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アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療剤およびアルツハイマー病治療薬、ならびにこれらに関連する治療方法および病態解析方法 NEW

国内特許コード P170013786
整理番号 (S2013-0871-N0)
掲載日 2017年3月16日
出願番号 特願2015-512477
出願日 平成26年4月15日(2014.4.15)
国際出願番号 JP2014060665
国際公開番号 WO2014171434
国際出願日 平成26年4月15日(2014.4.15)
国際公開日 平成26年10月23日(2014.10.23)
優先権データ
  • 特願2013-088319 (2013.4.19) JP
発明者
  • 井上 剛
  • 鈴木 利治
  • 伴 沙緒里
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
  • 国立大学法人北海道大学
発明の名称 アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療剤およびアルツハイマー病治療薬、ならびにこれらに関連する治療方法および病態解析方法 NEW
発明の概要 本発明は、アミロイドβ蛋白質を作用機序とするが、従来の作用機序とは異なる抗アルツハイマー剤を提供することを課題とする。本発明に係るアルツハイマー病治療薬は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはこれに類するペプチド、特に配列番号1の部分配列である配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むペプチドを含有するアミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療剤、および当該治療剤を含有することを特徴とする。
VLSSQQFLHRGHQPPPEMAGHSLASSHRNSMIPSAAT (配列番号1)
HRGHQPPPEMA (配列番号2)
従来技術、競合技術の概要


アルツハイマー病は、認知機能低下(記憶障害など)を主症状とする神経疾患である。特に高齢者で好発するにも関わらず、有効な治療薬が存在せず、高齢化社会を迎えている先進国では大きな問題となっている。アルツハイマー病患者の死後脳では老人斑が観察され、これは「アミロイドβ蛋白質」の凝集体であることが知られている。そして、このアミロイドβ蛋白質がアルツハイマー病の主原因であることは、数多くの研究により広く受け入れられている。



アミロイドβ蛋白質は、その前駆体である「アミロイド前駆体蛋白質」から生成される。アミロイド前駆体蛋白質とは、神経細胞膜上に存在する膜蛋白質である。通常の脳では、その細胞外ドメインをαセクレターゼ、次に細胞膜内ドメインをγセクレターゼで切断されることにより、細胞外にp3と呼ばれるペプチドが産生・遊離される。これは「非アミロイド生成経路」として知られ、アミロイドβ蛋白質は生成されない(非特許文献1)。通常の脳でも、細胞外ドメインは数%ではあるがβセクレターゼによる切断を受け、細胞外にアミロイドβ蛋白質が分泌されている。しかし、アルツハイマー病になる脳では、このアミロイドβ蛋白質の産生量が増加するか、より凝集性の高いアミロイドβ蛋白質分子種が生成されるようになると考えられている。このアミロイドβ蛋白質の凝集する性質が、最終的にアルツハイマー病患者の老人斑(アミロイド凝集体)を形成し、脳内沈着として観察される。



切りだされたアミロイドβ蛋白質は、次第に凝集し、最終的に老人斑(アミロイド凝集体)が形成されるが、その凝集過程の「オリゴマー体(アミロイドβ蛋白質が数個会合したもの)」に、強い神経毒性があることが分かっている。このアミロイドβ蛋白質オリゴマー体は、記憶・学習に必須の神経現象であるシナプス可塑性を阻害することが、in vitro, in vivo 両方で報告されている(非特許文献2,3)。また、このオリゴマー体をマウス脳内に投与すると、記憶・学習能力が失われることも報告されている(非特許文献4,5)。最近の研究により、このオリゴマー体に長期間暴露されると、神経細胞死などが起きることも報告されており(非特許文献6)、アルツハイマー病発症の原因物質として注目されている。



このように、アルツハイマー病の原因としてアミロイドβ蛋白質が広く認識されているにも関わらず、現在臨床的に使われているアルツハイマー病治療薬は、このアミロイドβ蛋白質に作用するようデザインされていない。詳しく述べると、アルツハイマー病治療薬として使われているドネペジル(特許文献1)やメマンチン(特許文献2)は、それぞれアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とNMDA受容体阻害剤として働き、アミロイドβ蛋白質と相互作用するわけではない。いわゆる対処療法薬であるため、アルツハイマー病に対する劇的な改善作用がないのが現状である。



このような背景を受け、作用機序(アミロイド蛋白質)に基づいた新たなアルツハイマー治療薬の開発が進められている。1つは、アミロイド前駆体蛋白質からアミロイドβ蛋白質の産生を抑えようとする試みであり、セクレターゼ制御剤の開発である(非特許文献1)。その中で、γセクレターゼ阻害剤の開発が最も進んでおり、Semagacestat(特許文献3)や Begacestat(特許文献4)など、臨床開発が続々と進められてきた。もう一つの治療法として注目されているのは、脳内のアミロイドβ蛋白質を抗体に認識させ除去させる、抗体療法である。実際、Bapineuzumab(特許文献5)やsolanezumabなど、これまで臨床開発が進められてきた経緯がある。



しかしながら、現在開発の中心となっているアミロイド蛋白質を作用機序とするアルツハイマー治療薬には問題点があることが分かっている。γセクレターゼ阻害剤に関しては、そもそもγセクレターゼの基質はアミロイド前駆体蛋白質だけでなく、約100近くあることが知られている(非特許文献7)。その中には、細胞分化に重要な Notch受容体も含まれており(非特許文献8)、副作用が懸念されている。実際、γセクレターゼ阻害剤として有力候補であった Semagacestat は、2010年に第三相臨床試験で開発が中止されている。また抗アミロイドβ抗体による抗体療法に関しては、血管炎や血管性脳浮腫などが起こる可能性があり、実際、抗体治療剤として有望であった Bapineuzumab も、2012年に開発を中止している。



なお、γセクレターゼの基質の中には、切り取られた細胞外ドメインがアミロイドペプチドのように放出されるのも幾つか知られている(非特許文献9,10)。これらのペプチドはγセクレターゼ活性の指標となるので、切られた断片をアルツハイマー病のバイオマーカーにしようという発明は幾つかある(特許文献6,7)。また、Alcadein-βと呼ばれる生体内の膜蛋白質が、γセクレターゼにより切断され、さらにαセクレターゼによっても切断されることによって、37アミノ酸(VLSSQQFLHRGHQPPPEMAGHSLASSHRNSMIPSAAT)からなるペプチドが産生されることも知られている(非特許文献11)。



しかし、このようなペプチドをアルツハイマー病の制御剤にするというアイデアは、現在の知見・技術水準では想定し難く、従って報告も皆無である。

産業上の利用分野


本発明は、アルツハイマー病の症状である、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害に対する治療効果を有するペプチドおよびその用途に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記(I)~(VI)のいずれかに該当するペプチドを有効成分として含有することを特徴とする、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療剤。
(I)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
VLSSQQFLHRGHQPPPEMAGHSLASSHRNSM
IPSAAT (配列番号1)
(II)配列番号1で表されるアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が、欠失、付加、置換または側鎖の修飾のいずれか一種以上により改変されたアミノ酸配列からなるペプチド。
(III)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、配列番号1で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるペプチド。
HRGHQPPPEMA (配列番号2)
(IV)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、配列番号1で表されるアミノ酸配列の部分配列に対して、1~2個のアミノ酸が、欠失、付加、置換または側鎖の修飾のいずれか一種以上により改変されたアミノ酸配列からなるペプチド。
(V)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、当該アミノ酸配列のN末端および/またはC末端に合計で1~50個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1で表されるアミノ酸配列の全部または一部と一致する場合を除く。)からなるペプチド。
(VI)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して、1~2個のアミノ酸が、欠失、付加(N末端および/またはC末端に対する付加を除く。)、置換または側鎖の修飾のいずれか一種以上により改変されたアミノ酸配列を含み、当該改変されたアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に合計で1~50個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチド。

【請求項2】
請求項1に記載の治療剤を含有する、アルツハイマー病治療薬。

【請求項3】
請求項1に記載の治療剤を、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害を発症した哺乳類(ヒトを除く)またはそのモデル動物に投与するステップを含むことを特徴とする、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療方法。

【請求項4】
請求項2に記載の治療薬を、アルツハイマー病に罹患した哺乳類(ヒトを除く)またはそのモデル動物に投与するステップを含むことを特徴とする、アルツハイマー病の治療方法。

【請求項5】
前記(I)~(VI)のいずれかに該当するペプチドを、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害を発症した哺乳類(ヒトを除く)またはそのモデル動物に投与するステップ、あるいはそのモデル細胞としての培養神経細胞または神経細胞に発現している生体分子に添加するステップを含むことを特徴とする、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の病態解析方法。

【請求項6】
前記(I)~(VI)のいずれかに該当するペプチドを、アルツハイマー病に罹患した哺乳類(ヒトを除く)またはそのモデル動物に投与するステップ、あるいはそのモデル細胞としての培養神経細胞または神経細胞に発現している生体分子に添加するステップを含むことを特徴とする、アルツハイマー病の病態解析方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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