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窒化物エレクトライド及びその製法

国内特許コード P170013794
掲載日 2017年3月16日
出願番号 特願2012-166325
公開番号 特開2014-024712
登録番号 特許第5884101号
出願日 平成24年7月26日(2012.7.26)
公開日 平成26年2月6日(2014.2.6)
登録日 平成28年2月19日(2016.2.19)
発明者
  • 細野 秀雄
  • 李 氣▲むん▼
  • 金 聖雄
  • 戸田 喜丈
  • 松石 聡
出願人
  • 国立大学法人東京工業大学
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 窒化物エレクトライド及びその製法
発明の概要 【課題】高い電気伝導度を持ち、金属的な電気伝導性を示すAE2N窒化物エレクトライド並びにその製造方法及び該窒化物エレクトライドを大気中で安定化させる方法を提供する。
【解決手段】組成式AE2Nにより表記され、固相のAE32とAE金属(AEは、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも一種類の元素)の蒸気との反応生成物からなる層状結晶構造を持ち、イオン式[AE2N]+-で表記される窒化物であり、室温で103S/cm以上の電気伝導度を有し、金属的電気伝導性を示すことを特徴とする窒化物エレクトライド。優れた電気伝導度を有し、熱電子型、電界放出型、光電子放出型など様々な高効率電子放出源として利用が可能であり、光電管や光電子増倍管、さらには、陰極材料として電界放出ディスプレイの実用化に寄与する。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


エレクトライド(Electride:電子化物)は、J.L.Dyeがはじめて提案
した概念(非特許文献1)でクラウンエーテルを陽イオンとし、電子を陰イオンとした化
合物などで、はじめて実現した。エレクトライドは、電子が、物質を構成している陰イオ
ンとしての役割を持っている物質と認識され、電子のホッピングにより電気伝導性を示す
ことが知られている。その後いくつかの有機化合物エレクトライドが見出されたが、これ
らの化合物は、いずれも、約200K以下の低温でのみ安定であり、空気や水と反応し著
しく不安定である。



無機化合物エレクトライドについてはゼオライト化合物粉末に、セシウムをドープする
ことにより初めて実現されたが、この化合物も、水分との反応性が高く、不安定であった
(非特許文献2)。また、エレクトライドの優れた電子放出特性を用いた真空ダイオード
が提案された(特許文献1)が、その当時のエレクトライドは温度変化にも化学的にも不
安定であったために、提案された真空ダイオードは低温でしか作動しないものであった。



1970年に、H.B.Bartlらは、12CaO・7Al23(以下「C12A7
」と記す)という物質が結晶構造中にケージ(籠状構造)を持ち、単位格子を構成する6
6個の酸素のうち2個がこのケージの中に「フリー酸素」の状態で包接されていることを
報告した(非特許文献3)。



本発明者らはC12A7に関して1980年代から研究をすすめ、(イ)C12A7単
結晶をアルカリ金属又はアルカリ土類金属蒸気中で、高温で熱処理すること、(ロ)C1
2A7単結晶に不活性イオンをイオン打ち込みすること、又は(ハ)炭素を含む還元雰囲
気で融液から直接、C12A7単結晶を固化することで、103S/cm未満の電気伝導
度を有するC12A7化合物が得られることを見出し、関連する発明について特許出願し
た(特許文献2)。高電気伝導度を有するこれらのC12A7は、該化合物のケージ中のフ
リー酸素がほとんど電子で置換されたものであり、実質的に、[Ca24Al2864]4+(4
-)と記述され、無機エレクトライド化合物とみなすことができる(非特許文献4)。
本発明者らは、さらに、C12A7又はその同型化合物を水素雰囲気中で熱処理したプロ
トン・電子混合伝導体に関する発明(特許文献3)及び電気伝導性複合酸化物結晶化合物に
関する発明(特許文献4)について特許出願した。



2007年には、C12A7単結晶、粉末又は薄膜をチタン金属中で高温熱処理するこ
とによりさらに大量の電子を結晶内に含めることが可能となり、室温で5×102S/c
m超2×103S/cm未満の電気伝導度を呈し、金属的電気伝導性を持つC12A7の
製造に成功し、該化合物を用いた電子放出素子を作製した。また、これらの発明について
特許出願した(特許文献5)。



本発明者らがすでに報告してきたC12A7エレクトライドは、これまでのところ、室
温以上、大気中で安定な唯一のエレクトライドである。エレクトライドの応用として、エ
レクトライドの上にp型半導体としての導電性高分子層を接合させた太陽電池の例がある
(特許文献6)。



すでに知られているように、エレクトライド中の電子は物質の結晶構造中の空隙(C1
2A7ではケージ)に局在し、空隙間は量子ドット様に弱く連結されている状態であった
。そのため電子は一般的な金属ほどには自由ではなく、電気伝導度は2×103S/cm
未満にとどまっていた(非特許文献5)。



Ca2Nの構造解析は初めにKeveら(非特許文献6)によって報告された。その後
、Ca2NやSr2NやBa2Nに関する系統的な物性及び構造解析が2000年以降にG
regoryら(非特許文献7)、Fangら(非特許文献8)、Reckewegら(
非特許文献9)によってなされている。
図1に示すように、Ca2Nの結晶構造は 、[Ca2N]+からなる層が重なり、層間に対
アニオンとして電子がe層として二次元的に非局在化して存在する。この結晶構造はS
2NやBa2Nでも同じである。これは、実質的に、[Ca2N]+-で表記できるもので
ある。これらの層と層とを電子が結び付けていることから、電子が陰イオンとしてふるま
うエレクトライドとみなすことができる。電子は層間に緩やかに束縛されており、この点
から、Ca2Nは高い電気伝導性が期待できる。同じ結晶構造を持つSr2NやBa2Nに
おいても同様に高い電気伝導性が期待できる。



しかしながら、Ca2Nの電気伝導度は室温において1.6×10-2S/cmや2.0
×10-1S/cm(非特許文献7)と報告されており、本発明者らの予測に比べ低い。ま
た、非特許文献7にはCaを他のアルカリ土類金属である、Sr又はBaに置換した同一
の結晶構造を持つSr2N及びBa2Nの電気伝導度の測定結果が記載されており、それぞ
れの電気伝導度は5~60S/cm及び1.0×10-2S/cmと報告されているが、こ
の値も本発明者らの予測に比較して依然小さい。



この予想外に低い電気伝導度に関し、本発明者は、非特許文献6等に記載された実験で
はCa2Nの合成に、安定な化合物であるCa32をアルゴンや真空中で還元する方法や
、金属Caと金属Naとの合金を窒素ガスと直接反応する方法が用いられていたため、合
成したCa2Nに不純物や未反応原料を含んでいること、加えて、取扱い雰囲気が5pp
mの水分と5ppm以下の酸素とを含んでいることにより、合成したCa2Nに水や酸素
との反応により絶縁層が生じていることが無視できない、と考えた。



Ca,Sr,Ba等のアルカリ土類金属窒化物は、半導体装置に用いる窒化アルミニウ
ムの原料、金属摺動部材、電極構成材料などに用いられるが、特許文献7には、アルカリ
土類金属にアンモニアを反応させて液相化し、得られたアルカリ土類金属アミドを熱分解
して高純度のアルカリ土類金属窒化物を製造する方法が開示されている。



Ca2Nは、非常に不安定な物質であることが知られており、Ca2Nが安定に存在でき
る範囲としてはAr中で1000℃以下、又は窒素中で250℃から800℃の間と報告
されている(非特許文献10)。



【特許文献1】
米国特許第5,675,972号明細書・図面
【特許文献2】
WO2005/000741 A1
【特許文献3】
特開2005-314196号公報
【特許文献4】
特開2005-67915号公報
【特許文献5】
W02007/060890 A1
【特許文献6】
特開2010-16104号公報
【特許文献7】
特開2012-66991号公報
【非特許文献1】
J. Tehan, B. L. Barrett, J. L. Dye, J. Am. Chem. Soc., 96, 7203-7208 (1974)
【非特許文献2】
A. S.Ichimura, J. L. Dye, M. A. Camblor, L. A. Villaescusa, J. Am. Chem. Soc., 124, 1170-1171 (2002)
【非特許文献3】
H. B. Bartl and T. Scheller, Neuses Jarhrb. Mineral. Monatsh. 12, 547-552 (1970)
【非特許文献4】
S. Matsuishi, Y.Toda, M. Miyakawa, K. Hayashi, T. Kamiya, M. Hirano, I. Tanaka, and H. Hosono, Science, 301,626-629(2003)
【非特許文献5】
S. W. Kim, S. Matsuishi, T. Nomura, Y. Kubota, M. Takata, K. Hayashi, T. Kamiya, M. Hirano, and H. Hosono, Nano Letters, 7, 1138-1143 (2007)
【非特許文献6】
E. T. Keve, C. Skapski, Inorg. Chem., 7, 1757-1761 (1968)
【非特許文献7】
D. G. Gregory, A. Bowman, C. F. Baker, D. P. Weston, J. Mat. Chem., 10, 1635-1641 (2000)
【非特許文献8】
C. M. Fang, G. A. de Wijs, R. A. de Groot, H. T. Hintzen, and G.de With, Chem. Mater., 12, 1847-1852 (2000)
【非特許文献9】
O. Reckeweg and F. J. Disalvo, Z. Kristallogr. NCS, 220, 519-520 (2005)
【非特許文献10】
P. Hchn, S. Hoffmann, J. Hunger, S. Leoni, F. Nitsche, W. Schnelle, R. Kniep, Chem. Eur. J., 15, 3419 (2009)

産業上の利用分野


本発明は、高い電気伝導度を持ち、金属的な電気伝導性を持つ層状結晶構造を有する窒
化物エレクトライド及びその製法に関する。なお、「金属的電気伝導性」とは、電気伝導
度が温度の低下とともに増加する性質をいう。

特許請求の範囲 【請求項1】
組成式AE2N(AEは、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも一種類の元素)
により表記され、層状結晶構造を持ち、イオン式[AE2N]+-で表記される窒化物であ
り、室温で103S/cm以上の電気伝導度を有し、金属的電気伝導性を示すことを特徴
とする窒化物エレクトライド。

【請求項2】
請求項1記載の組成式AE2NのNの一部を炭素で置換した、イオン式[AE2(N1-x
x)]+(e1-x-(x=0.05以上、0.50以下)で表され、大気中での安定性を有
することを特徴とする窒化物エレクトライド。

【請求項3】
原料としてAE32粉末とAE金属とを1:0.80~1:1.20の範囲のモル比で
混合し10-2Pa以下の真空中で固相のAE32とAE金属の蒸気とを750℃~850
℃において加熱反応させてAE2N粉末を合成することを特徴とする、請求項1に記載さ
れた窒化物エレクトライドの合成方法。

【請求項4】
加熱反応を10時間~100時間行い、室温まで急冷することを特徴とする、請求項3
に記載された窒化物エレクトライドの合成方法。

【請求項5】
原料としてAE32粉末とAE金属とを1:2~1:20の範囲のモル比で混合し1
-2Pa以下の真空中で固相のAE32とAE金属の蒸気とを750℃~850℃におい
て加熱反応させてAE2N単結晶を合成することを特徴とする、請求項1に記載された窒
化物エレクト
ライドの合成方法。

【請求項6】
加熱反応を10時間~50時間行い、550~650℃の範囲から選択される温度に、
200~400時間をかけて徐冷し、その後室温まで放冷することを特徴とする、請求項
5に記載された窒化物エレクトライドの合成方法。

【請求項7】
請求項5に記載された方法により作製された単結晶を結晶層間で劈開させることにより
、厚さ0.5ナノメートル~20マイクロメートルの薄膜とすることを特徴とする、請求
項1に記載された窒化物エレクトライドの合成方法。

【請求項8】
請求項3から6のいずれかに記載される合成方法において、原料に炭素を加えることを
特徴とする、請求項2記載の窒化物エレクトライドの合成方法。

【請求項9】
請求項1又は2に記載された窒化物エレクトライドを電子放出源に用いたことを特徴と
する電子放出素子。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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