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微粒子分離用チップ、該微粒子分離用チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法 NEW

国内特許コード P170014219
整理番号 S2014-0828-N0
掲載日 2017年6月14日
出願番号 特願2014-081700
公開番号 特開2015-203582
出願日 平成26年4月11日(2014.4.11)
公開日 平成27年11月16日(2015.11.16)
発明者
  • 新井 史人
  • 益田 泰輔
  • 宋 元儀
出願人
  • 国立大学法人名古屋大学
発明の名称 微粒子分離用チップ、該微粒子分離用チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法 NEW
発明の概要 【課題】粒径が異なる微粒子が混在している溶液から、抗体等を使用する必要が無く、また、連続的に短時間で微粒子を分離することができる微粒子分離用チップ、微粒子分離用チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法を提供する。
【解決手段】基板、及び少なくとも3本以上のピラーを含み、一端が前記基板上に設けられ、他端が上方に開放した少なくとも3本以上のピラーで捕捉対象微粒子を捕捉するための一つの捕捉部位を形成し、捕捉対象微粒子の大きさをX、除去される微粒子の大きさをYとした場合、一つの捕捉部位を形成する任意の隣り合うピラー同士の間隔ZはY<Z≦Xであり、一つの捕捉部位を形成する少なくとも3本以上のピラーは、捕捉部位に捕捉された捕捉対象微粒子が任意の隣り合うピラーの間から流出しない位置関係に配置されていることを特徴とする微粒子分離用チップ。
【選択図】図18
従来技術、競合技術の概要


CTCはがん患者の末梢血流を循環する腫瘍細胞と定義され、原発腫瘍又は転移腫瘍から血管中へ浸潤した腫瘍細胞である。このCTCの検出は、転移性悪性腫瘍の早期発見の方法の一つとして近年注目されている。その理由は、X線写真や血清中の腫瘍マーカー検出よりも低侵襲かつ正確に転移性悪性腫瘍の診断を行え、患者の予後予測や治療効果の指標として利用できる点にある。



CTCは非常に稀少な細胞であり、転移性がん患者の血液に含まれる108~109個の血液細胞の内、わずか1細胞程度しか存在しないことが知られている。そのため、末梢血から稀少なCTCを正確に検出するための技術開発に多大な努力が注がれている。これまでに開発されてきた主要な検出方法には、免疫組織化学法、PCR法、フローサイトメトリー法などがある。しかしながら、前述したようにCTCは非常に稀少な細胞であるため、血液をそのままこれらの検出方法に供することは出来ないので、通常は前処理として、CTCの濃縮操作が必須であり、検出法に則したレベルまでCTC存在比を濃縮させる必要がある。



CTCの濃縮方法として開発されてきた様々な手法の中で、最も広く利用されているのは、細胞表面の特異的抗原を標的とした腫瘍細胞の濃縮である。その多くは、上皮細胞接着分子(Epithelial cell adhesion molecule:EpCAM)に対するモノクローナル抗体を固定化した磁気微粒子を血液と混合した後、磁石を用いて腫瘍細胞を濃縮する方法をとっている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、EpCAMの発現量は腫瘍のタイプに依存し大きく変動することが知られている。



その他の濃縮方法としては、細胞のサイズなどの形態を基準として濃縮する手法がある。白血球に比べてサイズが大きな上皮性腫瘍細胞をフィルトレーションによって選別する方法は、ISET法(Isolation by Size of Epithelial Tumor cells)と呼ばれている。ISETは、孔径8μmのポリカーボネートメンブレンフィルターを用いて血液をフィルトレーションするという簡便な手法であり、安価かつユーザーフレンドリーな手法である。ここで用いられているポリカーボネートメンブレンフィルターは、重イオンを照射した後、エッチングを行うトラックエッチングという手法によって、孔が形成されている。しかし、孔が比較的低密度であり、二つ又はそれ以上の孔が重なりあったりする問題があるため、CTCの捕捉に利用した場合、その捕捉効率は50~60%とされており、濃縮方法が簡便かつ効率も良い手法は未だ開発されていない。



CTCの検出を効率的かつ正確なものにするためには、濃縮と検出といった技術を首尾一貫して行うことが必要である。多段階のハンドリング操作、例えば細胞の染色、洗浄、分離、分注などの操作はCTCのロスを引き起こすため、可能な限りこれらの操作を避け、一体の検出装置中で分析が一貫して行える形が好ましい。Cellsearch(VeridexTM,Warren,PA)はCTC検出装置として唯一FDAの認可を受けた装置である。この装置では、全血に対し抗EpCAM抗体固定化磁気微粒子によるCTCの濃縮を行い、腫瘍細胞に対して免疫染色を行った後、自動化蛍光顕微鏡を用いて腫瘍細胞の計数が行われる(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、当該装置を用いる場合、一般的に大型の装置導入と訓練されたオペレーターの確保が必要であり、ベッドサイドで短時間且つ正確に検査をすることは困難である。



一方で、CTC検出のための小型のマイクロ流体デバイスも知られている。例えば、Tonerらが開発したCTC検出用マイクロ流体デバイスはCTC-chipと呼ばれ、フォトリソグラフィーによって形成されたシリコン製の流路内に、円筒状構造物(マイクロポスト)が78000個構成されている。このマイクロポストには、抗EpCAM抗体がコーティングされており、本流路に血液を送液すると、血液中のCTCがマイクロポスト上に捕捉される。捕捉されたCTCに対して、上皮細胞マーカー(cytokeratin)をターゲットとした蛍光免疫染色を行い、蛍光顕微鏡を用いて腫瘍細胞の計数が行われる。本装置は、手のひらに乗る小型デバイスでありながら、5mL以上の血液をそのまま分析に供することができるという大きな利点を持っている。実際に転移性がん患者血液からCTC検出を行っており、回収したCTCからチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性を生む変異を検出することが出来る。しかしながら、CellsearchやCTC-chipを用いたCTC検出は、転移性がん患者血液などの実サンプルを用いた実験が精力的に行われ実績を挙げているが、これらの手法は抗EpCAM抗体でCTCを濃縮するという原理になっている。そのため、EpCAM陰性又は弱陽性の腫瘍細胞は検出できないという問題点が挙げられる。



その他の方法としては、腫瘍細胞のサイズと形態を指標として、CTCを検出するマイクロ流体デバイスが開発されている。これらのデバイスでは、その流路構造内にメンブレンマイクロフィルター、三日月型の細胞捕捉ウェル(非特許文献3参照)、4段階の細さの流路(非特許文献4参照)を配して、血液中の血球細胞と腫瘍細胞をサイズによって選別し、腫瘍細胞を選択的に濃縮している。また、その流路を利用して、濃縮後の細胞に対して溶解などの操作を連続的に行うことが出来る。これらのデバイスを用いたモデル腫瘍細胞の回収効率の評価実験においては、80%以上のCTC回収効率を得ている。しかしながら、この評価はあくまでモデル細胞を用いた実験で行われており、実際にCTC検出時に必要となる細胞の染色操作や洗浄操作といった要素技術項目については検討されていない。さらに、がん患者血液などの実サンプルを用いた実験は行われておらず、実際にCTC検出に利用できるかどうかは明らかにされていない。



更に、抗EpCAM抗体を使用しない小型のデバイスとしては、マイクロ流路内にマイクロキャビティアレイ(微細貫通孔)を設け、CTCを捕捉することができるマイクロ流体デバイスが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、前記マイクロ流体デバイスは、微細貫通孔にCTCを捕捉するタイプであるので、CTCの目詰まりによる作業効率の低下、更には分離したCTCの回収が困難であるという問題がある。



上記問題点を解決するため、本発明者らは、(1)主流路、及び該主流路の幅より大きな捕捉部位が形成された微粒子分離用マイクロ流路チップ、又は(2)主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路、及び該分岐流路に分岐流路の幅より大きな捕捉部位が形成されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、を用いて気液界面のメニスカスで生じる力を利用して微粒子を沈降させ、目的とする微粒子のみを捕捉部位で捕捉することができることを見出し、特許出願を行っている(特許文献2参照)。



また、本発明者らは、(1)捕捉部位を含む主流路が基板の中心から放射状に形成されている微粒子分離用マイクロ流路チップを回転手段上に載置し、(2)前記微粒子分離用マイクロ流路チップの表面に、シース液注入口、サンプル注入口、シース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を少なくとも含む移流集積ユニットを配置し、(3)前記回転手段を回転させながらシース液及びサンプル液を注入することで、サンプルを前記微粒子分離用マイクロ流路チップに連続的に供給することができ、目的とする微粒子を効率よく捕捉・分離できることを新たに見出し、特許出願を行っている(特許文献3参照)。



しかしながら、上記特許文献2及び3に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップは、微細なマイクロ流路及び該マイクロ流路に形成された捕捉部位を用いて微粒子を捕捉する構造となっている。そのため、マイクロ流路を流すことができる液体の単位時間当たりの体積は限られていることから、依然として微粒子の分離操作に時間がかかるという問題がある。

産業上の利用分野


本発明は、液体中に混在するサイズの異なる微粒子を分離するための微粒子分離用チップ(以下、単に「チップ」と記載することがある。)、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法に関するもので、特に、血液中の循環腫瘍細胞(Circulating tumor cell、以下「CTC」と略記することもある。)を選択的に捕捉するためのCTC分離用チップ、該チップを用いたCTC分離用システム及びCTC分離方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
基板、及び少なくとも3本以上のピラーを含み、
一端が前記基板上に設けられ、他端が上方に開放した少なくとも3本以上のピラーで捕捉対象微粒子を捕捉するための一つの捕捉部位を形成し、
捕捉対象微粒子の大きさをX、除去される微粒子の大きさをYとした場合、一つの捕捉部位を形成する任意の隣り合うピラー同士の間隔ZはY<Z≦Xであり、
一つの捕捉部位を形成する少なくとも3本以上のピラーは、捕捉部位に捕捉された捕捉対象微粒子が任意の隣り合うピラーの間から流出しない位置関係に配置されていることを特徴とする微粒子分離用チップ。

【請求項2】
前記任意の隣り合うピラー同士の間隔Zが、0.8Y<Z≦0.8X、Y<Z≦0.8X、又は0.8Y<Z≦Xから選択される1種であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項3】
前記捕捉部位が複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項4】
前記複数形成されている捕捉部位同士が隣接して配置され、隣接する捕捉部位がピラーを共有していることを特徴とする請求項3に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項5】
前記捕捉部位が、多角形の平面充填状態で配置されていることを特徴とする請求項4に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項6】
前記多角形が、正3角形、正方形、正6角形から選ばれる一種であることを特徴とする請求項5に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項7】
前記捕捉対象微粒子がCTCで、除去される微粒子が血球細胞であることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項8】
前記基板が多角形又は円形状で、基板の外周には段差部が形成されていることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項9】
前記基板が多角形で、基板の外周にはピラーが形成されていない平面部が形成されていることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項10】
前記基板が円形状で、基板の外周にはピラーが形成されていない平面部が形成されていることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の微粒子分離用チップ。

【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載されている微粒子分離用チップ、サンプル液用薄板、シース液用薄板、シース液を吸引する吸引手段及び/又は吸引装置を含むことを特徴とする微粒子分離用システム。

【請求項12】
請求項1~10の何れか一項に記載されている微粒子分離用チップ、カバー板、吸引手段及び/又は吸引装置を含むことを特徴とする微粒子分離用システム。

【請求項13】
横溝及び該横溝に連通する吸引孔を含む吸引ユニットを更に含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の微粒子分離用システム。

【請求項14】
横溝及び該横溝に連通する吸引孔を含む吸引ユニットであって、前記横溝を挟む2つの側面の一方の側面が、前記吸引ユニットの両端部及び他の側面より短くなるように形成されていることを特徴とする吸引ユニット。

【請求項15】
前記横溝が、毛管力により液体を吸引できる幅であることを特徴とする請求項14に記載の吸引ユニット。

【請求項16】
前記横溝が、吸引手段を挿入できる幅であることを特徴とする請求項14に記載の吸引ユニット。

【請求項17】
請求項10に記載されている微粒子分離用チップ、
シース液注入口、サンプル注入口、シース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を少なくとも含む移流集積ユニット、
前記微粒子分離用チップを回転させる回転手段、及び
シース液を吸引する吸引手段及び/又は吸引装置、
を少なくとも含む微粒子分離用システム。

【請求項18】
前記移流集積ユニットが、シース液吸引パッドを装着する孔及びシース液吸引口を更に含むことを特徴とする請求項17に記載の微粒子分離用システム。

【請求項19】
前記移流集積ユニットが、シース液を毛管力で吸引する孔及びシース液吸引口を更に含むことを特徴とする請求項17又は18に記載の微粒子分離用システム。

【請求項20】
請求項1~10の何れか一項に記載されている微粒子分離用チップとサンプル液用薄板の間にサンプル液を注入し、微粒子分離用チップとシース液用薄板の間にシース液を注入し、微粒子分離用チップとサンプル液用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることで発生するメニスカスにより、捕捉対象微粒子は前記微粒子分離用チップに設けられた捕捉部位に捕捉され、除去される微粒子は吸引手段及び/又は吸引装置により吸引されたシース液により微粒子分離用チップから除去されることを特徴とする微粒子分離方法。

【請求項21】
請求項1~10の何れか一項に記載されている微粒子分離用チップとカバー板の間にサンプル液を注入し、吸引手段及び/又は吸引装置で前記サンプル液を吸引することで発生するメニスカスにより、捕捉対象微粒子を前記微粒子分離用チップに設けられた捕捉部位に捕捉することを特徴とする微粒子分離方法。

【請求項22】
前記サンプル液を吸引した後に、微粒子分離用チップとカバー板の間にシース液を注入し、吸引手段及び/又は吸引装置で前記シース液を吸引することで、残存している除去される微粒子を洗い流すことを特徴とする請求項21に記載の微粒子分離方法。

【請求項23】
請求項10に記載されている微粒子分離用チップを、該微粒子分離用チップを回転させる回転手段上に載置し、
前記微粒子分離用チップ上に、シース液注入口、サンプル注入口、シース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を少なくとも含む移流集積ユニットを配置し、
前記回転手段を回転させながら、前記シース液注入口からシース液を注入し、前記サンプル注入口からサンプルを注入することで前記微粒子分離用チップとシース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を相対移動させ、相対移動により発生したメニスカスにより目的とする微粒子を前記微粒子分離用チップに形成された捕捉部位に捕捉し、
シース液吸引手段及び/又は吸引装置によりシース液を吸引することで、除去される微粒子をシース液とともに微粒子分離用チップから除去することを特徴とする微粒子分離方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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