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歯列矯正用ワイヤーおよびその製造方法 NEW

国内特許コード P160013501
整理番号 S2015-0810-N0
掲載日 2016年11月10日
出願番号 特願2015-057854
公開番号 特開2016-174781
出願日 平成27年3月20日(2015.3.20)
公開日 平成28年10月6日(2016.10.6)
発明者
  • 古賀 義之
  • 吉田 教明
  • 住 真由美
出願人
  • 国立大学法人 長崎大学
発明の名称 歯列矯正用ワイヤーおよびその製造方法 NEW
発明の概要 【課題】好ましい水平力を作用させながらも、好ましい指標M/Fの範囲を満たすことができる、新たな歯列矯正用ワイヤーとその製造方法を提供すること。
【解決手段】ループメカニクスを実施し得るように、本線部10とループ部20とを有する歯列矯正用ワイヤーにおいて、ループ部20の少なくとも先端側の部分の剛性を、本線部10の剛性よりも小さくする。これにより、安価な材料と単純な形状のループ部であっても、簡単な変形による活性化によって、好ましい水平力と指標M/Fが得られる。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


歯列を矯正する治療では、移動させるべき矯正対象の歯(以下、対象歯とも呼ぶ)と、固定源とすべき歯(以下、アンカー歯とも呼ぶ)とを、歯列矯正器具で連結し、該対象歯に特定方向の力を継続的に作用させ、それにより矯正対象歯の位置や姿勢を変化させることが行なわれている。



歯列矯正における代表的な方法の1つとしてマルチブラケット法が挙げられる。マルチブラケット法は、対象歯とアンカー歯のそれぞれの表面にブラケットを固定し、それらブラケット同士を種々のワイヤー(歯列弓に沿ってアーチ状に湾曲させたアーチワイヤーや、部分的な短いワイヤーなど)で連結し、それによって対象歯に意図する方向の力を作用させ、該歯を移動させる矯正法である。マルチブラケット法のなかでも、ループ部を設けたワイヤーを用いるループメカニクスと呼ばれる矯正法が代表的かつ有用なものとして挙げられる(非特許文献1、2)。
ループメカニクスは、図10(a)に例示するように、ワイヤー100の所定の部分をU字状や種々の形状へと屈曲させてループ部120とし(この段階でのループ部は永久変形である)、該ワイヤーを歯列の所定部位にブラケットを介して装着し、該ループ部をさらに弾性的に変形させることで、該ループ部の復元力を対象歯に作用させる矯正法である。図10(a)では、ループ部の変形後の状態を一点鎖線で示しているが、この弾性的な変形は、後述するとおり、平面的に広げるだけの変形ではなく、捩じりを伴う立体的な変形である。ループ部を弾性的に変形させることは「ループ部を活性化する」などとも呼ばれている。図10(a)に例示したループ部120は、半円状の湾曲部121と、2つの直線的な脚部122とからなる単純な湾曲の例であり、2つの直線的な脚部122が本線部に向かうにつれて互いに接近する形状からVループ(または、ティアドロップ(涙形)ループ)などと呼ばれている。



図10(b)は、図10(a)のワイヤーを上顎の歯列に沿って装着した場合の一例を示す図である。同図の例では、第一小臼歯の抜歯によって隙間が作られ、対象歯である犬歯T3をその隙間へ移動させるために、ワイヤー(アーチワイヤー)100がブラケットによって歯列に装着されている。中切歯T1、測切歯T2、犬歯T3、および、第二小臼歯T5には、該ワイヤー100の本線部110を保持するためのブラケットB100がそれぞれ固定され、第一大臼歯T6、および、第二大臼歯T7には、ブラケットの一種であるバッカルチューブB110、B120が固定されている。バッカルチューブは、ワイヤーを通す穴を持っており、該穴に通すことでワイヤーを臼歯に固定し得るように構成されている。
対象歯である犬歯T3の近傍にはループ部120が配置されており、該ループ部を活性化することで、復元力が犬歯T3に作用するようになっている。該ループ部に加えられる弾性的な変形は、次に説明するように立体的なものである。
先ず、ワイヤー100の本線部110は歯列弓に沿って湾曲しているので、該ワイヤーに引張り力を加えると、ループ部の2つの脚部のうち第二小臼歯T5側の脚部122bが後方(舌側)に引っ張られる(または、意図的に所定量だけ後方に引っ張ってもよい)。片側が後方へ引っ張られることにより、ループ部の先端の湾曲部121も、片側が後方に移動するように開かれかつ捩られることになる。その結果、犬歯T3のブラケットB100には、他方の脚部122bを通じて、開かれたループ部が閉じようとする復元力による後方への力と、湾曲部の捩りが戻ろうとする復元力による後方への力(力のモーメント)との合力が水平力として作用する。
一方、前記のようにループ部が後方に開かれると、犬歯側の脚部122aがレバーのように作用して、犬歯側の本線部を捩じる。その捩りの方向は、湾曲部の捩りの方向とは逆の方向である。



図11は、図10(b)に示すループメカニクスの施術例において、犬歯に作用する力と該犬歯の移動の様子を示した模式図であって、患者にとって左側の犬歯を左側から見ることで、本線部110の矩形の断面を見せている。図11(a)に示すように、犬歯などの前歯の近傍にループ部を配置する場合には、ループ部の活性化に起因する水平力F10が犬歯の歯冠のブラケットB100に作用する。しかし、そのような水平力F10の作用だけでは、歯は平行移動(歯体移動)せず、歯根に位置する抵抗中心200を中心とするモーメントM10によって、図11(a)に一点鎖線で示すように、歯は回転移動(傾斜移動)することになる。
抵抗中心200は、歯根の領域内に位置する力の作用点であり、歯に外力が作用したときに生じるモーメントの回転中心となる点である。該抵抗中心に直接的に水平力を加えれば、歯全体は回転することなく平行移動するが、実際には、歯根に直接的な水平力を加えることは困難である。モーメントM10は、(水平力F10)と(抵抗中心200から水平力F10までの距離d10)との積(F10×d10)で表される。
上記のようなモーメントM10による回転移動を補正し、歯全体を平行移動させるためには、歯冠と同様に歯根も移動させればよい。そのためには、図11(b)に示すように、ループ部の犬歯側の本線部に加えられる逆方向(図では時計回り)の捩じりによる復元力を適切な大きさにし、歯根を後方に適切量だけ回転移動させるモーメントM20をブラケットB100を通じて歯に作用させればよい。水平力F10による歯冠の後方移動量と歯根の後方移動量が互いに適切であれば、全体としては、図11(b)に一点鎖線で示すように歯は後方に平行移動することになる。



しかしながら、本発明者らの研究によれば、実際のループメカニクスの施術では、弾性的に広げられかつ湾曲部に捩りが生じたループ部によって作用する水平力Fは非常に大きいものとなり易く、よって、歯冠を後方に回転させるモーメントM10(=F10×d10)も非常に大きいものとなり易い。これに対して、犬歯側の本線部の逆方向の捩じりによるモーメントM20は、モーメントM10ほど大きくとることは困難である。よって、両者を調節して適切な平行移動を達成するには熟練した技術が必要となる。
また、歯を移動させるために歯に作用させる力が過度に大きいと、歯根吸収が生じ歯根が短くなる場合がある。歯根が短くなると、噛んだときの衝撃が大きくなり歯への負担が増大したり、歯周病になった際に進行し易く歯が動揺するというリスクが高くなる。よって、モーメントM20を大きくとることが可能であっても、そのような対応策は適切ではない。
また、水平力F10を小さくするために全体的により細いワイヤーを用いると、該水平力F10が小さくなるだけではなく、逆方向のモーメントM20も小さくなるので、適切な平行移動を得ることはできない。



これまでのループメカニクスの研究によれば、ループ部の復元力によって前歯や犬歯に作用させるべき後方への水平力F10は、約1.5N~約3Nが適切であるとされている。また、その場合に、平行移動を生じさせるために作用させるべき逆回転のモーメントM20は、該M20を前記水平力F10で除して表される指標M20/F10が8~10となるように設定することが適切であるとされている。以下、逆回転モーメントを水平力で除した値として表される前記の指標を、一般的に「指標M/F」とも標記し、本発明における力の作用の説明にも用いる。
指標M/Fが4を下回ると、歯は回転移動(後方傾斜)し、適切な平行移動が達成できない。
前記のような好ましい水平力F10(約1.5N~約3N)と、好ましい指標M/F(=8~10)を満たす逆方向モーメントM20とを作用させるには、単純な形状のループ部を用い曲げや捩じりの調整だけで達成することは困難である。そこで、従来では、複雑な形状のループ部を利用するか、または、超弾性線材などの全体が特殊な金属からなるワイヤーを利用していた。しかし、複雑な形状のループ部では、患者の口腔内に装着した際に患者が感じる違和感がより大きくなり、また、清掃性がより悪くなる(隅々まで行き届くような歯磨きが困難になる)といった問題があり、また、超弾性線材などの特殊な金属からなるワイヤーは高価であるといった問題がある。

産業上の利用分野


本発明は、ループメカニクスに用いるための歯列矯正用ワイヤーとその製造方法に関するものであり、より具体的には、ループ部に独自の構成が付与された歯列矯正用ワイヤーとその製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
ループメカニクスを実施し得るように、本線部とループ部とを有する歯列矯正用ワイヤーであって、
前記ループ部の少なくとも先端側の部分が、前記本線部の剛性よりも小さい剛性を有するものとなっている、
前記歯列矯正用ワイヤー。

【請求項2】
前記ループ部が、該ループ部の先端側に位置する湾曲部と、該ループ部の基端側に位置する2つの脚部とを有して構成され、該2つの脚部は、前記湾曲部の両端と前記本線部とをそれぞれ連絡する部分であり、
前記ループ部のうち、前記湾曲部の一部が、または、前記湾曲部の全部が、または、前記湾曲部の全部と前記脚部の先端側の部分が、前記本線部の断面積よりも小さい断面積を有するものとなっており、それにより、前記ループ部の先端側の部分が前記本線部の剛性よりも小さい剛性を有するものとなっている、
請求項1記載の歯列矯正用ワイヤー。

【請求項3】
当該歯列矯正用ワイヤーが、矩形の断面形状を有するワイヤーを原素材として用いてなるものであり、ワイヤーの4つの胴体側面のうちの1つの胴体側面が、装着すべき歯列の歯の表面と対面するように、前記本線部と前記ループとが形成されており、
前記ループ部のうち、前記湾曲部の一部の断面形状が、または、前記湾曲部の全部の断面形状が、または、前記湾曲部の全部と前記脚部の先端側の部分の断面形状が、前記本線部の断面形状に比べて、前記1つの胴体側面に含まれる辺の長さがより短い断面形状となっており、
それにより、前記ループ部の先端側の部分が、前記本線部の剛性よりも小さい剛性を有するものとなっている、
請求項2記載の歯列矯正用ワイヤー。

【請求項4】
当該歯列矯正用ワイヤーが、矩形の断面形状を有するワイヤーを原素材として用いてなるものであり、ワイヤーの4つの胴体側面のうちの1つの胴体側面が、装着すべき歯列の歯の表面と対面するように、前記本線部と前記ループとが形成されており、
前記ループ部のうち、前記湾曲部の一部の断面形状が、または、前記湾曲部の全部の断面形状が、または、前記湾曲部の全部と前記脚部の先端側の部分の断面形状が、前記本線部の断面形状に比べて、前記1つの胴体側面に隣接する胴体側面に含まれる辺の長さがより短い断面形状となっており、
それにより、前記ループ部の先端側の部分が、前記本線部の剛性よりも小さい剛性を有するものとなっている、
請求項2記載の歯列矯正用ワイヤー。

【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の歯列矯正用ワイヤーの製造方法であって、
下記(I)の工程、または、下記(II)の工程を有することを特徴とする、前記製造方法。
(I)ワイヤーを原素材として用い、該ワイヤーの所定の部分を屈曲させることによってループ部を形成し、残りの部分を本線部とする加工をし、
前記の加工よりも後に、前記ループ部の少なくとも先端側の部分の剛性を、前記本線部の剛性よりも小さくする加工を行う工程。
(II)ワイヤーを原素材として用い、該ワイヤーの全長のうち、ループ部とすべき区間中の少なくとも該ループ部の先端側の部分とすべき区間の剛性を、本線部とすべき残りの区間の剛性よりも小さくする加工をし、
前記の加工よりも後に、前記ループ部とすべき区間を屈曲させることによってループ部を形成し、残りの区間を本線部とし、それによって該ループ部の少なくとも先端側の部分の剛性を前記本線部の剛性よりも小さくする加工を行う工程。

【請求項6】
上記(I)の工程における、ループ部の少なくとも先端側の部分の剛性を本線部の剛性よりも小さくする加工が、その部分のワイヤーの断面積を切削によって小さくする加工であり、
上記(II)の工程における、ループ部とすべき区間中の少なくとも該ループ部の先端側の部分とすべき区間の剛性を、本線部とすべき残りの区間の剛性よりも小さくする加工が、その区間のワイヤーの断面積を、切削によって小さくする加工である、
請求項5記載の歯列矯正用ワイヤーの製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2015057854thum.jpg
出願権利状態 公開
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