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ビタミンE類の選択的な分離方法 UPDATE

国内特許コード P170013674
整理番号 (S2015-1490-N0)
掲載日 2017年2月1日
出願番号 特願2016-099720
公開番号 特開2016-216456
出願日 平成28年5月18日(2016.5.18)
公開日 平成28年12月22日(2016.12.22)
優先権データ
  • 特願2015-101002 (2015.5.18) JP
発明者
  • 北川 尚美
  • 廣森 浩祐
  • 鹿沼 光誠
  • 笹山 知嶺
出願人
  • 国立大学法人東北大学
発明の名称 ビタミンE類の選択的な分離方法 UPDATE
発明の概要 【課題】脱臭留出物等の油原料からトコトリエノール等のビタミンE類を分離回収する方法で得られるビタミンE類をリッチに含むビタミンE類濃縮液を対象とし、不純物として含まれる食品中での含有量が厳しく制限されている遊離脂肪酸のみを高度に分離除去して、高純度のビタミンE類を得るための、簡便、かつ、大型化や連続化が容易な高度精製技術・方法等を提供すること。
【解決手段】
ビタミンE類を含む油から得られたビタミンE類濃縮液から、不純物として含まれる遊離脂肪酸を分離除去する方法であって、
(1)該ビタミンE類濃縮液を弱塩基性陰イオン交換体と接触させ、
(2)該弱塩基性陰イオン交換体に該遊離脂肪酸を優先的に吸着させ、及び
(3)該ビタミンE類濃縮液から遊離脂肪酸を選択的に除去する、
ことを含む、前記方法。
【選択図】 図17
従来技術、競合技術の概要


ビタミンE類(トコトリエノールとトコフェロール)は、高い抗酸化活性を有する健康機能物質として注目されている。特に、トコトリエノールは、トコフェロールと基本構造が等しく側鎖に3つの二重結合を有するため、トコフェロールの40-60倍もの高い抗酸化活性を持つ(非特許文献1)。最近では、トコトリエノールの動脈硬化改善作用や抗ガン作用などの高い生理活性が報告されており(非特許文献2)、医薬品や食品分野での積極的な利用が期待されている。



しかし、表1に示すように、トコフェロールが大豆や菜種、ひまわり、コーンなど種々の植物油に広く含まれているのに対し、トコトリエノールはパームや米ぬかなど一部の植物油に極低濃度で含まれている。また、トコトリエノールは、側鎖の二重結合のために熱による酸化分解を生じやすく、容易に生理活性を失ってしまう。



【表1】




これらビタミンE類の分離回収のための原料には、食用油製造時の脱臭工程で排出する脱臭留出物(スカム油)が用いられる。表2に、トコフェロール含有量が高い大豆油由来の脱臭留出物、およびトコトリエノール含有量が高い米ぬか由来の脱臭留出物の一般的な組成を、各々の原油と比較して示す。スカム油のビタミンE類含有量はいずれも原油の数十倍と高くなっているものの、主成分は遊離脂肪酸類であり、その他にトリグリセリド類やステロール類、種々の炭化水素類も含まれている。そのため、どちらのビタミンE類を対象とした場合でも、原料から分離されたビタミンE類をリッチに含む溶液(「ビタミンE類濃縮液」又は「ビタミンE類粗画分」ともいう)を回収する工程と、回収液中のビタミンE類とその他の混入物を更に分離して、高純度のビタミンE類を得る工程が必要となる。後者の高度分離工程に関しては、種々のクロマト分離法が提案されており、必要に応じて、トコフェロールとトコトリエノールのα、β、γ、δ異性体まで分離することが可能である。



【表2】




ここで、回収されたビタミンE類濃縮液のビタミンE類濃度が低く遊離脂肪酸等のその他の混入物が多いと、多量の溶離液供給や溶離時間が必要となり、クロマト分離によるコストや環境への負荷が増大する。そのため、前者の原料からビタミンE類濃縮液を回収する工程で、いかにビタミンE類の分解損失を抑制し、かつ、濃度を高く、その他の不純物混入量を少なくできるかが重要なポイントとなる。不純物の中でも、特に、遊離脂肪酸は高濃度にあると生体の細胞膜を破壊する働きがあるため、食品中での含有量が厳しく制限されており、その除去は必須である。この回収工程に関しては、これまでトコフェロールを対象として様々な検討が行われてきた。大半が原料の分子蒸留を行う手法であり、熱による分解損失を低減するための操作条件の緩和や、不純物混入量を低減するための付加的な操作(蒸留性状が近い遊離脂肪酸を除去するための工程や、分離性状が近いステロールを除去するための工程)の検討が行われ、既に工業化に至っている。しかし、トコトリエノールを含む米ぬかやパーム由来の脱臭留出物に対して分子蒸留を行う手法を適用すると、原料中の含有量自体が低いことに加え、蒸留による熱分解損失が大きいため、回収液のトコトリエノール濃度も純度も非常に低くなる。従って、後段のクロマト分離の負荷が大きく量産困難のため、極めて高価となり、市販品の提供には至っていない(特開平8-100131、特許公表平10-508605、特開2002-194381、特開2002-3488、特開2003-171376、特開2004-305155、特開2005-536191、特開2007-521382、特開2007-176801)。



一方、トコトリエノールを含むパーム由来の脱臭留出物に対して、分子蒸留を行わない温和な条件での物理的な吸脱着によるビタミンE類の回収法が検討されている。吸着剤としては、酸化アルミニウムや多孔性高分子、シリカゲルなどが用いられており、シリカゲルを用いた場合にビタミンE類の回収率が高いことが示されている。この手法では、蒸留による熱分解損失を回避できるものの、吸着性状が近い遊離脂肪酸の除去工程と分離性状が近いステロールの除去工程が依然として必要で、これらの工程でトコトリエノールが損失するため、回収率に関しては改善がない。



このように、高機能かつ高付加価値を有するトコトリエノールを天然油から効率よく、安定かつ大量に回収できる技術はなく、産業化の大きな障害となっている。即ち、従来技術の問題点は、1)極端な温度条件によりトコトリエノールが変性・劣化する、2)トコトリエノールを選択的に回収することができず分離性状が近い種々の不純物が混入する(純度が低い)、3)分子蒸留プロセスの機器およびランニングコストが高い、4)選択的な分離法がないためトコトリエノールが濃縮されたスカム油(トコトリエノール含有量2wt%程度)を原料とせざるを得ず、原料が制限されている、というものである。



一方、本発明者等は、陰イオン交換樹脂を不均相固体触媒として用いる独自発想で、比較的低温(50℃)でトリグリセリドのエステル交換を行う脂肪酸エステル連続合成技術を世界に先駆け開発している(非特許文献3、特許文献1、特許文献2)。更に、このような脂肪酸エステル連続合成に使用する陰イオン交換樹脂の触媒活性を弱酸溶液で洗浄することによって再生する方法も提供した(特許文献3)。尚、特許文献1及び2には、エステル交換反応と並行して脂肪酸残基の樹脂への吸着が生じるため、これを脱着させるために酸水溶液での洗浄が必要である旨記載されている。又、特許文献3には、弱酸溶液で洗浄する目的として、エステル交換活性劣化の原因となる樹脂に吸着したオレイン酸残基などの油分の除去が挙げられている。しかしながら、これら特許文献には、陰イオン交換樹脂によるビタミンE類の分離回収に関しては何ら記載されていない。



更に、本発明者等は、油からのトコトリエノールとバイオディーゼル燃料の同時生産方法も開発した(特許文献4)。この方法では、分子蒸留工程を必要としないので、室温等の穏和な操作条件によって、トコトリエノール等ビタミンE類の劣化防止が可能となった。



一方、従来の技術では、高純度ビタミンE類を得るための後者の高度分離工程で、回収されたビタミンE類濃縮液中に残存する遊離脂肪酸類は従来の擬似移動層クロマト分離によって除去されていた。しかしながら、クロマト精製では、多量の溶離液が必要、大型化や連続化が困難、といった問題がある。



これまでに、遊離脂肪酸類の除去技術は、前述の食用油製造時の脱酸工程で粗油中から遊離脂肪酸類を除去することを目的として研究されてきた(非特許文献4~7)。主に、各成分の沸点の違いを利用する蒸留による物理的分離法と、アルカリとの中和反応で固体化させて濾過除去する化学的分離法がある。しかし、これらの技術を、前述のビタミンE類濃縮液から遊離脂肪酸類を除去するために用いたとしても、いずれの手法も操作条件が高温であるためビタミンE類の分解損失が大きいこと、また、ビタミンE類と遊離脂肪酸類の蒸留性状が近く選択性が低い、あるいは、中和反応による固体化の際にビタミンE類が混入するため収率低下が大きい等の問題点がある。



又、特許文献5には、残留農薬分析や環境ホルモンなどの分析対象物質(試料)中に、極めて微量(例えば、100ppm)で含まれるオレイン酸等の脂肪酸をγ―アルミナに吸着させることにより除去する方法が記載されている。

産業上の利用分野


本発明は、油、特に、パーム油や米ぬか油等の天然油からトコトリエノール等のビタミンE類を分解損失なく、かつ、選択的に分離回収する方法、特に、原料から分離されたビタミンE類をリッチに含む溶液(「ビタミンE類濃縮液」又は「ビタミンE類粗画分」ともいう)から遊離脂肪酸を選択的に除去し、ビタミンE類を高度分離する方法、及び、係る方法によって高純度のビタミンE類を含む組成物を製造する方法等に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ビタミンE類を含む油から得られたビタミンE類濃縮液から、不純物として含まれる遊離脂肪酸を分離除去する方法であって、
(1)該ビタミンE類濃縮液を弱塩基性陰イオン交換体と接触させ、
(2)該弱塩基性陰イオン交換体に該遊離脂肪酸を優先的に吸着させ、及び
(3)該ビタミンE類濃縮液から遊離脂肪酸を選択的に除去する、
ことを含む、前記方法。

【請求項2】
弱塩基性陰イオン交換体として、官能基のpKaが7~9を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いる、請求項1記載の方法。

【請求項3】
遊離脂肪酸として、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選択される一つ又はそれ以上の有機酸が含まれる、請求項1又は2記載の方法。

【請求項4】
油として脱臭留出物(スカム油)を使用する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。

【請求項5】
該ビタミンE類濃縮液にステロールやスクアレン、酸及び/又はアルコールが含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。

【請求項6】
更に、油に含まれるビタミンE類を強塩基性陰イオン交換体に吸着及び分離させ、その後、該強塩基性陰イオン交換体から脱離及び回収することにより、ビタミンE類を含む油からビタミンE類濃縮液を得ることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。

【請求項7】
強塩基性陰イオン交換体として、官能基のpKa>11を有する強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる、請求項6記載の方法。

【請求項8】
油に含まれるビタミンE類を強塩基性陰イオン交換体に吸着及び分離させる前に、強酸性陽イオン交換体により油に含まれる遊離脂肪酸のエステル化を行う、請求項6又は7に記載の方法。

【請求項9】
温度30~60℃で行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。

【請求項10】
強酸性陽イオン交換体、強塩基性陰イオン交換体、及び/又は弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填した反応器を用いて、各反応を連続的に行う請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。

【請求項11】
ビタミンE類濃縮液を線速度1.1cm/min以下で供給する、請求項10に記載の方法。

【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の方法によって、高純度のビタミンE類を含む組成物を製造する方法。
国際特許分類(IPC)
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