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幹細胞における腫瘍化原因細胞の新たな標識法と治療法 UPDATE

国内特許コード P170014008
整理番号 (S2014-0307-N0)
掲載日 2017年4月7日
出願番号 特願2015-557768
出願日 平成27年1月14日(2015.1.14)
国際出願番号 JP2015000138
国際公開番号 WO2015107888
国際出願日 平成27年1月14日(2015.1.14)
国際公開日 平成27年7月23日(2015.7.23)
優先権データ
  • 特願2014-004262 (2014.1.14) JP
発明者
  • 小戝 健一郎
  • 三井 薫
  • 井手 佳菜子
出願人
  • 国立大学法人 鹿児島大学
発明の名称 幹細胞における腫瘍化原因細胞の新たな標識法と治療法 UPDATE
発明の概要 【課題】ヒトES/iPS細胞の腫瘍化原因細胞を確実に標的化するための最良のプロモーターを探索する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、ヒトES/iPS細胞の腫瘍化原因細胞を効率よく殺傷・除去することが可能な遺伝子を見出すことを課題とする。更に、本発明は、ヒトES/iPS細胞を目的細胞へ分化させた後に残存する未分化細胞を効率的かつ網羅的に除去する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】標識遺伝子と殺傷遺伝子とが、一つのプロモーターにより前記2つの遺伝子を同時に発現させることが可能な配列を介して結合した核酸配列、及び、プロモーター領域を含むリコンビネーションカセットを有するウイルスベクターであって、該プロモーター領域が、該標識遺伝子及び該殺傷遺伝子を発現可能に連結されているウイルスベクター、特には、未分化細胞特異的プロモーターをプロモーター領域として含む前記ウイルスベクター等。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


ヒト胚性幹細胞(ES細胞)、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、(1)創薬開発において薬物の毒性試験等に用いるヒト細胞、(2)発生・病態をin vitroで解明するために用いる疾患モデル細胞、(3)再生医療の移植用細胞等の医療・医薬創出の基盤ツールとして期待されている。最も期待される再生医療については、米国において一部の疾患に対してヒトES細胞を用いたヒト患者での臨床試験が既に開始されている。また、日本では、眼疾患に対するヒトiPS細胞を用いた臨床研究が開始されている。



ヒトES/iPS細胞の臨床応用における現在の最大の課題は、目的細胞へ分化させた後に残存する未分化細胞の混在である。分化誘導処理を行った細胞を移植した後、残存未分化細胞が奇形腫を形成することが報告されている(非特許文献1)。奇形腫は良性の腫瘍とはいえ、種々の副作用を生じる可能性が大きく、例えば、心臓に心筋細胞以外の細胞が移植された場合など、致死的不整脈などの重大な副作用を生じる可能性もある。



更に、分化した細胞を初期化するという人工的な修飾を加えたiPS細胞においては、奇形腫のみならず悪性腫瘍の発生も高度であるという報告がある(非特許文献2)。その原因として、iPS細胞の樹立に必要な遺伝子の一つであり、癌原遺伝子としても知られるc-Mycが活性化することで細胞が癌化すること、並びに、iPS細胞の樹立においてレトロウイルスやレンチウイルスにより遺伝子が体細胞に導入されることにより、細胞の正常な機能を維持する上で重要な遺伝子(例えば、癌抑制遺伝子など)を破壊したり、細胞増殖に関連する遺伝子を異常に活性化させたりすることが考えられている。



よって、分化処理後の細胞中に残存する未分化細胞を効率的かつ網羅的に除去することにより、純化された分化細胞を取得する方法が求められている。これまで、c-Mycを除いた3因子でiPS細胞を樹立する方法(非特許文献3及び4)や、ウイルスベクターの代わりにプラスミドを用いてiPS細胞を樹立することで染色体の損傷を抑制する方法(非特許文献5及び6)が報告されている。しかし、これらはいずれも細胞の「腫瘍化」を抑制する一定の効果は期待できるものの、未分化細胞の残存を防ぐものではなく、また、例えば、移植後に逆分化した未分化細胞を除去できないという問題があった。



別のアプローチとして、分化させても腫瘍化しにくいクローンを選択して使用する方法が報告されている(特許文献1)。しかし、この場合にも、未分化細胞の残存を防ぐものではなく、また、腫瘍化を完全に抑制できるものではなかった。



また、残存未分化細胞を標的として殺傷する方法も検討されている。例えば、Nanogプロモーターの下流に単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を有するレンチウイルスベクターをマウスES/iPS細胞やヒトES/iPS細胞に導入し、これらの細胞をガンシクロビル(GCV)感受性とすることが試みられている。該細胞を免疫不全マウスの皮下に移植し、腫瘍を形成させた後、GCVを投与することで腫瘍が縮小することが報告されている(非特許文献7及び8)。



このようなHSV-tkとGCVの組み合わせによる自殺遺伝子治療法は、本発明のような再生医療における幹細胞の腫瘍化原因細胞の除去技術としては上記の一部の研究が発表された段階で、よって幹細胞の再生医療において臨床応用がなされた例は未だ全くない。その一方でHSV-tk/GCVは、癌への遺伝子治療への応用としては長年の研究の歴史があり、HSV-tk/GCV遺伝子治療(代表的なやり方は、HSV-tk遺伝子を導入・発現するウイルスベクターを患者の腫瘍内に直接注入した後に、GCVを患者さんに注射する)として癌患者へ臨床試験も既に数多く行われてきた実績がある。HSV-tkというヒト由来ではないウイルス由来の遺伝子を細胞に導入する場合は、異種蛋白に対する免疫の誘導が起こる可能性が示唆される。癌治療においては、HSV-tk遺伝子が導入された癌細胞が細胞性免疫を中心とする免疫誘導により除去されることは治療効果の増幅に繋がるため、ウイルス由来の遺伝子という点はむしろ利点とも考えられる。しかし再生医療においては、移植細胞にHSV-tk遺伝子を導入した場合、異種蛋白に対する免疫誘導により移植細胞が除去されていく可能性も考えられるため、この点ではヒト由来の遺伝子を用いる方がより望ましいと推察される。他の戦略として、細胞増殖サイクルの抑制に働くp53やp16遺伝子をドキシサイクリンにより誘導して利用する技術も報告されている(特許文献2)。しかし、このような技術は、そもそも腫瘍抑制遺伝子は腫瘍細胞を積極的あるいは直接的に殺傷するものではないため腫瘍化細胞を全て死滅させることは不可能であることより、生存したまま残存した未分化細胞がドキシサイクリン誘導解除後に増殖を開始する可能性や、またいわゆるドキシサイクリンの遺伝子発現誘導システムは特異性が低いため非特異的にこれらの遺伝子が発現して幹細胞の分化誘導や生物的動態等に影響を及ぼしたりする可能性があるなど、効果・有用性の点では大きな問題があった。



一方、未分化細胞を識別する方法として、SP1(Specificity Protein 1)、カハールボディに含まれているタンパク質、核ラミナに含まれているタンパク質、傍核小体コンパートメントに含まれているタンパク質、又はPMLボディに含まれているタンパク質の細胞核内の存在量等から識別する方法(特許文献3)や、hTERT遺伝子またはIPAS遺伝子のmRNAの発現の有無を調べることにより、細胞集団に含まれる形質転換細胞を検出する方法(特許文献4)、ポドカリキシン様タンパク質(PODXL)を表面上に発現する細胞を同定する方法(特許文献5)が開示されている。しかし、これらの方法はいずれも煩雑な操作が必要であり、例えば、生体内に移植された組織内の残存未分化細胞を簡便に識別することはできなかった。



未分化細胞をそのプロモーター活性により識別することが試みられており、Stm1のプロモーター配列を利用する方法が開示されている。(特許文献6)



これまで、本発明者らは、多因子癌細胞特異的増殖制御型ウイルスを用いた残存未分化細胞の選択的殺傷方法を提供してきた(特許文献7)。該方法は腫瘍化細胞や未分化細胞を直接、積極的に殺傷する点、遺伝子が導入されていない腫瘍化細胞にも殺傷効果が及ぶ点等から本問題の解決に非常に有用である一方、あらかじめ全ての幹細胞に目的遺伝子を導入しているものではないため、よって多因子癌細胞特異的増殖制御型ウイルスが到達しなかった幹細胞から腫瘍化細胞が出現した場合に、生体内でこのウイルスへの免疫誘導全てを除去できるかまでは保証できなかった。

産業上の利用分野


本発明は、幹細胞を分化させた後に残存する腫瘍化原因細胞の標識及び除去に用いるためのプロモーターの探索方法に関する。また、本発明は、幹細胞を分化させた後に残存する腫瘍化原因細胞の標識方法及び除去方法、並びに該方法に用いるためのウイルスベクターに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
標識遺伝子と殺傷遺伝子とが、一つのプロモーターにより前記2つの遺伝子を同時に発現させることが可能な配列を介して結合した核酸配列、及び、プロモーター領域を含むリコンビネーションカセットを有するウイルスベクターであって、該プロモーター領域が、該標識遺伝子及び該殺傷遺伝子を発現可能に連結されているウイルスベクター。

【請求項2】
殺傷遺伝子が、自殺遺伝子である、請求項1に記載のウイルスベクター。

【請求項3】
自殺遺伝子が、薬剤依存性自殺遺伝子である、請求項2に記載のウイルスベクター。

【請求項4】
薬剤依存性自殺遺伝子が、HSV-tk、human-tmpk、シトシンデアミナーゼ請求項CD遺伝子、水痘ウイルスチミジンキナーゼ、又はCaspaseである、請求項3に記載のウイルスベクター。

【請求項5】
標識遺伝子が蛍光タンパク質である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のウイルスベクター。

【請求項6】
蛍光タンパク質が、赤色又は緑色の蛍光蛋白質である、請求項5に記載のウイルスベクター。

【請求項7】
蛍光タンパク質が、mKate2又は緑色蛍光蛋白質である、請求項5に記載のウイルスベクター。

【請求項8】
一つのプロモーターにより前記2つの遺伝子を同時に発現させることが可能な配列が、2A配列又はIRES配列である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のウイルスベクター。

【請求項9】
レンチウイルスベクターである、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のウイルスベクター。

【請求項10】
プロモーター領域が未分化細胞特異的プロモーター領域である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のウイルスベクター。

【請求項11】
未分化細胞特異的プロモーターが、survivinプロモーター又はtertプロモーターである、請求項10に記載のウイルスベクター。

【請求項12】
未分化細胞特異的プロモーターが、survivinプロモーターである、請求項10に記載のウイルスベクター。

【請求項13】
A)請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のウイルスベクターのプロモーター部分に被験プロモーターを組み替えて被験プロモーターを有するウイルスベクターを作製するステップ、
B)被験プロモーターを有するウイルスベクターを対象の細胞に感染させるステップ、
C)分化誘導処理後の前記細胞における前記標識遺伝子の発現を検出するステップ、
D)分化誘導処理後の前記細胞が未分化細胞であるか、分化細胞であるかを識別するステップ、及び
E)被験プロモーターが未分化細胞に特異的であるか否かを判定するステップを備える、未分化細胞特異的プロモーターのスクリーニング方法であって、
ここで、該判定が未分化細胞として識別された細胞において前記標識遺伝子の発現が検出される割合が高く、かつ、分化細胞として識別された細胞において前記標識遺伝子の発現が検出される割合が低い場合、該被験プロモーターは未分化細胞に特異的であると判定することにより行われる方法。

【請求項14】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターを対象の細胞に感染させるステップ、
B)分化処理後の前記細胞中の前記標識遺伝子の発現産物を検出するステップ、及び、
C)前記標識遺伝子の発現産物が検出された場合には、未分化細胞が存在すると判定するステップを備える、分化処理後の細胞における未分化細胞の有無を判定する方法。

【請求項15】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターが導入された分化処理後の細胞中の前記標識遺伝子の発現産物を検出するステップ、及び、
B)前記標識遺伝子の発現産物が検出された場合には、未分化細胞が存在すると判定するステップを備える、分化処理後の細胞における未分化細胞の有無を判定する方法。

【請求項16】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターを対象の細胞に感染させるステップ、
B)分化処理後の前記細胞中における前記標識遺伝子の発現産物を同定するステップ、及び、
C)前記標識遺伝子が発現している細胞が未分化細胞であると同定するステップを備える、分化処理後の細胞における未分化細胞を同定する方法。

【請求項17】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターが導入された分化処理後の細胞中における前記標識遺伝子の発現産物を同定するステップ、及び、
B)前記標識遺伝子が発現している細胞が未分化細胞であると同定するステップを備える、分化処理後の細胞における未分化細胞を同定する方法。

【請求項18】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターを対象の細胞に感染させるステップ、
B)分化処理後の前記細胞中における、前記標識遺伝子の発現産物のレベルを測定するステップ、及び、
C)測定された前記標識遺伝子の発現産物のレベルから、未分化細胞の量請求項又は割合を決定するステップを備える、分化処理後の細胞における未分化細胞の量請求項又は割合を決定する方法であって、
ここで、前記標識遺伝子の発現産物のレベルが、未分化細胞の量請求項又は割合を示す方法。

【請求項19】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターが導入された分化処理後の細胞中における、前記標識遺伝子の発現産物のレベルを測定するステップ、及び、
B)測定された前記標識遺伝子の発現産物のレベルから、未分化細胞の量請求項又は割合を決定するステップを備える、分化処理後の細胞における未分化細胞の量請求項又は割合を決定する方法であって、
ここで、前記標識遺伝子の発現産物のレベルが、未分化細胞の量請求項又は割合を示す方法。

【請求項20】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターを対象の細胞に感染させるステップ、
B)分化処理後の前記細胞中における、前記標識遺伝子が発現している細胞数を計数するステップ、及び、
C)前記標識遺伝子が発現している細胞数が未分化細胞の数であると決定するステップを備える、分化処理後の細胞中における未分化細胞数を決定する方法。

【請求項21】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターが導入された分化処理後の細胞中における、前記標識遺伝子が発現している細胞数を計数するステップ、及び、
B)前記標識遺伝子が発現している細胞数が未分化細胞の数であると決定するステップを備える、分化処理後の細胞中における未分化細胞の数を決定する方法。

【請求項22】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターを対象の細胞に感染させるステップ、
B)分化処理後の細胞中における、前記標識遺伝子の発現産物を検出するステップ、及び、
C)前記標識遺伝子の発現産物が検出された場合には、未分化細胞が残存し又は発生したと判定するステップを備える、分化処理後に残存又は発生する未分化細胞のモニタリング方法。

【請求項23】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターが導入され、分化誘導処理された細胞における、前記標識遺伝子の発現産物を検出するステップ、及び、
B)前記標識遺伝子の発現産物が検出された場合には、未分化細胞が残存又は発生していると判定するステップを備える、幹細胞の分化処理後の未分化細胞のモニタリング方法。

【請求項24】
A)請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターであって、殺傷遺伝子が薬剤依存性殺傷遺伝子であるウイルスベクターを対象の細胞に感染させるステップ、及び、
B)前記細胞に前記薬剤依存性殺傷遺伝子が毒性を発揮可能な薬剤を投与するステップを備える、未分化細胞を殺傷する方法。

【請求項25】
請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターであって、殺傷遺伝子が薬剤依存性殺傷遺伝子であるウイルスベクターが導入された細胞に前記薬剤依存性殺傷遺伝子が毒性を発揮可能な薬剤を投与するステップを備える、未分化細胞を殺傷する方法。

【請求項26】
請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターを含む、未分化細胞標識剤。

【請求項27】
請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターを含む、未分化細胞殺傷剤。

【請求項28】
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載のウイルスベクターが導入された細胞。

【請求項29】
幹細胞である請求項28に記載の細胞。

【請求項30】
幹細胞が、ES細胞、iPS細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、皮膚幹細胞、筋幹細胞、又は生殖幹細胞である、請求項29に記載の細胞。

【請求項31】
幹細胞を分化誘導処理することにより得られた細胞である、請求項28に記載の細胞。
国際特許分類(IPC)
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