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ナノゲル/エキソソーム複合体とDDS

国内特許コード P160013459
整理番号 (S2012-1290-N0)
掲載日 2016年11月4日
出願番号 特願2014-539733
出願日 平成25年9月30日(2013.9.30)
国際出願番号 JP2013076577
国際公開番号 WO2014054588
国際出願日 平成25年9月30日(2013.9.30)
国際公開日 平成26年4月10日(2014.4.10)
優先権データ
  • 特願2012-219155 (2012.10.1) JP
発明者
  • 秋吉 一成
  • 澤田 晋一
  • 珠玖 洋
  • 原田 直純
  • 瀬尾 尚宏
出願人
  • 国立大学法人京都大学
  • 国立大学法人三重大学
発明の名称 ナノゲル/エキソソーム複合体とDDS
発明の概要 本発明は、エキソソームを任意の細胞に導入する手段の提供を課題とする。
斯かる課題を解決する手段として、疎水化多糖ナノゲルとエキソソームから構成される、複合体を提供する。
従来技術、競合技術の概要


エキソソームは、細胞が分泌するエンドソーム由来の50~200nm程度の小胞であり、その存在は1980年代から知られていた。近年、このエキソソーム中にメッセンジャーRNA(mRNA)やマイクロRNA(miRNA)が含まれており、他の細胞に核酸やタンパク質を運ぶ運搬体として機能することが見いだされている。特定の細胞由来の細胞膜タンパク質や核酸を含むエキソソームが、長距離の細胞間コミュニケーション経路として、種々の生命現象に重要に関わっていることが明らかにされつつあり、医療やバイオへの応用研究が進められている。



生体内において細胞同士が離れた場所にある場合、細胞はタンパク質や低分子化合物等を介して情報のやりとりを行っていることが知られている。近年、新たな細胞間コミュニケーション手段として体液中に存在するRNAが注目を浴びている。古くから体液中にRNAが存在することは報告されていたが、その役割は長い間不明であった。また、体液中ではRNAが非常に不安定であることから、長距離の細胞間コミュニケーションに関与しているとは考えられていなかった。



最近になり、細胞から分泌されるエキソソーム内にmRNAやmiRNAが存在することが報告され、分泌型RNAという新たな細胞間コミュニケーション手段が明らかとなりつつある。エキソソームに内包され輸送されるRNAは主にmRNAとmiRNAであり、エキソソームに内包されているmRNAがエキソソームを受け取る側の細胞で翻訳されることが発見されている(非特許文献1:Valadi H et al. Nat Cell Biol 2007, 9: 654-659)。一方、エキソソーム由来miRNAの受け手側細胞での機能発現についてもいくつかの報告がされている。Pegtelらは、EBウイルス(Epstein-Barr virus)に感染したリンパ球から分泌されたエキソソームにはEBウイルス由来のmiRNAが存在することや、そのエキソソームによってmiRNAがEBウイルスに感染していない単核球由来樹状細胞内に運ばれ、標的遺伝子の発現を抑制することを明らかとしている(非特許文献2:Pegtel D M et al. Proc Natl Acad Sci USA 2010, 107: 6328-6333)。また、Kosakaらは、ある特定のmiRNAを過剰発現させた腎細胞株由来のエキソソームに目的のmiRNA が含まれているのを確認するとともに、受け手側の細胞内にmiRNAが入り標的遺伝子の発現を抑制することを報告している(非特許文献3:Kosaka N et al. J Biol Chem 2010, 285: 17442-17452)。



エキソソームと免疫に関する研究は数多く行われているが、その中でも、癌細胞と免疫細胞との間のエキソソームを介した相互作用について多くの知見が報告されている。癌細胞から分泌されるエキソソームには癌細胞特異的な抗原が含まれており、樹状細胞を介して抗原特異的傷害性T細胞を誘導する(非特許文献4:Thery C et al. Nat Rev Immunol 2009, 9: 581-593, 非特許文献5:Andre F et al. Lancet 2002, 360: 295-305)。特に癌抗原として癌細胞特異的な膜タンパク質やエンドソーム構成タンパク質が多く含まれており、このようなエキソソームが抗原提示細胞に取り込まれることにより抗腫瘍免疫作用が誘導される。また、癌細胞由来エキソソームは免疫促進作用だけでなく免疫抑制作用を示すことも明らかとなっている。例えば、癌細胞や癌患者の体液由来エキソソームによるT細胞のアポトーシス誘導や増殖抑制(非特許文献6:Andreola G et al. J Exp Med 2002, 195:1303-1316)、NK細胞やT細胞の細胞傷害活性の抑制(非特許文献7:Clayton A et al. Cancer Res 2007, 67:7458-7466等が報告されており、癌細胞から分泌されたエキソソームは様々な免疫抑制作用を示すことで、多面的に抗腫瘍免疫作用から癌細胞を守っているとも考えられる。



このようなエキソソームによる免疫制御機能が明らかになるにつれ、エキソソームによる新しい癌免疫療法の開発も進められつつある。癌抗原に感作させた樹状細胞から分泌されたエキソソームを用いることで抗腫瘍免疫作用を誘導できることが数多く報告され、現在、このタイプのエキソソームを利用した臨床試験も始まっている(非特許文献8:Tan A et al. Int J Nanomed 2010, 5: 889-900)。



エキソソームをドラッグデリバリーキャリアとして応用した例はまだそれほど多くはないが、エキソソームを分泌する側の細胞を適切に選択することにより、また、疾病特異的に発現している膜タンパク質等のリガンドをエンドソームや細胞膜に過剰発現させてエキソソームに移行させるにより、標的指向性を上昇させ、ドラッグキャリアとして利用することが試みられている。例えば、Zhangらは、マウスリンパ腫EL-4由来のエキソソームにがん細胞の増殖を抑制するクルクミンを含有させ、マウスの骨髄細胞に到達させることに成功している(非特許文献9:Sun D et al. Mol Ther 2010, 18:1606-1614)。細胞種によりエキソソームはレセプター/リガンド相互作用、マクロピノサイトーシス等の様々なエンドサイトーシスやファゴサイトーシスによって受け手側の細胞に取り込まれると報告されている(非特許文献10:Escrevent C et al. BMC cancer 2011 11:108-118)。



一方、Ervitiらは、siRNAを搭載したエキソソームをマウスの脳に送り込むことに成功している(非特許文献11)。脳にターゲティングするために、遺伝子工学的手法を用いてニューロン特異的ペプチド(RVGペプチド)を融合させたエキソソーム膜タンパク質(Lamp2b)を発現する樹状細胞を作製した。その細胞から回収したエキソソームに電気穿孔法を用いてsiRNAを内包させ、マウスに投与したところ、脳のニューロンやミクログリアなどにsiRNAが送達され、標的遺伝子がノックダウンされることを報告している。また、アルツハイマー病治療の標的遺伝子であるBACE1のノックダウンにも成功しており、新しい治療法として期待されている。



一方,我々はこれまでに、親水性の多糖に疎水性基を部分的に置換した疎水化多糖が、水中で20-30 nmの会合体微粒子(ナノゲル)を形成する事を見出している。ナノゲルはタンパク質のリフォールディングを助けるシャペロン機能を有し、さらには、カチオン性基を導入したナノゲルにおいては細胞内にタンパク質や核酸を導入し得る事が分かっている。カチオン性ナノゲルは導入したいタンパク質と混合するだけで、細胞に取り込まれ易いナノサイズの複合体(~50 nm)を自発的に形成し得ること、さらに細胞内でシャペロン機能によりタンパク質を効率よく放出しえることが他のキャリアにはない大きな特徴である。最近では、siRNA(非特許文献12:Toita S et al. Chem. Lett 2009 38:1114-1115)、プラスミドDNA(非特許文献13:Toita S et al. J Controlled Release 2011 155:54-59)のデリバリーとしてもカチオン性ナノゲルが有用であることを報告している。また、ナノゲルの癌ワクチンへの応用も進められている。



癌ワクチンによる癌免疫療法は、副作用が少ないこと、長期にわたり癌細胞の増殖、再発、転移の抑制が可能であることなど他の治療法にはない特長を有している。ワクチン療法では、癌細胞や感染細胞が特異的に発現する抗原タンパク質をマクロファージや樹状細胞に、いかに効率よくデリバリーするかが重要である。ナノゲルは抗原タンパク質を容易に内包することができ、50 nm以下の安定な複合体ナノ微粒子を形成した。例えば、癌遺伝子産物としてのerbB2抗原タンパク質を内包したCHPナノゲルを担癌マウスの皮下に投与すると、抗体を産生するヘルパーT細胞のみならず、抗腫瘍性のキラーT細胞が効率よく誘導されることが明らかになった(非特許文献14:Ikuta Y et al. Blood 2002 99:3717-3724)。2004年から臨床試験も行われその有効性が実証されている(非特許文献15:Uenaka A et al. Cancer Immunity 2007 7:9-19 非特許文献16:Kageyama S et al. Cancer Sci 2008 99:601-607)。食道がん抗原のNY-ESO-1タンパク質を内包したCHPナノゲルの臨床有用性も示唆されており、治験に進んでいる。また、最近、カチオン性ナノゲルの細胞親和性を利用した、粘膜ワクチンの開発も進めている。経鼻ワクチンは、抗原特異的免疫応答を全身組織に加え、粘膜組織にも誘導可能であることから、インフルエンザなどの呼吸器感染症に対する予防ワクチンとして非常に効果的とされている。一方で、粘膜組織は、通常は上皮層によって強固に覆われており、経鼻ワクチンの効果を最大限に期待するためには、上気道粘膜免疫システムへの効果的なワクチンデリバリー技術の開発が必要不可欠とされてきた。カチオン性のナノゲルにワクチン抗原を内包し、それを経鼻投与することで、感染すると神経麻痺による致死性の高いボツリヌス菌や破傷風菌などのワクチン抗原を、効果的に上気道粘膜免疫システムにデリバリーさせ、高いレベルの防御免疫応答を、アジュバント非存在下でも誘導できることに成功した(非特許文献17:Nochi T et al. Nat Mat 2010 9:572-578)。また、疎水化多糖に細胞親和性を付与するために、細胞接着シグナルとして知られているRGDペプチドを導入したRGD置換ナノゲルを開発し、癌細胞に効率よく取り込まれることを報告している(非特許文献18;A. Shimoda, S. Sawada, K. Akiyoshi, Cell specific peptide-conjugated polysaccharide nanogels for protein delivery, Macromol. Bioscience, 11, 882-888 (2011))。



また、水溶性多糖に疎水性分子を導入した疎水化多糖ナノゲルはリン脂質に分子膜からなるリポソームと相互作用し、リポソーム表面を疎水化多糖ナノゲルで被覆できることも報告されており(非特許文献19:Kang EC et al. J. Bioact Compat Polym 1997 12:14-26)、リポソーム表面の機能化への応用も進めている。



通常、特定の細胞から抽出精製したエキソソームは、特定の受け手細胞と相互作用して取り込まれることが明らかとなっているが、その受け手細胞以外の細胞とは相互作用しない。その為、本来の受け手細胞以外の任意の細胞にエキソソームを取り込ませる場合、従来は、目的の細胞が発現する細胞膜受容体に対する特異的なリガンドをエキソソーム表面に人為的に発現させることで、目的細胞とエキソソームの相互作用を実現させる戦略がとられてきた。あるリガンドをエキソソーム表面に発現させる技術としては、エキソソームに存在する膜タンパク質とリガンドの融合遺伝子を遺伝子工学的にエキソソーム産生細胞に導入する方法がほとんどである。その遺伝子工学操作の困難さや、産生細胞内部でのエキソソームへのリガンドの導入が不確実であること等から、エキソソームの任意の細胞への取り込み手法はいまだ確立されていない。



疎水化多糖ナノゲルは、例えば特許文献1に記載されている。

産業上の利用分野


[関連出願の相互参照]
本出願は、2012年10月1日に出願された、日本国特許出願第2012-219155号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。



本発明は、エキソソームを含む複合体とドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
疎水化多糖ナノゲルとエキソソームから構成される、複合体。

【請求項2】
疎水化多糖ナノゲルが、多糖部分及び疎水性部分を有している、請求項1に記載の複合体。

【請求項3】
疎水化多糖ナノゲルの多糖部分が、プルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、キシログルカン、水溶性セルロースからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の複合体。

【請求項4】
疎水性部分が、炭素数8~50の炭化水素基またはステリル基である、請求項2または3に記載の複合体。

【請求項5】
疎水性部分が、コレステリル基である、請求項2~4のいずれか1項に記載の複合体。

【請求項6】
疎水化多糖ナノゲルがカチオン性である、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体。

【請求項7】
疎水化多糖ナノゲルがカチオン性のコレステリル化プルランである、請求項6に記載の複合体。

【請求項8】
カチオン性基として、アミノ基を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合体。

【請求項9】
エキソソームが粒子径200ナノメートル未満の細胞外分泌小胞である請求項1~8のいずれかに記載の複合体。

【請求項10】
前記エキソソームが薬物またはsiRNAを含む、請求項1~8のいずれかに記載の複合体。

【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の複合体からなる物質導入用担体。

【請求項12】
請求項10に記載の複合体からなる薬物またはsiRNAの導入剤。

【請求項13】
細胞内に薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入したエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、請求項10に記載の複合体の製造方法。

【請求項14】
細胞内に薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入し、前記細胞を培養してエキソソームを得、得られたエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、請求項13に記載の複合体の製造方法。

【請求項15】
エキソソームにエレクトロポレーションにより薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入し、得られたエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、請求項13に記載の複合体の製造方法。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
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