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陽電子を用いた材料評価装置および評価方法

国内特許コード P03A003014
整理番号 ZA99P05
掲載日 2003年12月22日
出願番号 特願平11-300700
公開番号 特開2001-116706
登録番号 特許第3585789号
出願日 平成11年10月22日(1999.10.22)
公開日 平成13年4月27日(2001.4.27)
登録日 平成16年8月13日(2004.8.13)
発明者
  • 白井 泰治
  • 荒木 秀樹
  • 吉田 政司
出願人
  • 独立行政法人 科学技術振興機構
  • 白井 泰治
  • 住友金属テクノロジー株式会社
発明の名称 陽電子を用いた材料評価装置および評価方法
発明の概要 陽電子を材料に入射してその寿命および発生γ線を計測する装置において、線源と被測定材料とを隔離して設置しても、より多くの陽電子をエネルギー損失少なく入射でき、それによって被測定試料の加熱や冷却および種々の計測が容易にできる装置、およびその計測方法の提供。陽電子線源、電磁レンズ、陽電子検出器、γ線測定器からなり、陽電子線源と電磁レンズとの距離を任意に変えて固定できる機構を有し、かつ少なくとも陽電子線源から被測定材料までの陽電子飛翔経路は、真空に保持できる材料評価装置。陽電子線源の中心位置が、電磁レンズの磁場の外にあり、電磁レンズ磁場の上端から電磁レンズの有効口径の1.5倍の距離までの範囲内である上記の材料評価装置。およびこれらの装置を用いた、材料に入射された陽電子の寿命の測定による材料評価の方法。
従来技術、競合技術の概要
近年の高度かつ精密な技術の進展に伴い、様々な分野において用いる材料に対する要求はますます厳しくなり、不純物がきわめて少なく、その上、内在する欠陥も極度に低減された材料が強く要望されるようになっている。たとえば、超高密度集積回路(超LSI)などの基板に用いられるシリコンでは、回路の安定動作のため、テンナイン%以上の超高純度であって、しかも転位は皆無で空孔や空孔集合体のようなわずかな欠陥、すなわち結晶学的微少欠陥も可能な限り少ない単結晶が要求される。また、金属の高温強度、疲労強度、破壊強度など、極限状態で使用される場合の強度に対し、わずかな欠陥すなわち転位ばかりでなく空孔や空孔集合体のような結晶学的微少欠陥も、大きな影響を及ぼしてくる。このような、材料中に存在する原子空孔、空孔集合体、あるいは転位のような結晶格子の欠陥の種類や量などを、きわめて敏感に検出する方法に陽電子寿命を測定したり、陽電子の消滅する際に発生するγ線を計測評価する方法がある。
【0003】
陽電子とは、電子と同じ質量を有し、電子と全く同じ絶対値のプラスの電荷を持った素粒子の一つであり、特定の放射性同位元素の崩壊過程で発生する。この陽電子(β)は、金属など材料の中に入射すると短時間で入射の運動エネルギーをなくし、その後の挙動は通常の電子と同じ熱運動となる。金属、半導体、化合物等の材料は、プラスの電荷を有する核の周りにマイナスの電荷を持つ電子が取り囲んだ構造である、原子の集合体からできており、これらの材料の多くは、その集合体を構成する原子が、3次元空間に規則正しく立体的な格子状配列をした結晶体の形態を取っている。たとえば金属などの結晶では、プラスの電荷を持つイオンの配列からできているので、その中に入った陽電子は、イオンとは同符号同志のため反発しあって結晶格子間に広がり、動き回っている電導電子などと衝突し合体して消滅する。
【0004】
しかし、空孔や転位など原子の不足した結晶格子の欠陥は、相対的にマイナスに帯電しているので、プラスの陽電子はその部分にまず捕獲され、やがては電子と衝突して合体消滅する。この陽電子が電子と衝突して合体消滅するとき、エネルギーが511keVの、方向がほぼ正反対の2本のγ線を放出する。陽電子が材料に入射してから、電子と衝突して消滅するまでの時間は、欠陥のない部分にある場合と、欠陥に捉えられた場合とでは異なり、欠陥の形によっても異なる。そこで、陽電子の入射より消滅までの時間変化を解析すれば、欠陥の状態を把握することができるのである。また、陽電子と電子との衝突消滅から発生するγ線は、電子の運動によるドップラー効果で波長のずれを生じ、さらに正反対の方向に放出されるγ線の相対角度も、その電子の持つ運動量によってずれを生じる。これらを解析することにより、さらに詳しく欠陥の情報を知ることができ、材料の状態をより精密に評価できる。
【0005】
陽電子は、前述のようにβ壊変型放射性同位体の崩壊過程で発生する。そこで一般的には、線源としてこの放射性同位体を用い、線源と被測定材とを密着させて計測される。たとえば、22Naは半減期が長く、入手しやすく取り扱いが容易で、NaClなどの形をしていて化学的にも安定であり、通常Ni箔などのカプセルに封入されて線源として使用される。この22Naはβ崩壊の際、1.28MeVのγ線を放出するので、線源を被測定材料にて挟む形にして密着させておき、シンチレーションカウンターなどの検出器を用意して、1.28MeVのγ線を感知後、511keVのγ線線が検出されるまでの時間を計測する。すなわち、線源と材料との距離がきわめて近いので、1.28MeVのγ線が放出された時が陽電子の材料に入射したスタート時刻であり、511keVのγ線が検出された時が、陽電子の消滅した時刻とすることができる。このようにして、両者の時間差を測定して陽電子寿命スペクトルを得、結晶の欠陥を評価するのである。
【0006】
しかしながら、試料を加熱や冷却して状態を変えたい場合とか、あるいは異形形状の試料などには、線源に被測定試料を密着させる方法では限界があり、自由に計測を実施することが困難である。
【0007】
これに対して、本発明者らの一人は、陽電子線源と被測定材料とを離して配置し、線源と被測定材料の間に薄いプラスチックシンチレータを置き、そこを陽電子が通過するのを検出して、材料への陽電子の入射時刻を知る方法を提案している。金属の場合、陽電子が入射してから消滅するまでの時間は、100~300ps(ピコ秒:10-12秒)程度である。このような短時間の計測であるため、線源にて発生した陽電子が空間を飛翔して被測定材料に入射するまでに要する時間も測定誤差を大きくするので、電磁レンズで特定のエネルギの陽電子を選別する。前述の線源と被測定材料とを密着させた場合は、線源のγ線と被測定材料からのγ線を計測するので、γ-γ計測法と呼ぶこととすれば、この方法は直接陽電子βを検出してスタート時刻とするので、以下この方法をβ-γ計測法と言うこととする。
【0008】
このように、線源と被測定材料とを離して配置すると、S/N比が劣ることや、陽電子がシンチレータから被測定材料まで飛翔するときの時間差によると考えられる分解能低下等の問題がある。そこで、放出された陽電子を、質量分析に用いるものと同様な平行に置かれたセクター型磁極の間を通過させたり、電磁レンズを通過させたりして、特定範囲のエネルギーを持つ陽電子のみを分別し、収束してから入射させる等の改善をおこない、これらの問題の解決をはかっている(白井泰治他:日本金属学会誌,第59巻第6号(1995),p.679、および白井泰治:生産と技術,第48巻第4号(1996),p.50)。このβ-γ計測法によれば、試料と線源を分離できるので、被測定材料を加熱、あるいは冷却した状態で計測することや、異形形状の材料を計測することが可能になり、さらにスタート信号の検出効率が高くなる。
【0009】
しかし、この線源と被測定材料とを大きく離して配置するβ-γ計測法は、線源で発生した陽電子数に対し、試料に入射する陽電子の数がγ-γ計測法に比してきわめて少なくなるという難点がある。このため同じ線源を用いれば、計測時間が大幅に増大し、入射陽電子数を増そうと思えば、高強度の放射性同位体の線源が必要となり、安全性の問題も生じてくる。
産業上の利用分野
本発明は、β壊変型放射性同位体を線源として得られた陽電子を材料に入射し、その寿命を計測したり、発生するγ線を計測することにより、金属、半導体、化合物等の材料中の、主として空孔、空孔集合体、転位など結晶の欠陥情報を検知し評価するのに用いる装置、および方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】陽電子線源、電磁レンズ、陽電子検出器、およびγ線測定器を有する陽電子を被測定材料に入射し、入射後陽電子の寿命および放出γ線を測定する装置であって、電磁レンズを間において、陽電子線源、電磁レンズおよび被測定材料がその順に同一軸上に配置されていること、陽電子線源と電磁レンズとの距離を前記軸上にて任意に変えて固定できる機構を有すること、および少なくとも陽電子線源から被測定材料までの陽電子飛翔経路は真空に保持できること、を特徴とする材料評価装置。
【請求項2】陽電子線源の中心位置が、電磁レンズおよび被測定材料のそれぞれの中心位置を結ぶ軸上の、被測定材料とは反対側で電磁レンズの磁場の外にあり、電磁レンズ磁場の上端から電磁レンズの有効口径の1.5倍の距離までの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の材料評価装置。
【請求項3】陽電子の検出器が、アバランチェフォトダイオードであることを特徴とする請求項1または2に記載の材料評価装置。
【請求項4】陽電子の飛翔経路は1×10-4Torr以下の圧力に保持されていることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の材料評価装置。
【請求項5】陽電子検出器と、被測定材料との間にさらにもう一つの電磁レンズが配置されていることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の材料評価装置。
【請求項6】被測定材料を真空中にて加熱または冷却する器具を備えていることを特徴とする請求項1、2,3、4または5に記載の材料評価装置。
【請求項7】請求項1、2、3、4、5または6に記載の装置を用いて材料に入射された陽電子の寿命、もしくは放出γ線、またはその両者を測定することを特徴とする材料評価の方法。
産業区分
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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