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酵素及びその製造方法 NEW コモンズ

国内特許コード P170014495
掲載日 2017年8月8日
出願番号 特願2012-512719
登録番号 特許第5060666号
出願日 平成23年2月1日(2011.2.1)
登録日 平成24年8月10日(2012.8.10)
国際出願番号 JP2011052005
国際公開番号 WO2012104988
国際出願日 平成23年2月1日(2011.2.1)
国際公開日 平成24年8月9日(2012.8.9)
発明者
  • 杉森 大助
  • 松本 優作
出願人
  • 国立大学法人福島大学
発明の名称 酵素及びその製造方法 NEW コモンズ
発明の概要 新規なPLBおよびその製造方法を提供する。
リン脂質のsn-1位およびsn-2位のアシル基を加水分解して、リゾリン脂質、グリセロール-3-リン酸、及び、グリセロール-3-リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素であって、次の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含む酵素である。(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または、(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。酵素活性の高い新規なホスホリパーゼBを提供できる。リン脂質に対して基質特異性を有する。
従来技術、競合技術の概要


ホスホリパーゼBは、グリセロールリン脂質に作用し、リゾリン脂質あるいはグリセロール-3-リン酸ないしグリセロール-3-ホスホコリンなどのグリセロール-3-リン酸エステル化合物を生成する酵素であり、酵素番号E.C.3.1.1.5として知られている。ホスホリパーゼはリン脂質を加水分解する酵素の総称である。リン脂質(グリセロールリン脂質)は、グリセロールの一方のα位(sn-1位)及びβ位(sn-2位)のヒドロキシル基に脂肪酸がエステル結合しており、他方のα位のヒドロキシル基にリン酸基を介してコリン、エタノールアミン、イノシトール等が結合している化合物である。



グリセロールリン脂質におけるグリセロール基のα位の脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼA1と称し、グリセロール基のβ位の脂肪酸エステル基を加水分解する酵素をホスホリパーゼA2と称する。また、ホスホリパーゼA1活性及びホスホリパーゼA2活性を併有する酵素をホスホリパーゼB(PLB)と称する。



また、リン脂質中のα位又はβ位の脂肪酸アシル基のうち、一方のみが除去されたリン脂質をリゾリン脂質と称し、リゾリン脂質に作用して、残っている脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素も、分解生成物が前記PLBの場合と同じであるため、PLBに含められる。なお、リゾリン脂質への作用は、リゾホスホリパーゼ活性と称せられる。



他方、リン脂質のグリセロール基とリン酸基との間のエステル結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼC(PLC)と称する。また、リン酸基とコリンやエタノールアミン等との間の結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼD(PLD)と称する。



上記のようにPLBはリゾホスホリパーゼ活性も併せ持っており、動植物やペニシリウム属の糸状菌、大腸菌、又は酵母などにその存在が知られている。しかしながら、PLBは、リゾレシチンに対する活性は強い一方でジアシル体であるリン脂質に対する作用は極めて弱く、通常のリン脂質を効率よく加水分解する点においては実用的でなかった。また、公知のPLBはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、又はホスファチジルイノシトール等のリン脂質に幅広く作用することが報告されているのみであり、基質特異性を有するものではなかった(非特許文献1、2)。さらに、これら既知のPLBは生産性が極めて低いものであった。



ホスファチジルイノシトールは、大豆レシチンに含まれるものであり、細胞の情報伝達と深く関与していることが数多く報告されてきた。近年、ホスファチジルイノシトールの摂取が血中のトリアシルグリセロール(TG)濃度を減少させ、HDL-C(高比重リポタンパク質コレステロール、一般に言う善玉コレステロール)濃度を上昇させることが報告されている(非特許文献3、4)。そのため、その代謝誘導体であるリゾホスファチジルイノシトールおよびグリセリルホスフォリルイノシトールと共にその生理作用が注目されている。



また、リゾホスファチジルエタノールアミンは、神経細胞栄養物質として、神経細胞の分化誘導作用、および、神経細胞をアポトーシスから保護する作用(アポトーシス抑制作用)を持つことが報告されている(非特許文献5、6)。この他にも、リゾホスファチジルエタノールアミンには、移所運動活性抑制作用、神経活性化作用、細胞保護作用、中枢神経沈静化作用が認められたことが報告されている(非特許文献6)。これらの報告より、リゾホスファチジルエタノールアミンは、虚血性脳障害後に起こるアルツハイマー病や、神経細胞死のような脳神経系の障害に対する予防や治療に期待されている。



さらに、リゾホスファチジルイノシトールは抗カビ作用を持つことも報告されている(特許文献1)。また、リゾホスファチジン酸は、血管収縮作用(非特許文献7)や、強い細胞増殖作用とDNA合成促進作用があることが知られている(非特許文献8)。また、リゾホスファチジルセリンは、肥満細胞の活性化(アレルギーやアトピー性皮膚炎)に関与していることが報告されている(非特許文献7)。また、リゾホスファチジルグリセロールは、麺類改質剤として優れた麺の改質作用を有することが報告されている(特許文献2)。この他にも、リゾホスファチジルグリセロールには強い界面活性作用があり、強い起泡作用を有することが知られている。例えば、強力な乳化力によるO/W乳化の強化、O/W系エマルションの熱安定性の向上、保存性に優れたエマルションの形成、蛋白質や澱粉との優れた結合性、抗菌効果、優れた保湿性、抗酸化作用が知られている。



大豆リゾレシチンは、(1)O/W乳化性が強い、(2)酸性下及び塩類存在下でのエマルジョン安定性が高い、(3)蛋白質との結合や澱粉との結合能で優れた効果を発揮する、(4)離型作用が優れている、等の特徴を有しているところから、近年、その需要が高まっていることが記載されている(特許文献3)。



ホスファチジルエタノールアミンは、大豆レシチンや卵黄レシチンなどに含まれるリン脂質の一成分であり、乳化物の安定化作用があることが知られている。また、卵黄レシチンに存在するホスファチジルエタノールアミンの、特にβ位(sn-2位)には、不飽和脂肪酸が多く結合しており、この不飽和脂肪酸が遊離すると苦みの素となる。したがって、食品加工においては、特にホスファチジルエタノールアミンの加水分解は生じないことが望ましいと言える。しかしながら、これまでにこの目的に適した酵素は見出されていない。



また、グリセロール-3-ホスホコリンは、認知症予防などが期待されている(特許文献4)。この特許文献4では、キャンディダ・シリンドラッセ由来ホスホリパーゼBが報告されているが、このものにおいて分解作用はリパーゼ活性によるものである。また、この文献で、その他に、ペニシリウム・ノタツムとジクティオスレリウム・ディスコイデウム由来のホスホリパーゼBも報告されている。



しかしながら、これらのホスホリパーゼBはすべて糸状菌由来のもので、培養液中への酵素生産に時間を要するといった問題点や、得られる酵素の力価(生産量)が低いなどの問題点がある。さらに、これらの酵素は糸状菌由来であるが故に、その作用pHが酸性域に偏っているため、食品工業などの分野への利用に適していない。

産業上の利用分野


本発明は、新規なホスホリパーゼBおよびその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
リン脂質のsn-1位およびsn-2位のアシル基を加水分解して、リゾリン脂質、グリセロール-3-リン酸、及び、グリセロール-3-リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、酵素:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。

【請求項2】
ジミリストイルホスファチジン酸を基質としたときに、pH8.4で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH7.2からpH10.0の範囲内で50%以上の加水分解活性を示す、請求項1に記載の酵素。

【請求項3】
ジミリストイルホスファチジン酸を基質としたときに、pH8.4で50℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、ホスファチジルコリンに対して95%以上、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルグリセロールに対して20%以上、ホスファチジルセリンに対して25%以上であり、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、トリステアリンおよびジパルミトイルグリセリドに対してほぼ0%である基質特異性を有する、請求項1または2に記載の酵素。

【請求項4】
アミノ酸配列から算出した等電点が6.2~6.6の範囲内である、請求項1から3のいずれかに記載の酵素。

【請求項5】
SDS-PAGEで測定した場合の分子量が38,000~40,000の範囲内であり、アミノ酸組成より分析した場合の分子量が41,000~43,000の範囲内である、請求項1から4のいずれかに記載の酵素。

【請求項6】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項1から5のいずれかに記載の酵素。

【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の酵素をコードする、ポリヌクレオチド。

【請求項8】
以下の(a)又は(c)記載のポリヌクレオチドを含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは
(c)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。

【請求項9】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド。

【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。

【請求項11】
請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは請求項10に記載のベクターが導入され、リン脂質からリゾリン脂質、グリセロール-3-リン酸、及び、グリセロール-3-リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素を産生する能力を保有する、形質転換体。

【請求項12】
前記形質転換体の宿主が、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である、請求項11に記載の形質転換体。

【請求項13】
リン脂質に作用し、該リン脂質を加水分解してリゾリン脂質、グリセロール-3-リン酸、及び、グリセロール-3-リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を生成する酵素を製造する方法であって、
請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは請求項10に記載のベクターを宿主に導入して、該酵素を産生する形質転換体を得る工程;および
該形質転換体を培養して該酵素を産生させる工程;
を含む、製造方法。

【請求項14】
前記宿主が、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物である、請求項13に記載の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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