TOP > 研究報告検索 > 生殖異常を引き起こす環境ホルモンが存在するか:男性ホルモンと女性ホルモンを攪乱し、メス化またはオス化を引き起こす環境ホルモン

生殖異常を引き起こす環境ホルモンが存在するか:男性ホルモンと女性ホルモンを攪乱し、メス化またはオス化を引き起こす環境ホルモン

研究報告コード R000000338
掲載日 2002年9月30日
研究者
  • 名和田 新
研究者所属機関
  • 九州大学大学院医学研究院
研究機関
  • 九州大学医学部
報告名称 生殖異常を引き起こす環境ホルモンが存在するか:男性ホルモンと女性ホルモンを攪乱し、メス化またはオス化を引き起こす環境ホルモン
報告概要 精巣より分泌されるテストステロン、卵巣より分泌されるエストラジオールなどの性ステロイドホルモンは、細胞質(アンドロゲン受容体)、核(エストロゲン受容体)に存在する受容体タンパク質と結合する。ステロイドホルモンと結合した受容体は、転写共役因子と呼ばれる一連のタンパク質と巨大複合体を形成し、さらにこの複合体がRNAポリメラーゼIIを中心とする基本転写因子群と結合することによって標的遺伝子の転写が行われる。 性ステロイドホルモン受容体には、その分子内に2箇所の転写活性化に必須の領域が同定されており、それぞれActivation Function (AF)-1、AF-2とよばれる。個々のステロイドホルモンの特異的作用は、ステロイドホルモン受容体のみではなく、特異的転写共役因子によっても規定されることが予想される。最近N端側に存在するAF-1領域が、受容体特異的、組織特異的な転写活性化調節に深く関与していることが明らかにされつつある。我々はアンドロゲン受容体のAF-1ドメインの機能障害により完全型アンドロゲン抵抗症となった患者を解析し、受容体AF-1領域に特異的に結合する蛋白質の欠損により発症した可能性を示した。この知見に基づき、アンドロゲン、エストロゲン両受容体に対する特異的共役因子のクローニングを施行し、新しいAF-1領域結合性の転写共役因子を同定した。興味深いことに、AF-1結合性転写共役因子は、スプライシング因子結合タンパク質、もしくはRNA helicaseであることが明らかとなり、受容体・共役因子複合体は基本転写因子群のみならず、pre-mRNA processing因子複合体と深く関わっていると考えられる (図1)。 内分泌かく乱物質が結合したステロイドホルモン受容体は、細胞核内における空間的分布が、正常リガンドが結合した場合とは異なることが明らかになった。レーザー共焦点顕微鏡を用いた三次元画像解析システムは、この細胞核内分布の変化をきわめて鋭敏に区別することが可能であり、実際、レポーターアッセイとの組み合わせで、新規の抗アンドロゲン活性を有する除草剤ニトロフェンが同定された(図2)。エストロゲン受容体のa、bアイソフォームに共通の、もしくはa、bに特異的に結合する内分泌かく乱物質が存在することは、受容体・共役因子複合体に及ぼす影響が化学物質ごとに異なっていることを示すものであり、AF-1領域作動性の薬品の同定は今後の課題である。 さらに、今回新たに樹立したヒト卵巣顆粒膜由来のKGN細胞を用いて、アンドロゲンをエストロゲンに変換するアロマターゼ活性に及ぼす内分泌かく乱物質の作用を検討した結果、アロマターゼ活性を抑制する、もしくは増強させる薬品の両者が存在することが明らかになった(図3)。活性抑制作用を有する有機スズ化合物は転写段階での作用であることが明らかとなった。活性を増強させる化合物としてベノミルが同定されたが、現在その作用機構を解析中である。 胎生のごく初期においては、胚細胞が将来の性腺原器へと移動していくが、この胚細胞の移動に抗アンドロゲン作用を有するある種の内分泌かく乱物質が影響を及ぼすことが明らかになり、内分泌かく乱物質は従来考えられた時期よりかなり早期から胎児に影響を及ぼす可能性がある。このような内分泌かく乱物質の生体内への蓄積には、化学物質の体内における代謝(分解されにくさ)を考慮せねばならないが、化学物質の代謝段階によって、Xenobiotic sensorとして働く核内受容体SXRの活性化に差があることも明らかになった。このように、内分泌かく乱物質の作用機序を明らかにするための多面的アプローチとして、受容体・共役因子複合体、アロマターゼ、Xenobiotic sensor、胚細胞に与える影響を我々のチームは追求している。
図1 アンドロゲン受容体AF-1ドメイン結合性蛋白質(Androgen receptor N-terminal Transactivator-1: ANT-1)のクローニング
図2 共焦点顕微鏡画像三次元再構成法で観察した活性化、もしくは非活性化状態のアンドロゲン受容体の核内分布
図3 卵巣顆粒膜細胞株KGNを用いたアロマターゼ活性の測定
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

R000000338_01SUM.gif R000000338_02SUM.gif R000000338_03SUM.gif
研究分野
  • 動物に対する影響
  • 内分泌系の基礎医学
  • 有機化合物の毒性
  • 健康被害
  • 汚染原因物質
研究制度
  • 戦略的基礎研究推進事業、研究領域「内分泌かく乱物質」研究代表者 名和田 新(九州大学医学部)/科学技術振興事業団
研究報告資料
  • 名和田 新. 核内受容体・共役因子複合体と内分泌かく乱物質. 戦略的基礎研究推進事業 内分泌かく乱物質 第1回領域シンポジウム 講演要旨集 ,2001. p.59 - 66.

PAGE TOP