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交換相互作用検出によるナノメートル電子移動反応の状態と変革

研究報告コード R030000202
掲載日 2005年2月22日
研究者
  • 小堀 康博
研究者所属機関
  • 東北大学多元物質科学研究所
研究機関
  • 東北大学
報告名称 交換相互作用検出によるナノメートル電子移動反応の状態と変革
報告概要 近年、分子エレクトロニクス素子や生体系のエネルギー変換機能の重要性から数ナノメートル程度の遠距離電子移動反応に多くの関心が集まっている。例えば植物中の光合成反応中心では、太陽光による励起がクロロフィルダイマーに集められると、電子励起状態から直ちに1 ナノメートル以上離れたフィオフェチン、キノン分子へ次々と電子が移動し、伝達された電子が生命活動のエネルギー源として使われる。効率よく電子伝達を行うためには、数ナノメートルの分子間距離で電荷分離を促進させ、なおかつ電荷再結合を抑制させることが極めて重要である。マーカス理論によれば、電子移動反応速度は主に、1)電子ドナーとアクセプターの電子軌道間の重なりや化学結合を介した電子間相互作用(電子的相互作用:V )、2)媒体を含む系全状態の構造変化に必要なエネルギー(再配向エネルギー: λ)に依存する。すなわち、効率のよい「光→化学エネルギー変換」を実現するには、λとV のエネルギーを巧みに制御することが必要である。これら両者のエネルギーは電子ドナーとアクセプターの構造や配向、距離に依存すると考えられている。このため遠距離電子移動の効率を正しく評価するには、ナノスケールの構造、配向、距離を特定した上で電子移動反応に対するλとV を反応系に固有のものとして特徴付けなければならない。しかしながら例えば、液体中で1 ナノメートル以上の中心間距離(r)を特定した上で分子間の電子移動反応に対するλを分子種に固有の値として精密に測定した例は皆無である。このため、溶媒再配向エネルギーに対して、1956 年にマーカスが提唱した連続誘電体モデルが実際にどこまで液体中の分子レベルの反応場に適用できるのか未だ明らかになっていない。これまで電子移動過程はフラッシュホトリシス法に代表されるような過渡種の生成、失活速度をリアルタイムに追跡する方法で膨大な数の研究がなされてきた。このような方法を使って分子間電子移動反応を観測した場合、電荷分離や電荷再結合過程は拡散運動している様々な分子間距離での反応速度のアンサンブルを観測していることになる。このため従来の手法では、1 ナノメートル以上のある特定の距離のみを選別してその分子間反応に対するλを得ることは到底不可能であった。本さきがけ研究21 では、時間分解電子スピン共鳴(EPR)法および、パルスEPR 法を用いて光電荷分離状態(溶媒和ラジカルイオン対)の磁気的な性質(交換相互作用:J )のメカニズムを解明し、この磁性を制御、検出することによってナノスケール離れた様々な電荷分離状態の再配向エネルギーや電子的相互作用を分子種に固有の値として精密に測定することに初めて成功した。
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研究分野
  • 無触媒液相反応
  • 光化学一般
  • エネルギー変換装置
関連発表論文 (1) S. Sekiguchi, Y. Kobori, K. Akiyama, S. Tero-Kubota: “Marcus Free Energy Dependence of the Sign of Exchange Interactions in Radical Ion Pairs Generated by Photoinduced Electron Transfer Reactions”, J. Am. Chem. Soc., 120, 1325-1326 (1998).
(2) Y. Kobori, K. Takeda, K. Tsuji, A. Kawai, K. Obi: “Exchange Interaction in Radical-Triplet Paris: Evidences for CIDEP Generation by Level Crossings in Triplet-Doublet Interactions”, J. Phys. Chem.A, 102, 5160-5170 (1998).
(3) S. Sasaki, Y. Kobori, K. Akiyama, S. Tero-Kubota: “Intrinsic Enhancement Factors of the Spin-Orbit Coupling Mechanism Polarization in the Duroquinone-N,N-Dimethylaniline Derivative Systems”, J. Phys. Chem.A, 102, 8078-8083 (1998).
(4) Y. Kobori, S. Sekiguchi, K. Akiyama, S. Tero-Kubota: “CIDEP Studies on the Signs of Exchange Interactions in Radical Ion Pairs Generated by Photoinduced Electron Transfer Reactions”, Proceedings of the Joint 29th AMPERE-13th ISMAR. International Conference on Magnetic Resonance and Related Phenomena, Berlin, vol.II, pp.929 (1998).
(5) Y. Kobori, S. Sekiguchi, K. Akiyama, S. Tero-Kubota: “Chemically Induced Dynamic Electron Polarization Study on the Mechanism of Exchange Interactions in Radical Ion Pairs Generated by Photoinduced Electron Transfer Reactions”, J. Phys. Chem.A, 103, 5416-5424 (1999).
(6) Y. Kobori, K. Akiyama, S. Tero-Kubota: “Theoretical Analysis of Singlet-Triplet Energy Splitting Generated by Charge Transfer Interaction in Electron Donor-Acceptor Radical Pair Systems”. J. Chem. Phys., 113, 465-468 (2000).
(7) S. Sasaki, Y. Kobori, K. Akiyama, S. Tero-Kubota: “Magnetic Field Effects on the Triplet Exciplex Dynamics in the Duroquinone-N,N-Dimethylaniline Derivative Systems”, Res. Chem. Intermed. 27 (1,2) 155-164 (2001).
(8) S. Tero-Kubota, A. Katsuki, Y. Kobori, “Spin-Orbit Coupling Induced Electron Polarization in Photoinduced Electron Transfer Reactions”, J. Photochem. Photobiol. C, 2, 17-33 (2001).
(9) Y. Kobori, T. Yago, K. Akiyama, S. Tero-Kubota: “Determination of Electron Transfer Reorganization Energy in Nanometer-Separated Radical Ion Pair by Time Resolved EPR Spectroscopy”, J. Am. Chem. Soc., in press.
研究制度
  • さきがけ研究21 「状態と変革」領域
研究報告資料
  • 小堀 康博. 交換相互作用検出によるナノメートル電子移動反応の状態と変革. 「さきがけ研究21」研究報告会 「状態と変革」領域 第2期研究者 講演要旨集(研究期間:1998-2001),2001. p.29 - 30.

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