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抗酸化機能を有するエピジェネティクコントロールキャリアによる慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療

国内特許コード P160013223
整理番号 (S2015-0369-N0)
掲載日 2016年8月18日
出願番号 特願2016-001501
公開番号 特開2016-130238
出願日 平成28年1月7日(2016.1.7)
公開日 平成28年7月21日(2016.7.21)
優先権データ
  • 特願2015-001502 (2015.1.7) JP
発明者
  • 川上 浩良
  • 朝山 章一郎
  • 山口 翔平
  • 松帆 志幸
  • 浅羽 祐太郎
出願人
  • 公立大学法人首都大学東京
発明の名称 抗酸化機能を有するエピジェネティクコントロールキャリアによる慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療
発明の概要 【課題】活性酸素種(ROS)による酸化傷害とエピジェネティクな異常を同時に治療することが可能で、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に有用な新規治療剤の提供。
【解決手段】抗酸化剤と遺伝子を対象に共送達するための複合体であって、抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能なキャリア、抗酸化剤、及びプラスミドDNAを含む、前記複合体。前記キャリアはリポソーム、生分解性ポリマー、又は脂質コートされた生分解性ポリマーである事が好ましい。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


1960年代以降、ヒストンのアセチル化と緊密なクロマチン構造のリモデリングが、遺伝子誘導と関係していることが認識されてきたが、遺伝子が転写因子とヒストンアセチル化によって転写活性化される分子機序がよく理解されるようになったのは、つい最近のことである。遺伝子発現制御にはクロマチン構造の変化が重要であり、このようにクロマチンの構造変化により遺伝子発現の制御を行う機構はエピジェネティクス機構と呼ばれている。クロマチン構造は前述したヒストンアセチル化やDNA/ヒストンのメチル化などの後天的な化学修飾により変化し、この後天的修飾は様々な要因で起こり得るものである。



また、近年ではエピジェネティクな異常が疾患の発症、病理の悪化に関係することが報告されており、疾患治療においてはエピジェネティクな異常を正常化することを考慮に入れる必要がある。



一方、活性酸素種(ROS)は生体活動に必須なエネルギー代謝を行うミトコンドリアにおいて消費される酸素の0.4~4%から産生される。ROSにはスーパーオキシド(O2・)や、過酸化水素(H)、ペルオキシ亜硝酸イオン(ONOO)、そして非常に反応性の高いヒドロキラジカル(・OH)などが含まれ、これらのROSは、生体防御や細胞内シグナル伝達などに利用されており、生体内において重要な役割を担っているが、その一方では高い反応性によりDNAや脂質等の生体分子を酸化変性させ、様々な細胞障害を誘発させる原因となることが知られている。このように生体機能におけるROSは「両刃の刃」となっており、通常は、役割を終えたROSは、生体内に存在するROSを消去する抗酸化物質により速やかに還元消去される。しかしながら、過剰に生成したROSが生体恒常性を損なうとき、ROSは臓器レベルの障害を誘発し、動脈硬化・腎不全などの重篤な疾患を惹起する。



このように前述したエピジェネティクスと活性酸素種(ROS)はそれぞれ病理に関わっていることは明白であるが、近年ではこの2つが相互に関わっていることが報告され始めており、抗酸化とエピジェネティクな異常の改善を同時に行うことの有用性が示唆されている。



例えば、アルツハイマー病の原因の1つと考えられているアミロイドベータ(Aβ)は過酸化水素による酸化架橋により凝集し、病理進行に関わっていることが知られている。同時に過酸化水素がAβの前駆体の産生を担う遺伝子のプロモーター領域の低メチル化に寄与することでAβの産生増加が引き起こされることも報告されている。また、過剰な過酸化水素にさらされたヒト大腸がん細胞SNU-407において、がん抑制遺伝子であるRunt domain transcription factor 3(RUNX3)のプロモーター領域のメチル化が増大することによりがん抑制遺伝子がサイレンシングされ、ROSによる酸化傷害とともにエピジェネティクな機構を介して、大腸がんの進行に関わっている。そして慢性閉塞性肺疾患(COPD)においては、ONOOがヒストン脱アセチル化酵素(HDAC2)を直接ニトロ化、あるいはHなどのROSがPI3kσ-Akt過程を介して、ユビキチン化やリン酸化などの後天的修飾を与えることでプロテアソーム分解を促進させる。これによりHDAC2の発現および活性が低下し、結果、炎症性遺伝子の発現が増加し、慢性的な炎症反応となる(非特許文献1、2)。



このようにROSが直接的に酸化傷害を与えることで発病させるだけでなく、エピジェネティクな異常を引き起こすことで疾患をより促進させることが判明してきている。双方が影響し合って疾患を引き起こしているため、片方のみの治療では再度疾患に状態に陥ってしまう可能性が高く、ROSによる酸化傷害とエピジェネティクな異常を同時に治療することが根治治療には重要であると考えられる。

産業上の利用分野


本出願は、抗酸化剤と遺伝子を対象に共送達するための複合体に関する。当該複合体は、抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能なキャリア、抗酸化剤、およびプラスミドDNAを含む。本出願はまた、抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能な複合化剤に関する。本出願はさらに、当該複合体を含む医薬組成物に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
抗酸化剤と遺伝子を対象に共送達するための複合体であって、抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能なキャリア、抗酸化剤、およびプラスミドDNAを含む、前記複合体。

【請求項2】
抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能なキャリアが、リポソーム、生分解性ポリマーまたは脂質コートされた生分解性ポリマーである、請求項1に記載の複合体。

【請求項3】
リポソームがカチオン性リポソームであり、当該カチオン性リポソームは、以下:
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);
N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム(DOTMA);
1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);
1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP);
ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);
ジオクタデシル-ジメチル-アンモニウムクロリド(DODAC);
1,2-ジミリストイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE);
2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウム トリフルオロアセテート(DOSPA);
3β-N-(N’,N’-ジメチル-アミノエタン-カルバモイル-コレステロール)(DC-Chol);および
O,O’-ジテトラデカノイル-N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミン クロリド;
からなる群より選択される少なくとも1つのカチオン性脂質、および以下:
ジアシルホスファチジルコリン;
リゾホスファチジルコリン;
ジアシルホスファチジルグリセロール;
ジアシルホスファチジン酸;
ジアシルホスファチジルセリン;
ジアシルホスファチジルエタノールアミン;
スフィンゴミエリン;
セラミド;
ジアシルグリセロール;および
コレステロール;
からなる群より選択される少なくとも1つの非カチオン性脂質(ここで非カチオン性脂質に含まれるアシル基は、炭素数が12~20の飽和または不飽和アシル基である)、により構成される、請求項2に記載の複合体。

【請求項4】
生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)共重合体、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、およびキトサン、からなる群より選択される、請求項2に記載の複合体。

【請求項5】
脂質コートされた生分解性ポリマーが、カチオン性脂質でコートされた生分解性ポリマーであり、ここで当該カチオン性脂質は、以下:
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);
N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム(DOTMA);
1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);
1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP);
ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);
ジオクタデシル-ジメチル-アンモニウムクロリド(DODAC);
1,2-ジミリストイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE);
2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウム トリフルオロアセテート(DOSPA);
3β-N-(N’,N’-ジメチル-アミノエタン-カルバモイル-コレステロール)(DC-Chol);および
O,O’-ジテトラデカノイル-N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミン クロリド;
からなる群より選択され、
そしてここで当該生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)共重合体、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、およびキトサン、からなる群より選択される、
請求項2に記載の複合体。

【請求項6】
抗酸化剤が、ポルフィリン系抗酸化剤、フタロシアニン系抗酸化剤、アスコルビン酸、グルタチオン、尿酸、メラトニン、ウロビリノーゲン、トコフェロール類、トコトリエノール類、カロテノイド、キサントフィル類、ポリフェノール、フラボノイド類、からなる群より選択される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の複合体。

【請求項7】
抗酸化剤がポルフィリン系抗酸化剤であり、当該ポルフィリン系抗酸化剤は、
下記式(I)で表されるカチオン性金属ポルフィリン錯体:
【化1】


(式中、
Mは錯体を形成するための金属原子を示し、
Ar、Ar、Ar、およびAr、はそれぞれ独立して無置換のまたは置換基を有してもよい炭素環式または複素環式芳香族基を示し、そしてAr、Ar、Ar、およびAr、の少なくとも1つはカチオン性の基を有する芳香族基である);および
下記式(II)で表されるカチオン性金属ポルフィリンダイマー:
【化2】


(式中、
Mは錯体を形成するための金属原子を示し、
ArおよびAr’はピリジンを示し、ここでピリジンの1位はXに、4位がポルフィリンにそれぞれ結合しており、
Ar、Ar、およびAr、並びに、Ar’、Ar’、およびAr’、はそれぞれ独立して無置換のまたは置換基を有してもよい炭素環式または複素環式芳香族基を示し、
Xは、-CH-フェニル-CH-であるか、下記式(III)ないし(V)のいずれかで表される:
-C-(NH-CHCH- ・・・・ (III)
(式中、aは、1~10の整数を示す)
-C-(NH-CHCHCH)b-NH-CHCH- ・・・ (IV)
-C-(NH-CHCHCH)b-NH-CHCHCH- ・・・(V)
(式中、bは3~5の整数を示す))
からなる群より選択される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の複合体。

【請求項8】
プラスミドDNAが、以下:
エピジェネティクスの制御に関わる酵素またはタンパク質をコードするDNA;
エピジェネティクスの制御に関わる酵素またはタンパク質の発現を抑制するアンチセンス核酸または二本鎖RNAをコードするDNA;
エピジェネティクスの制御に関わる酵素またはタンパク質に結合する抗体またはそのフラグメントをコードするDNA;
からなる群より選択されるDNAを含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の複合体。

【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の複合体を含む、医薬組成物。

【請求項10】
COPDを治療するための医薬組成物であって、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の複合体を含み、ここでプラスミドDNAはヒストン脱アセチル化酵素2(HDAC2)をコードするプラスミドDNAである、前記医薬組成物。

【請求項11】
COPDを治療するための医薬組成物であって、抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能なキャリア、抗酸化剤、およびプラスミドDNAで構成される複合体を含み、
ここで、抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能なキャリアが、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド(DDAB)およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)で構成されるリポソームであり、
抗酸化剤が下記式(VI):
【化3】


で表されるカチオン性Mnポルフィリンダイマーであり、そして
プラスミドDNAが、HDAC2をコードするプラスミドDNAである、
前記医薬組成物。

【請求項12】
COPDを治療するための医薬組成物であって、抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能なキャリア、抗酸化剤、およびプラスミドDNAで構成される複合体を含み、
ここで、抗酸化剤と遺伝子の共送達が可能なキャリアが、1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)でコートされたポリ乳酸粒子であり、
抗酸化剤が下記式(VI):
【化4】


で表されるカチオン性Mnポルフィリンダイマーであり、当該抗酸化剤はポリ乳酸粒子注に存在し、
プラスミドDNAが、HDAC2をコードするプラスミドDNAであり、当該プラスミドDNAは、脂質でコートされたポリ乳酸粒子の表面に付着している、
前記医薬組成物。

【請求項13】
抗酸化剤およびプラスミドDNAを複合化するための複合化剤であって、カチオン性リポソームおよび生分解性ポリマーからなる群より選択され、
ここでカチオン性リポソームは、以下:
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);
N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム(DOTMA);
1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);
1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP);
ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);
ジオクタデシル-ジメチル-アンモニウムクロリド(DODAC);
1,2-ジミリストイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE);
2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウム トリフルオロアセテート(DOSPA);
3β-N-(N’,N’-ジメチル-アミノエタン-カルバモイル-コレステロール)(DC-Chol);および
O,O’-ジテトラデカノイル-N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミン クロリド;
からなる群より選択される少なくとも1つのカチオン性脂質、および以下:
ジアシルホスファチジルコリン;
リゾホスファチジルコリン;
ジアシルホスファチジルグリセロール;
ジアシルホスファチジン酸;
ジアシルホスファチジルセリン;
ジアシルホスファチジルエタノールアミン;
スフィンゴミエリン;
セラミド;
ジアシルグリセロール;および
コレステロール;
からなる群より選択される少なくとも1つの非カチオン性脂質(ここで非カチオン性脂質に含まれるアシル基は、炭素数が12~20の飽和または不飽和アシル基である)、により構成されるものであり、そして
生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)共重合体、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、およびキトサン、からなる群より選択される、
前記複合化剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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