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絹タンパク質とキトサンとの複合体およびその製造方法

国内特許コード P04A006098
整理番号 有機材料-63
掲載日 2005年2月16日
出願番号 特願2002-299131
公開番号 特開2004-131647
登録番号 特許第3924612号
出願日 平成14年10月11日(2002.10.11)
公開日 平成16年4月30日(2004.4.30)
登録日 平成19年3月9日(2007.3.9)
発明者
  • 塚田 益裕
  • 羽賀 篤信
  • 清水 慶昭
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 絹タンパク質とキトサンとの複合体およびその製造方法
発明の概要 【課題】染色などの工程においても、絹糸表面に付着したり絹糸内部に含有されたキトサンが脱離することがないような絹タンパク質とキトサンとの複合体およびその製造方法の提供。
【解決手段】キトサン同士の架橋結合に加えて、キトサンと絹タンパク質との間にも架橋結合が導入されてなる絹タンパク質とキトサンとの複合体。絹タンパク質が、中性塩水溶液中で塩縮処理された絹糸である。絹糸にキトサンの酢酸水溶液を含浸させてキトサン含有絹糸を製造し、このキトサン含有絹糸に架橋剤を作用させて複合体を得る。
【選択図】  図2
従来技術、競合技術の概要


絹糸は、吸湿性、染色性、風合い感の諸点で衣料素材として優れた実用的な性質を有しているため、和装分野での素材を中心に用いられてきた。また、最近は安価な絹製品の輸入量が増加し、洋装分野においても絹製品が多用されるようになった。絹糸は織物素材として用いられて久しいが、絹糸には捲縮性が無いためにニット素材として利用されることはなかった。絹糸を編物用素材として利用することができれば、絹糸の需要を拡大させることが可能となるであろう。



そのため、従来、絹糸を塩縮処理して絹糸に特定の機能を付与する試みがなされている。すなわち、加熱した中性塩水溶液中に絹糸を浸漬すると、浸漬後数十秒~数分の短時間に絹糸が膨潤し、繊維長方向に著しく縮む(これを塩縮といい、捲縮ということもある)。絹糸を塩縮させるための中性塩としては、硝酸カルシウムがよく知られており、その水溶液で処理する方法が一般的である(例えば、非特許文献1参照)。この場合、密度が1.410~1.420g/cm3の加熱した硝酸カルシウム水溶液に絹糸を浸漬すると、中性塩水溶液中に約1分浸漬する塩縮過程で塩縮率が40%に達する。中性塩水溶液に家蚕絹糸を浸漬すると、通常20秒程度の短い浸漬時間で、家蚕絹糸は膨潤し、繊維長が縮み、その結果、絹糸表面が不規則となり捲縮する。このような塩縮処理により、絹糸は柔らかくなり、また、糸嵩が増して、軽くソフトな肌触りになる。嵩高い素材は空気を多く含み柔らかいので、ニット素材などの衣料素材として好んで利活用されている。



また、天然高分子であるキトサンは、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲皮中に含まれるキチンのアセチル基を化学的に取り除く「脱アセチル化反応」により得られ、各種産業資材として広範に利活用され、それらの用途は多岐にわたっている。繊維そのものとしての用途のほかに、衣料用加工剤としての利用も可能である。このように、甲殻類由来のキチン、キトサンは、様々な分野で付加価値の高い素材である。
キトサンは、優れたタンパク質吸着能を持っているものの、粉末状、またはフレーク状のキトサンをそのまま用いた場合は、成形性や物理的強度が劣悪であるため用途が限られ、実用価値を付与した利用形態を取ることが困難であった。キトサンはまた、乳酸、蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸に溶解する際、有機酸の酸性が強いとキトサン本来の高い分子量が低下し、出来上がった形成物の成形性が劣悪なものとなってしまう。



そこで、キトサンが酢酸水溶液に良く溶けることから、キトサンの酢酸水溶液をスタート物質とすることにより、繊維、膜等の成形体を形成する試みがなされた。キトサン成形体の繊維や膜の特性は、キトサンの糖鎖すなわちキトサンの化学構造に起因するものであり、この特性を活かして利用を図ることが望ましい。しかし、キトサン成形体である繊維の強度や伸度等の機械的特性は、成形体が乾燥状態にあるかあるいは湿潤状態にあるかで異なり、特に湿潤状態では、特性が著しく低下するということが実用上の問題となっている。
上記のようなキトサンの多様な機能に着目し、繊維にキトサンを付着させる技術が開発されている。例えば、綿繊維をキトサンで前処理することにより、直接染料が効率的に繊維素材に吸着され、染着量が増加することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。



また、絹糸にキトサンを導入しようとの試みもある。例えば、キトサンを絹糸表面に付着させることにより直接染料での染色性が改善され、染色速度が増加することが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。この非特許文献3記載のキトサン浸漬処理は、絹糸をキトサンの酢酸水溶液に浸漬し、熱処理するというものであり、キトサンが絹糸表面に付着しているだけで、キトサンが絹糸の内部に拡散しまたは結合しているわけではない。すなわち、絹糸表面にキトサンを付着させるために、家蚕絹糸をキトサンの酢酸水溶液に浸漬し、その後乾燥させているに過ぎない。つまり、キトサンの酢酸水溶液中で絹糸をパッド(2ディップ、2ニップ)することで、絹糸表面をキトサンで被覆させようとしたものである(例えば、非特許文献4参照)。



上記した非特許文献3および4記載の方法では、絹糸表面にキトサンの薄膜が物理的に付着するだけであり、キトサンが絹糸内部に入っていないために耐久性が低いという問題がある。また、付着キトサンと絹糸との間には特別な化学結合が導入されておらず、これら従来の方法で調製した素材を酸性染料や酸性媒染染料で染色しても、染着量が極わずか増す程度であり、染着率が目立って増加しない(例えば、非特許文献5参照)。



【非特許文献1】
加藤弘、日本蚕糸学雑誌、59, 271-279, 280-287, 341-349 (1990)
【非特許文献2】
J.A.Rippon, J.Soc. Dyers and Colourists, 100, 298-303 (1984)
【非特許文献3】
加古武および片山明、日本蚕糸学雑誌、68, 429-431 (1999)
【非特許文献4】
加古武および片山明、日本蚕糸学雑誌、57, 31-37 (1988)
【非特許文献5】
加古武および片山明、日本蚕糸学雑誌、58, 374-379 (1989)

産業上の利用分野


本発明は、絹タンパク質とキトサンとの複合体およびその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
中性塩水溶液中で塩縮処理された絹糸とキトサンとの複合体であって、該キトサンが架橋剤を介して絹糸と結合し、また、該絹糸に入り込んだキトサン同士が架橋剤を介して共有結合しており、該架橋剤がグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、およびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルから選ばれた二官能性のエポキシ化合物もしくは三官能性のエポキシ化合物、またはソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、およびペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルから選ばれた多官能性のエポキシ化合物であることを特徴とする複合体。

【請求項2】
昆虫由来の絹糸を、臭化リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、チオシアン酸リチウム、硝酸カルシウム、および塩化カルシウムから選ばれた中性塩の水溶液中で塩縮処理し、塩縮処理後、水分除去や乾燥をさせることなく、塩縮処理された絹糸をキトサン含有酢酸水溶液に浸漬してキトサン含有絹糸を製造し、得られたキトサン含有絹糸に、グリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、およびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルから選ばれた二官能性のエポキシ化合物もしくは三官能性のエポキシ化合物、またはソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、およびペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルから選ばれた多官能性のエポキシ化合物である架橋剤を水または有機溶媒の存在下で、40~80℃で作用させて、該キトサンが架橋剤を介して絹糸と結合し、また、該絹糸に入り込んだキトサン同士が架橋剤を介して共有結合するように架橋結合を導入させ、該絹糸とキトサンとの複合体を得ることを特徴とする複合体の製造方法

【請求項3】
前記塩縮処理された絹糸のキトサン含有水溶液への浸漬が、5~15%濃度の酢酸水溶液中に、10~50℃で、1~24時間浸漬することにより行われることを特徴とする請求項2記載の複合体の製造方法

【請求項4】
前記キトサン含有絹糸への架橋結合の導入が、架橋剤を含む水中またはテトラクロロエタン溶媒中で、40~90℃の温度で行われることを特徴とする請求項2または3記載の複合体の製造方法。

【請求項5】
前記架橋剤の添加量が、キトサンと絹糸中に含まれる総塩基性基の全モル数の5~100%であることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の複合体の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2002299131thum.jpg
出願権利状態 登録


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