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イネ変異体、米粉、難消化性澱粉、食品、及びイネ変異体の作出方法 NEW

国内特許コード P170014157
整理番号 (S2015-1988-N43)
掲載日 2017年5月29日
出願番号 特願2016-045670
公開番号 特開2017-038588
出願日 平成28年3月9日(2016.3.9)
公開日 平成29年2月23日(2017.2.23)
優先権データ
  • 特願2015-161305 (2015.8.18) JP
発明者
  • 藤田 直子
  • 伊藤 優季
  • クロフツ 尚子
出願人
  • 公立大学法人秋田県立大学
発明の名称 イネ変異体、米粉、難消化性澱粉、食品、及びイネ変異体の作出方法 NEW
発明の概要 【課題】遺伝子組み換え手法を用いず、難消化性澱粉含量が高い新規イネ変異体を提供する。
【解決手段】イネ枝作り酵素IIb型(BEIIb)の遺伝子座が劣性ホモであり、インディカ米由来のSSIIa遺伝子及びGBSSI遺伝子を交配により導入した非遺伝子組み換え体のイネ変異体を得る。当該イネ変異体は、野生型と比べて、種子重量が8割以上維持され、農業形質が維持されている。さらに、このイネ変異体のイネ種子は、イネでは類い希な難消化性澱粉含量を含んでおり、炊飯米の難消化性澱粉の含有量が10%~30%となり、アミロースの割合が35%以上となる。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


澱粉は不溶性であり、植物に特有の貯蔵多糖である。また、地球上のほとんどの生物が炭水化物源として、澱粉を利用している。
化学物質としての澱粉は、グルコースのα1,4による直鎖及びα1,6グルコシド結合による枝分かれ構造を含むグルコースポリマーである。
また、澱粉は、主として直鎖からなるアミロースと枝分かれ構造をもつアミロペクチンの高分子の集合体でもある。



澱粉の生合成には、少なくとも4種類の酵素が関与していることが分かっている。この4種類の酵素は、基質供給酵素であるADPグルコースピロホスホリラーゼ(AGPase)、α1,4グルコシド結合を伸長するスターチシンターゼ(SS)、α1,6グルコシド結合からなる枝分かれ構造を形成する枝作り酵素(BE)、アミロペクチンの特徴であるクラスター構造を維持するためにBEが付加した余分な枝分かれ構造をトリミングする枝切り酵素(DBE)である。なお、澱粉生合成に関与する酵素は、他にもあると考えられている(非特許文献1参照)。



このように、植物の澱粉生合成には少なくとも4種類の酵素が関与している。
加えて、高等植物の場合、これらの酵素には多数のアイソザイムが存在し、澱粉生合成に関与している。アイソザイムは、同様の酵素反応を触媒するアミノ酸配列の異なる酵素群のことである。たとえば、イネ(Oryza sativa)には、11種類ものSS、3種類ものBE、4種類ものDBEが存在する。
近年、これらのアイソザイムは、組織特異性や、微妙な基質特異性によって、役割分担をしていることが分かってきた。
このようなアイソザイムの働きや役割を解明することは、アイソザイムの機能解明につながる。そして、アイソザイムの機能解明は、植物の澱粉生合成メカニズムの全体像の解明には欠かせない。
このため、従来から各アイソザイムの変異体が開発されてきた。特定のアイソザイムが欠失した変異体の表現型を調べることで、そのアイソザイムの働きや役割を知ることができる。



たとえば、各アイソザイムの機能を明確にするために、イネにおいて既に単離され、分析されている変異体には、SSI(非特許文献2、特許文献1)、SSIIa(非特許文献3、特許文献2)、SSIIIa(非特許文献4、特許文献3)、GBSSI(非特許文献5)、BEI(非特許文献6)、BEIIb(非特許文献7)、ISA1(非特許文献8)、PUL(非特許文献9、特許文献4)、PHO1(非特許文献10)等の変異体がある。
これらの変異体は、胚乳に蓄積する澱粉の構造が野生型とは異なることがある。その構造の違いに伴い、澱粉粒の大きさや熱糊化温度、熱糊化粘度が異なる等の物性を示すことがある。



ここで、イネ品種は大きく、インディカ米(Oryza sativa subsp. indica)品種と、ジャポニカ米(Oryza sativa subsp. japonica)品種とに分類される。インディカ米とジャポニカ米の澱粉は、その性質が明らかに異なっている。タイ米に代表されるインディカ米は、食感がパサパサしており、糊化温度がジャポニカ米と比べて高い。この原因は、主として2種類のスターチシンターゼの配列の塩基置換によるものである。そのスターチシンターゼの一つは、SSIIa遺伝子であり、もう一つはGBSSI遺伝子である。インディカ米は両遺伝子の野生型であり、ジャポニカ米は、塩基置換により変異型である。
ジャポニカ米のSSIIa遺伝子は、野生型(インディカ米)の配列と比べて4か所の塩基置換が生じており、そのうちの2か所の塩基置換が原因で、その活性が野生型の10%にまで低下している(非特許文献3)。SSIIaの活性の大幅な低下により、ジャポニカ米の澱粉は、インディカ米の澱粉と比べて糊化温度が低い(非特許文献3)。
また、ジャポニカ米のGBSSI遺伝子は、野生型(インディカ米)の配列と比べて1か所の塩基置換が生じており、それが原因で正常なGBSSI遺伝子の発現量が野生型の10%にまで低下している(非特許文献5及び非特許文献11)。GBSSI遺伝子の発現量の低下により、ジャポニカ米の澱粉は、インディカ米の澱粉と比べてアミロース含量が低い(非特許文献5)。
なお、上述の非特許文献のイネの澱粉生合成を分析するための各アイソザイムに関する変異体は、全て、ジャポニカ米に分類される「日本晴」、「台中65号」、「金南風」のいずれかの品種に由来する。



一方、澱粉には、αアミラーゼ等で容易に消化される成分の澱粉と、消化されにくい難消化性澱粉が存在する。難消化性澱粉は、消化液では分解されにくく、高分子のまま小腸を通過して大腸に到達する澱粉のことである。難消化性澱粉は、小腸でグルコースにまで分解されないため、カロリーオフ効果がある。難消化性澱粉は、アミロース含量が高い澱粉に多く含まれることがある。このため、高アミローストウモロコシが、ダイエット素材として、利用されている。
また、難消化性澱粉は、高分子で大腸に到達し、大腸菌による発酵を通して短鎖脂肪酸を分泌し、大腸環境を整え、大腸癌予防、便秘予防効果があることが大麦(非特許文献12)や小麦(非特許文献13)で知られている。このため、難消化性澱粉を多く含む大麦グリッツ等は、オーストラリアで既に商品化されている。
一方で、イネにおいては、通常の炊飯米にも難消化性澱粉は含まれるものの、その割合は、わずか1%以下であることが多い。これに対して、難消化性澱粉を増加させるため、枝作り酵素の発現量を減らした遺伝子組換えイネが開示されている(非特許文献14及び非特許文献15)。

産業上の利用分野


本発明は、イネ変異体、米粉、難消化性澱粉、食品、及びイネ変異体の作出方法に係り、特にイネスターチシンターゼに変異を備えるイネ変異体、米粉、難消化性澱粉、食品、及びイネ変異体の作出方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ジャポニカ米由来のイネ枝作り酵素IIb型(BEIIb)の遺伝子座が劣性ホモであり、
インディカ米由来のSSIIa及びGBSSI遺伝子が遺伝的に固定されており、
非遺伝子組み換え体である
ことを特徴とするイネ変異体。

【請求項2】
精米後のイネ種子を炊飯した炊飯米の難消化性澱粉の含有量が10%~30%である
ことを特徴とする請求項1に記載のイネ変異体。

【請求項3】
野生型に比べて、前記BEIIbの活性が低下し、前記SSIIa及び前記GBSSIの遺伝子発現が増加し両酵素の活性が高い
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のイネ変異体。

【請求項4】
前記イネ種子は、難消化性澱粉の含有量が、親系統である前記インディカ米又はBEIIb変異体よりも多い
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のイネ変異体。

【請求項5】
前記イネ種子の胚乳から製造される澱粉は、
前記インディカ米の野生型イネ、又は前記BEIIbの活性低下に起因する親系統イネを用いて製造される澱粉と比べて、アミロペクチンの鎖長分布のうち、DP12以下が減少され、DP13~24が増加される
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のイネ変異体。

【請求項6】
前記イネ種子の胚乳から製造される澱粉は、
前記インディカ米の野生型イネ、又は前記BEIIbの活性低下に起因する親系統イネを用いて製造される澱粉よりも1℃以上高い糊化温度である
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のイネ変異体。

【請求項7】
前記イネ種子の胚乳から製造される澱粉は、
アミロースの割合が35%以上である
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載のイネ変異体。

【請求項8】
前記イネ種子は、粉末化することで米粉としても利用可能である
ことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載のイネ変異体。

【請求項9】
請求項2乃至7のいずれか1項に記載のイネ変異体の前記イネ種子の胚乳を粉末化することで製造された
ことを特徴とする米粉。

【請求項10】
請求項9に記載の米粉より抽出される
ことを特徴とする難消化性澱粉。

【請求項11】
請求項2乃至8のいずれか1項に記載のイネ変異体の前記イネ種子、請求項9に記載の米粉、及び/又は請求項10に記載の難消化性澱粉を含んで製造された
ことを特徴とする食品。

【請求項12】
非遺伝子組み換えの方式により、
ジャポニカ米由来のイネ枝作り酵素IIb型(BEIIb)の二重劣性ホモ変異体を作出させ、
インディカ米由来のSSIIa及びGBSSI遺伝子を遺伝的に固定させる
ことを特徴とするイネ変異体の作出方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2016045670thum.jpg
出願権利状態 公開


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