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目的遺伝子の発現誘導可能なウイルスベクター

国内特許コード P170014150
掲載日 2017年5月26日
出願番号 特願2015-114308
公開番号 特開2017-000015
出願日 平成27年6月4日(2015.6.4)
公開日 平成29年1月5日(2017.1.5)
発明者
  • 朝長 啓造
  • 本田 知之
  • 山本 祐介
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 目的遺伝子の発現誘導可能なウイルスベクター
発明の概要 【課題】ウイルスベクターを利用して遺伝子導入操作を行うに際し、ベクター配列のゲノムへの挿入を起こすことなく、所望のタイミングに遺伝子の発現を可能とするウイルスベクターを提供する。
【解決手段】ボルナ病ウイルス(BDV)ゲノムの部分若しくは全部を含む、BDVベクターであって、導入する任意の目的遺伝子の非翻訳領域にリボザイム配列を組み込んでなるBDVベクターを用いることによる。具体的には、(a)BDVゲノムをコードするcDNAに任意の目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されており、さらに(a)における任意の目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されているウイルスベクターによる。
【選択図】図3
従来技術、競合技術の概要


任意の外来性目的遺伝子(以下、単に「目的遺伝子」ともいう。)を生体又は細胞に運搬する手段として、ウイルスベクターを利用する方法が知られている。ウイルスが持つ病原性に関する遺伝子を取り除き、当該目的遺伝子を組み込んだものがウイルスベクターである。人に感染するアデノウイルスは50種類ほどが知られているが、ウイルスベクターとして利用されているのは、主にヒトアデノウイルス5型である。ヒトアデノウイルス5型は小児の風邪を引き起こすウイルスの一種で、約 36kb の2本鎖直鎖状DNAをゲノムとして持つ。カプシドは直系約 80nm の正二十面体構造をとり、エンベロープを持たないウイルスである。ウイルス粒子から突出するファイバー蛋白質の先端が細胞表面のレセプター(CAR: coxackie-adeno receptor)に結合して吸着・感染する。レトロウイルス(retrovirus)はエンベロープを持つ一本鎖RNAウイルスであり、感染した細胞内で逆転写されて二本鎖DNAとなった後に宿主ゲノムにランダムに組み込まれる。レンチウイルスベクターはレトロウイルスベクターの一種であるが、潜伏期間が長いという特徴を持つ。代表的なものとしてヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)が知られており、いくつかの修飾遺伝子や制御遺伝子を有するなど通常のレトロウイルスより複雑な構造を取っている。他のレトロウイルスと大きく異なる特徴として、レンチウイルスは分裂していない細胞にも感染して宿主ゲノムにウイルスDNAを導入できる点がある。 その他、ウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルス、センダイウイルスを利用するベクター等が開発されている。



しかしながら、レトロやレンチウイルスベクターによる幹細胞への導入はゲノムにベクター由来の配列が挿入されることで細胞が腫瘍化する有害事象がある(非特許文献1:J Clin Invest. 2008 118:1502, 非特許文献2:Science. 2003 17;302)。例えば、X連鎖重症複合免疫不全症 (X-linked Severe Combined Immunedeficiency; X-SCID) の遺伝子治療を受けた患者に白血病を発症する等の副作用があった。また、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスに関連するベクターが汎用されているが、DNAウイルスであるためにゲノムにベクター由来の配列が挿入される可能性があること、ウイルスベクターが一過性感染型ベクターであるため、安定持続的に導入されず、急速に増殖する細胞に長期的な遺伝子変更を行うことが困難である。さらにゲノムへの挿入を起こさないRNAウイルスであるセンダイウイルスベクターは安定持続的に導入されず、またセンダイウイルスは細胞質で増殖するため低分子RNAを発現することはできない(非特許文献3:Exp Hematol. 2011 39:47)。



ボルナ病ウイルス(Borna disease virus:以下、「BDV」ともいう)は、非分節のマイナス鎖、1本鎖のRNAをゲノムとして持つモノネガウイルス目に属するウイルスであり、神経細胞に感染指向性があるという特徴を有する。さらに、BDVは細胞核で複製するウイルスであるが、その感染は非細胞障害性であり長期に持続感染するという特徴や、感染可能な宿主域が極めて広いという特徴も有する。



BDVを利用する任意の目的遺伝子の細胞への導入技術として、緑色蛍光蛋白質(GFP)の発現カセットをBDVゲノムの5'末端側の非翻訳領域に挿入し、この組換えウイルスを高活性のポリメラーゼと共にラットに感染させると、ラットの神経細胞においてGFP遺伝子が発現したことが報告されている(非特許文献1)。



さらにBDVを用いる技術において、感染可能な宿主域が広く、安全性及び目的遺伝子の導入効率が高く、安定性及び持続性が良好なウイルスベクターが開発されている。BDVを用いるベクターとして、例えば、(a)BDVゲノムをコードするcDNAのG遺伝子の翻訳領域に目的遺伝子を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されていることを特徴とするウイルスベクターについて開示がある(特許文献1:特開2010-22338号公報)。BDVの神経細胞への感染指向性を利用し、マウス及びラットの脳内へ8ヶ月以上の長期に渡り安定持続的に目的遺伝子を発現するBDVベクターを本発明者らは作製し、本技術に関して特許を取得した(特許文献2:特許5299879)。



自己消化型リボザイムにおいて、リボザイムとテオフィリンに結合しうるアプタマーを組み込んでなる細胞機能を制御するための遺伝子制御スウィッチプラットフォーム(switch platform)について報告がある(非特許文献4)。



しかしながら、BDVベクターを用いた遺伝子導入方法によれば、導入した遺伝子を適切なタイミングで発現誘導させることが困難であるとの問題がある。

産業上の利用分野


本発明は、ウイルスベクターを利用して外来の目的遺伝子の導入操作により目的遺伝子を発現させる方法において、所望のタイミングに当該目的遺伝子の発現を誘導可能とするウイルスベクターに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAに目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されていることを特徴とするウイルスベクターであって、さらに(a)における当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されているウイルスベクター。

【請求項2】
目的遺伝子(A)が、(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAの、P遺伝子とM遺伝子との間の非翻訳領域に挿入されており、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されてなる、請求項1に記載のウイルスベクター。

【請求項3】
目的遺伝子(A)が、(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAの、P遺伝子の翻訳領域の下流に連結する非翻訳領域内に挿入されており、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されてなる、請求項1に記載のウイルスベクター。

【請求項4】
リボザイム(R)が、自己消化型リボザイムである、請求項1~3のいずれかに記載のウイルスベクター。

【請求項5】
リボザイム(R)の制御機構(R')が、テオフィリンに結合しうるアプタマーである、請求項1~4のいずれかに記載のウイルスベクター。

【請求項6】
リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')を含むカセットを、リボザイム(R)制御カセットとし、当該リボザイム(R)制御カセットを特定する塩基配列を1単位としたときに、1単位又は2~5単位から選択される任意の繰り返し単位での塩基配列を含む、請求項5に記載のウイルスベクター。

【請求項7】
リボザイム(R)制御カセットが、配列番号3に示す塩基配列で特定される、請求項6に記載のウイルスベクター。
GCTGTCACCGGATGTGCTTTCCGGTCTGATGAGTCCGTTGTCCAATACCAGCATCGTCTTGATGCCCTTGGCAGTGGATGGGGACGGAGGACGAAACAGC(配列番号3)

【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のウイルスベクターを用いて前記(a)に含まれる目的遺伝子(A)の発現を制御する方法であって、リボザイム(R)を可逆的に不活性化又は活性化することにより、前記(a)に含まれる当該目的遺伝子(A)の発現を制御する工程を含む、目的遺伝子(A)の発現制御方法。

【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のウイルスベクターを用いて前記(a)に含まれる目的遺伝子(A)の発現を制御する方法であって、リボザイム(R)を不活性化することにより当該目的遺伝子(A)の発現を促進する、請求項8に記載の目的遺伝子(A)の発現制御方法。

【請求項10】
リボザイム(R)を不活性化することが、テオフィリンを作用させることによる、請求項8又は9に記載の目的遺伝子(A)の発現制御方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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