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イオン性液体中でのPd/C触媒を用いたHeck反応 コモンズ

国内特許コード P03A000566
整理番号 U2000P188
掲載日 2003年8月28日
出願番号 特願2001-065162
公開番号 特開2002-265394
登録番号 特許第3541223号
出願日 平成13年3月8日(2001.3.8)
公開日 平成14年9月18日(2002.9.18)
登録日 平成16年4月9日(2004.4.9)
発明者
  • 横山 千昭
  • 萩原 久大
出願人
  • 学校法人東北大学
発明の名称 イオン性液体中でのPd/C触媒を用いたHeck反応 コモンズ
発明の概要 環境負荷の小さいイオン性液体中でのHeck反応において、触媒の再利用が容易な反応形式を提供する。イオン性液体中において、Pd/C触媒存在下に、一般式I:Ar-X(I)[Arは置換又は無置換の芳香族化合物。Xはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、又はハロゲン。]の化合物と、一般式II:[R′はアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、ハロゲン原子、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基又はシリル基。]のオレフィンとを反応させて、一般式III:の化合物を製造する方法。
従来技術、競合技術の概要
パラジウム触媒を用いて、ハロゲン化アリールやアリールトリフルオロメタンスルホネートとオレフィンの反応により新たにC-C結合を形成させる反応は、Heck反応と呼ばれ、有機合成化学の分野において現在でも多くの研究者により基礎研究および応用研究が行われている。パラジウム触媒を用いたC-C結合を形成させるための同様な反応としては、Stille反応、Suzuki反応等が挙げられる。各反応は、いずれも利点と欠点を有しており、目的生成物の構造や、反応条件等の制約から、最適な反応が選定される。C-C結合を形成させる反応は、医薬品等の製造において有用であり、これらの反応の工業化が要望されている。
【0003】
Stille反応は、ビニルスズ化合物を反応させるものであり、基質を一旦ビニルスズ化合物に誘導した後に、Pd触媒反応を行う。有機スズ化合物は毒性が指摘されており、現実には、医薬品製造に使用することはできない。
【0004】
Suzuki反応は、有機ホウ素化合物を反応させるものであり、基質を一旦有機ホウ素化合物に誘導した後に、Pd触媒反応を行う。有機ホウ素化合物も将来的には使用禁止の方向にあるため、医薬品製造におけるSuzuki反応の利用も困難になってきている。
【0005】
従って、パラジウム触媒を用いる反応としてはHeck反応が有用であり、、特に適用範囲が広く、将来的に、医薬品等の製造においてはHeck反応のみが生き残っていくと考えられる。
【0006】
このHeck反応を工業化するためには、プロセスの経済性を高める必要がある。一般の有機溶媒中で有機パラジウム化合物を触媒とする反応では、反応の進行とともに、パラジウムが金属として析出し、パラジウムブラックと呼ばれる状態になり、触媒活性が失われる。従って、高価な有機パラジウム触媒を再利用することはできない。また、触媒活性を高めるために毒性を有するホスフィン配位子を使用しなければならないため、環境負荷の問題も生じる。さらに、有機パラジウムは安定性(空気や水分に対する化学的安定性)に問題があるために取扱いに注意を要するといった欠点がある。このような欠点がHeck反応を工業的に利用する際の大きな問題点となっていた。
【0007】
そこで、上記の有機パラジウム触媒を用いた場合の問題点を解決するために、有機溶媒に替わって、イオン性液体を用いたHeck反応に関する研究がすでに行われるようになった。イオン性液体の使用は、有機溶媒の使用を回避できることから環境にもやさしく、イオン性溶媒は、有機溶媒や超臨界CO2、水にはない特徴を有し、使いやすい溶媒として注目されている。
【0008】
イオン性液体を溶媒とするHeck反応としては、第一に、イオン性液体として、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロマイドとテトラオクチルアンモニウムブロマイドを用い、アリールハライドとブチルアクリレートを用いたHeck反応が挙げられる(D. E. Kaufmann, M. Nouroozian, H. Henze SYNLETT, 1091~1092, 1996年)。このHeck反応は、触媒として2種類の有機パラジウム化合物、塩化パラジウムを使用し、塩基としてトリエチルアミンを添加している。この反応で得られた生成物は、分液操作によりジクロロメタンで抽出している。従って分液後の水洗によって生ずる水廃液の処理が必要となる。この反応は、ホスフィン配位子が不要であることを示した。この論文中には、数回反応を繰り返しても反応が進行したという記述があるが、反応率等のデータが示されていない。この反応系では、イオン性液体とパラジウム化合物の分離が困難であり、イオン性液体の回収ができないことが問題点として挙げられる。
【0009】
第二に、5種類のイオン性液体を用いて、アリールハライド又はベンゾイックアンハイドライドとアルケン(エチルアクリレート)とのHeck反応が挙げられる(A. J. Carmichaelら, Org. Lett., 1(7), 997~1000, 1999年)。この論文では、イオン性液体の比較、添加物の効果、塩基の効果について調べており、その結果、イオン性液体としては、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロリン酸塩({bmin}{PF6})が最も良い結果を与えることを示している。ホスフィン配位子を加えない場合、転化率は低くなり、高転化率を得るためには反応温度を高くする必要がある。さらに触媒、溶媒の再利用の検討を行っており、6回の繰り返しでも活性の低下は見られない旨が記載されている(ただし、詳細なデータは示されていない)。この反応系は、触媒がイオン性液体に溶解性を有するために、やはり溶媒と触媒の分離が困難である。
【0010】
第三に、8種類のイオン性液体を用いて、触媒は独自に合成した有機パラジウム錯体および市販の有機パラジウム化合物の両者を使用したHeck反応が挙げられる(W. A. Herrmann, V. P. W. Bohn, J. Orgametallic Chem., 572, 141~145, 1999年)。ここでは使用する塩基、添加剤、イオン性液体の最適な組み合わせを調べている。触媒を溶解した溶媒を8回繰り返し使用した場合でも、触媒は高活性を維持するデータが示されている。この反応系は均一系であり、これもやはり触媒と溶媒の分離は困難である。
【0011】
第四に、2種類のイオン性液体を用いて、触媒としてPd(OAc)2を使用したHeck反応が挙げられる(L. Xu, W. Chen, J. Xiao Organometallics, 19, 1123~1127, 2000年)。ここでは、Pd(OAc)2とイオン性液体との反応によってカルベン錯体が生成していることを証明した(これが触媒として機能している)。触媒の再利用検討は行っていない。この反応系も均一系であり、触媒と溶媒の分離が困難である。
【0012】
上記の例は、イオン性液体を溶媒とすることで、有機パラジウム金属触媒+溶媒を再利用できることを示した。このようにイオン性触媒を溶媒として有機パラジウム化合物を触媒として用いた場合、この溶媒+触媒の混合系から生成物を分離することは容易であり(有機溶媒を用いた場合よりも容易、水廃液はなく、塩の分離も不要)であり、さらに溶媒+触媒の混合系を再利用できるという利点があるものの、溶媒と触媒は均一に溶解しており、両者の分離精製は困難であり、溶媒と触媒を単独に再生させることは困難である。
【0013】
そこで、イオン性液体中でのHeck反応において、イオン性液体と触媒を分離が問題となる。上記の例には、イオン性液体中で、固体の表面にパラジウムを担持した触媒を用いた例は見あたらない。これまでに有機溶媒中でPd/C、Pd/Al23などの担持金属触媒を用い研究例は報告されているが、その触媒活性は一般に有機パラジウム化合物の触媒活性よりも低いことが示されている。また、担持金属触媒を用いると、反応系によっては触媒の活性点表面に反応の副生成物である塩類が析出し、触媒活性が急激に低下し、また再利用もされていない。
産業上の利用分野
本発明は、環境負荷の小さいイオン性液体中での、再利用可能なPd/C触媒を用いたHeck反応による芳香族オレフィンの製造方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】イオン性液体中において、Pd/C触媒存在下に、一般式I:
Ar-X (I)
[式中、
Arは、置換又は無置換の芳香族化合物を表し、
Xは、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表す]
を有する化合物と、一般式II:
【化学式1】
[式中、R’は、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基 、ハロゲン原子、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基又はシリル基を表す]
を有するオレフィンとを反応させることにより、一般式III:
【化学式2】
[式中、Ar及びR’は、上述の定義と同様である]
を有する化合物を製造する方法。
【請求項2】イオン性液体中において、Pd/C触媒存在下に、一般式IV:
【化学式3】
[式中、
Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、イミド基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基又はホスホノ基を表し、
Xは、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表す]
を有する化合物と、一般式II:
【化学式4】
[式中、R’は請求項1の定義と同様である]
を有するオレフィンとを反応させることにより、一般式V:
【化学式5】
[式中、R及びR’は、上述の定義と同様である]
を有する化合物を製造する方法。
産業区分
  • 有機化合物
  • その他無機化学
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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