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非言語コミュニケーションの脳内機能メカニズム

研究報告コード R040000084
掲載日 2007年5月18日
研究者
  • 中村 克樹
研究者所属機関
  • 国立精神神経センター神経研究所
研究機関
  • 国立精神神経センター
報告名称 非言語コミュニケーションの脳内機能メカニズム
報告概要 ヒトには他の動物にはない高度に発達したコミュニケーション機能がある。このコミュニケーション機能を有することで、私たちヒトは他の動物に見られない高度で複雑な社会や文明を創造できた。ヒトにおけるコミュニケーションとして、まず頭に浮かぶのは「言語」である。私たちは、言語を操ることで、さまざまな概念や思想を時間や空間を超えて伝え、記録することができる。しかしながら私たちには、言語を直接介さないコミュニケーションの手段もある。例えば、相手の表情やジェスチャーや声の抑揚といった情報から、相手の感情を知ることができる。相手の視線を見ることから相手の注意の向きが解り、動作を理解することから相手の意図を知ることができる。こうした言語を直接介さないコミュニケーション(非言語コミュニケーションと呼ぶ)には、次のような特徴がある。(1)ヒトだけではなく動物にも見られる、(2)生まれて間もない乳児にも見られる、(3)国境や文化を超えて共通のものがある。こうしたことから、非言語コミュニケーションは、言語を含めたコミュニケーションの起源であると考えられる。では、言語と異なり、このような非言語コミュニケーションはどのような役割を持っているのであろうか。社会生活を営むように進化し、複雑な社会を構成するようになった動物は、自らの命を守るために相手との不必要な争いを未然に防ぐ能力を獲得する必要が生じた。自らの意図や情動を相手に伝え、また相手の意図や情動を知ることにより、こうした目的を達成して来た。そのことは、ヒトにいたっても変わっていない。非言語コミュニケーションは、「相互理解を深める」「不必要な争いや衝突を未然に防ぐ」「より良い社会関係を築く」といった個人対個人の関係において、もっとも重要な役割を果たしている。一方で、言語は、膨大な情報を、時空間を超えて伝達・記録することを可能とし、その結果として文化や文明を生み出した。これに対し、非言語コミュニケーションは、より良い個人関係を築き上げる役割を果たしている。例えば、近年発達した通信手段である電子メールなどでは、非言語コミュニケーションの要素がない。気持ちや感情を込めて相手に伝えたつもりでも、それがうまく伝わらずに誤解を生じることがしばしばあるのはこのためである。こうした、非言語コミュニケーションがうまくとれなくなることが、現代社会で非常に増加している「ひきこもる」子供や「きれる」子供、さらには凶悪犯罪や虐めにもつながると考えられる。本研究では、非言語コミュニケーションのメカニズムを理解することが、言語を含めたコミュニケーションを理解するために重要であると考え、特に情動の伝達機能に着目して研究をおこなった。「下前頭葉はコミュニケーションの中枢であり、辺縁系は情動的なやり取りに関与している」、「左下前頭葉が言語の中枢であり、右下前頭葉が非言語コミュニケーションの中枢である」という二つの仮説を持ち、それを検証することを試みた。
研究分野
  • 神経系一般
  • 感覚系一般
  • 生体系モデル一般
  • 神経の基礎医学
関連発表論文 (1) 中村克樹,中村徳子 非言語コミュニケーションと右半球 Clinical Neuroscience 19:411-414, 2001.
(2) 中村克樹 相手の情報を読み取る -脳機能画像研究からの考察- 神経心理学 19:162-171, 2003.
(3) Sato N, Nakamura K. Visual response properties of neurons in the parahippocampal cortex of monkeys. Journal of Neurophysiology, 90:876-886, 2003.
(4) 中村徳子,明和政子,松沢哲郎 母子における対象物の好みにおよぼす刺激強調の効果.チンパンジーの認知と行動の発達,京大出版,pp. 254-257, 2003.
(5) Nakamura K, Nakamura N, Taira M. Fuctional magnetic resonance imaging during assessment of gestures of emotion. 8th International Conference on Functional Mapping of the Human Brain (HBM2002), Sendai, June 2-6, 2002.
(6) Nakamura K, Nakamura N, Taira M. Asymmetric activation in the human brain for verbal and nonverbal facial information processing. 3rd FAONS Congress, Seoul, September 28- October 1, 2002.
(7) Nakamura K, Nakamnura N, Taira M. The same right frontal region is involved in assessment of gestural and facial emotion. 32th Annual Meeting of Society for Neuroscience, Orland, November 2-7, 2002.
(8) 中村克樹 相手の情動を読み取る.日本原子力学会ヒューマン・マシン・システム部会 夏季セミナー,湯布院,2002年7月25-26日.
(9) 中村克樹 相手の情動を読み取る -脳機能画像研究からの考察-.第26回日本神経心理学会大会,東京,2002年9月12-13日.
(10) 中村克樹 相手の情動を読み取る脳の働き.日本学術会議科学教育研究連絡委員会および獣医学研究連絡委員会主催シンポジウム,東京,2002年10月29日.
(11) 中村徳子,竹本篤史,中村克樹 連続する視覚刺激の時間順序弁別 第14回日本発達心理学会,神戸,2003年3月26-28日.
(12) 中村克樹 相手の情報を読み取る -脳機能画像研究からの考察-.東北大学21世紀COEプログラム 第1回「言語・脳・認知」国際学術フォーラム,仙台,2003年5月25日.
(13) 中村徳子,中村克樹 チンパンジー乳児とヒト乳児における表情表出の左右差.第19回日本霊長類学会,仙台,2003年6月27-29日.
研究制度
  • さきがけタイプ 「協調と制御」領域
研究報告資料
  • 中村 克樹. 非言語コミュニケーションの脳内機能メカニズム. 「さきがけタイプ」「協調と制御」領域 研究報告会講演要旨集(研究期間2000-2003),2003. p.12 - 20.

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