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細胞生育性に優れた改質絹粉末、その製造方法及びその利用

国内特許コード P04A006099
整理番号 有機材料-64
掲載日 2005年2月16日
出願番号 特願2002-294330
公開番号 特開2004-123683
登録番号 特許第3851928号
出願日 平成14年10月7日(2002.10.7)
公開日 平成16年4月22日(2004.4.22)
登録日 平成18年9月15日(2006.9.15)
発明者
  • 坪内 紘三
出願人
  • 坪内 紘三
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 細胞生育性に優れた改質絹粉末、その製造方法及びその利用
発明の概要 【課題】特にヒト細胞生育性に優れ、しかも成形性や手触り、展延性、付着性、染色性等にも優れた絹粉末を提供することを目的とする。
【解決手段】(1)分子量の低下した結晶性絹粉末の表面に、(2)温和な処理条件下で精練し、該精製して得た前記絹粉末の分子量よりも高い分子量を有する絹物質を被覆したことを特徴とする、ヒト細胞生育性を有し、かつ成形性、手触り、付着性、染色性等に優れた改質絹粉末。
また、結晶性絹粉末の表面に被覆される絹物質の平均分子量が、4万以上である改質絹粉末。
【選択図】       図1
従来技術、競合技術の概要


絹物質が生体適合性に優れた物質であることから、その医療素材、化粧品等への利用が注目されるようになり、各種の絹物質からなる素材が提案されている。
特に、創傷被覆材や化粧料基材として、各種の粉末状又はフィルム状の絹物質が提案されている。
そのような粉末状又はフィルム状の絹物質製品に関する提案例として、例えば(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)等が挙げられる。
一方、本発明者らは、長年絹に関する研究を行ってきた中で、様々な粉末状又はフィルム状の絹物質の製造に関する提案を行ってきた。
その例を挙げれば、(特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13)等がある。



これら従来の絹粉末の製造方法は、一般に、絹物質を酸や中性塩等を含む水溶液に溶解させた後、中和によって生成する塩を除去して、または中性塩を脱塩してフィブロイン水溶液を作り、この水溶液にアルコール等の沈澱剤を添加して絹フィブロインを沈澱させ、次いでこの沈澱物を分離し乾燥することにより行われる。
また、上記水溶液を凍結乾燥や噴霧乾燥、攪拌するなどして絹フィブロイン粉末を得るか、またはこれを粉砕して粉末を得る方法(化学的方法)、が知られている。
しかし、化学的方法で得た粉末であっても結晶化度を約75%以上に向上させ、粒子を6μm以下、好ましくは3μm以下にすれば、固形ファンデーションとして利用できる程度の成形性を有するようになる。
このような絹粉末の結晶性の程度は、粉末の水溶性と関連する。



絹タンパクの分子量が10,000程度以上で、絹粉末粒子が水に溶解する場合を非結晶、水に溶解しない場合を結晶とし、重量で25%水に溶解する場合を結晶化度75%とし、結晶化度75%以上を結晶性とする。
一般に、これら化学的方法で得た絹粉末は、絹糸を物理的に粉砕して絹粉末を得る方法(いわゆる物理的方法)で得た粉末より結晶性が低く、成形性も十分ではない。
したがって、化学的方法で得た絹粉末の成形性を向上させるために、アルコール処理(例えばエチルアルコール70%、水30%の混合液で処理)をするか、熱水蒸気で処理することで結晶化度を上げる必要がある。
このような方法で結晶性の絹粉末となっても、絹糸の構造を残した結晶性の絹粉末より成形性は少し低い。
しかし、平均粒子径が10μm以下の結晶性の微粉末となれば、繊維の構造を残した結晶性絹微粉末と混合するなどして固形ファンデーションに成形できる。



一方、物理的方法では、絹糸を物理的に粉砕して絹粉末を得る場合に、絹糸は本来高強度であるために、絹糸をそのまま微粉末化し、3 μm以下の粉末として得ることは困難である。
絹糸の粉砕においては粒子の大きさが3μmに壁があるといわれ(特許文献4参照)、3μm以下の絹粉末の製造方法の開発が期待されていた。
その後、本発明者らは、絹糸をアルカリ処理して絹糸の強度を低下した後に粉砕する方法により、結晶性絹超微粉末を得る方法(特許文献14参照)を開発した。



この絹粉末は絹糸の構造を残した結晶性粉末で且つ水不溶性であり、極めて成形性がよく、手触りや染色性にも優れていること等から、各分野での利用が期待されるものである。
一方、絹タンパクは蚕が吐糸した繭を精練工程を経た後、各種加工手段により生糸、絹織物等に加工され、医療(手術用縫合糸)や化粧(パフ等)等の分野で利用されているが、最近になって、絹糸の加工工程で絹タンパクの分子量は低下することが分かってきた。
また、分子量が低下した絹タンパクは、ヒト細胞の生育促進性が低下することが明らかにされた(特許文献15参照)。
上記の従来の結晶性絹粉末の製造においては、絹糸はアルカリでかなり過酷な条件下で処理されることから、アルカリ処理後の絹タンパクは分子量が相当低下していると考えられる。



上記各種提案例では、特に創傷被覆材や化粧料基材として要請される成形性や手触り、付着性等に優れた素材を得る目的で、素材の物理的要因、特に粒子の大きさや強度、結晶性等の観点からの研究開発を主としているものが多いが、生繭が本来有する未分解絹フィブロインの機能を重視し、その特性に着目して創傷被覆材や化粧料基材を製造するという観点からの研究開発例はほとんど見当たらない。



本発明者らは、その後、さらに生繭の絹フィブロインについて研究を重ねる中で、生繭の絹フィブロインが実質的に分解変性されていない高分子量の絹フィブロイン(未分解絹フィブロイン)を得ることに成功した。
この未分解絹フィブロインは、従来、提案されてきた各種粉末状又はフィルム状の絹フィブロインと比較し、著しくヒト細胞生育性に優れていることを見出し、この知見に基づき先に提案を行った(特許文献15、特許文献16、特許文献17参照)。



成形性や手触り、付着性, 染色性等に優れた絹微粉末である上記(特許文献14参照)の結晶性絹超微粉末等は、化粧用への利用が進められているが(特許文献8参照)、これらの絹粉末は絹糸をアルカリで長時間処理しているため、絹タンパクの分子量が低下していることが確認されている(非特許文献1参照)。
絹タンパクは熱、光、酸やアルカリ等で分子量が低下し易く、分子量が低下した絹タンパクは細胞生育性も低下することが確認された(特許文献15参照)。
分子量が低下し、細胞生育性が低下した結晶性絹粉末であっても、絹糸の構造を残していれば、成形性や手触り、染色性等に優れている。
従って、これらの結晶性絹粉末の細胞生育性の機能を向上できれば、スキンケア用素材として化粧品、医薬品、医薬部外品等、またコーティング素材や合成樹脂への複合素材としてその利用性は更に一層高まることが期待される。



【特許文献1】
特開2001ー54359号公報
【特許文献2】
特開平5-228204号公報
【特許文献3】
特開平5-168690号公報
【特許文献4】
特開平4-337331号公報
【特許文献5】
特開平2-34171号公報
【特許文献6】
特開昭61-52280号公報
【特許文献7】
特公昭57-11577号公報
【特許文献8】
特開2001-26517号公報
【特許文献9】
特開平11-253155号公報
【特許文献10】
特開平11-104228号公報
【特許文献11】
特開平11-70160号公報
【特許文献12】
特開平9-192210号公報
【特許文献13】
特開平8-198970号公報(特許第2615440号)
【特許文献14】
特開2001-48989号公報
【特許文献15】
特開2001-364489号公報
【特許文献16】
特開2001-163899号公報
【特許文献17】
特開2001-180169号公報
【非特許文献1】
H.Yamadaら著:Materials Science & Engineering C,14.P.41-46(2001)。

産業上の利用分野


本発明は、優れた細胞生育性を有し、かつ成形性、手触り、付着性、染色性等に優れた改質絹粉末、その製造方法およびその医療分野、化粧品分野等での利用に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
分子量の低下した結晶性絹粉末の表面に、温和な処理条件下で精練し、該精練して得た前記絹粉末の分子量よりも高い分子量を有する絹物質を被覆したことを特徴とする細胞生育性を有する改質絹粉末。

【請求項2】
結晶性絹粉末の表面に被覆される絹物質の平均分子量が、4万以上である請求項1記載の改質絹粉末。

【請求項3】
結晶性絹粉末の表面に被覆される絹物質の平均分子量が、10万以上である請求項1記載の改質絹粉末。

【請求項4】
次の(1)~(6)の工程を順次行うことを特徴とする、細胞生育性を有し、かつ成形性、手触り、付着性、染色性等に優れた改質絹粉末の製造方法。
(1)生繭、乾繭、生糸、絹糸若しくはそれらの残糸、これら各糸により形成された織物、不織布、編物、またはそれらの加工工程で生じる残糸を、
(2)温和な処理条件下で精練し、
(3)精練して得た当該絹物質を中性塩水溶液に溶解させ、
(4)次いで、水に透析して得た絹物質の水溶液を、
(5)分子量の低下した絹粉末の粒子表面に被覆させ、
(6)次いで、乾燥し、粉砕する。

【請求項5】
分子量の低下した絹粉末が、繭糸、絹糸、生糸等の絹物質をアルカリ水溶液と接触させて絹糸の強度を低下させた後に、脱アルカリと乾燥を行い、次いで得られた絹物質を微粉砕することにより製造して得られる結晶性絹粉末であることを特徴とする請求項4記載の改質絹粉末の製造方法。

【請求項6】
分子量の低下した絹粉末が、繭糸、絹糸、生糸等の絹物質を中性塩を含む水溶液に溶解させた後、その中性塩を除去して絹物質水溶液を作り、次いでこの絹物質水溶液を攪拌して沈殿物を析出させ、この沈殿物を乾燥後に粉砕するか、又は前記絹物質水溶液に沈殿剤を添加して絹物質の沈殿を形成した後、この沈殿を分離し、乾燥粉砕するか、又は前記絹物質水溶液を凍結乾燥することにより製造して得られる結晶性絹粉末であることを特徴とする請求項4記載の改質絹粉末の製造方法。

【請求項7】
温和な処理条件下での精練が、大気圧下でアルカリ金属化合物濃度0.02~1.0%の水溶液中で2~30分、好ましくは炭酸ナトリウム濃度0.03~0.8%の水溶液中で5~40分、煮沸することからなる請求項4記載の改質絹粉末の製造方法。

【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項記載の製造方法により得られる改質絹粉末からなる創傷被覆剤。

【請求項9】
請求項4~7のいずれか1項記載の製造方法により得られる改質絹粉末からなる化粧料。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2002294330thum.jpg
出願権利状態 登録


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