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プロトン・電子混合伝導体及びその製造方法と用途 実績あり

国内特許コード P05P001803
整理番号 E060P36
掲載日 2005年4月15日
出願番号 特願2003-209138
公開番号 特開2005-067915
登録番号 特許第4166641号
出願日 平成15年8月27日(2003.8.27)
公開日 平成17年3月17日(2005.3.17)
登録日 平成20年8月8日(2008.8.8)
発明者
  • 細野 秀雄
  • 林 克郎
  • 平野 正浩
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 プロトン・電子混合伝導体及びその製造方法と用途 実績あり
発明の概要 【課題】高温で、高いプロトン-電子混合伝導率を有し、かつ緻密化や薄膜化が容易であるなど、水素透過膜として優れた特徴を有する、ペロブスカイト型金属酸化物に替わる新規材料の開発が必要である。
【解決手段】12CaO・7Al化合物、12SrO・7Al化合物、又は12CaO・7Al化合物と12SrO・7Al化合物との固溶体を700℃以上1300℃以下、1000ppm以上の水素を含む雰囲気において熱処理した複合酸化物からなり、水素雰囲気中、温度700℃以上において、全伝導率1×10-3S・cm-1以上の値を示すことを特徴とするプロトン・電子混合伝導体。
【選択図】 図1
従来技術、競合技術の概要


従来、プロトンを伝導する固体物質(以下、「固体プロトン伝導体」と記す。)としては、高分子電解質、固体酸、ペロブスカイト型金属酸化物が代表的なものとして知られている。これらの固体プロトン伝導体は、水素を燃料として用いる燃料電池に不可欠な材料である他、水素センサーとして応用することもできる。



高分子電解質としては、米国デュポン社のイオン交換膜(商標名「Nafion」)が良く知られている。高分子電解質中でのプロトン伝導は、オキソニウムイオンを介して行われるので、高分子電解質は、水分が保持される100℃以下の温度域でしか用いる事ができない。



一方、最近、MHXOやMH(XO、(M=Cs,NH,Rb,X=S,Se)の化学式で表される固体酸からなる燃料電池が、150~160℃の温度域で動作することが示された(非特許文献1、特許文献1)。ここで用いられた固体酸化合物は、高分子電解質よりも高い温度域で用いることのできる材料であると考えられている。



さらに、ペロブスカイト型金属酸化物は、600~1000℃のより高温度域で用いることのできる固体プロトン伝導体であり、一般的な組成は、A(B1-x)O3-d(A=Ba,Sr,Ca,B=Ce,Zr,R=Y,希土類)と表される(例えば、非特許文献2)。



ペロブスカイト型金属酸化物を用いた燃料電池は、高温で動作するため、高価な白金系触媒が不要であるなど、酸素イオン伝導体を固体電解質として用いる固体酸化物燃料電池と共通した特長を有している。固体酸化物燃料電池の性能は電解質のイオン伝導度によって大きく影響され、イオン伝導率は高温ほど大きくなるので、電池の設計の難しさにもかかわらず、イオン伝導度が高くなる900℃以上の高温度で運転することが望ましいと考えられている。



しかし、ペロブスカイト型金属酸化物では、約900℃以上の高温においては、プロトンの保持量が減少して、プロトン伝導度が増大しなくなるという欠点がある。また、ペロブスカイト型金属酸化物のプロトン伝導性を活用して、同酸化物を水素透過膜として応用することが提案されている。



従来、パラジウム系合金が非常に良好な水素透過性を示すことから、同合金が水素透過膜として広く用いられている。水素の主要な工業的製造法として、炭化水素の水蒸気改質(例えば、メタン(CH)+水蒸気(HO)→3水素(H)+一酸化炭素(CO))がある。この製法で得られた水素を高分子電解質燃料電池に用いるためには、精製したガスから一酸化炭素を除去する必要がある。この際、水素透過膜を用いることによって、効率的な水素抽出が可能になる。パラジウム系合金膜を用いたメンブレンリアクター(隔膜反応槽)を用いれば、炭化水素の水蒸気改質と同時に水素抽出を行うことができ、反応温度を800℃から500℃に低下できることが報告されている(非特許文献3)。



しかし、パラジウム系合金は高価であるため、水蒸気改質に適した温度は約800℃の高温にも係わらず、低価格化が期待される、プロトン伝導性を示すペロブスカイト型金属酸化物を用いた水素抽出が検討されている。パラジウム系合金の水素透過が原子状水素の拡散によって生じるのに対して、ペロブスカイト型金属酸化物においては、プロトン伝導と共存するホール又は電子伝導(以下、「プロトン-電子混合伝導」と記す。)によって水素透過が生じる。



ペロブスカイト型金属酸化物においては、ホール又は電子伝導度がプロトン伝導度に比べて約2桁小さいため、水素透過率がパラジウム系合金よりも著しく小さくなっている。水素透過率を向上させるために、プロトン伝導度と共存するホール又は電子伝導度が高い新材料を見出すことが課題となっている。また、新材料の開発以外に、従来材料の薄膜化(非特許文献4)や金属との複合化(非特許文献5)によって、水素透過性を増加させる工夫もなされている。



C12A7結晶は、2分子を含む単位胞にある66個の酸素のうち、2個は結晶格子には含まれず、結晶の中に存在するケージ内の空間に「フリー酸素」として存在する特異な特徴を持つ(非特許文献6)。



これまで、このフリー酸素は種々のアニオンに置換できることが明らかにされた。本発明者らの一人である細野らは、CaCOとAl又はAl(OH)を原料として、空気中で1200℃の温度で固相反応により合成したC12A7結晶中に、活性酸素種の一つである超酸化物ラジカル(O)が1×1019cm-3程度の濃度で包接されていることを電子スピン共鳴の測定から発見し、フリー酸素の一部が超酸化物ラジカルの形でケージ内に存在するというモデルを提案している(非特許文献7、8)。さらに、フリー酸素の存在によって、C12A7結晶が、高い酸素イオン伝導性を示すことが報告されている(非特許文献9)。



本発明者らは、カルシウムとアルミニウムを概略12:14の原子当量比で混合した原料を、雰囲気と温度を制御した条件下で固相反応させ、1020cm-3以上の高濃度の活性酸素種を包接するC12A7化合物を新たに見出した。その化合物自体、その製法、包接イオンの取り出し手段、活性酸素イオンラジカルの同定法、及び該化合物の用途に関して、特許出願した(特許文献2)。



また、該化合物中の水酸化物イオン(OH)など酸素以外のアニオン濃度を制御し、700℃付近で、活性酸素イオンの包接、取り出し方を新たに見出し、特許出願した(特許文献3)。さらに、活性酸素を高濃度に含むC12A7化合物に電場を印加して、高密度の酸素アニオンラジカル(O)によるイオン電流が取出せる事を新たに見出し、特許出願した(特許文献4)。



また、本発明者は、水中、又は水分を含む溶媒中、又は水蒸気を含む気体中で水和反応させたC12A7化合物粉体を、酸素雰囲気中で焼成することにより、物理的なガス透過性のない緻密で、かつ、透光性を有するC12A7化合物を合成し、その化合物自体、製法、水酸化物イオンの同定法、及び該化合物の用途に関し、特許出願している(特許文献5)。



また、C12A7化合物と同等の結晶構造を持つ物質として、12SrO・7Al(以下、「S12A7」と記す)化合物(以下では、C12A7と同一の結晶構造をもつこうした物質を「同等化合物」と記す。)が知られている(非特許文献10)。本発明者らは、S12A7についても合成方法と活性酸素イオンの包接方法、該化合物の用途に関し、特許出願した(特許文献6)。



一方、C12A7化合物を水素雰囲気中で800℃以上の温度で加熱すると酸素イオン伝導度よりも大きな高温電気伝導が観測され、その伝導性が急冷した場合のみ、700℃以下の温度域で保持されることが報告されている。直接的な証拠は示されなかったものの、この伝導性は電子伝導によるものであると推測されていた(非特許文献11)。



本発明者らは、高温の水素雰囲気中で熱処理されたC12A7化合物を急冷することで結晶中に水素アニオンが導入され、得られたC12A7化合物の室温での紫外線照射によって、室温で絶縁体であったC12A7化合物が電子伝導体に永続的に変化し、加熱もしくは強い可視光の照射によって、再び絶縁状態に戻すことができることを見出し、該化合物の用途に関し、特許出願した(特許文献7)。



また、本発明者らは、C12A7化合物中のフリー酸素を電子に置換することによって、紫外線照射が不要でかつ高温まで安定に持続する高い電子伝導性を発現させる方法、該化合物及びその用途に関し、特許出願した(特許文献8)。



【非特許文献1】
S.M.Haile,他,Nature,410,910,2001
【非特許文献2】
H.Iwahara,Solid State Ionics,86-88,9,1996
【非特許文献3】
Y.M.Lin,他,Catal.Today,1351,1,1998
【非特許文献4】
S.Hamakawa,他,Solid State Ionics,48,71,1998
【非特許文献5】
G.Zhang,他,Electrochem.Solid State Lett.,5,J5,2002
【非特許文献6】
H.B.Bartl andT.Scheller,Neuses Jarhrb.Mineral.Monatsh.,1970,547
【非特許文献7】
H.Hosono andY.Abe,Inorg.Chem.,26,1193,1987
【非特許文献8】
H.Hosono andY.Abe,材料科学,第33巻,第4号,p171~172,1996
【非特許文献9】
M.Lacerda,他、Nature,332,525,1988
【非特許文献10】
O.Yamaguti他 J.Am.Ceram.Soc.,69,C-36,1986
【非特許文献11】
M.Lacerda,他,Solid State Ionics,59,257,1993
【特許文献1】
特願2000-596609(特表2002-536787号公報)
【特許文献2】
特願2001-49524(特開2002-003218号公報)
【特許文献3】
特願2001-226843(特開2002-40697号公報)
【特許文献4】
PCT/JP02/12959(WO 03/050037A1)
【特許文献5】
特願2001-117546(特開2002-316867号公報)
【特許文献6】
特願2002-045302(特開2003-238149号公報)
【特許文献7】
特願2002-117314(PCT/JP03/05016;WO03/089373A1)
【特許文献8】
特願2003-183605(PCT/JP2004/001507;WO2005/000741A1)

産業上の利用分野


本発明は、12CaO・7Al(以下、「C12A7」と記す。)化合物又はそれと同等の結晶構造を有する化合物又は固溶体からなる、水素及び水素同位体(以下、水素同位体を含めて「水素」と記す。)の陽イオン(以下、「プロトン」と記す。)・電子混合伝導体及びその製造方法、並びにその用途に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
水素アニオン及び水酸基を包接させた12CaO・7Al化合物、12SrO・7Al化合物、又は12CaO・7Al化合物と12SrO・7Al化合物との固溶体の水素アニオンから「電子」を熱解離させ、また、該化合物又は固溶体に包接されている水酸基、水素原子及び水素アニオン間の相互作用により「プロトン」を生じさせた、プロトンの輸率が、0.01以上であり、水素雰囲気中、温度700℃以上において、全伝導率1×10-3S・cm-1以上の値を示すことを特徴とするプロトン・電子混合伝導体。

【請求項2】
12CaO・7Al化合物、12SrO・7Al化合物、又は12CaO・7Al化合物と12SrO・7Al化合物との固溶体を水素雰囲気中で熱処理することにより、該化合物又は固溶体中に水素アニオン及び水酸基を包接させ、さらに該化合物又は固溶体を、1000ppm以上の水素を含む水素雰囲気中において、700℃以上1300℃以下に加熱して、該化合物又は固溶体中に含まれる水素種が該雰囲気と平衡になるように保持することを特徴とする請求項1に記載のプロトン・電子混合伝導体の製造方法。

【請求項3】
請求項1に記載されるプロトン・電子混合伝導体からなることを特徴とする水素透過材料。

【請求項4】
厚みが1μm以上2mm未満、相対密度95%以上の多結晶焼結層からなる自立した成形体又は多孔質基板に保持された薄膜として用い、温度700℃以上で、膜厚1mm換算で1×10-3cmSTP/分・cm以上の速度で水素ガスを透過することを特徴とする請求項記載の水素透過材料。

【請求項5】
請求項1に記載されるプロトン・電子混合伝導体からなることを特徴とする抵抗発熱体。

【請求項6】
水素透過性を有することを特徴とする請求項記載の抵抗発熱体。

【請求項7】
請求項6載の抵抗発熱体を透過膜として用い、該透過膜を通電によって700℃以上の温度に加熱し、1000ppm以上の水素ガスを含む混合ガス中の水素ガスを該透過膜中を透過させて混合ガス中から分離することを特徴とする混合ガス中から水素ガスを抽出する方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2003209138thum.jpg
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) ERATO 細野透明電子活性プロジェクト 領域
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