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哺乳動物のToll様受容体3に結合する新規アダプタータンパク質およびその遺伝子 コモンズ

国内特許コード P04P001114
整理番号 A211P06
掲載日 2004年8月13日
出願番号 特願2002-349015
公開番号 特開2004-180540
登録番号 特許第3810731号
出願日 平成14年11月29日(2002.11.29)
公開日 平成16年7月2日(2004.7.2)
登録日 平成18年6月2日(2006.6.2)
発明者
  • 松本 美佐子
  • 瀬谷 司
  • 押海 裕之
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
発明の名称 哺乳動物のToll様受容体3に結合する新規アダプタータンパク質およびその遺伝子 コモンズ
発明の概要

【課題】B型肝炎やC型肝炎等のウイルス感染症等の予防・治療、腫瘍の治療等に有効なI型インターフェロンの産生を制御する、哺乳動物のToll様受容体3に結合する性質を持つ新規アダプタータンパク質およびその遺伝子を提供する。
【解決手段】新規アダプタータンパク質TICAM-1は、ヒト由来の特定のアミノ酸配列からなり、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質と、I型インターフェロンの産生を誘導する性質とを併せ持つ。上記アダプタータンパク質TICAM-1の変異体は、TIRドメインを有していれば、同様の性質を持つ。また、遺伝子は、アダプタータンパク質TICAM-1をコードする遺伝子である。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要
インターフェロンは、ウイルスに対する適応免疫応答において重要な役割を果たすタンパク質である。
【0003】
前述したように、インターフェロンは、適応免疫系において重要な役割を果たしており、適応免疫系におけるインターフェロンの役割については詳細な研究がなされている。しかしながら、病原体に対する免疫応答の際に、生体内でインターフェロンがどのようなシグナル伝達経路を介して産生されるかについてはほとんど解明されていなかった。
【0004】
最近、哺乳動物の自然免疫系において病原体を認識する受容体としてToll様受容体(Toll-like Receptor;以下、適宜「TLR」と略記する)が発見され、このTLRに関する研究により、自然免疫系における病原体の認識に係わるシグナル伝達経路が明らかにされつつある。
【0005】
哺乳動物のTLRファミリーは、ショウジョウバエとヒトとの種の違いを越えて保存されていると考えられる主要な組織であり、様々な微生物構成成分を認識し、核因子κB(以下、「NF-κB」と略記する)の活性化および他のシグナル伝達経路を媒介する。
【0006】
現在、ヒトでは、TLRファミリーに属する10種の受容体(ヒトTLR1~10)が確認されており、これらのマウス相同体(マウスTLR1~10)も確認されている。TLRファミリータンパク質は、複数のロイシン・リッチ・リピート(LRR)およびそれとカルボキシル末端(C末端)隣接領域を含む細胞外領域と、Toll/インターロイキン1受容体相同ドメイン(TIR)と呼ばれる細胞質の(細胞内の)シグナル伝達領域とから構成されている。各TLRは、特有の1種または複数種のリガンドを細胞外領域で認識し、細胞内のTIRを媒介すると推測される免疫応答を誘発する。各TLRによって誘発される免疫応答は、互いに異なっており、一部が重複していることもある。
【0007】
ほとんどのTLRファミリーのタンパク質に共通する細胞質領域のTIRドメインは、シグナル伝達およびアダプター分子MyD88またはMal/TIRAPの相互作用を引き起こすと考えられている。すなわち、TLR2、TLR4、TLR5、TLR7、およびTLR9は、アゴニスト刺激の下でアダプター分子MyD88によってシグナルを伝達してNF-κBを活性化する。
【0008】
一方、最近、TLR4を介するシグナル伝達経路においては、TLR4と会合するアダプター分子Mal/TIRAP(MyD88-adapter-likeあるいはTIRAPと呼ばれているアダプター分子)が関与していることが報告されている(非特許文献2~4参照)。
【0009】
上記の報告によれば、TLR4は、NF-κB、MAPK、およびインターフェロンβプロモータの活性化に関与している。このインターフェロンβプロモータの活性化を誘導するTLR4の特有の能力は、「アダプター分子MyD88に非依存的なシグナル伝達経路」と呼ばれている、TLR4と会合するアダプター分子Mal/TIRAPによって媒介されるシグナル伝達経路に起因している。すなわち、TLR4を介するシグナル伝達では、アダプター分子MyD88と異なる第2のアダプター分子Mal/TIRAPとTLR4との協働によって、NF-κBおよびI型インターフェロンプロモータの活性化が制御される。
マクロファージ(Mf)においては、TLR2刺激ではなくTLR4刺激の結果として、インターフェロンβのプロモータ活性化がSTAT1によるα/βリン酸化を誘導する。その後、インターフェロンβをコードしている遺伝子の発現は、MCP(Monocyte Chemoattractant Protein)-5、IP(インターフェロン誘導タンパク質)-10、およびiNOS(誘導型NO合成酵素)の産生を誘導する。これは、再びアダプター分子MyD88に非依存的な経路を介して起こり、MyD88-/-細胞(アダプター分子MyD88を欠損させた細胞)でさえ起こる。
【0010】
現在まで最も可能性が高いと思われていた概念は、アダプター分子Mal/TIRAPがアダプター分子MyD88に非依存的な経路をカバーするということである。
【0011】
これに対して、本願発明者等は、二本鎖RNAによって誘導されヒトTLR3を介した免疫応答を研究し、ヒトの線維芽細胞において、ヒトTLR3が、細胞表面上での二本鎖RNAの認識に関与し、インターフェロンβ産生を誘導する下流のシグナル伝達を引き起こすことを見出した(非特許文献1参照)。すなわち、インターフェロンβプロモータの活性化およびインターフェロンβの産生が、二本鎖RNAに応答したヒトTLR3によって強くかつ急速に誘導されることを示した(非特許文献1参照)。ヒトTLR3は、二本鎖RNAの類似体であるポリ(I:C)にも応答してNF-κBおよびインターフェロンβプロモーターを活性化させる(非特許文献1参照)。リポーター遺伝子分析により、ヒトTLR3は、インターフェロンβプロモータの活性化を媒介するが、NF-κBの活性化はそれより低いレベルでしか媒介しないことが明らかになった(非特許文献1参照)。この結果は、他のTLR、TLR2、TLR5、TLR7、およびTLR9が、それらに特有のリガンドを認識したのに続いて、アダプター分子MyD88を介してNF-κBおよびp38 MAPK(MAPキナーゼ)を活性化したのと著しく異なっている。
【0012】
ところで、TLR3によって誘導されるI型インターフェロン(インターフェロンαおよびインターフェロンβ)は、抗ウイルス作用や抗がん作用を示すことが知られている。詳細には、I型インターフェロンは、以下のような作用を持つことが知られている。
【0013】
I型インターフェロンは、以下のような複数の作用機序により抗ウイルス作用を奏することが知られている。
【0014】
▲1▼ウイルスのmRNAを不安定化し、宿主のタンパク翻訳を抑制する細胞内遺伝子を活性化する。これにより、ウイルスの複製を抑制し、ウイルスの増殖を抑制する。
【0015】
▲2▼MHCクラスI分子の発現を誘導し、ナチュラルキラー(NK)細胞に対する抵抗性を誘導する。細胞障害性CD8+T細胞に対する感受性を亢進させる。さらに、T細胞の活性化の抑制およびT細胞サプレッサー活性の増強にも関与する。
【0016】
▲3▼ウイルス感染細胞を選択的に障害するナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、ナチュラルキラー(NK)細胞によるアポトーシスをウイルスに誘導する。
【0017】
また、I型インターフェロンは、以下のような複数の作用機序により抗腫瘍作用を奏することが知られている。
【0018】
1)腫瘍細胞内のmRNAを不安定化し、宿主のタンパク翻訳を抑制する細胞内遺伝子を活性化する。これにより、腫瘍細胞内のタンパク質の合成を抑制し、腫瘍細胞の増殖を抑制する。
【0019】
2)マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞等の抗腫瘍エフェクターを活性化し、これらの抗腫瘍エフェクターにより腫瘍細胞を障害することで、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する。
【0020】
3)ウイルス感染細胞を選択的に障害するナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、ナチュラルキラー(NK)細胞によるアポトーシスを腫瘍細胞に誘導する。
【0021】
さらに、I型インターフェロンは、前述したようにT細胞の活性化の抑制、T細胞サプレッサー活性の増強にも関与することから、ある種の自己免疫疾患を改善できると考えられる。
【0022】
I型インターフェロンは、以上のような抗ウイルス作用および抗腫瘍作用を持つことから、従来より、インターフェロンα製剤やインターフェロンβ製剤が、B型肝炎、C型肝炎、C型肝炎から誘発される肝がん、腎臓がん等の治療剤として使用されている。例えば、天然型インターフェロンα製剤である住友製薬株式会社製の「スミフェロン(登録商標)」などが、臨床応用において好成績を挙げている。
【0023】
【非特許文献1】
Matsumoto, M., Kikkawa, S., Kohase, M., Miyake, K., & Seya, T. Establishment of a monoclonal antibody against human Toll-like receptor 3 that blocks double-stranded RNA-mediated signaling. Biochem. Biophys. Res. Commun. 293: 1364-1369(2002年5月31日電子発行)
【0024】
【非特許文献2】
Kawai, T., et a. Lipopolysaccharide stimulates the MyD88-independent pathway and results in activation of IFN-regulatory factor 3 and the expression of a subset of lipopolysaccharide-inducible genes. J. Immunol. 167: 5887-5894 (2001)
【0025】
【非特許文献3】
Horng, T., Barton, G. M., & Medzhitov, R. TIRAP: an adapter molecule in the Toll signaling pathway. Nat. Immunol. 2: 835-841 (2001)
【0026】
【非特許文献4】
Fitzgerald, K. A., et al. Mal (MyD88-adapter-like) is required for Toll-like receptor-4 signal transduction. Nature 413: 78-83 (2001)
産業上の利用分野
本発明は、哺乳動物のToll様受容体3に結合してI型インターフェロンの産生を誘導しうる性質を持つ新規アダプタータンパク質およびその変異体、並びにそれをコードする遺伝子、その用途に関するものである。
特許請求の範囲 【請求項1】 配列番号2に示されるアミノ酸配列もしくは配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち394~532番目のアミノ酸配列からなるタンパク質、または配列番号4に示されるアミノ酸配列もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列のうち396~534番目のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターが導入されている細胞であって、Toll様受容体3が発現している細胞。
【請求項2】 上記細胞がヒト線維芽細胞、ヒト樹状細胞、ヒト上皮細胞またはマウス線維芽細胞である請求項1に記載の細胞。
【請求項3】 請求項1または2に記載の細胞に被検物質を接触させる工程;および
上記Toll様受容体3と上記タンパク質とが結合するか否かを確認する工程
を包含する、Toll様受容体3と上記タンパク質との結合を阻害する物質のスクリーニング方法。
【請求項4】 配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち394~532番目のアミノ酸配列からなるタンパク質、または
配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち394~532番目のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質と、I型インターフェロンの産生を誘導する性質とを併せ持つタンパク質。
【請求項5】 配列番号4に示されるアミノ酸配列のうち396~534番目のアミノ酸配列からなるタンパク質、または
配列番号4に示されるアミノ酸配列のうち396~534番目のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質と、I型インターフェロンの産生を誘導する性質とを併せ持つタンパク質。
【請求項6】 請求項4または5に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項7】 配列番号1に示される塩基配列のうち、1242~1658番目の塩基配列からなる、請求項6に記載の遺伝子。
【請求項8】 配列番号3に示される塩基配列のうち、1251~1667番目の塩基配列からなる、請求項6に記載の遺伝子。
【請求項9】 請求項6ないし8のいずれか1項に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。
【請求項10】 請求項9に記載の組換え発現ベクターが導入されている形質転換体。
【請求項11】 配列番号2に示されるアミノ酸配列の434番目のプロリンがヒスチジンに置換されているアミノ酸配列のうち394~532番目のアミノ酸配列からなり、かつ、哺乳動物のToll様受容体3に対して特異的に結合する性質を持つ一方、I型インターフェロンの産生を誘導する性質に異常を持つタンパク質。
【請求項12】 請求項11に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項13】 請求項12に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。
【請求項14】 請求項13に記載の組換え発現ベクターが導入されている形質転換体。
産業区分
  • 微生物工業
  • 有機化合物
  • 薬品
国際特許分類(IPC)
画像

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14574_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST 免疫難病・感染症等の先進医療技術(遺伝子レベルでの発症機構の解明を通じた免疫難病・感染症の新たな治療技術の創製を目指して) 領域
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