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FFAG加速器

国内特許コード P05A006966
整理番号 NIRS-174
掲載日 2005年4月8日
出願番号 特願2003-203797
公開番号 特開2005-050578
登録番号 特許第4002977号
出願日 平成15年7月30日(2003.7.30)
公開日 平成17年2月24日(2005.2.24)
登録日 平成19年8月31日(2007.8.31)
発明者
  • 岩田 佳之
  • 三須 敏幸
出願人
  • 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
発明の名称 FFAG加速器
発明の概要 【課題】セル数を増やすことなく、高いk値を持つFFAG加速器の設計を可能とすることにより加速器全体の大幅な小型化を可能とする。
【解決手段】B=B(r/rで表される磁場分布を持つセル数Nの電磁石を用いたFFAG加速器において、上記k値が原点(k=0)に近い第1の安定領域(A)よりも高い第2又はそれ以降のベータトロン振動の安定領域を動作点とする。第2の又はそれ以降のベータトロン振動の安定領域は、セル数Nとk値との様々な組み合わせについて線形光学近似による計算を行い、ビーム光学的安定解の数を求めることにより探索する。第2の安定領域(B)では、k/Nが大きくなるので、セル数を増やすことなくk値を大きくできる。
【選択図】 図7
従来技術、競合技術の概要


円形加速器においては、粒子を高エネルギーまで加速しようとすると、それに伴い軌道半径は大きくなる。サイクロトロンの場合、粒子の周回周期が粒子の運動量によらないという等時性の条件を満たすため半径方向の磁石サイズが増大し、電磁石の重量は磁極半径の2乗ないし3乗に比例して重くなる。そのため加速器の小型化が困難となる。一方、シンクロトロンでは軌道半径を一定に保ちながら加速するため、電磁石は軌道部分にあればよく電磁石が小型になる。軌道半径を保つためシンクロトロンでは加速と共に磁場が変化する交流電磁石を用いる。交流電磁石を用いるためシンクロトロンでは加速の繰り返しに上限があり、ビーム強度をあげるのは一般に難しくなる。



近年、FFAG(Fixed-Field Alternating Gradient)方式が加速器科学の分野で脚光を浴びている。FFAG方式の加速器は固定磁場且つ強収束な加速器で、シンクロトロンとサイクロトロンの長所を兼ね備えた加速器である。FFAG加速器はサイクロトロンと同様に固定磁場を用いる。そのため、シンクロトロンにくらべ加速の繰り返しを数十倍まで上げることが可能であり、直流に近い大強度ビームが得られる。またFFAGでは半径方向に磁場勾配を持つため、加速による軌道の変化幅を小さくできる。よってサイクロトロンに比べ電磁石が小型になる。これらの特徴からFFAG加速器は、小型で高エネルギーかつ大強度ビーム加速器として、近年注目が集まっている。その他、加速時間が短いためミューオンなど短寿命な粒子の加速器として有望視されている。



FFAG加速器は2種類に大別される。一つはラジアルセクター型といわれるもので、その概略図は図1に示してある。FFAGやシンクロトロンでは電磁石が周期的に並べられているが、この電磁石の配列(ラティス)の基本単位をセルという。例えば図1では正の電磁石1(F磁極)と正負の電磁石間の磁石のない空間2、負の電磁石3(D磁極)ならびに電磁石のない空間2が1セルである。電磁石のない空間2(ドリフト空間)を“O”と呼ぶとすると、図1の例ではFODOがラティスの基本セルとなり、合計8セルである。



なお、図1において、4は粒子を加速するための加速空洞であり、5はビーム出射のためのキッカー電磁石である。また、6及び7は、それぞれ入射ビーム及び出射ビームである。ラジアルセクター型FFAG加速器では磁場勾配の符号が等しく磁場の符号が異なる電磁石1、3(正および負の電磁石)を交互に並べることで強い収束力を得ている。よって中心軌道(加速器の設計軌道として選ばれた閉軌道)が図2に示したように交互に内外に曲げられ大きく蛇行する。FFAG加速器では加速と共に粒子軌道が変化するため入射時と出射時のビーム軌道は異なる。図2において、21及び22は、それぞれ入射時及び出射時のビーム軌道を示しており、Δrは両者の半径方向の軌道差(excursion)を示している。



ラジアルセクター型FFAG加速器で用いられる電磁石の磁場分布は正負両方の磁石共に、


の形を持ち、Bの符号が交互に変わる。ここでrは軌道半径で、kはfield indexである。このFFAG加速器で用いられる電磁石の断面図の一例を図3に示した。



図3において、31は鉄心、32はコイル、33は磁極間隙である。粒子軌道は加速と共に磁場Bの弱い方(L)から強い方(H)へ変位する。すなわち、入射時のビーム軌道21は、磁場の弱い方(L)を通り、出射時のビーム軌道22は、磁場の強い方(H)を通る。



このようなラジアルセクター型のFFAG加速器の技術によれば、FFAG加速器におけるビーム軌道保持用磁場の形状が正・逆交番磁場であることに注目し、集束磁石で発生させたフラックスを、リターンヨークを介さずに直接、発散磁石に戻す磁気回路とすることにより、リターンヨークを省略してビームの入射、取り出しを容易にするとともに、磁石の小型化を可能にするものがある(例えば、特許文献1参照)。



もう一つはスパイラルセクター型と呼ばれるFFAG加速器であり、その概略図を図4に示した。この加速器は、図4に示すように中心軌道と小さな角をなす螺旋型構造の磁石41を持つ。この型のFFAGでは正の磁場のみ用いられる。強い収束力は交互に並ぶ磁場の山と谷により得ている。なお、図4において、44は加速空洞であり、45はキッカー電磁石である。また、46及び47は、それぞれ入射ビーム及び出射ビームである。



FFAG加速器の原理は1952年に大河千弘氏により提唱されたが(大河千弘、1953年度日本物理学会予稿集)、最近まで実用化には至ってなかった。その原因は大口径で高加速勾配かつ広帯域の高周波加速空胴の製作や、式(1)で表されるような磁場勾配を持つ電磁石の設計が当時の技術では困難であったためである。しかしながら、最近の超高透磁率磁性体の開発や、三次元磁場計算コードの発展によりFFAG加速器の実用化が可能となってきた。その一例として、平成12年に高エネルギー加速器研究機構において建設された陽子加速用POP(Proof of Principle)FFAGや、同研究機構で平成14年から建設を行っている150MeV陽子加速用FFAGなどがある。



FFAG加速器では加速と共に粒子軌道が変化する。そのため入射時と出射時の半径方向の軌道差Δr(excursion)は電磁石や真空チェンバーのサイズを決め、更には加速器全体のサイズ及び建設費を大きく左右する(図2参照)。加速器の小型化のためには軌道差Δrをなるべく小さくする必要がある。FFAG加速器で用いられる電磁石は式(1)で表される磁場勾配を持つことから、軌道差Δrは次のように表すことができる。





ここでrinjは入射時の軌道半径で、BinjとBextはそれぞれ入射時及び出射時でのセクター電磁石の磁束密度である。磁束密度には(Bext/Binj)>1の関係があることから、k値を大きく取れれば軌道差Δrを小さくすることができる。



加速器の小型化のためにはk値を出来る限り大きくしたいが、適当な値でないとベータトロン振動が不安定となり、ビームが安定に加速されない。ここでベータトロン振動とは中心軌道から外れた粒子が中心軌道のまわりに行う振動のことである。設定できるk値はセル数に強く依存している。つまりセル数を決定すると選べるk値の範囲は必然的に決まり、その範囲以外ではベータトロン振動が不安定となりビームが安定に加速されない。一般にk値を上げるためには、セル数も同時に増やさなければならない。しかしながら、セル数を増加させるとビーム入出射に必要なドリフト空間を確保するため加速器の周長を増やさざるを得ない。よって結果的にk値を上げても加速器のサイズは小さくならず、FFAG加速器の小型化の限界が見えていた。



一方、強収束の原理の発見により今日のシンクロトロンは大幅な小型化が可能となった。強収束シンクロトロンでは異なるn値(field index)を持つ偏向電磁石を交互に配列することで強い収束力を得ている。ここでFFAGのfield index(k値)と区別するため、強収束シンクロトロンのfield indexをn値と書く。強収束シンクロトロンの簡単な例としてグラディエント電磁石のFセクターとDセクターを交互に並べたラティスを考える。



FDの単位セルがNセルある加速器を考え、n値を、
Fセクター(0<s<πR/N):n=n1
Dセクター(πR/N<s<2πR/N):n=-n2
とおき(n1>0, n2>0)、ρ=R=(一定)とする。ベータトロン振動の安定領域は単位セルのマトリクスの対角成分の和(トレース)を求め、その絶対値が1以下であるという条件から得ることが出来る。



この例では水平成分のマトリクスのトレースは、


と書け、ここで


である。また垂直成分に関しては、


であり、ここで


である。ベータトロン振動の安定領域は、


から得られ、これをプロットすると図5のようになる。



この図5で斜線部が安定領域である。図5からn値とセル数Nの2乗の比(n/N2)がある領域だけ、ベータトロン振動の安定領域が存在することがわかる。つまりn値を大きく取るためには、セル数Nも同時に大きくする必要がある。式(3)及び(4)には周期関数であるサイン及びコサインが含まれるため、安定領域はn1/N2およびn2/N2のさらに大きな値に対しても無数に存在する。この第2以降の安定領域を動作点として用いることで高いn値が得られるが、通常のシンクロトロンのビーム光学設計では最初に現れる安定領域が動作領域として選ばれる(例えば、非特許文献1参照)。



その理由は、第2の安定領域を動作点として選ぶことでベータトロン振動の振動数は大きくなるが、一般にベータトロン振動の振幅が大きくなり、その結果ビームサイズが大きくなる。ビームサイズが大きいと電磁石の口径を大きくする必要があるので、電磁石は大きくなる。よってシンクロトロンでは第2以降の安定領域を動作点として選ぶ大きな利点はないためである。



【特許文献1】
特開2003-142299号公報
【非特許文献1】
亀井亨、木原元央著「加速器科学」丸善株式会社、平成9年10月25日、p.94~95

産業上の利用分野


本発明は加速器に関し、特に、固定磁場強収束型加速器いわゆるFFAG加速器に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
B=B0(r/r0k(ここで、B及びB0はそれぞれ軌道半径r及びr0における磁束密度を表し、kはfield indexを表す)で表される磁場分布を持つセル数Nの電磁石を用いたFFAG加速器において、上記k値が原点(k=0)に近い第1の安定領域よりも高い第2又はそれ以降のベータトロン振動の安定領域を動作点とするFFAG加速器。

【請求項2】
単位セルあたりのベータトロン振動の位相の進みを180度超えさせて運転することを特徴とする請求項1に記載のFFAG加速器。

【請求項3】
上記k値に対してセル数Nを、k/N2>0.5の関係を満たす領域に設定することを特徴とする請求項1に記載のFFAG加速器。

【請求項4】
上記電磁石は、ラジアルセクター型電磁石であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のFFAG加速器。

【請求項5】
上記ラジアルセクター型電磁石は、FODO(ここで、F及びDはそれぞれ加速器の内側に偏向するセクター電磁石の磁極及び加速器の外側に偏向するセクター電磁石の磁極を表し、Oは電磁石のない空間を表す)の配列をもつことを特徴とする請求項4に記載のFFAG加速器。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
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