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自己組織化膜形成材料として有用なトリプチセン誘導体、その製造方法、それを用いた膜、及びその製造方法

国内特許コード P170013705
整理番号 (E114P03)
掲載日 2017年2月7日
出願番号 特願2014-557181
出願日 平成25年8月21日(2013.8.21)
国際出願番号 JP2013004952
国際公開番号 WO2014111980
国際出願日 平成25年8月21日(2013.8.21)
国際公開日 平成26年7月24日(2014.7.24)
優先権データ
  • 特願2013-005126 (2013.1.16) JP
発明者
  • 福島 孝典
  • 庄子 良晃
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 自己組織化膜形成材料として有用なトリプチセン誘導体、その製造方法、それを用いた膜、及びその製造方法
発明の概要 本発明は、自己組織化膜、特に自己組織化単分子膜の材料物質として有用な一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及びそれを製造するための原料となる一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、並びにそれらの製造法を提供する。
また、本発明は、一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる膜形成材料、それを用いた自己組織化膜、当該膜を表面に有する固体基板、及び当該膜の製造方法を提供する。
本発明は、基板の材質に依存しない自己組織的な膜を形成することができる下記の一般式[I]、
(式中、Xは酸素原子等のリンカー基であり、Rは長鎖の基であり、Zは末端の水素原子又は各種の官能基であり、Rは水素原子又は各種の置換基である。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及び当該ヤヌス型トリプチセン誘導体を製造するための中間体である一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体に関する。


従来技術、競合技術の概要


自己組織化単分子膜とは、固体基板の表面に吸着又は化学結合し、分子間の相互作用により高い配向性で単分子の層(膜)として形成されたものとされている。なお、当該自己組織化単分子膜は、自己集合単分子膜とも、自己集積化単分子膜ともいわれているが、本明細書では自己組織化単分子膜、又は単にSAM膜という。
SAM膜は、ガラス基板上に有機シラン化合物を用いて形成されたことが報告され(非特許文献1参照)、また、金基板上に有機イオウ化合物を用いて形成されたことが報告されて(非特許文献2参照)から、急速に発展してきた。
SAM膜は、LB(Langmuir-Blodgett)膜よりも安定であり、気相反応によっても形成させることができ、その応用範囲は広範になってきている。また、SAM膜の膜厚は分子の大きさ(長さ)と基板との傾斜角で決定され、1nm程度の分子レベルの膜を精密にかつ簡便に製造することができる。膜厚は、一般的には、アルキル鎖の1つのメチレン単位により約0.2nmとなり、アルキル鎖の長さを調節することにより、所望の膜厚の単分子膜を正確に製造することができる。
SAM膜の形成により、固体基板の表面の特性を改質することができる。例えば、有機電界効果型トランジスタ(有機FET)では、多くの場合に絶縁層として酸化ケイ素が用いられているが、当該酸化ケイ素の表面にオクタデシルトリクロロシラン(OTS)などの有機シラン化合物によるSAM膜を形成させることにより、その表面を撥水性にすることにより、隣接する(有機)半導体の結晶性を向上させ電荷移動度を改善できるとされている。このように、固体基板の表面にSAM膜を形成させることにより、固体基板表面の親水性や疎水性を制御することができる。



また、SAM膜を形成する分子の一方に機能性官能基を結合させることにより、固体基板の表面に特定の機能を付与することもできる。例えば、電子移動・酸化還元反応、触媒作用、光誘起電子移動、電気化学的発光、イオン・分子の認識、バイオセンサ、バイオ分子デバイス、太陽光発電、などの様々な機能をSAM膜の形成により固体基板の表面に付与することが可能となり、これらの分野での応用が期待されている。
例えば、アルデヒド部分を有する糖や、カルボキシル基を有する化合物を固定するために末端基としてアミノ基を有するアルキレンチオール化合物を材料としたSAM膜の形成(特許文献1参照)、末端基にシアノアリール基などの電子受容性官能基を有するアルキレンチオール化合物などを材料としたSAM膜の形成(特許文献2参照)、末端基にポリフェニレン基を有するアルキレンチオール化合物などを材料とした紫外線耐性を有するSAM膜の形成(特許文献3参照)、ビス(アダマンチルメチル)ジスルフィドを用いた剛直なアダマンタン表面膜構造を有するSAM膜の形成(特許文献4参照)、アルキレン鎖の途中に比較的長波長の光で感光する官能基を導入し、長波長の光でパターン化が可能となるリソグラフィー用のSAM膜の形成(特許文献5参照)、ピロール環拡張ポルフィリンとフラーレンを共有結合した化合物を用いた太陽電池及び光電荷分離素子用のSAM膜の形成(特許文献6参照)などが報告されている。



一方、トリプチセン誘導体をSAM膜の形成材料として用いた報告は見あたらないが、トリプチセンのポリマー又はコポリマーからなる有機EL材料(特許文献7参照)、ポリイミド樹脂やポリアミド樹脂の原料となるトリプチセンジアミンを製造する方法(特許文献8参照)、トリプチセンをさらに連結させた「イプチセン類」(iptycenes)と総称される化合物を用いた液晶高分子組成物(特許文献9参照)、トリプチセントリアミン類を反応させて得られるポリアミド酸、これを加熱して得られるポリイミド樹脂、及びこれを用いた光学部品(特許文献10参照)、ナノフィルムの材料となる大環状モジュールの成分としてのトリプチセン環の使用(特許文献11参照)、酵素を用いたトリプチセン誘導体の光学分割法(特許文献12参照)、三重結合又は二重結合を複数個有するトリプチセン誘導体を重合単位として重合した重合体を含有する絶縁膜及び電子デバイス(特許文献13参照)、少なくとも1つの酸解離性溶解抑止基を有するフォトレジスト用のトリプチセン誘導体(特許文献14参照)、トリプチセン-1,4-ジイル基を含む化合物を用いた液晶高分子組成物(特許文献15参照)などが報告されている。
また、1個、2個、5個、又は6個の長鎖アルコキシ基で置換されたトリプチセン誘導体が規則的に整列しスメクチック液晶を形成することが報告されている(非特許文献3参照)が、3つの置換基が同じ方向に規則的に整列することまでは開示されていないし、SAM膜形成材料として適していることも開示されていない。

産業上の利用分野


本発明は、自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayers)の形成材料として有用なトリプチセン誘導体、及びそれを製造するための中間体に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
次の一般式[I]
【化1】


(式中、3つのRは同じ基であって、Rは、炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は1つ又は2つ以上の置換基を有してもよく、また、当該炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す。)で置換されていてもよく、
3つのRは、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、かつ基-X-R-Zとは異なる基であって、Rは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルチオ基、ホルミル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、
3つのXは同じ基であって、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基を表し、
3つのZは同じ基であって、Zは、水素原子、固体基板の表面に結合若しくは吸着し得る基;又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、リン原子、ハロゲン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~15個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団からなる末端基を表す。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項2】
一般式[I]におけるXが、-CH-、-CH=CH-、-O-、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)で表される2価の基である、請求項1に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項3】
一般式[I]におけるRが、炭素数2から30のアルキレン基、炭素数2から30のアルケニレン基、炭素数2から30のアルキニレン基、炭素数6から30のアリール環を含有してなる炭素数6から60の2価のアリーレン基である、請求項1又は2に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項4】
一般式[I]におけるZが、水素原子、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、水酸基、-COOR(ここで、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を表す。)、-N(R(ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表す。)、又は、-P(=O)(OR15(ここで、R15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。)である、請求項1から3のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項5】
一般式[I]におけるRが、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基である、請求項1から4のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体が、自己組織的に整列してなる膜。

【請求項7】
膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、請求項6に記載の膜。

【請求項8】
膜が、多層膜である、請求項6又は7に記載の膜。

【請求項9】
膜が、単分子膜である、請求項6又は7に記載の膜。

【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載の膜を固体基板の表面に有する構造体。

【請求項11】
構造体が、電子デバイスの一部を形成するものである、請求項10に記載の構造体。

【請求項12】
電子デバイスが、薄膜トランジスター(TFT)である、請求項11に記載の構造体。

【請求項13】
請求項1から5のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解し、当該溶液を固体基板の表面に塗布するか又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥してなる、ヤヌス型トリプチセン誘導体の膜を製造する方法。

【請求項14】
さらに、乾燥した膜をアニーリングしてなる、請求項13に記載の製造方法。

【請求項15】
溶媒が、極性溶媒である、請求項13又は14に記載の製造方法。

【請求項16】
膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、請求項13から15のいずれかに記載の製造方法。

【請求項17】
膜が、多層膜である、請求項13から16のいずれかに記載の製造方法。

【請求項18】
膜が、単分子膜である、請求項13から16のいずれかに記載の製造方法。

【請求項19】
請求項1から5のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解し、当該溶液を固体基板の表面に塗布するか又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥してなる、固体基板の表面に前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜が形成された構造体を製造する方法。

【請求項20】
次の一般式[II]
【化2】


(式中、3つのXは同じ基であって、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基を表し、
3つのRは同じ基であって、Rは、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、又はそれぞれのアルキル基が炭素数1~5のアルキル基であって同一若しくは異なるアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基を表し、
3つのRは、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、かつ基-X-Rとは異なる基であって、Rは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルチオ基、ホルミル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項21】
一般式[II]におけるXが、-CH-;-O-;-S-;-SO-;-SO-;-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CO-;-OCO-;-CONR61-(ここで、R61は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。);又は、-NR62CO-(ここで、R62は、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基を表す。);である、請求項20に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項22】
一般式[II]におけるXが、-CH-、-CO-、-O-、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)で表される2価の基である、請求項21に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項23】
一般式[II]におけるRが、水素原子、アルコキシアルキル基、又はトリアルキルシリル基である、請求項20から22のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項24】
一般式[II]におけるRが、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基である、請求項20から23のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。

【請求項25】
トリヒドロキシトリプチセン混合物を溶媒に溶解して溶液とし、当該溶液から1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを結晶化させて、これを分離することからなる1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを製造する方法。

【請求項26】
トリヒドロキシトリプチセン混合物が、1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンと1,8,16-トリヒドロキシトリプチセンの混合物である、請求項25に記載の方法。

【請求項27】
トリヒドロキシトリプチセン混合物が、トリアルコキシトリプチセン混合物を加水分解して製造されたものである、請求項25又は26に記載の方法。

【請求項28】
トリアルコキシトリプチセン混合物が、1,8-ジアルコキシアントラセンと1-アルコキシ-6-トリアルキルシリル-フェノール又はその誘導体とを縮合剤の存在下で反応させて製造されたものである、請求項27に記載の方法。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
参考情報 (研究プロジェクト等) ERATO 染谷生体調和エレクトロニクス 領域
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