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小脳の複雑スパイク たった1発の信号で伝える運動の誤差

研究報告コード R993100886
掲載日 2002年9月30日
研究者
  • 北澤 茂
研究者所属機関
  • 産業技術総合研究所(旧電子技術総合研究所)
研究機関
  • 通商産業省 工業技術院 電子技術総合研究所
報告名称 小脳の複雑スパイク たった1発の信号で伝える運動の誤差
報告概要 大脳の下に位置する小脳は、滑らかで正確な運動の制御と、運動の学習に重要な役割を果たす。この小脳の主役であるプルキンエ細胞は、2種類の興奮性の入力を受ける。1つは苔状線維、顆粒細胞、平行線維を経る入力で、プルキンエ細胞に最大数百ヘルツの単純スパイクを発生させる。一方、下オリーブ核から登上線維を経る入力は平均して1秒に1回程度というごく低頻度の複雑スパイクを発生させる。一秒に一発の寡黙な信号、複雑スパイク、は一体何を伝えているのか?小脳の「運動学習説」においては、複雑スパイクは運動の誤差を伝えると仮定されてきた。一方、運動開始時に生じて運動の開始を補助するという説も唱えられ、学習説との間で長年議論が続いていた。そこで、本研究では、目標に向かって手を伸ばしているサルのプルキンエ細胞から電気活動を記録して、複雑スパイクが運動の何を表現しているのか解明することを狙った。複雑スパイクの発火パターンと腕の動きの進行の関係を情報理論を使って解析した結果、運動の終了直前から直後にかけて複雑スパイクが運動の誤差を符号化していることを定量的に示すことに成功した。さらに、運動の開始時には、運動の行く先を表現していることも発見した。この研究は、
1)情報理論を生理学的実験結果「の解析に用い、30年来残されてきた複雑スパイクの謎の解明に成功した、
2)一つのプルキンエ細胞がその発火パターンで複数の情報を符号化していることを明らかにした、
3)運動学習論に対して実験データに基づく基礎を与えた、
という点で注目される。近年、言語活動などの高次機能の実現にも小脳が重要な役割を果たすことが明らかになりつつある。随意運動における本研究の成果は、小脳の高次機能への寄与の仕組を明らかにする際にも役立つものと期待される。
画像

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研究分野
  • 感覚
  • 神経の基礎医学
関連発表論文 (1)Kitazawa S, Kohno T, Uka T (1995) Effects of delayed visual information on the rate and amount of prism adaptation in the human. The Journal of Neuroscience 15: 7644-7652.
(2)Kitazawa S, Kimura T, Uka T (1997) Prism adaptation of reaching movements: Specificity for the velocity of reaching. The Journal of Neuroscience 17: 1481-1492.
(3)Kitazawa S, Kimura T, Yin PB (1998) Cerebellar complex spikes encode both destinations and errors in arm movements. Nature 392: 494-497.
研究制度
  • さきがけ研究21、「知と構成」領域/科学技術振興事業団
研究報告資料
  • 北澤 茂. 小脳の複雑スパイク たった1発の信号で伝える運動の誤差. 「さきがけ研究21」研究報告会「知と構成」領域 講演要旨集(研究期間1994-1997),1997. p.15 - 20.

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