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顕微鏡プレパラートおよびその作製方法

国内特許コード P04A006058
整理番号 測定・分析-53
掲載日 2005年2月16日
出願番号 特願2003-021192
公開番号 特開2004-229548
登録番号 特許第4366495号
出願日 平成15年1月29日(2003.1.29)
公開日 平成16年8月19日(2004.8.19)
登録日 平成21年9月4日(2009.9.4)
発明者
  • 松永 茂
  • 町田 幸子
  • 徳安 健
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 顕微鏡プレパラートおよびその作製方法
発明の概要

【課題】光学顕微鏡試料のカバーガラスを素早くかつ強固に下部材に密着する方法を提供すること、および生きた試料の刺激などに対する瞬時から長期に及ぶ反応を高解像度で継続的に観察することを可能にするチャンバーを提供すること。
【解決手段】試料を観察するための光学顕微鏡用プレパラートを作製する方法であって、以下:カバーガラスの少なくとも片面の辺縁部と下部材との間を、少なくとも一種のシーリング材で接着する工程、を包含する、方法。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要
光学顕微鏡を用いた試料の観察、特に細胞・微生物・動植物の組織など水を多く含むか又は水の中に浸っている生物試料の観察に際しては、水の蒸発を防ぎ、かつ対物レンズの球面収差に試料を適合させるため、厚さ0.17mmの標準カバーガラス等で試料を覆うことが一般的に行われている。特に、高倍率・高解像度の対物レンズでは、レンズの開口数をかせぐため、試料とレンズとの間をガラスと同じ屈折率(n≒1.52)を持つ油で満たす必要があるので、試料と油との接触を防ぎ、かつレンズに適合した作動距離を確保するためには、厚さ0.17mm程度のカバーガラスで試料を覆うことは、必須である(非特許文献1)。
【0003】
試料の封入に際しては、光透過性(スライドガラス、アクリル板など)の下部材の上に水を含む試料を乗せ、さらにこの上をカバーガラスで被い試料をサンドイッチする。なお、このような封入試料を以下プレパラートと呼ぶ。固定・脱水処理の施された試料のように、樹脂中に包埋できる試料では、試料はカナダバルサム等の特殊接着剤でプレパラート内に封入できるので、長い時間をかけて接着剤が硬化されればカバーガラスはしっかりと固定される。
【0004】
しかし生きている細胞や微生物を観察する場合など、樹脂で包埋できない試料では、従来カバーガラスはただ単に試料の上に置かれ水の表面張力で張り付かせるか、被せたカバーガラスの周囲にマニキュアやパラフィンなどを塗って封じる、若しくは、試料をワセリンで覆い、その上にカバーガラスを被せることで、試料を圧しつぶさずにカバーガラスを固定する、などの方法で接着が行われてきた(非特許文献2)。
【0005】
さらに、生きた細胞の継続観察や、培地交換などが必要な場合には、下部材上にビニールテープなどを貼り、剃刀などでカバーガラスより小さな観察窓を開け厚さ0.1mm程度の台を確保すると同時に、液交換のために窓の両端などに切り込みをいれたものを準備する。観察窓を溶液で満たし、その上にカバーガラスを被せ、周辺をマニュキアなどで固定する。液交換を行う場合は、切り込みの一方に濾紙片を置き、他方に交換する液をピペットなどで落とす方法などが取られてきた(非特許文献3)。
【0006】
また、生きた細胞を長時間に渡り観察する必要がある場合には、培地の流動が可能な特殊培養チャンバー(Lucas-Highland1社製のDvorak Chamber)、あるいは自作のチャンバーなどを顕微鏡ステージ上に装着し、培地を逐次供給する方法が取られてきた。
【0007】
さらに、生きた細胞の観察においては温度管理も重要な要素であるが、顕微鏡全体を大掛かりで極めて高価な装置を装着する、あるいは、温度制御が可能な顕微鏡ステージを組み込むなどの方法が取られて来たが、いずれも場合も実際に試料を乗せるチャンバーは、自作するなどの必要性があった。
【0008】
しかしながら、これらの方法では下部材とカバーガラスとの接着力が弱いので、以下の問題がしばしば発生し、これが高解像度の油浸式対物レンズを用いることの妨げとなっている。
【0009】
対物レンズとカバーガラスの間を満たすオイル(粘性が高い)によりカバーガラスが対物レンズに付着し、プレパラートから剥離してしまう。特にこの問題は視野を移動する際に起こりやすい。
【0010】
生物試料の観察時には、観察対象は培地などの液体中に密封する場合が多い。しかし、従来の方法ではカバーガラスの密着性が低いため、数分程度で徐々に液体が蒸発し、その結果プレパラート中に気泡が入り込む。このことは単一試料を長時間観察する場合に大きな障害となる。
【0011】
動物の組織や培養細胞の観察では対物レンズがステージの下から上向きに出ている倒立型の顕微鏡が頻繁に用いられる。この倒立顕微鏡で油浸式のレンズを用いる場合にも、カバーガラスはレンズ側に来るようにセットすることが必要である(対物レンズの作動距離などの制約による)。すなわち、カバーガラスはプレパラートの下側に接着しなくてはならない。この場合、接着が弱いと培地などの液体がプレパラートから漏れ出し、対物レンズへと流れ落ちることもしばしばで、これがレンズや鏡筒内に入って顕微鏡の故障の原因となる。
【0012】
培地交換などが必要な観察に利用されるビニールテープで細工をしたチャンバーを倒立型顕微鏡へ適用した場合、培地交換時にチャンバーを一度顕微鏡ステージから外す必要があり、細胞の継続的な観察は不可能である。さらに、上述の液漏れの問題が生じ易い。
【0013】
培地流動が可能なチャンバーを使用する場合には、Lucas-Highland社製のDvorak Chamberが、倒立型顕微鏡へも装着可能な装置であるが、特殊な形状のカバーガラスが必要など、汎用性に欠ける装置である。また、温度制御の厳密さにも欠け、しばしば細胞機能に重大な影響を与えていた。
【0014】
従来の方法において、カバーガラスを接着する際の一般的な手順は、以下:
(a)スライドガラスに液体を少量乗せる;
(b)気泡が入り込まないように丁寧にカバーガラスを被せる;
(c)カバーガラスの周囲に漏れた液体をろ紙などで吸い取る;
(d)マニュキアを辺縁部に塗って硬化するまで待つ、
の順番で行われてきた(非特許文献2、非特許文献3)。しかし、これら一連の作業には数分の時間を要し、その間観察が行えない。
【0015】
生体試料の中には、試料の封入を開始してからの数秒、数分の時間帯が極めて重要な観察対象となる場合もしばしばである。例えば、受精直後の卵細胞の形態の変化を観察しようとすれば、主要な反応は卵細胞に精子を添加してから数分のうちに完了してしまう。また通常保温庫内で37度に保たれている動物組織由来の培養細胞の中には、封入作業のためほんの数分間室温にさらすことで、収縮などの形態変化を経て細胞死に至るケースが知られている。このように”プレパラートへの封入に時間を要する”ということが、カバーガラスを必須とする高解像度での顕微鏡観察に対する大きな妨げの要因となっているのである。
【0016】
【非特許文献1】
八鹿(1973)、生物顕微鏡の基礎:26-30
【0017】
【非特許文献2】
井上(1998)、新版 顕微鏡観察シリーズ▲1▼ 顕微鏡観察の基本:124-127
【0018】
【非特許文献3】
井上(1998)、新版 顕微鏡観察シリーズ▲3▼ 動物の顕微鏡観察:18-23
産業上の利用分野
本発明は、概して、顕微鏡プレパラートおよびその作製方法に関する。詳細には、高解像度の油浸式対物レンズでの観察に必須なカバーガラスを光学的透明基板にシーリング材で接着することにより、試料を封入した光学顕微鏡用プレパラートを作製する方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】 生きた細胞の観察のための光学顕微鏡用プレパラートを作製する方法であって、該方法は以下:
試料保持領域を備えた下部材の片面にプライマーをコートする工程;
カバーガラスの少なくとも片面の辺縁部と、該下部材のコートされた片面とを、少なくとも一種のシーリング材で接着し、密封する工程、
を包含し、ここで該シーリング材が、少なくとも1種のシリコーン系ポリマーの混合物およびポリウレタンを含む有機溶液であり、該プライマーが、ポリウレタンを含む有機溶液である、方法。
【請求項2】 前記下部材が、カバーガラスより面積の等しいかまたは小さい試料保持領域を有し該試料保持領域を取り囲む包囲部を貼り付けた透明基板、または該透明基板を備える流動式チャンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記包囲部が、疎水性ポリマー材料である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】 前記包囲部が、テープ材である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】 前記ポリウレタンを含む有機溶液の溶媒が、酢酸エチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】 前記流動式チャンバーが、前記透明基板上に配置された、流体プールを有するリザーバ、およびノズルを備え、
該透明基板が、該リザーバに連通する第1の孔および該ノズルに連通する第2の孔を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】 前記透明基板が、ガラス基板またはアクリル基板である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】 前記試料が、生細胞、固定化細胞、微生物、または動植物の組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】 光学顕微鏡用プレパラートであって、以下:
上面にプライマーがコートされている透明基板;
該透明基板の上面に貼付けられ、カバーガラスより面積の等しいかまたは小さい試料保持領域を有する、包囲部;
該試料保持領域内に保持された試料;および
該プライマーがコートされている透明基板上に、シーリング材により接着されたカバーガラス、
を備え、ここで該プライマーが、ポリウレタンを含む有機溶液であり、該シーリング材が、少なくとも1種のシリコーン系ポリマーの混合物およびポリウレタンを含む有機溶液である、プレパラート。
【請求項10】 光学顕微鏡用プレパラートを作製するためのキットであって、
透明基板;
該透明基板の上面にコーティングするためのプライマー;
該透明基板の上面に貼付けるための、カバーガラスより面積の等しいかまたは小さい試料保持領域を有する、包囲部;および
該プライマーがコートされた透明基板上にカバーガラスを接着するためのシーリング材、
を備え、ここで該プライマーが、ポリウレタンを含む有機溶液であり、該シーリング材が、少なくとも1種のシリコーン系ポリマーの混合物およびポリウレタンを含む有機溶液である、キット。
【請求項11】 観察される試料をさらに備える、請求項10に記載のキット。
【請求項12】 前記包囲部がテープ材である、請求項10に記載のキット。
【請求項13】 光学顕微鏡用プレパラートであって、以下:
流体の流動式チャンバーであって、以下:
第1の孔および第2の孔を備え、面にプライマーがコートされている透明基板;
該透明基板の上面に配置された、リザーバ;および
該透明基板の上面に配置された、ノズル、
を備え、該第1の孔が該リザーバと連通し、該第2の孔が該ノズルと連通する、チャンバー;
該透明基板の下面に貼付けられ、カバーガラスより面積の等しいかまたは小さい試料保持領域を有する、包囲部;ならびに
該プライマーがコートされた透明基板の下面にシーリング材により接着されたカバーガラス、
を備え、ここで該プライマーが、ポリウレタンを含む有機溶液であり、該シーリング材が、少なくとも1種のシリコーン系ポリマーの混合物およびポリウレタンを含む有機溶液である、プレパラート。
【請求項14】 前記リザーバが、温度可変装置に装着可能である、請求項13に記載のプレパラート。
【請求項15】 光学顕微鏡用プレパラートを作製するためのキットであって、以下:
第1の孔および第2の孔を備える透明基板;
該透明基板の上面にコーティングするためのプライマー;
該第1の孔と連通されるリザーバ;
該第2の孔と連通されるノズル;
該透明基板に貼付けられ、カバーガラスより面積の等しいかまたは小さい試料保持領域を有する、包囲部;ならびに
該プライマーがコートされた透明基板上にカバーガラスを接着するためのシーリング材、
を備え、ここで該プライマーが、ポリウレタンを含む有機溶液であり、該シーリング材が、少なくとも1種のシリコーン系ポリマーの混合物およびポリウレタンを含む有機溶液である、キット。
【請求項16】 観察される試料をさらに備える、請求項15に記載のキット。
【請求項17】 生きた細胞を継続的に観察するための方法であって、該方法は以下:
プレパラートの試料保持領域において生きた細胞を含む試料を調製する工程;
試料保持領域を備えた下部材の片面にプライマーをコートする工程;
カバーガラスの少なくとも片面の辺縁部と、該下部材のコートされた片面とを、少なくとも一種のシーリング材で接着し、密封する工程、
該生きた細胞を含む試料を、光学顕微鏡で継続的に観察する工程、
を包含し、ここで該シーリング材が、少なくとも1種のシリコーン系ポリマーの混合物およびポリウレタンを含む有機溶液であり、該プライマーが、ポリウレタンを含む有機溶液である、方法。
【請求項18】 生きた細胞の観察のためのプレパラートであって、以下:
上面にプライマーがコートされている透明基板;
該透明基板の上面に貼付けられ、カバーガラスより面積の等しいかまたは小さい試料保持領域を有する、包囲部;
該試料保持領域内に保持された試料;および
該プライマーがコートされた透明基板上にシーリング材により接着されたカバーガラス、
を備え、ここで該プライマーが、ポリウレタンを含む有機溶液であり、該シーリング材が、少なくとも1種のシリコーン系ポリマーの混合物およびポリウレタンを含む有機溶液である、プレパラート。
産業区分
  • 微生物工業
  • 高分子化合物
  • 治療衛生
  • 光学装置
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中


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