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他属魚種代理親魚への適用が可能な、代理親魚を用いた養殖魚生産のための魚類配偶子の生産方法

国内特許コード P170014113
整理番号 (S2014-0745-N0)
掲載日 2017年5月9日
出願番号 特願2016-510049
出願日 平成27年3月26日(2015.3.26)
国際出願番号 JP2015001747
国際公開番号 WO2015146184
国際出願日 平成27年3月26日(2015.3.26)
国際公開日 平成27年10月1日(2015.10.1)
優先権データ
  • 特願2014-064639 (2014.3.26) JP
発明者
  • 吉崎 悟朗
  • 李 承起
  • 嶋田 幸典
  • 矢澤 良輔
  • 竹内 裕
  • 森田 哲朗
  • 森島 輝
出願人
  • 国立大学法人東京海洋大学
  • 日本水産株式会社
発明の名称 他属魚種代理親魚への適用が可能な、代理親魚を用いた養殖魚生産のための魚類配偶子の生産方法
発明の概要 代理親魚を用いた養殖魚生産のための魚類配偶子の生産方法の技術において、他属魚種等の代理親魚への適用を可能とし、代理親になり得る魚種の範囲を拡大する方法を提供することを課題とする。ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種と、ドナー魚種に対して代理親になり得ない第二の魚種とをハイブリダイズして、ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種を作出し、作出されたハイブリッド魚種をレシピエントとして、ドナー魚種の分離生殖細胞を移植して生殖細胞系列への分化誘導を行うことにより、代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法を提供可能とし、該課題を解決する。
従来技術、競合技術の概要

近年、天然漁業資源の漁獲量が漸減傾向を続け、これに伴い総漁獲量に占める養殖生産量の割合が大きく増加してきている。一方、海産魚類の養殖においては、いまだに天然の種苗を商品サイズまで養成する場合も多い。このため、資源管理の重要性の高まりとともに、完全養殖の導入がより強く求められている。


完全養殖とは、対象魚種の受精卵から人工的に種苗を生産し、得られた人工種苗を、商品として流通させ、また、得られた人工種苗の一部の個体を親魚まで養成し、配偶子(精子及び卵)を生産し、得られた配偶子を養殖に利用するという、天然資源に依存せずに完結される養殖スタイルを指す。完全養殖を実現するためにはまず、目的の魚類の親魚から、質及び量ともに種苗生産に十分な配偶子を得なくてはならない。種苗生産に十分な配偶子を得るには、親魚の維持に十分な飼育施設と、適切な飼料による育成及び産卵誘導とが不可欠であり、多くのスペース及び労力を必要とする。そのため、少なくとも多くの養殖業者が容易に導入しうるほど、種苗生産への利用が確立している魚種は少ないと言える。


この問題点を解決しうる技術として、代理親魚を用いた種苗生産に必要な魚類配偶子の生産技法、すなわち、代理親魚技法が注目されている。本技法は、配偶子を得ようとする目的の魚種をドナーとし、配偶子を生産させようとする魚種をレシピエントとし、ドナーの始原生殖細胞、精原細胞又は卵原細胞に例示される未分化な生殖細胞をレシピエントに移植して、レシピエントを代理親魚として利用する方法である。本代理親魚技法は、言い換えれば、ドナーの生殖細胞をレシピエントの生殖腺内で増殖又は分化させることによって、ドナーの配偶子を生産し、ドナーの次世代個体集団を作出する技法である。魚類の場合、雄の配偶子には運動性があり、精子と呼ばれるのに対し、雌の配偶子には運動性がなく、卵と呼ばれる。代理親魚技法において、精子を得ようとする場合には、雄のレシピエントにドナーの生殖細胞を移植し、一方、卵を得ようとする場合には、雌のレシピエントにドナーの生殖細胞を移植する。


代理親魚技法は、先に、本発明者らによって、宿主(レシピエント)魚類とは異系統又は異種の魚類由来の生殖細胞である、ドナー分離生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植によって、宿主魚類個体に移植することにより、生殖細胞を、生殖細胞系列へ分化誘導することができること、即ち、魚類のような脊椎動物由来の分離生殖細胞を、宿主脊椎動物の孵化前後の魚類個体へ移植することにより、該生殖細胞を生殖細胞系列へ分化誘導することが可能であることが見出され、異系統又は異種の宿主魚類による分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法として構築され、開示されている(特許第4300287号公報)。また、非特許文献Fisheries for Global Welfare and Environment, 5th World Fisheries Congress 2008 (2008) p209-219、には、ドナーであるヤマメ(masu
salmon, Oncorhynchus masaou)の精原細胞を、レシピエントである雌雄のニジマス(rainbouw traut, Oncorhynchus mykiss)に移植することでヤマメの卵と精子を得て、ニジマスを代理親魚とするヤマメの次世代個体の作出を行う方法が報告されている。


上記開示の方法では、宿主(レシピエント)魚類は、ドナー由来の配偶子(精子及び/又は卵)を作るとともに、宿主(レシピエント)由来の自らの配偶子(精子及び/又は卵)も作ることから、ドナー由来の配偶子(精子及び/又は卵)を特異的に形成、分離するには、両者を選別する操作が必要になり、実用上問題であった。例えば、ドナー魚種として、ヤマメの精原細胞或いは卵原細胞を,ニジマスをレシピエントとして、生殖細胞系列へ分化誘導を行う場合に、数多くのニジマスの精子の中からヤマメの精子を選び取ること、及び数多くのニジマスの卵の中からヤマメの卵を選び取ることが困難であり、ドナー魚種のみを大量生産する必要がある産業上の利用技術としては、課題を残していた。


そこで、この課題を解決するために、本発明者らは、宿主となる魚種の3倍体の魚種を作製し、該魚種を不妊化し、該3倍体魚種を代理親魚技法の宿主(レシピエント)とすることにより、宿主(レシピエント)自体の生殖細胞の形成を抑える方法を構築し、開示した(特許第4581083号公報)。非特許文献Science Vol.317 (2007) p1517には、3倍体のニジマスを作出してニジマス由来の精子及び卵が生産されない不妊の代理親魚を得て、この不妊の代理親魚にヤマメの生殖細胞を移植することで効率的にヤマメの精子と卵を得て、ヤマメの次世代個体を生産する方法が報告されている。


しかし、これまでの代理親魚技術では、代理親魚として利用可能な魚種は、ドナーに近縁な魚種に限られており、代理親魚技術を適用可能な魚種が制限されていた。例えば、非特許文献Fishories Science Vol.317(2011)p.60-77には、ブリの精原細胞をニベに移植した場合、ニベ生殖腺には取り込まれるものの、配偶子の生産には至らなかったことが記載されている。また、非特許文献Biology of Reproduction Vol. 82(2010)p.896-904には、ニベの精原細胞をマサバに移植した場合に、マサバ生殖腺にニベ生殖細胞を取り込まれ、増殖していることも確認されたが、配偶子の生産には至らなかったことが記載されている。


代理親魚技術によるドナー由来の配偶子(精子及び/又は卵)の形成においては、例えば、実用的観点からは、大型魚類の配偶子(精子及び/又は卵)を、飼育の容易な小型魚類等を代理親魚として形成させるような必要性が生じ、そのような場合の多くは、魚種の属する属を超えての代理親魚の選択が要求される。しかしながら、多くの場合に、ドナー魚種に対して、属を超えての代理親魚は、ドナー魚種の分離生殖細胞が、代理親魚の生殖線に生着しない等の理由で、代理親魚になりえないという問題がある。したがって、代理親魚技術の利用の実用上の要請に答えるためには、ドナー魚種に対して、属等の範囲を超えての代理親魚の利用を可能とする代理親魚技術の開発が課題となる。

産業上の利用分野

本発明は、他属魚種の代理親魚への適用が可能な、代理親魚を用いた養殖魚生産のための魚類配偶子(精子及び卵)の生産方法に関し、特に、該養殖魚生産のための魚類配偶子の生産方法において、目的とする魚類配偶子の生産のための分離生殖細胞を供給するドナー魚種に対して、該ドナー魚種の代理親になり得ない魚種をドナー魚種の代理親になり得る魚種とのハイブリッドとすることにより、本来ドナー魚種の代理親になり得ない他属魚種に対しても代理親魚として適用することを可能とし、代理親魚として用いる魚種の適用範囲を拡大することによって、飼育等に適合した実用上有利な特性を有する代理親魚の選択を可能として、養殖魚生産のための魚類配偶子の生産方法として実用化を可能とする魚類配偶子の生産方法を提供することに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
レシピエント魚類を用い、レシピエント魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞をレシピエント魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行うことを含む代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法において、
(A)分離生殖細胞を供給するドナー魚種を選択すること、
(B)該ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種の魚を選択すること、
(C)該ドナー魚種に対して代理親魚になり得ない第二の魚種の魚を選択すること、
(D)(B)で選択された第一の魚種の魚と、(C)で選択された第二の魚種の魚とをハイブリダイズして、ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種を作出すること、
(E)(D)で作出されたハイブリッド魚種をレシピエントとして、ドナー魚種の分離生殖細胞を移植して生殖細胞系列への分化誘導を行うこと、
を含む代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項2】
魚類の配偶子が、ドナー魚種の精子又は卵であることを特徴とする請求項1に記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項3】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種の魚が、移植したドナー魚種の分離生殖細胞の生殖腺への生着能を有する魚種の魚であり、ドナー魚種に対して代理親魚になり得ない第二の魚種の魚が、移植したドナー魚種の分離生殖細胞の生殖腺への生着能を有さない魚種の魚であることを特徴とする請求項1又は2に記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項4】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種の魚が、ドナー魚種と同属であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項5】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得ない第二の魚種の魚が、ドナー魚種と異属であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項6】
ドナー魚種が、イワナ属、ブリ属又はマグロ属であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項7】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種が、ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種のゲノムを細胞あたり半分以下で有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項8】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種が、ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種のゲノムを細胞あたり1/3以下で有することを特徴とする請求項7に記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項9】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種が、異質倍数体であり、ハイブリッド魚種由来の配偶子が生産されない不妊のハイブリッド魚種であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項10】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種が、異質倍数体であり、ハイブリッド魚種由来の精子及び卵が生産されない不妊のハイブリッド魚種が、3倍体であることを特徴とする請求項9に記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項11】
レシピエントとしてのハイブリッド魚類の作出方法において、
(A)分離生殖細胞を供給するドナー魚種を選択すること、
(B)該ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種の魚を選択すること、
(C)該ドナー魚種に対して代理親魚になり得ない第二の魚種の魚を選択すること、
(D)(B)で選択された第一の魚種の魚と、(C)で選択された第二の魚種の魚とをハイブリダイズして、ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種を作出すること、
を含むハイブリッド魚類の作出方法。

【請求項12】
レシピエント魚類を用い、レシピエント魚類とは異系統又は異種の魚類のドナー魚種の分離生殖細胞をレシピエント魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う、代理親魚を用いた魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、請求項11で作出されたハイブリッド魚種をレシピエント魚類として用いて、ドナー魚種の分離生殖細胞を移植、分化誘導することを特徴とする代理親魚を用いた魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【請求項13】
請求項11に記載の方法により作出されるハイブリッド魚類。

【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の代理親魚を用いた魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法によって生産されるドナー魚種の卵又は精子。

【請求項15】
請求項14に記載のドナー魚種の卵又は精子から生産されるドナー魚種の養殖用種苗。

【請求項16】
請求項15に記載のドナー魚種の養殖用種苗を養殖して得られるドナー魚種の成魚。

【請求項17】
レシピエント魚類を用い、レシピエント魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞をレシピエント魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行うことを含む代理親魚を用いた魚類の移植魚の生産方法において、
(A)分離生殖細胞を供給するドナー魚種を選択すること、
(B)該ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種の魚を選択すること、
(C)該ドナー魚種に対して代理親魚になり得ない第二の魚種の魚を選択すること、
(D)(B)で選択された第一の魚種の魚と、(C)で選択された第二の魚種の魚とをハイブリダイズして、ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種を作出すること、
(E)(D)で作出されたハイブリッド魚種をレシピエントとして、ドナー魚種の分離生殖細胞を移植すること、を含む代理親魚を用いた移植魚の生産方法。

【請求項18】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種の魚が、移植したドナー魚種の分離生殖細胞の生殖腺への生着能を有する魚種の魚であり、ドナー魚種に対して代理親魚になり得ない第二の魚種の魚が、移植したドナー魚種の分離生殖細胞の生殖腺への生着能を有さない魚種の魚であることを特徴とする請求項17に記載の代理親魚を用いた移植魚の生産方法。

【請求項19】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種の魚が、ドナー魚種と同属であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の代理親魚を用いた移植魚の生産方法。

【請求項20】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得ない第二の魚種の魚が、ドナー魚種と異属であることを特徴とする、請求項17~19のいずれかに記載の代理親魚を用いた移植魚の生産方法。

【請求項21】
ドナー魚種が、イワナ属、ブリ属又はマグロ属であることを特徴とする請求項17~20のいずれかに記載の代理親魚を用いた移植魚の生産方法。

【請求項22】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種が、ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種のゲノムを細胞あたり半分以下で有することを特徴とする請求項17~21のいずれかに記載の代理親魚を用いた移植魚の生産方法。

【請求項23】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種が、ドナー魚種に対して代理親魚になり得る第一の魚種のゲノムを細胞あたり1/3以下で有することを特徴とする請求項22に記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

【請求項24】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種が、異質倍数体であり、ハイブリッド魚種由来の配偶子が生産されない不妊のハイブリッド魚種であることを特徴とする請求項17~23のいずれかに記載の代理親魚を用いた移植魚の生産方法。

【請求項25】
ドナー魚種に対して代理親魚になり得る能力をもつハイブリッド魚種が、異質倍数体であり、ハイブリッド魚種由来の精子及び卵が生産されない不妊のハイブリッド魚種が、3倍体であることを特徴とする請求項24に記載の代理親魚を用いた魚類の配偶子の生産方法。

国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開


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