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微生物の固定化及び脱離方法 NEW

国内特許コード P170013845
整理番号 (S2013-0826-N0)
掲載日 2017年3月16日
出願番号 特願2015-508308
出願日 平成26年3月14日(2014.3.14)
国際出願番号 JP2014056966
国際公開番号 WO2014156736
国際出願日 平成26年3月14日(2014.3.14)
国際公開日 平成26年10月2日(2014.10.2)
優先権データ
  • 特願2013-063695 (2013.3.26) JP
発明者
  • 堀 克敏
出願人
  • 国立大学法人名古屋大学
発明の名称 微生物の固定化及び脱離方法 NEW
発明の概要 アシネトバクターsp. Tol 5由来の接着性蛋白質AtaAを利用した、より実用性の高い微生物固定化技術を提供することを課題とする。(1)アシネトバクター属微生物由来のオートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAが導入されることによって非特異的付着性が付与又は増強された微生物を、高イオン強度下で担体に接触させ、該微生物を該担体に付着させる工程と、(2)低イオン強度下で洗浄し、前記担体から前記微生物を脱離させる工程とを含む、微生物の着脱方法が提供される。
従来技術、競合技術の概要


酵素や微生物細胞などの生体触媒はファインケミカルや汎用化学品、医薬中間体、バイオ燃料などの生産に有用である。生体触媒は常温・常圧・中性といった温和な条件下で、効率的かつ高選択的な反応を触媒する。しかし、生体触媒を利用するバイオプロセスは生産コストが高く、このことが実用化の妨げとなっていた。



生体触媒の固定化は、触媒の繰返し使用や連続反応を可能にすること、反応器からの触媒や生産物の回収・分離を容易にすること、触媒の再生が容易になること、体積当たりの触媒濃度の高密度化が可能になることなどから、バイオプロセスの低コスト化における重要な戦略と考えられてきた。また微生物細胞を丸ごと使用する全細胞触媒の利用は、酵素の分離精製が不要になること、触媒としての安定性が分離した酵素より高いこと、増殖や再活性化が可能であること、高価なNADHなどの還元力を外部から供給する必要がないことなどの理由から、バイオプロセスの低コスト化に大きく寄与する。特に最近、全細胞利用の大きな問題点であった細胞表層における物質輸送律速や障害の問題も、微生物細胞の表層に酵素を局在させる表層提示技術の登場により、克服の道が開かれつつある。



微生物細胞の固定化の従来法として、ゲル包括法、架橋法、共有結合法、物理吸着法があった。最もよく使われてきたゲル包括法には、ゲル内部における物質輸送律速、ゲルからの細胞の漏出、ゲルの脆弱性などの問題があった。架橋法や共有結合法では、架橋剤による阻害や結合そのものによる細胞の不活性化などの問題があった。物理吸着法では、通常の微生物細胞を有効に固定するだけの吸着力は望めず、一部の糸状菌などにしか有効ではなかった。最近、バイオフィルムを天然の固定化法として利用する方法論も報告されているが(非特許文献1~8)、バイオフィルム形成能力と目的の反応活性の双方を有する微生物をスクリーニングしてくるしか方法はなく、微生物や反応の種類について汎用性は低い。また、自然に形成されるバイオフィルムに頼るため効率的な方法とは言えず、実際の物質生産に適用できるレベルではない。よって、従来の固定化法は真に有効であるとは言えず、問題点も多いため、汎用的かつ有効な固定化法の開発が望まれていた。



本発明者が以前にバイオフィルターから単離したAcinetobacter sp. Tol 5(アシネトバクター属細菌Tol 5株)は、細胞自己凝集性が高く、また、疎水性の各種プラスチック担体から親水性のガラス、金属表面まで、様々な材料表面に対して高い付着性を示す非病原性のグラム陰性細菌である。他の微生物では報告例のないこのような付着特性をもたらす因子として、細菌細胞表層に存在する新規のバクテリオナノファイバーを発見し、さらにナノファイバーを構成する新しい蛋白質を同定した。この蛋白質は三量体型オートトランスポーターアドヘシン(TAA)ファミリーに属しており、本発明者がAtaAと名付けた(非特許文献9)。TAAは種々のグラム陰性病原性細菌が宿主の細胞やコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンといった細胞外マトリックスに特異的に接着し、宿主に感染するために有する病原性因子として知られている(非特許文献10)。TAAファミリーに属する蛋白質はホモ三量体を形成し、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、頭部-柄(ストーク)-外膜結合部位という共通の全体構造をとる。しかし、シングルペプチド鎖のアミノ酸残基数が300ほどの小さなものから3000を超える大きなものまで存在し、アミノ酸配列も多様である。本発明者が見つけたAtaAのペプチド鎖は3630アミノ酸から成り、TAAの中でも最大級である。長いストークに複数の長い繰返し配列がモザイク状に並ぶユニークな一次構造をしている。AtaAのみが様々な表面に対し非特異的で高い接着性を示す。また、TAAの研究は病原性細菌に集中しており、Tol 5のような非病原性細菌についてのTAAの研究例は皆無である。以上の研究成果に基づき、本発明者は、AtaAをコードする遺伝子を導入することによって標的微生物に非特異的付着性及び/又は凝集性を付与又は増強する方法を報告した(特許文献1)。尚、特許文献1ではAtaA及びそれをコードする遺伝子(ataA遺伝子)をそれぞれAadA及びaadA遺伝子と呼称していた。

産業上の利用分野


本発明は微生物の固定化技術に関する。詳細には、付着性を付与した微生物の着脱方法(担体への付着及びその後の脱離を伴う方法)に関する。本出願は、2013年3月26日に出願された日本国特許出願第2013-063695号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程(1)及び(2)を含む、微生物の着脱方法:
(1)アシネトバクター属微生物由来のオートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAが導入されることによって非特異的付着性が付与又は増強された微生物を、高イオン強度下で担体に接触させ、該微生物を該担体に付着させる工程;
(2)低イオン強度下で洗浄し、前記担体から前記微生物を脱離させる工程。

【請求項2】
前記DNAがataA遺伝子である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記DNAが以下の(a)、(b)又は(c)のDNAである、請求項1に記載の方法:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなり、微生物に対して非特異的付着性を付与又は増強する活性を有する蛋白質をコードするDNA;
(c)配列番号1で表される塩基配列の一部からなり、微生物に対して非特異的付着性を付与又は増強する活性を有する蛋白質をコードするDNA。

【請求項4】
オートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAとともに、以下の(a)又は(b)のDNAが前記微生物に導入されている、請求項3に記載の方法:
(a)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号3で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA。

【請求項5】
前記DNAを包含する以下の(a)又は(b)のDNAが前記微生物に導入されている、請求項1に記載の方法:
(a)配列番号5で表される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号5で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなり、微生物に対して非特異的付着性を付与又は増強する活性を有するDNA。

【請求項6】
高イオン強度と低イオン強度の境界がイオン強度5mM~20mMの間にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。

【請求項7】
高イオン強度と低イオン強度の境界となるイオン強度が約10mMである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。

【請求項8】
高イオン強度が10mM~500mMのイオン強度であり、低イオン強度が10mM未満のイオン強度である、請求項7に記載の方法。

【請求項9】
高イオン強度が20mM~200mMのイオン強度である、請求項8に記載の方法。

【請求項10】
工程(2)の後に以下の工程(3-1)を行う、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法:
(3-1)脱離した前記微生物を回収する工程。

【請求項11】
工程(2)の後に以下の工程(3-2)を行う、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法:
(3-2)前記担体を回収する工程。

【請求項12】
工程(1)と工程(2)の間に以下の工程(i)を行う、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法:
(i)前記担体に付着した前記微生物を被処理液に接触させ、接触状態を維持する工程。

【請求項13】
前記微生物が特定酵素の産生能を有し、前記被処理液が該特定酵素の基質を含む、請求項12に記載の方法。

【請求項14】
前記微生物がエシェリヒア属細菌である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
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