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分子性金属酸化物クラスター、分子性金属酸化物クラスター結晶、分子性金属酸化物クラスター結晶凝集体、分子メモリ、結晶メモリ及び分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法 NEW 新技術説明会

国内特許コード P170014356
整理番号 S2015-1988-N23
掲載日 2017年6月30日
出願番号 特願2015-232183
公開番号 特開2017-095334
出願日 平成27年11月27日(2015.11.27)
公開日 平成29年6月1日(2017.6.1)
発明者
  • 西原 禎文
  • 加藤 智佐都
  • 井上 克也
出願人
  • 国立大学法人広島大学
発明の名称 分子性金属酸化物クラスター、分子性金属酸化物クラスター結晶、分子性金属酸化物クラスター結晶凝集体、分子メモリ、結晶メモリ及び分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法 NEW 新技術説明会
発明の概要 【課題】分子分極が安定保持され、構造的にも安定な分子性金属酸化物クラスターを実現できるようにする。
【解決手段】分子性金属酸化物クラスターは、連通孔及び連通孔内の一方の開放端側と他方の開放端側とにそれぞれ設けられ、金属イオン及び水分子を包接可能な包接部とを有するクラスター骨格と、包接部の一方に包接された金属イオンと、包接部の他方に包接された水分子とを備え、金属イオンの偏りにより分子分極を有する。
【選択図】図6
従来技術、競合技術の概要


近年、強磁性体や強誘電体などを用いた情報記録媒体において記録密度の更なる向上が求められている。しかし、近い将来、現状の情報記録媒体では記録密度の限界を迎えると示唆されている。



強磁性体や強誘電体は磁気テープや強誘電体メモリー(FeRAM)等の記録媒体に使われている。これらの記録媒体では、一つの記録情報を保持するために少なくとも数十以上の結晶構造のユニットセルが必要である。このため、微細化による物理的な記録密度限界が存在し、これ以下のサイズで記録を保持することができないためである。また、記録ユニットを精密かつ再現性高く複数規則性高く配列形成することが、経済的、技術的観点から困難となってきているためである。



強誘電体(Ferroelectrics)とは、外部電場がなくても電気双極子が整列しており、かつ、その方向を外部電場印加により任意の方向・大きさに制御できる物質である。強誘電体は高速での分極反転が可能であるため、強磁性体よりも広範なデバイス応用が期待されている。しかし、微小化技術が強磁性体に比べて遅れている。



強誘電体の一つとして、単分子誘電体がある。単分子誘電体とは、一つの分子内に誘電発現機構を有し、これにより強誘電的な性質・挙動を示す材料である。ここで、強誘電的な性質・挙動とは誘電ヒステリシス、及び自発分極の発現を指す。単分子誘電体として、一つのテルビウムイオンを包接したポリオキソメタレート(polyoxometalate:以下、POMと略記する場合がある。)分子を挙げることができる。



POMは、リング状構造を有する、分子性の金属酸化物クラスターである。その一つであるPreyssler型POMは、[Mn+:P530110(15-n)-で表される。ここで、Mn+はP530110分子に包接されている金属イオンである。



Preyssler型POM分子は、内部に二か所のイオンの安定サイトが存在する。分子内に取り込まれたイオンは、Preyssler型POM分子内のいずれかのサイトに安定に保持される。



低い温度領域では、包接されたイオンのもつ熱エネルギーGが分子内のイオン安定サイト間に形成されたポテンシャル障壁Uより小さいために、イオンはいずれか一方のサイトからもう一方のサイトに移動することができない。これにより、分極が形成され、強誘電体的な性質・挙動を示す。



一方、強誘電発現温度TC以上の温度にすると、包接されたイオンのもつ熱エネルギーGがポテンシャル障壁Uよりも大きくなるために、イオンはいずれか一方のサイトからもう一方のサイトに移動することができる。これにより、分極は消滅し、常誘電体となる。ここで、強誘電発現温度とは、温度上昇過程において誘電ヒステリシス及び自発分極が消失する温度を指す。



本研究者は、長年にわたり、POMの様々な異性体を作成し、それらの物性を研究してきた。その結果、POM分子内のイオンの揺らぎに伴う特殊な物性を見出してきている。



例えば、非特許文献1は、「Dielectric properties of Polyoxometalate with ion fluctuation」に関する。Preyssler型POM(Polyoxometalate)である[Mn+530110(15-n)-の一例であるTbP530110について誘電率の温度依存性を調べ、室温において、Tbイオンが2つのサイトの間で揺らいでいることが開示されている。



非特許文献2は、Evaluation of a structural ion fluctuation in Preyssler-type polyoxometalate saltに関する。非特許文献1と同様の内容である。



非特許文献3は、The effect of irradiation on a Preyssler-type Polyoxometalateに関する。[{Nd(H2O)x4TbP530110}]に対してX線照射による色変化について開示されている。



非特許文献4は、「Preyssler型Polyoxometalateにおける局所的イオン移動の観測」に関する。非特許文献1と同様の内容である。



非特許文献5は、「イオン移動機構を有するポリオキソメタレートK12[Tb(P530110)]の開発」に関する。非特許文献1と同様の内容である。



非特許文献6は、「ランタノイドイオンを内包したPreyssler型POM、K12[GdP530110]の構造と磁気物性」に関する。Preyssler型POMにおいてGdを用いた系の構造と磁気物性の結果である。



非特許文献7は、「ランタノイドイオンを内包したPreyssler型POM、K12[TbP530110]の構造と物性評価」に関する。Preyssler型POMにおいてTbを用いた系の構造と磁気物性の結果である。



非特許文献8は、「Preyssler型ポリオキソメタレート、K12[Tb(P530110)]の誘電評価」に関する。非特許文献1と同様の内容である。



非特許文献10は、「Preyssler型ポリオキソメタレート分子内でのイオン移動の観測と物性調査」に関する。非特許文献1と同様の内容である。



非特許文献11は、Tb(III)Ion Motion in Preyssler-type Polyoxometalateに関する。非特許文献1と同様の内容である。X線構造解析とIR測定から、2つのサイトの間でイオン移動しているが、急冷するといずれか一方のサイトにイオンが局在化することを確認した。非特許文献1と同様の内容である。



非特許文献12は、Crystal structure and magnetic properties of a doughnut-shaped POM including Gadolinium(III)に関する。POMにおいてGdを用いた系の結晶構造と磁気物性の結果である。[GdP53011012-の結晶構造が同定された。



非特許文献13は、Structures and Physical Properties of Novel Preyssler-Lanthanide Complexesに関する。M.Popeらの方法により、包接イオンをTbイオンに置換したK12[TbP530110]を水熱合成し、X線単結晶構造とFT-IR測定から、生成物を同定した。



非特許文献14は、「ランタノイドイオンを内包したPreyssler型Polyoxometalateの構造と物性」に関する。M.Popeらの方法により、包接イオンをGd、Tb、Smのいずれかのイオンで置換した系、K12[MP530110](M=Gd、Tb、Sm)を水熱合成し、X線単結晶構造分析から、生成物を同定したことが開示されている。



非特許文献15は、「イオン移動機構を有するプレイスラー型polyoxometalateの物性」に関する。TbP530110について、IRスペクトルの温度依存性を調べ、吸収ピークシフトが得られた。また、誘電特性の温度依存性を調べた。これらの結果から、室温において、Tbイオンが2つのサイトの間で揺らいでいることを見出したことが開示されている。



また、関連する他の研究者の報告には、以下のものがある。例えば、非特許文献16は、Polyoxometalates with Internal Cavities: Redox Activity, Basicity, and Cation Encapsulation in [Xn+P5W30O110](15-n)- Preyssler Complexes, with X = Na+, Ca2+, Y3+, La3+, Ce3+, and Th4+に関する。POM内の2か所の安定サイトが結晶学的に等価であることが記載されている。



非特許文献17は、「Slow Proton Exchange in Aqueous Solution. Consequences ofProtonation and Hydration within the Central Cavity of Preyssler Anion Derivatives, [M(H2O)P5W30O110]n-」に関する。ナトリウムイオンを内包したPreyssler型POMにおいて、POM分子内の一方のサイトにナトリウムイオンが、他方のサイトに水分子が存在していることについて記載されている。



非特許文献18は、「Rigid Nonlabile Polyoxometalate Cryptates[ZP5W30O110](15-n)- That Exhibit Unprecedented Selectivity for Certain Lanthanide and Other Multivalent Cations」に関する。ランタノイドイオンを内包したPreyssler型POMの合成方法について記載されている。



非特許文献19は、Mononuclear Lanthanide Single-Molecule Magnets Based on Polyoxometalatesに関する。POMクラスターが一つの分子で強磁性体の様な磁気ヒステリシスを示す(単一分子磁石、SMM、Single molecule magnet)ことについて記載されている。



さらに、特許文献1は、「色素会合体の構造変換を用いた情報記録再生方法」等に関する。会合体を形成するかしないかの単位で情報記録を行う方法、単一分子を用いた情報記録再生方法が開示されている。



特許文献2は、「微小構造装置」に関する。ポリオキソメタレートを微小構造サイトに配列し、その酸化還元により、メモリ応用する構成が開示されている。



特許文献3は、「ナノ構造のデバイス」等に関する。ナノ構造を被覆するためにリガンドコーティングとしてポリオキソメタレートを用いた構成が開示されている。



しかし、POM分子が単一で誘電ヒステリシスを示す結果は得られていない。さらに、情報記録、保持、読み出しをどのように行うかの知見は得られていない。

産業上の利用分野


本発明は、分子性金属酸化物クラスター、分子性金属酸化物クラスター結晶、分子性金属酸化物クラスター結晶凝集体、分子メモリ、結晶メモリ及び分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
連通孔及び前記連通孔内の一方の開放端側と他方の開放端側とにそれぞれ設けられ、金属イオン及び水分子を包接可能な包接部とを有するクラスター骨格と、前記包接部の一方に包接された金属イオンと、前記包接部の他方に包接された水分子を備え、前記金属イオンの偏りにより分子分極を有することを特徴とする分子性金属酸化物クラスター。

【請求項2】
前記クラスター骨格が略扁平回転楕円体状であり、前記連通孔が回転軸に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分子性金属酸化物クラスター。

【請求項3】
前記クラスター骨格が化学式P530110で表されるポリオキソメタレートであることを特徴とする請求項2に記載の分子性金属酸化物クラスター。

【請求項4】
前記クラスター骨格が下記化学式(1)で表され、化学式(1)においてM1がアルカリ金属、ランタノイドの群から選択されるいずれかの金属イオンであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の分子性金属酸化物クラスター。
M1,H2O-P530110・・・(1)

【請求項5】
前記M1がNa+、Nd3+、Dy3+又はTb3+の群から選択されるいずれかの金属イオンであることを特徴とする請求項4に記載の分子性金属酸化物クラスター。

【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の分子性金属酸化物クラスターと、カウンターカチオンと、水分子を有することを特徴とする分子性金属酸化物クラスター結晶。

【請求項7】
前記水分子として、カウンターカチオンに配位した配位結晶水と、カウンターカチオンに配位しない非配位結晶水とを有することを特徴とする請求項6に記載の分子性金属酸化物クラスター結晶。

【請求項8】
前記分子性金属酸化物クラスターが斜方晶結晶構造を形成していることを特徴とする請求項6又は7に記載の分子性金属酸化物クラスター結晶。

【請求項9】
前記斜方晶結晶構造の格子間に、配位結晶水で配位されたカウンターカチオンと、非配位結晶水とを有することを特徴とする請求項8に記載の分子性金属酸化物クラスター結晶。

【請求項10】
下記化学式(2)で表され、化学式(2)においてM1がNa+、Nd3+、Dy3+又はTb3+の群から選択されるいずれかの金属イオンであり、M2がNa+、K+、Ca2+、Ce4+又はNH4+の群から選択される一又は二種以上のカチオンであり、nが1以上10以下の自然数であり、mが1以上40以下の自然数であることを特徴とする請求項6~9のいずれか1項に記載の分子性金属酸化物クラスター結晶。
M2,(H2O)n[M1,H2O-P530110]・mH2O・・・(2)

【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載の分子性金属酸化物クラスター結晶が凝集されていることを特徴とする分子性金属酸化物クラスター結晶凝集体。

【請求項12】
ペレットであることを特徴とする請求項11に記載の分子性金属酸化物クラスター結晶凝集体。

【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の分子性金属酸化物クラスターを備え、外部電場0における分子分極の大きさと方向を記録単位とすることを特徴とする分子メモリ。

【請求項14】
請求項6~10のいずれか1項に記載の分子性金属酸化物クラスター結晶を備え、外部電場0における一定の質量当たりの分極の合計の大きさと方向を記録単位とすることを特徴とする結晶メモリ。

【請求項15】
請求項1~6のいずれか1項に記載の分子性金属酸化物クラスターを真空加熱して、分子性金属酸化物クラスターから包接水分子を外部に取り出して、水分子を包接しない分子性金属酸化物クラスターを形成する工程と、
前記水分子を包接しない分子性金属酸化物クラスターに電場を印加して、分極を形成する工程と、を有することを特徴とする分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法。

【請求項16】
前記真空加熱は、80℃以上140℃以下に加熱することを特徴とする請求項15に記載の分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法。

【請求項17】
前記真空加熱は、120℃以上に加熱することを特徴とする請求項16に記載の分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法。

【請求項18】
前記電場を印加する際、強誘電発現温度Tc付近まで昇温することを特徴とする請求項15~17のいずれか1項に記載の分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法。
国際特許分類(IPC)
画像

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JP2015232183thum.jpg
出願権利状態 公開


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