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プロテインキナーゼ阻害剤 NEW

国内特許コード P170014560
整理番号 S2016-0363-N0
掲載日 2017年8月29日
出願番号 特願2016-016460
公開番号 特開2017-132743
出願日 平成28年1月29日(2016.1.29)
公開日 平成29年8月3日(2017.8.3)
発明者
  • 藤井 郁雄
  • 藤原 大佑
出願人
  • 公立大学法人大阪府立大学
発明の名称 プロテインキナーゼ阻害剤 NEW
発明の概要 【課題】特定のキナーゼ、特にオーロラキナーゼに対して強い結合性を示すHLHペプチド複合体の提供。
【解決手段】A鎖-B鎖-C鎖からなるHLH構造を有するペプチドを表層に提示したファージライブラリーを作製する工程と、当該ファージライブラリーのファージ表面に提示されたペプチドに標的キナーゼのATP結合部位にATPと競合的に結合するキナーゼ結合性低分子化合物(Analog)、例えば下記式で表されるアデノシンが結合したペプチド複合体のファージライブラリーを作製する工程と、得られたペプチド複合体のファージライブラリーと標的キナーゼを接触させてバイオパニングする工程とによって、標的キナーゼに対する2価阻害剤をスクリーニングすることにより、HLHペプチド複合体を得る。



【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


プロテインキナーゼ(以下、本発明においては「キナーゼ」と称する。)は、二基質反応の一種であるタンパク質のリン酸化反応を触媒し、基質であるタンパク質をリン酸化する。キナーゼは、このリン酸化によってタンパク質の酵素活性や他のタンパク質との会合状態を変化させることから、細胞内における様々なシグナル伝達や代謝の調節因子として機能する。がん細胞においても、キナーゼががん細胞の増殖や移動、浸潤、アポトーシス(細胞死)の調節に関与することから、近年、キナーゼの活性阻害に着目した抗がん剤(キナーゼ阻害剤)の開発が進められている。例えば、チロシンキナーゼ阻害剤である慢性骨髄性白血病の治療薬であるイマチニブが知られている。



しかしながら、キナーゼのATP結合部位の立体構造は互いに相同性が高いので、ほとんどの低分子キナーゼ阻害剤は標的キナーゼ以外のキナーゼに対して非特異的に結合する可能性があり、副作用の原因とも考えられる。そこで、標的とするキナーゼ以外への非特異的な阻害活性が少ない抗がん剤の開発が望まれる。



このような状況下において、標的となるタンパク質を2か所で認識することで選択性が向上した二価阻害剤の開発が行われている。例えば、特許文献1(特表2015-528447号公報)には、非ペプチドの低分子化合物であるIAP二価阻害剤が開示されている。この阻害剤は、標的タンパク質であるXIAPのBIR2ドメインおよびBIR3ドメインの両方を同時に標的とすることにより、一方のドメインを標的とする阻害剤よりもはるかに強力なXIAPアンタゴニストとなり得る。また、非特許文献1(Ricouart, A., Gesquiere, J.C., Tartar, A., & Sergheraert, C. Design of potent protein kinase inhibitors using the bisubstrate approach. J. Med. Chem. 34, 73-78 (1991))には、ATPのアナログとPKA(Protein Kinase A)の基質ペプチドを模倣した合成ペプチドが1~数個のβ-アラニンからなるリンカーで結合された化合物が、非特許文献2(Parang, K., Till, J.H., Ablooglu, A.J., Kohanski, R.A, Hubbard, S.R, & Cole, P.A. Mechanism- based design of a protein kinase inhibitor. Nat. struct. Biol. 8, 37-41 (2001))には、ATPとIRK(Insulin Receptor Protein Kinase)の基質となる合成基質IRS(J. Biol. Chem. 2000, 275, 30394-30398)がリンカーで結合された化合物が開示されている。さらに、非特許文献3(J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 13812-13813)には、PKA阻害剤であるスタウロスポリンと環状ペプチドが3分子のPEG(Polyethylene Glycol)を含むリンカーで結合された化合物が開示されており、当該環状ペプチドはファージ表層提示法(ファージディスプレイ法)を利用して作製されている。



一方、2本のα-ヘリックスとそれらを繋ぐループ(リンカー)を備えたヘリックス-ループ-ヘリックス構造(HLH構造)を有するペプチドは公知である。このHLH構造を有するペプチドでは、2本のα-ヘリックスは、内側に存在するロイシン側鎖の疎水相互作用等により安定なHLH構造を形成し、ロイシン側鎖を保持した状態ではHLH構造が安定に保持される。



これまでに、当該HLH構造を有するペプチド(HLHペプチド)が転写因子p53とMDM2(Murine Double Minute 2)タンパク質との結合を阻害すること(特許文献2:特開2014-1189号公報)や、ヒトインターロイキン-5やサイトカインなどの受容体に直接結合してアゴニストまたはアンタゴニストとして作用すること(特許文献3:特開2011-231085号公報や特許文献4:特開2008-214254号公報)などが知られている。



ところで、特定のタンパク質(標的タンパク質)に強い結合性を示すペプチド又はタンパク質をスクリーニングする方法としてバイオパンニングが知られている(非特許文献3や5)。この方法は、目的とするペプチド等を表層に提示させたファージと、対象となる特定のタンパク質を結合させることで、結合性の強いペプチド等を選択する方法である。この方法では、プレートなどに固定した標的タンパク質とファージを接触させ、結合したファージを回収、増殖させた後に、再度標的タンパク質と接触させることで、標的タンパク質に強く結合するファージが濃縮され、標的タンパク質に強い結合性を示すペプチド等が得られる。従って、このバイオパンニングを利用することで、特定のタンパク質に対して強い親和性を有するペプチド等を比較的容易に見いだすことができる。



しかしながら、これまでのところ、標的タンパク質であるキナーゼに対するHLH構造を有するペプチドを備えた2価阻害剤は見いだされていない。また、非特許文献3には、目的とする環状ペプチドを得るためにバイオパンニングが利用されている。しかし、ここでのスクリーニング法は、ファージ表層提示法で得られたペプチドライブラリーとそれと結合した第1のペプチド鎖を有する第1の複合体と、低分子化合物であるスタウロスポリンとそれと結合した第2のペプチド鎖を有する第2の複合体が、第1のペプチド鎖と第2のペプチド鎖の会合により結合することを利用した方法であるので、低分子化合物とペプチドライブラリーとの距離が正確に把握できない。従って、スクリーニングにより得られたペプチドと低分子化合物を結合するためのリンカーを新たに設計する必要に迫られ、スクリーニングされた結果をそのまま化学的合成に活かすことができない。この結果、スクリーニング精度が低下するという問題があった。

産業上の利用分野


本発明はプロテインキナーゼ阻害剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド鎖のN末端若しくはC末端、又はそのN末端若しくは又はC末端の近傍に直接又は間接に、標的キナーゼのATP結合部位にATPと競合的に結合するキナーゼ結合性低分子化合物が修飾されたキナーゼ結合性ペプチド複合体。
ただし、アミノ酸配列中のアミノ酸Xはそれぞれ天然のタンパク質に見いだされる20種類の何れかのアミノ酸である。

【請求項2】
配列番号2で示されるアミノ酸配列中のアミノ酸Xが、次のアミノ酸である請求項1に記載のキナーゼ結合性ペプチド複合体。
X24はE、G、H、Q、P、V、Rの何れかのアミノ酸、好ましくはE又はH、望ましくはEであり、X25はG、N、T、L、R、Y、Vの何れかのアミノ酸、好ましくはG又はY、望ましくはYであり、X28はW、M、S、A、D、F、Qの何れかのアミノ酸、好ましくはW又はD又はM、望ましくはWであり、X31はW、P、L、I、A、Gの何れかのアミノ酸、好ましくはW又はL又はP、望ましくはWであり、X32はP、V、D、I、G、Wの何れかのアミノ酸、好ましくはP又はV、望ましくはPであり、X35はG,D,E、Y、R、Q、S、Wの何れかのアミノ酸、好ましくはG又はD、望ましくはGであり、X36はW、G、D、M、E、S、Rの何れかのアミノ酸、好ましくはW又はG、望ましくはWである。

【請求項3】
前記キナーゼ結合性低分子化合物は、ATPの前記標的キナーゼの結合性よりも弱い結合性を有する請求項1又は2に記載のキナーゼ結合性ペプチド複合体。

【請求項4】
前記キナーゼ結合性低分子化合物は、アデニン、アデノシン、ADP、AMPの何れかである請求項1~3の何れか1項に記載のキナーゼ結合性ペプチド複合体。

【請求項5】
配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するペプチド鎖のN末端にあるシステイン残基のイオウと、次の化学式1で示される化合物中のマレイミドの3位の炭素が直接又は間接に結合したキナーゼ結合性ペプチド複合体。
ただし、アミノ酸配列中X33はE、G、H、Q、P、V、Rの何れかのアミノ酸、好ましくはE又はH、望ましくはEであり、X34はG、N、T、L、R、Y、Vの何れかのアミノ酸、好ましくはG又はY、望ましくはYであり、X37はW、M、S、A、D、F、Qの何れかのアミノ酸、好ましくはW又はD又はM、望ましくはWであり、X40はW、P、L、I、A、Gの何れかのアミノ酸、好ましくはW又はL又はP、望ましくはWであり、X41はP、V、D、I、G、Wの何れかのアミノ酸、好ましくはP又はV、望ましくはPであり、X44はG,D,E、Y、R、Q、S、Wの何れかのアミノ酸、好ましくはG又はD、望ましくはGであり、X45はW、G、D、M、E、S、Rの何れかのアミノ酸、好ましくはW又はG、望ましくはWである。
【化1】



【請求項6】
前記標的キナーゼはオーロラキナーゼA、オーロラキナーゼC、Erk2、PAK4、PKACαである請求項1~5のいずれか1項に記載のキナーゼ結合性ペプチド複合体。

【請求項7】
次の構造式(化2)で示されるペプチド複合体。
但し、構造式中のA鎖-C鎖-B鎖からなるペプチド鎖は配列番号18~30で示されたアミノ酸配列を有し、構造式中のアミノ酸Xはそれぞれ天然のタンパク質に見いだされる20種類の何れかのアミノ酸である。、
【化2】



【請求項8】
ペプチド鎖を表層に提示したファージライブラリーを作製する工程と、
当該ファージライブラリーのファージ表面に提示されたペプチド鎖にキナーゼ結合性低分子化合物が直接又は間接に結合されたペプチド複合体のファージライブラリーを作製する工程と、
前記ファージライブラリーと標的キナーゼを接触させてバイオパンニングする工程を有し、
前記ペプチド鎖はヘリックス-ループ-ヘリックス構造を有するペプチド部を有し、
前記キナーゼ結合性低分子化合物は、標的キナーゼのATP結合部位にATPと競合的な結合性を有し、ATPの前記標的キナーゼへの結合性よりも弱い結合性を有する標的キナーゼに対する2価阻害剤のスクリーニング方法。

【請求項9】
前記キナーゼ結合性低分子化合物は、アデニン、アデノシン、ADP、AMPの何れかである請求項8に記載のスクリーニング方法。

【請求項10】
前記ファージライブラリーは、前記ペプチドの鎖N末端若しくはC末端、又はそのN末端若しくは又はC末端の近傍のアミノ酸に次の化学式1で示される化合物が直接又は間接に修飾されたペプチド複合体のファージライブラリーである請求項8又は9に記載のスクリーニング方法。
【化1】



【請求項11】
前記ヘリックス-ループ-ヘリックス構造を有するペプチド部は配列番号2又は3で示されるアミノ酸配列からなる請求項8~10の何れか1項に記載のスクリーニング方法。
但し、アミノ酸配列中のXは天然のタンパク質に見いだされる20種のアミノ酸の何れかである。

【請求項12】
前記ペプチドは、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有する請求項8~10の何れか1項に記載のスクリーニング方法。
但し、アミノ酸配列中のXはタンパク質を構成する20種のアミノ酸の何れかである。

【請求項13】
前記標的キナーゼはオーロラキナーゼA、オーロラキナーゼC、Erk2、PAK4、PKACαである請求項8~12のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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