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卵母細胞の培養方法及び発育方法

国内特許コード P04A006080
整理番号 動物バイオ-81
掲載日 2005年2月16日
出願番号 特願2002-346327
公開番号 特開2004-173635
登録番号 特許第4122425号
出願日 平成14年11月28日(2002.11.28)
公開日 平成16年6月24日(2004.6.24)
登録日 平成20年5月16日(2008.5.16)
発明者
  • 平尾 雄二
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 卵母細胞の培養方法及び発育方法
発明の概要

【課題】動物の卵母細胞を体外で発育させうる簡便な培養方法の提供。
【解決手段】卵母細胞とその周囲の体細胞との複合体を、高分子化合物を1~12%(w/v)の濃度で含む培養液で培養することを特徴とする、卵母細胞の培養方法。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要
卵母細胞とは、それが発育期・成熟過程を経て、受精が可能な卵子となる前駆細胞であり、全ての卵母細胞が胎児期に形成され、発育期に入る前や発育途上の卵母細胞は分裂することはなく、発育を終えて成熟する段階で初めて「減数分裂」を行うことが知られている。「卵母細胞の発育」とは、卵母細胞の体積が著しく増大するプロセスを指し、細胞分裂によって細胞集団が増大することを意味しない。発育達成の目安となる卵母細胞の直径は、細胞膜の外側を包む透明帯の厚さを除いて、マウスなどの小型動物では約75μm、ブタやウシなどの中型・大型動物では120~130μmである。
【0003】
卵母細胞の体積はそれぞれ220,000μm3及び1,020,000μm3程度であり、中型・大型動物の卵母細胞の体積は、小型動物の約4.6倍にもなる。サイズの違いは発育に要する時間にも反映され、マウスの卵母細胞が発育を開始してから完了するまでの期間は16~18日、ウシやブタではマウスほど厳密には調べられていないが、およそ1.5~2ヶ月であると考えられる。
【0004】
動物の卵巣内には、発育期以前の卵母細胞や、発育途上の卵母細胞が数多く存在する。その多くは卵巣内で失われるが、培養技術を用いてそのような卵母細胞を発育させることができれば、優良家畜の増産や卵母細胞を必要とするバイオテクノロジーへ卵母細胞を供給することが可能となる。そのような技術が研究されているが、マウスを除き、成熟卵母細胞を得ることは困難を極めており、試行錯誤の域を脱していない。
【0005】
卵巣内の卵母細胞の生存と発育には周囲の体細胞との連絡が必須である。培養においても、周囲の細胞を失った「裸化」卵母細胞は発育することができない。例えばEppigらによって開発された方法(例えば、非特許文献1及び2参照)では、マウスの発育途上の卵母細胞を包むように体細胞が付着した状態のまま分離し、培養皿やインサートメンブレン上に付着させて培養することによって、卵母細胞を発育させ、成熟卵子を得ている。従って、体外培養において卵母細胞の発育を可能とする最小限の構成は、卵母細胞とそれを包む体細胞層である。この培養系は、卵母細胞を包む顆粒膜細胞層のみで構成されており、本来その外側を包む基底膜とその周囲の細胞は含まれない。このような単純な培養方法を用いた例では、ラットを使った報告があるものの(例えば、非特許文献3参照)、マウスの成績には遠く及ばず、他の動物種(例えば、ブタやウシなどの中型・大型動物)にいたっては、卵母細胞を発育させ、成熟させたとする報告はない。
【0006】
従来の培養液を用いて、上述した方法でブタやウシなどの中型・大型動物の卵母細胞を培養した場合、体細胞が培養皿やインサートメンブレン表面を好んで伸展し、遊走する結果、卵母細胞が裸化し、死滅することが多い。あるいは、裸化を防ぐ目的で、大きな細胞塊に卵母細胞が包まれるような条件を整えて培養した場合、大きくなった細胞塊の内部で卵母細胞が死滅する。いずれの場合にも、卵母細胞を中心とする機能的で適切な3次元構造が維持されていないことが培養の失敗の原因である。
【0007】
上述した方法とならび、卵胞組織を単離して丸ごと培養する卵胞培養と称する方法がある。ハムスター、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヒトなどのマウス以外の動物では、専らこの卵胞培養が試みられている(例えば、非特許文献4~10参照)。卵胞構造は、最内部の卵母細胞を顆粒膜細胞層が包み、その外側を基底膜が覆い、さらにその外側を卵胞膜細胞層が取り囲むものである。上記の卵母細胞と顆粒膜細胞で構成される組織で卵母細胞を培養する系を開放型の培養系とした場合、この卵胞培養は、卵母細胞にとっては卵胞組織の最深部において閉鎖されている培養系となる。生体内での発育に要する時間を考慮した場合、卵母細胞を発育させる培養は一般に長期間にならざるを得ないことが明らかである。ウシやブタの卵胞培養については2~4週間にも及ぶ長期培養の報告があるが、そのような長期培養後の卵母細胞に関する情報は少なく、得られている卵母細胞の能力も成熟卵子として利用する段階までには至らない(例えば、非特許文献5~8参照)。
【0008】
また、卵胞培養では、上述した通り、培養系の深部に卵母細胞が保持されるため、卵胞内部にある卵母細胞の発育段階を直接知ることができず、また健康状態を判断することも困難である。従って卵胞培養では、卵胞を開いた時点で培養を終了することとなり、その時点で卵母細胞の成熟の適期であることのほうがむしろまれである。また、培養に長期間を要するものでは、この問題はさらに深刻なものになる。
さらにこの方法では、最初の操作段階において完全な状態で卵胞が採取された場合にのみ、培養を行うことができるという点でも制約が大きい。
【0009】
卵胞培養と類似の方法として、卵胞を一度破り、内部の発育途上卵母細胞と顆粒膜細胞群の複合体を採取し、コラーゲンゲルに包埋して培養することにより、擬似的な卵胞を形成させる方法も報告されている(例えば、非特許文献11参照)。この方法によりウシでは2週間の培養の後に成熟卵子が得られているが、卵胞腔様の構造が再び形成されるため、内部にある卵母細胞の発育段階を直接知ることができず、健康状態を判断することが困難であるという制約は残されたままである。従って、このような問題を回避し、最終段階までコラーゲンゲルに包埋することなく卵母細胞を直接観察できるように培養することができれば、さらに有用な培養系となるはずである。
【0010】
従って、様々な動物種の発育途上にある卵母細胞を、機能的な最小限の細胞構成で培養することができれば、上記の問題が解消され、卵母細胞の簡便な培養系が提供される。
【0011】
【非特許文献1】
Eppig及びSchroeder,Biology of Reproduction(USA),1989年,第41巻,p.268-276
【非特許文献2】
Eppig及びO'Brien,Biology of Reproduction(USA),1996年,第54巻,p.197-207
【非特許文献3】
Danielら,Gamete Research(USA),1989年,第24巻,p.109-121
【非特許文献4】
Roy及びGreenwald,Journal of Reproduction and Fertility(UK),1989年,第87巻,p.103-114
【非特許文献5】
Hiraoら,Journal of Reproduction and Fertility(UK),1994年,第100巻,p.333-339
【非特許文献6】
Shuttleworthら,Reproduction(UK),2002年,第123巻,p.807-818
【非特許文献7】
Gutierresら,Biology of Reproduction(USA),2000年,第62巻,p.1322-1328
【非特許文献8】
Telferら,Molecular and Cellular Endocrinology(IR),2000年,第163巻,p.117-123
【非特許文献9】
Cecconiら,Biology of Reproduction(USA),1999年,第60巻,p.594-601
【非特許文献10】
Wuら,Human Reproduction(UK),1998年,第13巻,p.2562-2563
【非特許文献11】
Yamamotoら,Theriogenology(USA),1999年,第52巻,p.81-89
産業上の利用分野
本発明は、動物の卵母細胞の培養技術に関する。より詳細には、発育途上にある卵母細胞をその周囲の体細胞との複合体の状態で培養し、卵母細胞を発育させる技術に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】 発育途上の卵母細胞とその周囲の体細胞との複合体を、ポリビニルピロリドン(PVP)またはフィコール(Ficoll(登録商標))2~8%(w/v)の濃度で含む培養液で培養することを特徴とする、卵母細胞の発育方法。
【請求項2】 発育途上の卵母細胞とその周囲の体細胞との複合体を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを1%(w/v)の濃度で含む培養液で培養することを特徴とする、卵母細胞の発育方法。
【請求項3】 複合体が哺乳動物に由来するものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】 哺乳動物が、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、ラット、又はマウスである、請求項記載の方法。
【請求項5】 周囲の体細胞が、卵丘細胞、顆粒膜細胞塊及び/又は顆粒膜細胞層である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】 請求項1~5のいずれかに記載の方法によって発育した卵母細胞を成熟させることを特徴とする、成熟卵子の作製方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 高分子化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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23050_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中


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