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多能性幹細胞からの腎臓誘導法 NEW

国内特許コード P170013994
整理番号 (S2014-0042-N0)
掲載日 2017年4月7日
出願番号 特願2015-542663
出願日 平成26年10月16日(2014.10.16)
国際出願番号 JP2014077601
国際公開番号 WO2015056756
国際出願日 平成26年10月16日(2014.10.16)
国際公開日 平成27年4月23日(2015.4.23)
優先権データ
  • 特願2013-217029 (2013.10.18) JP
発明者
  • 西中村 隆一
  • 太口 敦博
出願人
  • 国立大学法人 熊本大学
発明の名称 多能性幹細胞からの腎臓誘導法 NEW
発明の概要 本発明は、多能性幹細胞、例えば、ES細胞やiPS細胞から、腎臓の3次元構造物を誘導する場合に用いることができる工程または方法を提供することを目的とする。
多能性幹細胞を、以下の3つの工程、(a)多能性幹細胞から誘導された胚様体を、Bmp4および高濃度(濃度A)のWntアゴニストを含有する培地で培養する工程、(b)前記胚様体を、アクチビン、Bmp4、レチノイン酸、および中濃度(濃度B)のWntアゴニストを含有する培地で培養する工程、および(c)前記胚様体を、Fgf9および低濃度(濃度C)のWntアゴニストを含有する培地で培養する工程、(ここで、Wntアゴニストの濃度は、濃度A>濃度B>濃度Cである)で、この順に培養することを特徴とする分化誘導方法が提供される。
従来技術、競合技術の概要


腎臓は尿を産生することで老廃物を排出すると同時に体内の電解質、水分の恒常性の維持に重要な役割を果たしている。腎機能が失われると水分と様々な毒性成分が蓄積し、意識混濁、肺水腫による呼吸困難、高カリウム血症で死に至るため、人工透析を行う必要がある。日本で人工透析を受ける患者数は約30万人に達しており、現在も増加の一途をたどっている。人工透析導入原因の第1位は糖尿病であり導入患者数の約45%を占めている。加えて腎臓は内分泌器官としても重要な働きをしており、レニンを産生することで血圧の調節を行い、ビタミンDの活性化やエリスロポエチンの産生によって骨代謝と赤血球の維持に関与している。そのため,腎不全においては血圧と骨の異常および重度の貧血が見られる。腎不全にともなう貧血に対して、現在では週に数回のエリスロポエチンの投与による治療が行われているが、一生にわたり投与を行う必要があり医療費の高騰を招いている。



糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などといった腎疾患により末期腎不全に陥った場合、死体および生体からの腎移植、血液または腹膜を介しての人工透析、の二つの治療法が行われている。腎移植は損なわれた腎機能を完全に補うことができる根本的な治療であるが、慢性的なドナー不足によって一般的な治療法にはなり得ていない。一方、人工透析は患者に厳しい食事制限や定期的な通院を強いる一方、腎臓の濾過機能の代償にしかすぎないため長期合併症を引き起こす。これらに代わる新しい治療として再生療法が注目されている。



多能性幹細胞から様々なタイプの組織をインビトロで構築することが成功しているにもかかわらず、インビトロでの腎臓の作成は依然成功例はなく、その方法論の確立が待ち望まれている。これは主に、インビボでの腎臓分化過程の発生学的複雑さにより、そのメカニズムの詳細が解明されていないことに起因する。すなわち、腎臓は他の主要臓器とは異なり、その発生過程において、前方に位置する2つの一時的な原基(前腎、中腎)、さらには後方に位置し、成体腎へと分化する後腎の3つの原基形成を伴う、複雑なプロセスを経て形成される。さらに、人工的に再構成された腎臓が機能するためには、その機能単位である「ネフロン」を構成する、「糸球体」と「尿細管」の両方を含む三次元構造の構築が必須であることが、さらにその技術的難易度を高めている。



腎臓は、胎児体幹の最も後方で発達する後腎から発生する。後腎は、2つの前駆組織、すなわち、後腎間葉と尿管芽の間での相互作用によって形成される。これまでに、細胞系譜解析により、後腎間葉と尿管芽が共に、胎生(E)8.5日目頃あらわれる転写因子、Osr1を発現する中間中胚葉から発生することが示されている(非特許文献1:Mugfordら、Dev Biol 324, 88-98, 2008)。しかし、初期の中胚葉がどのような成長因子シグナルによって中間中胚葉に分化するかについての基礎となるメカニズムは明らかにされていない。また、中間中胚葉から後腎へと発生する過程においては、中間中胚葉後方における後方Hox遺伝子群の重要性が報告されている(非特許文献2:Mugfordら、Dev Biol 319, 396-405, 2008; 非特許文献3:Wellikら、Genes Dev 16, 1423-1432, 2002)。しかし、どのようにして中間中胚葉の中で前後軸が形成され後方Hox遺伝子が発現し、後腎間葉が形成されるのか(後方化)はまだ解明されていない。



腎臓は、中胚葉由来である後腎間葉と尿管芽という2つの組織の相互作用によって形成されるが、その機能単位であるネフロンに含まれる「糸球体」や「尿細管」等の主な構造は前者(後腎間葉)に由来する。発明者らは以前に、マウス胎児期の後腎間葉にネフロンのもととなる前駆細胞(後腎ネフロン前駆細胞)が存在することを報告し、その検出法も開発した(非特許文献4:長船、西中村ら、Development 133, 151-161, 2006)。また、iPS細胞をアクチビンAおよびWnt存在下で培養し、次いで、BMPおよびWnt存在下で培養することによる、iPS細胞からの中間中胚葉を誘導する方法が報告されている(特許文献1)。しかしながら、多能性幹細胞から、糸球体と尿細管の両方を再構築しうる「後腎ネフロン前駆細胞」の誘導に成功したという報告はない。

産業上の利用分野


本発明は、多能性幹細胞からの腎臓の誘導方法に関する。より詳細には、本発明は、多能性幹細胞、例えば、ES細胞やiPS細胞から、糸球体と尿細管の両方を含む腎臓の3次元構造物を誘導する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
哺乳動物由来の多能性幹細胞から後腎ネフロン前駆細胞を分化誘導する方法であって、該方法が、以下の3つの工程を、
(a)多能性幹細胞から誘導された胚様体を、Bmpおよび高濃度(濃度A)のWntアゴニストを含有する培地で培養する工程、
(b)前記胚様体を、Bmpおよび中濃度(濃度B)のWntアゴニストを含有する培地で培養する工程、および
(c)前記胚様体を、Fgfおよび低濃度(濃度C)のWntアゴニストを含有する培地で培養する工程、
をその順で含むことを特徴とする分化誘導方法
(ここで、Wntアゴニストの濃度は、濃度A>濃度B>濃度Cであって、濃度Aは濃度Cの少なくとも5倍である。)。

【請求項2】
前記工程(a)、(b)および(c)におけるWntアゴニストの濃度は、濃度Aは濃度Bの少なくとも3倍であり、かつ濃度Bは濃度Cの少なくとも3倍である、請求項1に記載の分化誘導方法。

【請求項3】
前記工程(b)において、培地がさらにアクチビンを含む、請求項1または2に記載の分化誘導方法。

【請求項4】
前記工程(b)において、培地がさらにレチノイン酸を含む、請求項3に記載の分化誘導方法。

【請求項5】
前記WntアゴニストがGSK-3阻害剤である(ただし、各工程のWntアゴニストは同じであっても異なってもよい)、請求項1~4のいずれかひとつに記載の分化誘導方法。

【請求項6】
前記Wntアゴニストが、CHIR99021、BIO、およびSB415286からなる群より選ばれる(ただし、各工程のWntアゴニストは同じであっても異なってもよい)、請求項5に記載の分化誘導方法。

【請求項7】
前記Bmpが、Bmp2、Bmp4およびBmp7からなる群より選ばれる、かつ、前記Fgfが、Fgf2、Fgf9およびFgf20からなる群より選ばれる、請求項1~6のいずれかに記載の分化誘導方法。

【請求項8】
前記BmpがBmp4であり、かつ前記FgfがFgf9である、請求項1~7のいずれか一つに記載の分化誘導方法。

【請求項9】
前記工程(a)、(b)および(c)におけるWntアゴニストが、CHIR99021であり、かつ、前記濃度Aが7.5μM~15μM、前記濃度Cが0.5μM~2.0μMである、請求項1~8のいずれか一つに記載の分化誘導方法。

【請求項10】
前記工程(a)および(b)におけるBmpがBmp4であり、工程(a)における濃度が0.1ng/ml~3ng/mlであり、工程(b)における濃度が1ng/ml~10ng/mlである、請求項9に記載の分化誘導方法。

【請求項11】
前記工程(b)において、アクチビンを2.5~40ng/mLの濃度で含む請求項10に記載の分化誘導方法。

【請求項12】
前記工程(a)、(b)および(c)が、連続した工程である請求項1~11のいずれか一つに記載の分化誘導方法。

【請求項13】
前記工程(c)において、培地が、Bmp、アクチビンまたはレチノイン酸のいずれも含まない培地である、請求項1~12のいずれか一つに記載の分化誘導方法。

【請求項14】
前記多能性幹細胞がマウスES細胞またはiPS細胞、またはヒトES細胞またはiPS細胞である、請求項1~13のいずれか一つに記載の分化誘導方法。

【請求項15】
前記多能性幹細胞がヒトiPS細胞である、請求項14に記載の分化誘導方法。

【請求項16】
前記多能性幹細胞がマウスES細胞またはiPS細胞であり、かつ工程(a)が、少なくとも1日以上4日以内培養する工程である請求項14に記載の分化誘導方法。

【請求項17】
前記多能性幹細胞がヒトES細胞またはiPS細胞であり、かつ工程(a)が、少なくとも3日以上11日以内培養する工程である請求項14に記載の分化誘導方法。

【請求項18】
転写因子である、Osr1、Wt1、Pax2、Six2、Hoxa10、Hoxa11の全てを発現する細胞集団であることを特徴とする哺乳動物由来の多能性幹細胞から分化誘導されたネフロン前駆細胞。

【請求項19】
前記多能性幹細胞が、マウスES細胞またはiPS細胞、またはヒトES細胞またはiPS細胞である、請求項18に記載のネフロン前駆細胞。

【請求項20】
請求項1~17のいずれか一つに記載の分化誘導方法により誘導されたネフロン前駆細胞。

【請求項21】
請求項18~20のいずれか一つに記載のネフロン前駆細胞を用いて、糸球体および尿細管を有する三次元腎臓構造を作成する方法。

【請求項22】
前記方法が、ネフロン前駆細胞を気液界面にて胚脊髄またはWnt4発現細胞と共培養ことを含む、請求項21に記載の三次元腎臓を作成する方法。

【請求項23】
請求項21または22に記載の方法により形成された、糸球体および尿管を有する三次元腎臓構造。

【請求項24】
請求項18~20のいずれか一つに記載のネフロン前駆細胞から分化誘導されたCadherin6、Megalin、およびLTLを発現する細胞集団であることを特徴とする近位尿細管細胞。

【請求項25】
前記分化誘導が、ネフロン前駆細胞を胎児脊髄またはWnt4発現細胞と共培養することにより行われる、請求項24に記載の近位尿細管細胞。

【請求項26】
請求項18~20のいずれか一つに記載のネフロン前駆細胞から分化誘導された、E-cadherin、Brn1、およびNCCを発現する細胞集団であることを特徴とする遠位尿細管細胞。

【請求項27】
前記分化誘導が、ネフロン前駆細胞を胎児脊髄またはWnt4発現細胞と共培養することにより行われる、請求項26に記載の遠位尿細管細胞。

【請求項28】
請求項18~20のいずれか一つに記載のネフロン前駆細胞から分化誘導された、Wt1、Nephrin、およびPodocinを発現する細胞集団であることを特徴とする糸球体上皮細胞。

【請求項29】
前記分化誘導が、ネフロン前駆細胞を胎児脊髄またはWnt4発現細胞と共培養することにより行われる、請求項28に記載の糸球体上皮細胞。

【請求項30】
多能性幹細胞からネフロン前駆細胞を誘導するための分化誘導培地キットであって、該キットは、(i)分化誘導培地、および(ii)Wntアゴニストを含み、使用時において、前記Wntアゴニストを段階的濃度で含む少なくとも3つの分化誘導培地が調整される、ここで、前記段階的濃度は、少なくとも濃度A、BおよびCからなり、濃度A>濃度B>濃度Cであって、濃度Aは濃度Cの少なくとも5倍である、
ことを特徴とする培地キット、培地キット。

【請求項31】
前記Wntアゴニストの段階的濃度は、濃度Aは濃度Bの少なくとも3倍であり、かつ濃度Bは濃度Cの少なくとも3倍であるように分化誘導培地が調整される、請求項30に記載の培地キット。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
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