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アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療剤 NEW

国内特許コード P170014497
整理番号 (S2015-0044-N0)
掲載日 2017年8月8日
出願番号 特願2016-554114
出願日 平成27年10月15日(2015.10.15)
国際出願番号 JP2015079120
国際公開番号 WO2016060190
国際出願日 平成27年10月15日(2015.10.15)
国際公開日 平成28年4月21日(2016.4.21)
優先権データ
  • 特願2014-211671 (2014.10.16) JP
発明者
  • 鈴木 利治
  • 伴 沙緒里
  • 井上 剛
出願人
  • 国立大学法人北海道大学
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療剤 NEW
発明の概要 本発明は、アミロイドβ蛋白質を作用機序とするが、従来の作用機序とは異なるアミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療剤を提供することを課題とする。
本発明は、治療上有効量の本発明のペプチド又はその医薬的に許容可能なエステル、アミド、プロドラッグ若しくは塩及び医薬的に許容可能な担体を含む、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療のための医薬組成物を提供する。
従来技術、競合技術の概要


アルツハイマー病は、認知機能低下(記憶障害など)を主症状とする神経疾患である。特に高齢者で好発するにも関わらず、有効な治療薬が存在せず、高齢化社会を迎えている先進国では大きな問題となっている。アルツハイマー病患者の死後脳では老人斑が観察され、これは「アミロイドβ蛋白質」の凝集体であることが知られている。そして、このアミロイドβ蛋白質がアルツハイマー病の主原因であることは、数多くの研究により広く受け入れられている。



アミロイドβ蛋白質は、その前駆体である「アミロイド前駆体蛋白質」から生成される。アミロイド前駆体蛋白質とは、神経細胞膜上に存在する膜蛋白質である。通常の脳では、その細胞外ドメインをαセクレターゼ、次に細胞膜内ドメインをγセクレターゼで切断されることにより、細胞外にp3と呼ばれるペプチドが産生・遊離される。これは「非アミロイド生成経路」として知られ、アミロイドβ蛋白質は生成されない(非特許文献1)。通常の脳でも、細胞外ドメインは数%ではあるがβセクレターゼによる切断を受け、細胞外にアミロイドβ蛋白質が分泌されている。しかし、アルツハイマー病になる脳では、このアミロイドβ蛋白質の産生量が増加するか、より凝集性の高いアミロイドβ蛋白質分子種が生成されるようになると考えられている。このアミロイドβ蛋白質の凝集する性質が、最終的にアルツハイマー病患者の老人斑(アミロイド凝集体)を形成し、脳内沈着として観察される。



切りだされたアミロイドβ蛋白質は、次第に凝集し、最終的に老人斑(アミロイド凝集体)が形成されるが、その凝集過程の「オリゴマー体(アミロイドβ蛋白質が数個会合したもの)」に、強い神経毒性があることが分かっている。このアミロイドβ蛋白質オリゴマー体は、記憶・学習に必須の神経現象であるシナプス可塑性を阻害することが、in vitro, in vivo 両方で報告されている(非特許文献2,3)。また、このオリゴマー体をマウス脳内に投与すると、記憶・学習能力が失われることも報告されている(非特許文献4,5)。最近の研究により、このオリゴマー体に長期間暴露されると、神経細胞死などが起きることも報告されており(非特許文献6)、アルツハイマー病発症の原因物質として注目されている。



このように、アルツハイマー病の原因としてアミロイドβ蛋白質が広く認識されているにも関わらず、現在臨床的に使われているアルツハイマー病治療薬は、このアミロイドβ蛋白質に作用するようデザインされていない。詳しく述べると、アルツハイマー病治療薬として使われているドネペジル(特許文献1)やメマンチン(特許文献2)は、それぞれアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とNMDA受容体阻害剤として働き、アミロイドβ蛋白質と相互作用するわけではない。いわゆる対処療法薬であるため、アルツハイマー病に対する劇的な改善作用がないのが現状である。



このような背景を受け、作用機序(アミロイド蛋白質)に基づいた新たなアルツハイマー治療薬の開発が進められている。1つは、アミロイド前駆体蛋白質からアミロイドβ蛋白質の産生を抑えようとする試みであり、セクレターゼ制御剤の開発である(非特許文献1)。その中で、γセクレターゼ阻害剤の開発が最も進んでおり、Semagacestat(特許文献3)やBegacestat(特許文献4)など、臨床開発が続々と進められてきた。もう一つの治療法として注目されているのは、脳内のアミロイドβ蛋白質を抗体に認識させ除去させる、抗体療法である。実際、Bapineuzumab(特許文献5)やsolanezumabなど、これまで臨床開発が進められてきた経緯がある。



しかしながら、現在開発の中心となっているアミロイド蛋白質を作用機序とするアルツハイマー治療薬には問題点があることが分かっている。γセクレターゼ阻害剤に関しては、そもそもγセクレターゼの基質はアミロイド前駆体蛋白質だけでなく、約100近くあることが知られている(非特許文献7)。その中には、細胞分化に重要なNotch受容体も含まれており(非特許文献8)、副作用が懸念されている。実際、γセクレターゼ阻害剤として有力候補であったSemagacestat は、2010年に第三相臨床試験で開発が中止されている。また抗アミロイドβ抗体による抗体療法に関しては、血管炎や血管性脳浮腫などが起こる可能性があり、実際、抗体治療剤として有望であったBapineuzumab も、2012年に開発を中止している。



なお、γセクレターゼの基質の中には、切り取られた細胞外ドメインがアミロイドペプチドのように放出されるのも幾つか知られている(非特許文献9,10)。これらのペプチドはγセクレターゼ活性の指標となるので、切られた断片をアルツハイマー病のバイオマーカーにしようという発明は幾つかある(特許文献6,7)。また、Alcadein-βと呼ばれる生体内の膜蛋白質が、γセクレターゼにより切断され、さらにαセクレターゼによっても切断されることによって、37アミノ酸(VLSSQQFLHRGHQPPPEMAGHSLASSHRNSMIPSAAT)からなるペプチドが産生されることも知られている(非特許文献11)。

産業上の利用分野


本発明は、アルツハイマー病の症状である、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害に対する治療効果を有するペプチドおよびその用途に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)~(e)よりなる群より選ばれるいずれかに記載のペプチド:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むペプチド;
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるペプチド;
(c)配列番号1のアミノ酸配列において、1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害に対する治療効果を有するペプチド;及び
(d)配列番号1のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつアミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害に対する治療効果を有するペプチド。

【請求項2】
配列番号2に示すアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のペプチド。

【請求項3】
配列番号3に示すアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のペプチド。

【請求項4】
合成ペプチドである、請求項1に記載のペプチド。

【請求項5】
治療上有効量の請求項1に記載のペプチド又はその医薬的に許容可能なエステル、アミド、プロドラッグ若しくは塩及び医薬的に許容可能な担体を含む、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療のための医薬組成物。

【請求項6】
腹腔内投与されるものである、請求項5に記載の組成物。

【請求項7】
局所投与されるものである、請求項5に記載の組成物。

【請求項8】
別のアルツハイマー病治療剤と併用される、請求項5に記載の組成物。

【請求項9】
アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療に使用するための請求項1に記載のペプチド又はその医薬的に許容可能なエステル、アミド、プロドラッグ若しくは塩。

【請求項10】
治療上有効量の請求項1に記載のペプチド又はその医薬的に許容可能なエステル、アミド、プロドラッグ若しくは塩を治療を必要とする患者に投与することを含む、アミロイドβ蛋白質により誘発される認知障害の治療方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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