TOP > 研究報告検索 > 粘菌を用いた認識と形成の数理解析によるアプローチ

粘菌を用いた認識と形成の数理解析によるアプローチ

研究報告コード R040000068
掲載日 2007年5月18日
研究者
  • 高松 敦子
研究者所属機関
  • 東京大学生産技術研究所
研究機関
  • 東京大学
報告名称 粘菌を用いた認識と形成の数理解析によるアプローチ
報告概要 生物系では、細胞内のCa2+振動に始まり、神経細胞の周期的発火、心筋細胞の拍動、蛍の周期的発光など、細胞レベルから個体レベルに至るまで、系や階層を超え至る所で振動現象が観察される。これらの現象は、数理的には、非線形型の振動現象として理解されているが、バネや振り子の振動現象(調和振動)との違いは、外から刺激を加えられても、振動が停止したり振幅が変化するということはなく、速やかに自分の持っていたリズムに回復するという点、つまり、外乱に対する強さを持っている点にある。さらに、振動を発生する同じようなユニット(振動子)が互いに影響を及ぼし合う(相互作用する)と、協調し合いながら同調して振動する(同期現象)。振動子が多数集合し相互作用した系を結合振動子系というが、神経細胞集団、心臓(心筋細胞集団)、蛍集団などに見られる同期現象のメカニズムを説明する数理モデルとして注目されている。結合振動子系の簡単な数理モデルを用いた系による同期現象の理論的解析は非常に進んでいるが、汎用的なモデルであるが故に、実験結果との直接比較ができず、理論による結果に対する実証は困難であった。また、現実の系では、同期現象以外にも系の形や相互作用の様式に依存して、より複雑な振動パターンが観察されるはずである。本研究では、マイクロ加工という細胞サイズの加工を可能にする技術を用いて、真正粘菌変形体の形を制御し、生きたままの細胞を用いた結合振動子系を構築することが目標であった。真正粘菌変形体は、細胞の厚みなどに非線形型の振動現象が見られ、細胞全体を結合振動子系として考えることができる。また、ニューロンや心筋細胞などと比較して実験系としての取り扱いが容易であるという利点がある。マイクロ加工技術により、粘菌振動子間の相互作用の強さなどを人工的に制御できるので、結合振動子系の汎用型の数理モデルによる結果と直接比較が可能である。この系を用いて、粘菌結合振動子系に見られる振動の時空間パターンを観察し、それらのパターンの真正粘菌における機能について考察する。汎用型の結合振動子系のモデルに着目しているので、得た結果を系や階層を超えた粘菌以外の系にも適用できる可能性があり、従来のドライな数理モデルに比べて、より現実的で、且つ系統的な実験結果を得られることが期待されていた。
研究分野
  • 生物物理学一般
  • 情報工学基礎理論
関連発表論文 (1) Takamatsu, A., Tanaka, R. and Fujii, T. (2003) “Hidden Symmetry in Chains of Biological Coupled Oscillators”, submitted.
(2) Takamatsu, A., Yamamoto, T. and Fujii, T. (2003) “Spontaneous Switching of Frequency-locking by Periodic Stimulus in Oscillators of Plasmodium of the True Slime Mold”, to appear from BioSystems.
(3) Takamatsu, A., Tanaka, R., Yamada, H., Nakagaki, T., Fujii, T. and Endo, I. (2001) “Spatio-temporal symmetry in rings of coupled biological oscillators of Physarum plasmodium”, Phys. Rev. Lett., 87 078102.
(4) Takamatsu, A., Fujii, T. (2002) “Construction of a living coupled oscillator system of plasmodial slime mold by a microfabricated structure” Chap. 1.2 in Sensors Update Vol. 10, No. 1, 33-46, Wiley-VCH, Weinheim.
研究制度
  • さきがけタイプ 「認識と形成」領域
研究報告資料
  • 高松 敦子. 粘菌を用いた認識と形成の数理解析によるアプローチ. 「さきがけタイプ」「認識と形成」領域 研究報告会講演要旨集(研究期間2000-2003),2003. p.29 - 30.

PAGE TOP