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スピンバルブトランジスタ

国内特許コード P03A002118
整理番号 E058P01
掲載日 2003年10月1日
出願番号 特願2001-382827
公開番号 特開2003-188390
登録番号 特許第4162888号
出願日 平成13年12月17日(2001.12.17)
公開日 平成15年7月4日(2003.7.4)
登録日 平成20年8月1日(2008.8.1)
発明者
  • 佐藤 俊彦
  • 秋永 広幸
  • 本田 元就
  • 樽茶 清悟
  • 大野 圭司
  • 横山 浩
出願人
  • 独立行政法人産業技術総合研究所
発明の名称 スピンバルブトランジスタ
発明の概要 磁気抵抗変化の大幅な向上による信号レベルの減少を抑えて信号体雑音比を高めることができるスピンバルブトランジスタを提供する。半導体層(400)上に直に成長させた第一の磁性体層(200)と、この第一の磁性体層(200)上に、順にトンネルバリア層(300)と、第二の磁性体層(100)とを積層した構造を有するスピンバルブトランジスタであって、前記半導体層(400)上にアバランシェブレイクダウンによる電子増倍層(410)を設ける。
従来技術、競合技術の概要
従来、このような分野の技術としては、例えば、
(1)K.Mizushima,T.Kinno,K.Tanaka,and T.Yamauchi,Physical Review B,Vol.58,no.8,1998,pp.4660-4665
(2)D.J.Monsma,J.C.Lodder,Th.J.A.Popma,and,B,Dieny,Physical Review Letters,Vol.74,no.26,1995,pp.5260-5263
に開示されるものがあった。
【0003】
上記文献には、トンネル磁気抵抗効果(TMR)に基づく磁気センサとして、スピンバルブトランジスタ(SVT)素子が提案されている。
【0004】
SVT素子は、従来の磁気抵抗効果素子に比べ大きな磁気抵抗効果を示すため、再生用磁気ヘッドや磁気メモリとしての応用が期待されている。
【0005】
図8は従来のSVT素子の構成図である。
【0006】
この図に示すように、SVT素子は、半導体基板(半導体層)400の上に、第一の磁性体層200、トンネルバリア層(誘電体層)300、及び第二の磁性体層100が、この順に積層された構造を有する。ここで、半導体基板400は、オーミックコンタクト領域401内に形成されたコレクタ電極550を通じて、外部電気回路に接続される。その半導体基板400上に形成される第一の磁性体層200には、上部に半導体基板400を介さず、直接外部回路と電気的接続を行うベース電極530が形成されている。
【0007】
一方、第二の磁性体層100は、金属配線層から成るエミッタ電極510を通じて外部電気回路に接続される。
【0008】
また、エミッタ電極510とベース電極530の間には、エミッタ電圧710が印加され、コレクタ電極550とベース電極530の間には、コレクタ電圧750が印加される。ここで、エミッタ電極510に流れる電流をエミッタ電流610とし、ベース電極530に流れ込む電流をベース電流630とし、コレクタ電極550に流れ込む電流をコレクタ電流650とする。なお、800は外部磁界である。
【0009】
図9は、SVT素子において、第一の磁性体層200、トンネルバリア層300、第二の磁性体層100及び半導体基板400の各層と、これらの界面で実現される、バンド構造を示す図である。
【0010】
図9では、第一の磁性体のフェルミレベルがEF1、第二の磁性体のフェルミレベルがEF2と表示されている。また、図9は、エミッタ電圧710が、エミッタ電極510を、ベース電極530に対してVE だけ負にバイアスしており、かつ、ベース電位とコレクタ電位が同電位に設定されている(つまり、コレクタ電圧はゼロである)場合を表している。
【0011】
上記二種類の磁性体層100,200間にバイアス電圧Vを印加すると、これら二層の磁性体層の間に、トンネルバリア層300を介したトンネル電流Iが流れる。トンネル抵抗Rは、R=V/Iで定義できる。このトンネル抵抗Rの大きさを観測すると、上記第一及び第二の磁性体層200,100間の磁化の向きが平行か反平行であるかによって、トンネル抵抗Rが変化する。このようなトンネル抵抗Rの変化を、磁気抵抗変化と呼ぶ。磁気抵抗変化が生じる原因は、両磁性体中での、フェルミ面付近の状態密度分布の非対称性に有る。すなわち、第一の磁性体層200のマジョリティスピンの向きが上向きであり、また、第二の磁性体層100のマイノリティスピンの向きも上向きであるとき、同じ向きのスピンの状態間のトンネルしか許されないことから、第二の磁性体層100から見た第一の磁性体層200の空き準位の密度は相対的に小さく、トンネル確率が小さくなる。このような両磁性体層100,200の磁化の配置を、磁化の反平行配置と呼ぶ。
【0012】
一方、上記のように第一の磁性体層200のマジョリティスピンの向きが上向きであり、かつ、第二の磁性体層100のマジョリティスピンの向きも上向きであるとき、第二の磁性体層100から見た第一の磁性体層200の空き準位の密度は相対的に大きく、トンネル確率が大きくなる。このような両磁性体の磁化の配置を、磁化の平行配置と呼ぶ。
【0013】
トンネル確率の小さい反平行配置の時は、上記トンネル抵抗Rはより大きくなり、トンネル確率の大きい平行配置の時は、上記トンネル抵抗Rは小さくなる。磁気抵抗変化が生じることにより、上記バイアス電圧Vが一定であれば、外部磁界800の変化によって、磁化の平行配置と反平行配置の間のスイッチが起こり、上記トンネル電流が変化する。
【0014】
SVT素子では、第二の磁性体層100から第一の磁性体層200へ注入されるトンネル電子のうち、第一の磁性体層200を透過して、一部の電子が半導体基板400に到達できる構造となっている。
【0015】
本発明によるSVT素子では、この半導体層(半導体基板)に到達する電子に起因する電流を電流信号とする。言い換えれば、コレクタ電流650の外部磁界800による変化が、センサー信号である。
【0016】
上記の半導体層に到達する電子は、図9に示したエミッタ・ベース間バイアス電圧の存在により、第二の磁性体層100のフェルミレベルEF2付近のエネルギー準位に端を発し、第一の磁性体層200中のフェルミレベルEF1より十分高いエネルギー準位を経て半導体層400に到達する、ホットエレクトロンHEが主体であると考えられる。
【0017】
ここで、第一の磁性体層200中のフェルミレベルEF1より十分高いエネルギー準位においては、上向きスピンの状態密度が、下向きスピンの状態密度に比べて遙かに大きく、第二の磁性体層100から第一の磁性体層200に注入される電子は、上向きスピンのものにほぼ限定されると見て良い。このため、両磁性体層の磁化の向きが平行か反平行であるかによって、第二の磁性体層100のスピン分極率を忠実に反映した、極めて大きい磁気抵抗効果が得られる。
【0018】
一方、第二の磁性体層100のフェルミレベルEF2より十分低いエネルギー準位に端を発した電子は、第一の磁性体層200中のフェルミレベルEF1より高いエネルギー準位ではあるが、ショットキーバリア高さよりも低いエネルギー準位へ注入されるため、半導体層(半導体基板)400には、ほとんど到達せず、第一の磁性体層200を通じて外部回路へ流れ、ベース電流530を形成する。
【0019】
図9にも示されているように、これらの低エネルギー電子のトンネルに関与する第一の磁性体層200中の電子状態は、あまり大きなスピン分極を持たず、したがって、ベース電流530には、大きな磁気抵抗効果は期待できない。
【0020】
以上の議論から、第一の磁性体層200中の十分高いエネルギー準位を経由して半導体層400に到達する電子(ホットエレクトロン)を主体としたコレクタ電流650は、より低いエネルギー準位を経由する電子を主体としたベース電流530に比べ、より大きな磁気抵抗変化(磁気電流変化ともいう)を発生すると結論される。
【0021】
SVT素子は、第一の磁性体層200と半導体層400の界面に生成される「ショットキーバリアのフィルタ効果」により、第一の磁性体層200に注入されるトンネル電子全体の中から、より大きな磁気抵抗変化を生じるホットエレクトロンHEのみを抽出し、コレクタ信号とする素子である。
産業上の利用分野
本発明は、再生用磁気ヘッドや磁気メモリとしての応用が期待されるスピンバルブトランジスタに関するものである。
特許請求の範囲 【請求項1】 半導体層上にアバランシェブレイクダウンによる電子増倍層が形成され、該電子増倍層上に第一の磁性体層が積層され、該第一の磁性体層上に、順にトンネルバリア層と、第二の磁性体層とを積層した構造を有することを特徴とするスピンバルブトランジスタ。
【請求項2】 請求項1記載のスピンバルブトランジスタであって、前記第一の磁性体層と、前記半導体層上に設けたアバランシェブレイクダウンによる電子増倍層との間に、高濃度ドープ半導体から成るバッファ層を設けることを特徴とするスピンバルブトランジスタ。
【請求項3】 半導体層上にn型半導体層及びp型半導体層をこの順に成長させ、前記p型半導体層上に、第一の磁性体層を成長させ、該第一の磁性体層上に、順にトンネルバリア層と、第二の磁性体層とを成長させたスピンバルブトランジスタであって、コレクタバイアスが、前記pn接合を逆バイアスすることによって電子増倍機構を得ることを特徴とするスピンバルブトランジスタ。
【請求項4】 請求項1、2又は3記載のスピンバルブトランジスタであって、前記第一の磁性体層として、100Å以下の厚さのFeを用いることを特徴とするスピンバルブトランジスタ。
【請求項5】 請求項1、2、3又は4記載のスピンバルブトランジスタであって、前記半導体層としてGaAsを用いることを特徴とするスピンバルブトランジスタ。
産業区分
  • 固体素子
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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22157_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) ERATO 樽茶多体相関場プロジェクト 領域
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