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細胞内酵素タンパク質の構造異常の正常化方法、細胞内酵素タンパク質の構造異常の検出方法、及び、遺伝性代謝病の治療方法ならびにその治療効果の予測・評価方法 NEW

国内特許コード P170014689
整理番号 S2016-0703-N0
掲載日 2017年11月28日
出願番号 特願2016-087502
公開番号 特開2017-195786
出願日 平成28年4月25日(2016.4.25)
公開日 平成29年11月2日(2017.11.2)
発明者
  • 奥宮 敏可
  • 西岡 和輝
  • 石橋 潤一
出願人
  • 国立大学法人 熊本大学
発明の名称 細胞内酵素タンパク質の構造異常の正常化方法、細胞内酵素タンパク質の構造異常の検出方法、及び、遺伝性代謝病の治療方法ならびにその治療効果の予測・評価方法 NEW
発明の概要 【課題】遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の構造異常を化学シャペロン化合物などにより是正した際の当該酵素タンパク質の正常高次構造の形成・維持を判定する技術、ならびに現行の酵素補充療法と化学シャペロン療法を併用した場合の細胞内酵素タンパク質の構造異常を検出する技術を提供すること。
【解決手段】本発明の根幹をなす変異酵素タンパク質の構造異常を是正した際の当該タンパク質の高次構造の形成・維持を検出する技術基盤は、それぞれの遺伝性代謝病の原因となる病因酵素タンパク質の構造異常をそのタンパク質の特定のドメインに親和性を有する低分子化合物(化学シャペロン化合分を含む)を用いて是正した際の当該酵素タンパク質の高次構造の解析に不可欠な技術である。その技術基盤を用いることで、より有効なタンパク質の安定化剤あるいは正常折りたたみ促進剤を検索することが可能となる。また、本発明によれば、プロテアーゼ(キモトリプシン)を使用して、細胞内タンパク質の正常高次構造と異常高次構造を識別することができることから、遺伝性代謝病を含む「タンパク質折りたたみ異常症(Protein mis-folding diseases)」の診断、病型や予後の判定に応用することが可能である。以上のことから、本発明を技術基盤として、さらに効果的な細胞内タンパク質安定化剤や正常折りたたみ促進剤の探索的研究が加速され、酵素タンパク質の高次構造異常を正常化することにより遺伝性代謝病の治療を施す化学シャペロン療法と、従来からの酵素補充療法を併用することによる併用療法がより効果的な治療法として、臨床応用されることを促進することができる。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


人は、一般には複雑な成分で構成されている食品や飲料を摂取し、単純な物質に分解し、これらの分解した物質を基本成分として使用して、生命維持に必要な物質を組み立てている。



このような摂取した物質をそれぞれの栄養素に分解・合成する複雑な代謝を担うのが酵素であり、この酵素は体内で生成される。したがって、その酵素が遺伝的な異常により機能障害や欠損を起こすと、その酵素が正常に機能せずに摂取した物質を正常に分解または合成することができずに体に不可欠な物質を組み立てることができなくなり、様々な遺伝性代謝疾患を発症することになる。



つまり、かかる遺伝性代謝病は、分解されるべき物質が分解されずに毒性のある中間代謝産物などとして蓄積されたり、または体に不可欠な物質が生成できなかったりすることで起こる。



遺伝性代謝病は遺伝的要因による疾患であり、例えば、アミノ酸代謝異常症、先天性代謝異常症、糖質代謝異常症、リソソーム代謝異常症などの疾患が挙げられる。



アミノ酸代謝異常症は、必須アミノ酸のフェニルアラニンからチロシンへ転換するフェニルアラニン水酸化酵素の異常によって生じる疾患である。先天性代謝異常症は、炭水化物、タンパク質、脂肪代謝の先天的異常による特定タンパク質の合成障害により発症する疾患である。糖質代謝異常症は、ガラクトース代謝に関係する酵素異常症により発症する疾患である。リソソーム代謝異常症は、細胞内で不要な物質を消化する役割を果たす、全身のすべての細胞に存在するリソソーム内の酵素が作用せず、または作用が低下して分解されるべき物質が分解されずにリソソーム内に蓄積されて発症する疾患である。



リソソーム代謝異常症は、リソソーム内酵素の遺伝的欠損により数多くの病型が知られている。具体的な疾患としては、例えば、GM1-ガングリオシドーシス、GM2-ガングリオシドーシス、ファブリー病、ゴーシェ病、ポンペ病、ムコ多糖症などのリソソーム病が挙げられる。



かかるリソソーム病の治療には、ファブリー病に対してアガルシダーゼアルファやアガルシダーゼベータ、ゴーシェ病に対してイミグルセラーゼ、ポンペ病に対してアルグルコシダーゼアルファ、ムコ多糖症I型に対してラロニダーゼ、ムコ多糖症II型に対してイズロサルフェース、ムコ多糖症VI型に対してガルサルファーゼの6疾患7種類のリソソーム病酵素補充療法製剤が承認されていて、これらの酵素製剤を点滴静注にて投与することにより、細胞外から細胞内そしてリソソーム内に酵素を輸送し、リソソーム内に蓄積している物質の分解を促進する酵素補充療法がおこなわれている。



酵素補充療法は、臨床症状を改善し、さらにその進行も抑制するとともに、他の根治療法(造血幹細胞移植や遺伝子治療法など)に比べて安全性が高いことが利点である。しかし、酵素製剤が到達しにくい中枢神経や角膜などへの効果は期待できないことや酵素製剤に対する抗体が産生され細胞内への取り込みが著しく低下すること、酵素製剤自体が極めて高額であることから国民医療費への負担が大きいことに加え、頻回の点滴治療が生涯必要であり患者への負担は少なくない。以上のごとく、酵素補充療法は、今後解決すべき課題が多い治療法でもある。



酵素補充療法に加えて、遺伝性代謝病の治療に化学シャペロン療法という新しい治療法が研究されている。



化学シャペロン療法とは、遺伝性代謝病の病因となる変異酵素タンパク質が細胞内で合成される際に、酵素の活性中心に化学シャペロン化合物が結合することで、不安定な構造異常を形成する運命にあった変異酵素タンパク質を正常高次構造の酵素タンパク質へと導き、酵素タンパク質の細胞内安定性を維持することで、その酵素タンパク質本来の機能を発揮させ、細胞内に過剰蓄積した生体内基質を分解処理することで細胞障害を改善することを基本原理とする、遺伝性代謝病の治療方法の一つと考えられている。しかし、これまで化学シャペロンにより細胞内酵素タンパク質の正常高次構造が形成・維持されていることを証明した報告はなく、本発明が提供する技術によりその事実が初めて証明された。



現在では、去痰剤として汎用されるアンブロキソール塩酸塩(ムコソルバン錠)がゴーシェ病に対する治療薬として承認され、特定の変異遺伝型を有するゴーシェ病の治療に使用されている。



これまで数多くの化合物が化学シャペロン化合物として研究されてきた(非特許文献1~9)。しかしながら、上述したようなアンブロキソール塩酸塩(ムコソルバン錠)がゴーシェ病に対する治療薬として承認されているだけである。



そこで、発明者らは、化学シャペロン療法が、酵素補充療法に比べて、中枢神経症状への応用、免疫反応による副作用、治療費用の問題において有利であると考えられることから、さらに幅広く化学シャペロン候補化合物をスクリーニングした結果、リソソーム病の一つであるポンペ病(酸性α-グルコシダーゼ欠損症:II型糖原病)に対する化学シャペロン化合物として、イミノ糖の一種であるデオキシノジリマイシンならびにその誘導体が、ポンペ病由来変異酵素を正常高次構造の酵素タンパク質へと導き、細胞内でのプロセシングを正常化することを見いだして、本発明を完成した。



発明者らは、上述の研究に加えて、プロテアーゼにより、遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の構造異常を検出することができることを確認して、この発明を完成した。



つまり、遺伝性代謝病は、遺伝子変異が原因で酵素タンパク質の正常高次構造が崩れ、それにより酵素タンパク質が正常な酵素作用を機能することができず細胞内に生体内基質が過剰蓄積して発症する疾患である。このように酵素タンパク質の高次構造の異常を検出することは、遺伝性代謝病の新規治療法の開発や既存治療法の治療効果の予測・評価ならびに診断の際に非常に有用である。



また、本発明者らは、本来であれば異常な高次構造を形成するはずの遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質が、上述の化学シャペロン化合物により正常高次構造へと導かれプロセシングが促進することを、プロテアーゼに対する抵抗性を調べることで証明し、この発明を完成した。



さらに、本発明者らは、上述の化学シャペロン化合物と酵素補充を併用することにより、酵素補充療法により細胞内に取り込まれた酵素製剤の正常高次構造の形成・維持ならびにプロセシングを促進することを見いだした。つまり、酵素補充療法による酵素製剤と、化学シャペロン療法による化学シャペロン化合物の同時添加により、細胞内の酵素活性が相乗的に上昇することを認めて、この発明を完成した。

産業上の利用分野


本発明は、化学シャペロン化合物による酵素タンパク質の構造異常の正常化方法、プロテアーゼを用いた細胞内酵素タンパク質の高次構造異常の検出方法、および化学シャペロン化合物療法と酵素補充療法の併用療法による遺伝性代謝病の治療方法、ならびにその治療効果の予測・評価方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
化学シャペロン化合物によって、細胞内において遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の変異高次構造を正常高次構造にプロセシングして遺伝性代謝病の酵素タンパク質の変異高次構造を正常高次構造に正常化することを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法。

【請求項2】
請求項1に記載の遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法であって、前記化学シャペロン化合物による遺伝性代謝病の変異酵素タンパク質の変異高次酵素を正常高次構造に正常化することにより細胞内の基質酵素タンパク質を分解することを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法。

【請求項3】
請求項1または2に記載の遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法であって、前記化学シャペロン化合物が、それぞれの遺伝性代謝病で原因となる固有の酵素タンパク質の特定のドメインに親和性が高く、可逆的かつ競合的阻害作用を有するような基質類似体(アナログ)であることを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法。

【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法であって、前記化学シャペロン化合物が、デオキシノジリマイシンまたはその低級C1-C6アルキルもしくは高級オキシC7-C12アルキル誘導体であることを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法。

【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法であって、前記化学シャペロン化合物が、デオキシノジリマイシン、N-メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシルのN-低級C1-C6アルキルデオキシノジリマイシンであること、またはN-(7-オキソデシル)またはN-(8-オキソドデシル)のN-(オキソ高級C7-C12アルキル)デオキシノジリマイシンであることを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法。

【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法であって、前記化学シャペロン化合物が、デオキシノジリマイシン、N-ブチルデオキシノジリマイシンまたはN-(7-オキサデシル)デオキシノジリマイシンであることを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法。

【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法であって、前記遺伝性代謝病が、脂質、多糖類またはムコ多糖類の代謝不全症であることを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法。

【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法であって、前記遺伝性代謝病が、GM1-ガングリオシドーシス、GM2-ガングリオシドーシス、ファブリー病もしくはゴーシェ病から選ばれる脂質代謝不全症、ポンペ病の多糖類代謝不全症またはムコ多糖症I型とムコ多糖症II型から選ばれるムコ多糖類代謝不全症であることを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造正常化方法。

【請求項9】
プロテアーゼにより遺伝性代謝病の酵素タンパク質の異常高次構造または正常高次構造を検出することを特徴とする遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法。

【請求項10】
請求項9に記載の遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法であって、前記プロテアーゼがキモトリプシンであることを特徴とする遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法。

【請求項11】
請求項9または10に記載の遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法であって、前記プロテアーゼがTLCK処理キモトリプシンであることを特徴とする遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法。

【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法であって、異常酵素タンパク質により蓄積する基質酵素タンパク質が分解されることを特徴とする遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法。

【請求項13】
請求項9ないし12のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法であって、変異酵素タンパク質が化学シャペロン化合物によりプロセシングが促進され正常高次構造に保持されていることを特徴とする遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法。

【請求項14】
請求項13に記載の遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法であって、化学シャペロン化合物が、細胞内に取り込まれた変異酵素タンパク質の折り畳み異常を抑制することを特徴とする遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法。

【請求項15】
請求項13または14に記載の遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法であって、前記化学シャペロン化合物が、それぞれの遺伝性代謝病で原因となる固有の酵素タンパク質の特定のドメインに親和性が高く、可逆的かつ競合的阻害作用を有するような基質類似体(アナログ)であることを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造の検出方法。

【請求項16】
請求項13ないし15のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造の検出方法であって、前記化学シャペロン化合物が、デオキシノジリマイシンまたはその低級C1-C6アルキルもしくは高級オキシC7-C12アルキル誘導体であることを特徴とする遺伝性代謝病の病因酵素タンパク質の高次構造の検出方法。

【請求項17】
請求項13または16に記載の遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法であって、前記化学シャペロン化合物が、デオキシノジリマイシン、N-メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシルのN-低級C1-C6アルキルデオキシノジリマイシンであること、またはN-(7-オキソデシル)またはN-(8-ドデシル)のN-(オキソ高級C7-C12アルキル)デオキシノジリマイシンであることを特徴とする遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法。

【請求項18】
請求項13ないし17のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法であって、前記化学シャペロン化合物が、前記化学シャペロン化合物が、前記化学シャペロン化合物が、デオキシノジリマイシン、N-ブチルデオキシノジリマイシンまたはN-(7-オキサデシル)デオキシノジリマイシンであることを特徴とする遺伝性代謝病の酵素タンパク質高次構造の検出方法。

【請求項19】
遺伝性代謝病に関連する変異酵素タンパク質の高次構造異常を化学シャペロン化合物により正常高次構造にプロセシングして正常化する化学シャペロン療法と、異常高次構造の変異酵素タンパク質に対応する正常高次構造の酵素タンパク質を補充して遺伝性代謝病を治療する酵素補充療法とを併用することを特徴とする遺伝性代謝病の併用療法。

【請求項20】
請求項19に記載の遺伝性代謝病の併用療法であって、前記化学シャペロン化合物が、それぞれの遺伝性代謝病で原因となる固有の酵素タンパク質の特定のドメインに親和性が高く、可逆的かつ競合的阻害作用を有するような基質類似体(アナログ)であることを特徴とする遺伝性代謝病の併用療法。

【請求項21】
請求項19または20に記載の遺伝性代謝病の併用療法であって、前記化学シャペロン化合物が、デオキシノジリマイシン、N-メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシルのN-低級C1-C6アルキルデオキシノジリマイシンであること、またはN-(7-オキソデシル)またはN-(8-ドデシル)のN-(オキソ高級C7-C12アルキル)デオキシノジリマイシンであることを特徴とする遺伝性代謝病の併用療法。

【請求項22】
請求項19ないし21のいずれか1項に記載の遺伝性代謝病の併用療法であって、前記化学シャペロン化合物が、デオキシノジリマイシン、N-ブチルデオキシノジリマイシンまたはN-(7-オキソデシル)デオキシノジリマイシンであることを特徴とする遺伝性代謝病の併用療法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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