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ナノ構造金属薄膜における光励起ダイナミクス

研究報告コード R030000259
掲載日 2005年2月22日
研究者
  • 小川 晋
研究者所属機関
  • (株)日立製作所基礎研究所
研究機関
  • (株)日立製作所
報告名称 ナノ構造金属薄膜における光励起ダイナミクス
報告概要 フェムト秒(10-15s)、ナノメートル(10-9m)という領域は、時間および空間における物質科学のフロンティアである。近年の超高速レーザー技術の発展とともに、フェムト秒時間領域でおきる非平衡な現象が実時間で追跡できるようになってきている。この時間領域における研究においては、平衡な基底状態にはない物質の新奇な性質を明らかにするとともに、その瞬間的な性質を利用したりダイナミクスを制御したりすることにより、新しい物質利用の可能性が開けることが期待される。一方、物質は、ナノメートルレベルの空間的大きさになると、通常のバルクの状態とは大きく異なる性質を示すことがある。これは界面により物質中の電子が閉じ込められ、いわゆる量子化された電子状態が発現するためである。本さきがけ研究では、これら両方のフロンティアである、ナノ空間における電子の超高速ダイナミクスを初めて明らかにすることを狙った。磁性/非磁性金属多層膜では、巨大磁気抵抗(GMR)が発現することから、これまで主に磁性と輸送現象に関して研究されており、すでに磁気センサとして応用されている。これらの系では、磁性(Fe,Co,Ni)、非磁性金属(Au,Ag,Cu)間のあるいくつかの組み合わせにおいて、磁性または非磁性金属中に量子井戸準位ができることが知られている。本研究では、この磁性/非磁性金属多層膜において発現する量子井戸という特異な電子状態に着目し、それがどのような状態なのか、そして光によってその電子を励起した時に、どのような性質を持っているかを調べることを目的とした。この金属多層膜中の量子井戸に関する光物性に関しては、これまで主に表面二次高調波や、表面磁気光学カー効果を用いて、量子井戸が絡んでいると考えられる光遷移に関して間接的に調べられてきた。しかし、これらの手法は、ブリリアンゾーンの中で起きるすべての光遷移の総和としての情報しか得られないため、量子井戸だけの光遷移の情報を分離して測定することが困難である。このように、光デバイスとして実用化されている半導体の量子井戸と異なり、金属薄膜量子構造の光物性に関してはこれまで直接的な情報は得られておらず、はっきりしたことは良く分かっていなかった。一方、時間分解二光子光電子分光法は、光励起電子のエネルギーおよび運動量を選別して測定できるため、量子井戸が絡む遷移だけを選別して測定することが可能である。量子井戸という特異な状態にある金属薄膜中の電子を光により励起する時、どの状態にいる電子が励起されやすいかだけでなく、電子はどのような時間スケールで変化をしていくのかということを知ることも、光応答の速さと言う点で重要である。また、この量子井戸状態にある電子は、磁性体間の磁気的な相互作用を媒介しており、その電子の状態を変革することができれば、磁性を制御できる可能性もある。以上の問題を調べるため、光電子分光法、干渉型時間分解二光子光電子分光法という手法を用いた。
画像

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研究分野
  • 量子光学一般
  • 原子と光子の相互作用
  • 電子構造一般
  • 金属結晶の電子構造
関連発表論文 (1) S. Ogawa, H. Nagano and H. Petek “Optical Intersubband transitions and femtosecond dynamics in Ag/Fe (100) quantum wells” Phys. Rev. Lett. 88, 116801 (2002).
(2) S. Ogawa “Femtosecond electron dynamics studied by interferometric time-resolved two-photon photoemission” J. Elec. Spec. Rel. Phen, 124/2-3, 245 (2002).
(3) H. Petek and S. Ogawa “Surface femtochemistry: Observation and quantum control of frustrated desorption of alkali atoms from noble metals” Ann. Rev. Phys. Chem, 53, 507 (2002).
(4) 小川晋 “表面光反応のフェムト秒実時間計測” 日本結晶学会誌,43, 9 (2001).
(5) S. Ogawa, H. Nagano, M. Weida and H. Petek, “Femtosecond electron dynamics in metallic quantum well” Symposium on spin-electronics 2000 p.134
(6) 小川晋 “光を用いた磁化検出方法および装置”,特願 2001-284405
研究制度
  • さきがけ研究21 「状態と変革」領域
研究報告資料
  • 小川 晋. ナノ構造金属薄膜における光励起ダイナミクス. 「さきがけ研究21」「状態と変革」研究領域 第3回終了報告会 講演要旨集(研究期間:1999-2002),2002. p.4 - 5.

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