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MD-2遺伝子改変モデル非ヒト動物 コモンズ 実績あり

国内特許コード P03P000713
整理番号 A211P02
掲載日 2003年11月18日
出願番号 特願2002-130964
公開番号 特開2003-319734
登録番号 特許第4690630号
出願日 平成14年5月2日(2002.5.2)
公開日 平成15年11月11日(2003.11.11)
登録日 平成23年2月25日(2011.2.25)
発明者
  • 三宅 健介
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 MD-2遺伝子改変モデル非ヒト動物 コモンズ 実績あり
発明の概要 【課題】 グラム陰性菌細胞壁外葉の構成成分であるLPSを認識してグラム陰性菌の侵入を察知し、応答する機構に関与する遺伝子をノックアウトしたモデル非ヒト動物を構築すること、及び該モデル非ヒト動物を用いての異種動物の遺伝子物質の機能の評価や、薬剤開発のための機能活性物質のスクリーニングや、病態解明のための診断を行う方法を提供すること。
【解決手段】 グラム陰性菌の膜成分LPS(lipopolysaccharide)を認識するToll-like receptor 4(TLR4)の会合分子であるMD-2遺伝子を欠損したマウスを構築し、LPS不応答性モデル非ヒト動物を構築した。本発明は、このマウスのような、非ヒトモデル動物を用いての異種動物の遺伝子物質の機能の評価や、薬剤開発のための機能活性物質のスクリーニングや、病態解明のための診断を行う方法を提供することよりなる。
従来技術、競合技術の概要


LPS(lipopolysaccharide)はグラム陰性菌細胞壁外葉の主たる構成成分で、免疫担当細胞ばかりでなく、血管内皮細胞、線維芽細胞など様々な細胞の活性化を誘導する。つまり、生体は分子或いは細胞レベルでLPSを認識することによって、グラム陰性菌の侵入を察知している。LPSを認識しシグナルを伝達する分子は、長い間検索されてきた結果、最近になってようやく明らかにされた。30年程前に見つかったC3H/HeJマウスはLPS低応答性を示すミュータントマウスである。同様なLPS低応答性を示すマウスとしてC57BL/10ScCrも報告されていたが、これらのマウスの原因遺伝子がポジショナルクローニングによってTLR4(Toll-like receptor 4)であると同定された(Poltrak, A. et al., Science, 282, 2085-2088, 1998、Qureshi, S. et al., J. Exp. Med., 189, 615-625, 1999)。



TLR4は、ショウジョウバエにおいて真菌を認識し感染防御を誘導する分子Tollのヒト及びマウスホモローグである(Rock, F. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 588-593, 1998)。長い間探し求められてきたLPS認識分子は、ハエからヒトにまで保存されている病原体認識分子の1つであることが確認された。しかしながら、LPS認識は多くの分子が関与するプロセスで、TLR4単独では説明できないことが明らかにされている。本発明者はTLR4のLPS認識を制御する分子として、RP105/MD-1、MD-2などを報告してきた。



LPS認識機構とTLRs(Toll-like receptors)の関係についても解明されてきた。LPSの活性中心はリピドAと呼ばれ、Nアセチルグルコサミン2分子に脂肪酸が結合したものである。リピドAにコア抗原、さらにO抗原とばれる糖類がつながったものがLPSである。LPSは低い濃度でもマクロファージ、B細胞、樹状細胞、好中球、血管内皮細胞、線維芽細胞など実に様々な細胞の活性化を誘導する。つまりこれらの細胞はLPSを認識することができる。LPS認識機構は多くの分子が関わる複雑なプロセスである(実験医学Vol.19(2001)No.5, P81)。菌体上にあるLPSはまず、血清中のLPS結合タンパク質(LBP)によって外膜から遊離され、もう一つのLPS結合タンパク質であるCD14へ単体の形で転送される。(Wright, S. D. et al., Science, 249, 1431-1433, 1990、Pugen, J. et al.,Immunity, 1, 509-516, 1994)。



CD14は血清タンパク質として血中に、或いは細胞表面タンパク質として単球、マクロファージ上に存在している。CD14/LPS複合体はLPS単独の場合に比べて、100~10,000分の1の低い濃度で細胞の活性化を誘導する(Wright, S. D., J. Immunol., 155, 6-8, 1995)。しかし、CD14は細胞質内ドメインをもたないためにLPSシグナルを細胞内へそれ自身では伝達することができない。そこでLPSシグナルを細胞内へ伝達するための新たなレセプター分子の存在が指摘され、検索が続けられていた。最近ようやくそのLPSレセプターの実体がTLR4であると同定された。



ハエのTollレセプターは、個体発生の際に腹側への分化誘導シグナルを伝達するレセプター分子として発見されたが、その後真菌感染を察知して感染防御反応を誘導する役割をもっていることが報告された(Lemaitre, B. et al., Cell, 86, 973-983, 1996)。更に、Tollによく似た分子TLR(Toll-like receptor)をマウスやヒトももっていることが1997年に明らかにされ、その1つであるTLR4が長い間謎であったLPS/エンドトキシン認識分子であった。ところが、細胞株を用いた実験で、TLR4単独ではLPSを認識できないという結果が報告された。



マウスIL-3依存性細胞株Ba/F3やヒト腎臓由来293細胞株はそれ自身LPSに応答しないし、これらの細胞にヒトTLR4を発現させたトランスフェクタントもLPSに対する応答性は認められない。その理由としてLPS応答にはTLR4に加えて他の分子が必要である可能性が考えられた。本発明者はRP(radio-protective)105の細胞外ドメインのLRR(leucine-rich repeat)がTLR4のそれとよく似ていることに注目し、v-myb regulated geneの1つであるMD-1がRP105と会合するところから、TLR4もMD-1と会合するのではないかと考えた。しかしながら両方の遺伝子を細胞株に発現させ、免疫沈降で共沈降できるかどうかを調べたが有意な会合は検出できなかった。そこで、TLR4に会合するMD-1類似分子の存在を想定し、データベースで検索を行い、ヒト妊娠子宮由来の遺伝子を得ることに成功した(Shimazu, R. et al., J. Exo. Med., 189, 1777-1782, 1999、特開平2000-262290号公報)。



この分子はアミノ酸160個からなり、MD-1とアミノ酸で約23%一致していることから、MD-2という名前をつけた。ヒトMD-2をマウスIL-3依存性細胞株Ba/F3に単独で発現させても細胞表面には検出されないが、TLR4と共発現させると細胞表面で検出されるようになり、しかもその分布を共焦点レーザー顕微鏡で比較したところほぼ一致していた。さらに、抗ヒトTLR4モノクローナル抗体(HTA125)でTLR4を免疫沈降すると、MD-2が共沈された。これらの実験結果から、RP105/MD-1と同様にTLR4/MD-2複合体も細胞表面上に発現していることが確認された。



TLR4/MD-2複合体によるLPS認識、シグナル伝達の機構を明らかにするために、TLR4のLPS認識におけるMD-2会合の役割が検討された。
マウスIL-3依存性細胞株Ba/F3にヒトTLR4単独、或いはTLR4/MD-2複合体を発現させ、LPS刺激によるNF-κB活性化を、予めBa/F3細胞株に導入しておいたNF-κBレポーター遺伝子を用いたルシフェラーゼアッセイで調べた結果、TLR4単独ではLPS刺激によるNF-κBの活性化は検出されなかったが、TLR4/MD-2複合体を発現した細胞株はLPS応答性を示した。そこで、MD-2を共発現させることによって、獲得されたLPS応答がTLR4を介しているかどうかを確認するために、TLR4に対するモノクローナル抗体(HTA125)を加えたところ、LPS刺激によるNF-κB活性化が特異的に阻害された。(実験医学Vol.19(2001)、No.5、P83)。したがって、TLR4/MD-2複合体がLPSを認識し、シグナルを伝達していることが明らかになった。



上記するようなこれまでの結果は、全て細胞株を用いた実験であり、正常細胞においてTLR4/MD-2の発現やそのLPS認識について検討する必要があった。本発明者は新たに、マウスTLR4/MD-2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体(MTS510)の確立に成功した(Akashi, S. et al., J. Immunol., 164, 3471-3475, 2000)。この抗体を用いて腹腔マクロファージを染色したところ、TLR4/MD-2複合体の発現が確認された。また、LPS刺激で誘導される腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)の産生をこの抗体は特異的に抑制した。更に、LPSで腹腔マクロファージを刺激すると、細胞表面上のTLR4/MD-2複合体の発現が低下した。この発現低下はng/mlという低濃度のLPS刺激でもみられるが、ペプチドグリカンなど他の病原体由来の物質による刺激では認められなかった。またCD14など他の細胞表面分子では同様な発現低下は認められず、TLR4/MD-2に特異的な現象であった(Nomura, F. et al., J. Immunol., 164, 3476-3479, 2000)。



これらの結果から、TLR4/MD-2は正常マクロファージ表面上にも発現しており、LPSの認識やシグナル伝達を司っていることが明らかとなった。TLR4やMD-2はともに広範に発現されており、マクロファージばかりでなく、線維芽細胞や血管内皮細胞など、非免疫担当細胞においてもTLR4/MD-2複合体がLPS認識にかかわっている可能性がある。



以上のとおり、近年、グラム陰性菌細胞壁外葉の構成成分であるLPSを認識してグラム陰性菌の進入を察知し、応答する機構における、TLR4及びその会合分子であるMD-2の役割については、徐々にその解明が進んできた。しかし、これまでの結果は、遺伝子や細胞レベルの実験を主とするものであり、今後は解析の方向として、TLR4の病原体認識機構を更に分子レベルで明らかにするとともに、生体レベルの更なる解明が期待されている。

産業上の利用分野


本発明は、TLR4(Toll-like receptor 4)の会合分子であるMD-2をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損したグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物及びその利用方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
TLR4の会合分子であるMD-2をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損したことを特徴とするグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物。

【請求項2】
非ヒト動物が齧歯目動物であることを特徴とする請求項1記載のグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物。

【請求項3】
齧歯目動物がマウスであることを特徴とする請求項2記載のグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物。

【請求項4】
マウスが、MD-2遺伝子の全部又は一部の遺伝子フラグメントを、ポリAシグナルとマーカー遺伝子をもつプラスミドに置換してターゲッティングベクターを構築し、該ターゲッティングベクターを線状化した後、胚幹細胞に導入し、MD-2遺伝子機能を欠損した標的胚幹細胞を、マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、キメラマウスを作製し、このキメラマウスと野生型マウスとを交配させてヘテロ接合体マウスを作製し、かかるヘテロ接合体マウスをインタークロスすることによって得られるMD-2ノックアウトマウスであることを特徴とする請求項3記載のグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物。

【請求項5】
MD-2遺伝子の第1エクソンをネオマイシン耐性遺伝子で置換し、ジフテリア毒素遺伝子をMD-2遺伝子の3′末端につないで、ターゲッティングベクターを構築したことを特徴とする請求項4記載のグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物。

【請求項6】
請求項1~5記載のグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物に、ヒトMD-2遺伝子の塩基多型を導入し、その応答を測定・評価することを特徴とするグラム陰性菌膜成分LPS応答性物質の評価・スクリーニング方法

【請求項7】
請求項1~5記載のグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物に、異種動物のMD-2遺伝子を導入し、該モデル非ヒト動物に被検物質を作用させて、その応答を測定・評価することを特徴とするグラム陰性菌膜成分LPS応答性物質の評価・スクリーニング方法。

【請求項8】
異種動物のMD-2遺伝子が、ヒトのMD-2遺伝子であることを特徴とする請求項記載のグラム陰性菌膜成分LPS応答性物質の評価・スクリーニング方法。

【請求項9】
請求項1~5記載のグラム陰性菌膜成分LPS不応答性モデル非ヒト動物に、異種動物のMD-2遺伝子を導入し、該モデル非ヒト動物にエンドトキシンショックを誘発して、その応答を測定・評価することを特徴とする、モデル非ヒト動物を用いた異種動物MD-2遺伝子の評価法。

【請求項10】
異種動物のMD-2遺伝子が、ヒトのMD-2遺伝子であることを特徴とする請求項記載のモデル非ヒト動物を用いた異種動物MD-2遺伝子の評価法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST 免疫難病・感染症等の先進医療技術(遺伝子レベルでの発症機構の解明を通じた免疫難病・感染症の新たな治療技術の創製を目指して) 領域
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