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リボソーム不活性化タンパク質(RIP)遺伝子およびそれを導入したイネ科植物

国内特許コード P04A005243
掲載日 2005年1月11日
出願番号 特願2002-000947
公開番号 特開2003-199577
登録番号 特許第3955942号
出願日 平成14年1月7日(2002.1.7)
公開日 平成15年7月15日(2003.7.15)
登録日 平成19年5月18日(2007.5.18)
発明者
  • 青木 秀之
  • 矢頭 治
  • 中島 敏彦
  • 黒田 秧
  • 重宗 明子
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 リボソーム不活性化タンパク質(RIP)遺伝子およびそれを導入したイネ科植物
発明の概要 種々の病原性生物に対する抵抗性を与える遺伝子、該遺伝子を含む発現カセット、該発現カセットを含むベクター、該ベクターを保持する植物細胞、該植物細胞を再生して得られた植物体を提供し、さらに病原性生物に対して抵抗性の植物を作出する方法を提供すること。 リボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドが、(a)特定の配列の1~1314位のヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;または(b)該(a)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、である、ポリヌクレオチド。
従来技術、競合技術の概要
イネは日本を含むアジアの主作物であり、そのためアジア諸国では古くからイネの収量増加のための研究を行ってきた。イネの収量を減少させる原因の一つとしては病害が挙げられ、その中でもいもち病(Pyricularia oryzae)と白葉枯病(Xanthomonas campestris)は深刻な被害をもたらす病害として恐れられてきた。いもち病は日本で最も恐れられている病害であり、主に日本の中部から北部にかけて長雨、冷害に伴って発生する。 いもち病菌は糸状菌の一種である。いもち病に冒されたイネは黒色の斑点型病斑を生じ、イネの成長が停止する。
【0003】
白葉枯病は細菌病の一種であり、九州から東南アジアにかけて深刻な被害をもたらす病害である。白葉枯病に冒されたイネは白褐色の病斑が葉縁に沿って拡大し、葉全体が枯死する(Ohata,1989,Zenkoku Noson Kyoiku Kyokai Co.Ltd.pp.563)。
【0004】
植物は、病原菌の侵入シグナルを認識すると、植物体を防御するために感染特異的タンパク質(PRタンパク質)を誘導発現し、防御応答を行う(Bowles,1990,Annu.Rev.Biochem.59,873)。病原菌の感染によって誘導された抗菌性タンパク質は、病原菌に直接作用することによって植物の防御機構に関わっている(VanLoon,1994,Plant Mol.Biol.Report.12,245;VanLoon,1999,Physio1.Mol.PlantPath.55,85)。また、グルカナーゼやキチナーゼ遺伝子を遺伝子組換えする事によって、植物に病害抵抗性をもたらしたことが報告されている(Nishizawa,1999,Kagaku to Sheibutsu 37,295)。
【0005】
リボソーム不活性化タンパク質(RIP)は、真核生物のrRNAに対してN-グリコシダーゼ活性を持ち、アデニン残基を特異的に切断する塩基性タンパク質である。RIPは作物を含む植物のほとんど全ての組織で発現しており、植物の病原菌に対して抗菌活性がある(Barbieri,1993,Biochim.Biophys.Acta 1154,237;Yun,1997,Plant Breeding Reviews 14,39)。これまでに、オオムギ、コムギ、トウモロコシなどに由来するリボソーム不活性化タンパク質が単離されている(例えば、J.Biol.Chem.266(3):1564-73(1991);Plant Mol.Biol.22(1):171-6(1993);J.Biol.Chem.266(34):23422-7(1991);Biosci.Biotech.Biochem.(1998)62(6):1152-1156;およびPlant Physiol.107(2),661-662を参照のこと)。リボソーム不活性化タンパク質の総説については、Bio/Technology 10:405-412(1992)およびCellular and Molecular Biology(1996)42(4):461-471を参照のこと。オオムギから精製されたRIPはrRNAに対して特異性を持ち、カビのrRNAに対して哺乳動物のrRNAよりも10倍以上のN-グリコシダーゼ活性を持つことが明らかになっている(Endo,1988,Bichim.Biophys.Acta 954,224)。また、オオムギRIPは植物のrRNAに対してN-グリコシダーゼ活性を持たないので、RIPは植物の病害抵抗性機構に関与していると推測されている(Taylor,1994,Plant J.5,827)。
【0006】
このRIPの抗菌性を利用し、これまでRIP遺伝子の導入によって植物に病害抵抗性を付与させる試みが行われてきた。例えば、オオムギRIPに創傷誘導性(wound inducible)プロモーターを用いてタバコに形質転換させた場合では、形質転換個体はタバコ腰折れ病菌(Rhizoctonia solani)に対する病害抵抗性が向上したことが報告されている(Logemann,1992,BIO/Technology 10,305)。さらに、オオムギのキチナーゼ遺伝子とRIP遺伝子をともに恒常的に発現する形質転換タバコは、それぞれの遺伝子の単独導入の場合よりも、腰折れ病に対して強い抵抗性を示すことが報告された。これは、溶菌酵素の作用によって、RIPの菌体内への浸透性が高められたためと考えられている(Jach,1995,Plant J.8,97)。ヤマゴボウRIPが導入されたタバコは、タバコモザイクウイルス(TMV)に対する抵抗性が付与された(Moon,1997,Mol.Cells 7,807)。しかしながら、このように、RIP遺伝子を単独で導入した研究はタバコ、ジャガイモでしか行われていない。特に、主要作物の中に含まれるイネ科植物において、病害に対する抵抗性を付与する遺伝子が望まれているが、イネ科植物でRIP遺伝子の発現を強化した場合の病害抵抗性に及ぼす効果は未知である。
産業上の利用分野
本発明は、植物に病害抵抗性を付与するDNA、このDNAを含む発現カセット、該発現カセットを含むベクター、このベクターを保持する植物細胞、この植物細胞を再生して得られた植物体に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】 白葉枯病細菌(Xanthomonas campestris)に対して抵抗性を有する植物を作出するための方法であって、以下からなる群より選択されるリボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチド:
(a)配列番号1の146~955位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(b)該(a)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(c)配列番号3の54~899位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(d)該(c)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(e)配列番号5の35~877位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(f)該(e)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(g)配列番号7の37~843位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(h)該(g)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(i)配列番号2の1~270位に記載されるアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(j)(i)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(k)配列番号4の1~282位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(l)(k)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(m)配列番号6の1~281位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(n)(m)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(o)配列番号8の1~269位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
(p)(o)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド、
を含む発現カセットを含む発現ベクターを、植物細胞に導入する工程を包含する、方法。
【請求項2】 いもち病菌(Pyricularia oryzae)に対して抵抗性を有する植物を作出するための方法であって、以下からなる群より選択されるリボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチド:
(a)配列番号1の146~955位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(b)該(a)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(c)配列番号3の54~899位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(d)該(c)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(e)配列番号5の35~877位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(f)該(e)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(g)配列番号7の37~843位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(h)該(g)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(i)配列番号2の1~270位に記載されるアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(j)(i)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(k)配列番号4の1~282位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(l)(k)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(m)配列番号6の1~281位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(n)(m)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(o)配列番号8の1~269位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
(p)(o)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド、
を含む発現カセットを含む発現ベクターを、植物細胞に導入する工程を包含する、方法。
【請求項3】 白葉枯病細菌(Xanthomonas campestris)といもち病菌(Pyricularia oryzae)との組み合わせに対して抵抗性を有する植物を作出するための方法であって、以下からなる群より選択されるリボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチド:
(a)配列番号1の146~955位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(b)該(a)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(c)配列番号3の54~899位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(d)該(c)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(e)配列番号5の35~877位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(f)該(e)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(g)配列番号7の37~843位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(h)該(g)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
(i)配列番号2の1~270位に記載されるアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(j)(i)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(k)配列番号4の1~282位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(l)(k)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(m)配列番号6の1~281位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(n)(m)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
(o)配列番号8の1~269位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
(p)(o)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN-グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド、
を含む発現カセットを含む発現ベクターを、植物細胞に導入する工程を包含する、方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 農林
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中


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