかの間充織細胞由来基底膜成分が、基底膜形成に重要な役割を果たしていることも見い出されている。



従来から、上皮細胞を培養することにより基底膜を構築し、基底面直下に基底膜構造体が存する上皮組織を構築する幾つかの方法が報告されている。例えば、本発明者らは、肺胞上皮細胞と肺線維芽細胞との共培養によりインビトロで基底膜が形成されることを報告した(Cell Struc.Func., 22: 603-614, 1997)。すなわち、肺線維芽細胞をI型コラーゲンゲルに包埋した状態で順化培養すると、肺線維芽細胞によってコラーゲンゲルは収縮し堅さを増し、また分泌された細胞外基質が細胞周囲のコラーゲン線維にまとわりついて沈着し、その形成物はインビボにおける間質と類似することから擬似間質と呼ばれ、この擬似間質化したI型コラーゲン線維上で、II型肺胞上皮細胞株(SV40-T2)を14日間程度培養する(T2-Fgel)と、肺線維芽細胞が分泌する細胞外基質中のIV型コラーゲンやラミニン等の基底膜構成成分が培地中に拡散して、上記II型肺胞上皮細胞株の基底面に到達し、基底膜構築材料として使われる結果、基底膜構造体が形成されることを報告した。



また、希薄な中性コラーゲン溶液を、5%CO2中37℃でインキュベートし、コラーゲン線維を形成させた後、無菌状態の中で風を当てて乾燥させた風乾コラーゲン線維基質(fib)を、上記擬似間質の代替物として用い、上記肺胞上皮細胞と肺線維芽細胞との共培養の場合と同様にして、基底膜を形成することも報告されている(Eur. J. Cell Biol., 78: 867-875, 1999, J. Cell Sci., 113: 859-868, 2000)。この方法の場合、コラーゲン溶液の濃度が高いと、形成されたコラーゲン線維に隙間が少なく、あるいはなくなって、基底膜形成のため上皮細胞を長期間培養(10日~2週間)すると、細胞が剥がれて浮き上がることから(例:Becton Dickinson, Fibrillar collagen coat culture insert)、コラーゲン溶液濃度は、0.3~0.5mg/mlが最適であるとされている(Eur. J. Cell Biol., 78: 867-875, 1999, J. Cell Sci., 113: 859-868, 2000)。



線維芽細胞を包埋したコラーゲンマトリックスを使用する代わりに、マトリゲル(Matrigel;Becton Dickinsonの登録商標)を加えたコラーゲン線維基質上で、II型肺胞上皮細胞株(SV40-T2)を培養した。このときマトリゲルは、基底膜成分の外来性(exogenous)供給源として機能した。マトリゲルは、Engelbreth-Holm-Swarm腫瘍マトリックスから抽出された基底膜調製物であり(J. Exp. Med. 145, 204-220, 1977)、ECM合成に影響を及ぼす可能性のある種々のサイトカインの他に、ラミニン-1、エンタクチン、IV型コラーゲン、パールカンを含んでいる(Exp. Cell Res. 202, 1-8, 1992)。基底膜に取り込まれたマトリゲルの成分を追跡するために、マトリゲルをビオチンで標識し、基底膜成分であるラミニン、エンタクチン、IV型コラーゲン、パールカンの免疫蛍光染色と電子顕微鏡観察により、マトリゲル量に依存して基底膜形成が促進し、点状に分泌された基底膜マトリックスがシート状に沈着して基底膜が発達してゆく過程が観察された。その結果、肺胞上皮細胞の下方にて、安定化した外来性ラミニン-1及びエンタクチンが、インビトロでの上記上皮細胞による基底膜の完全なる発達に大きく関与していることが明らかになっている(J. Cell Sci., 113: 859-868, 2000)。

産業上の利用分野


本発明は、細胞の形態、分化、増殖、運動、機能発現などを制御する機能を持った細胞外マトリックスである基底膜の標品を作製する方法や、かかる作製方法により得られる基底膜標品に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
基底膜を介して支持体上に接着している基底膜形成能を有する細胞を、該細胞の脂質溶解能を有する界面活性剤とアルカリ溶液とプロテアーゼ阻害剤を添加した等張のリン酸緩衝液を用いて基底膜から除去することを特徴とする基底膜標品の作製方法。

【請求項2】
脂質溶解能を有する界面活性剤を用いて脱脂処理をした後、又は脱脂処理と同時にアルカリ溶液を用いて除タンパク・除核処理をすることを特徴とする請求項1記載の基底膜標品の作製方法。

【請求項3】
界面活性剤がトリトンX-100(Triton X-100)であることを特徴とする請求項1又は2記載の基底膜標品の作製方法。

【請求項4】
アルカリ溶液がpH9~10のアルカリ溶液であることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の基底膜標品の作製方法。

【請求項5】
基底膜が、線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することにより調製された基底膜であることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の基底膜標品の作製方法。

【請求項6】
基底膜が、基底膜形成能を有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局在化させることができるβ-D-グルコピラノース非還元末端又は2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース非還元末端を有する糖鎖を備えた支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することにより調製された基底膜であることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の基底膜標品の作製方法。

【請求項7】
請求項1~のいずれか記載の基底膜標品の作製方法により得られることを特徴とする基底膜標品。

【請求項8】
支持体から遊離状態にあることを特徴とする請求項記載の基底膜標品。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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