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乳幼児を対象とした人工物・メディアの発達的認識過程

研究報告コード R040000086
掲載日 2007年5月18日
研究者
  • 開 一夫
研究者所属機関
  • 東京大学大学院総合文化研究科
研究機関
  • 東京大学
報告名称 乳幼児を対象とした人工物・メディアの発達的認識過程
報告概要 本研究の目標は、人工物あるいはメディアが子どもの認知発達過程に及ぼす影響を認知科学的観点から明らかにすることである。情報技術革新の中、TVはいうにおよばず、コンピュータゲームやデジタル玩具といった情報メディア機器は確実に一般家庭へ浸透しており、小さな子どもはこうした機器と多くの時間対峙している。こうした人工物・メディアの殆どはごく最近出現したものであり、乳幼児がこれらをどう捉えているのか、また、認知発達過程においてどのような影響を与えるのかについての系統だった研究がほとんど行われていないのが現状である。人工物・メディアの技術的側面に関しては今日急速に発展しつつあるが、その安全面についての基準は、瑣末な部分に関してさえ立ち遅れている。こうした基準を明確にするためには、画一的に善悪の議論を行うのでなく、まず乳幼児と人工物間における相互作用の様式を科学的に明らかにする必要がある。そこで、本研究では、人工物・メディアと人間との相互作用の過程に関して、特に乳幼児を研究対象とし、新しい実験手法を取り入れて明らかにすることを研究の狙いとした。あわせて、実験から得られたデータに基づき人工物と乳幼児間の相互作用モデルを構築することで、概念形成やコミュニケーションといった高次の認知活動をサポートするための人工物設計原理を探求することを目標とした。具体的には、(1)乳幼児におけるTV映像の認知【研究項目1】(2)自己映像認知の発達的変化【研究項目2】(3)乳幼児におけるロボットの認知【研究項目3】の3つのサブテーマを設定し、これらの研究項目を並行的に実施することで認知科学的知見を蓄積した。また、乳幼児を対象とした研究項目に加えて、成人を対象としたTVゲーム操作中の脳活動計測【研究項目0】も実施した。本研究で実施されたそれぞれの研究項目は、TV・ビデオ映像、コンピュータゲームなど社会問題と関連付けて議論されやすいデジタル情報機器を対象としているが、小さな子どもがこれらの情報機器・メディアをどう捉えているのかについて理解することは、社会的問題への対応だけでなく認知科学における基礎的問題とも深く関連する。例えば、TV画面に映し出された自己映像の認知様式について知ることは、自己認知やボディイメージに関する研究に重要な知見を与える。また、ロボットを用いた実験研究は、「他者の理解」や「心の理論」といった認知科学の重要研究分野に示唆を与えることができる。
研究分野
  • 神経系一般
  • 発生・成長の生理一般
  • 神経の基礎医学
関連発表論文 (1) Kobayashi, T., Hiraki, K., Mugitani, R., and Hasegawa, T.: Baby arithmatic: One object plus one tone, Cognition, (in press).
(2) Imai, M., Hiraki. K., Miyasato, T., Nakatsu, R and Anzai. Y., Interaction with Robots: Physical Constraints on the Interpretation of Demonstrative Pronouns. International Journal of Human Computer Interaction, (in press).
(3) Fukushima, H., Hirai, M., Hiraki, K. (2003) Interval timing and time to contact estimation: Neural activities in the two kinds of sensory anticipation in time domain were directly compared in human ERPs. Proceedings of ICCS/ASCS-2003 Joint International Conference on Cognitive Science, 123-128.
(4) Kamewari, K., Hiraki, K., Kato, M. (2003) Goal attribution in infancy. Proceedings of ICCS/ASCS-2003 Joint International Conference on Cognitive Science, 256-258.
(5) Hirai, M., Fukushima, H., Hiraki, K.: An Event-Related Potentials Study of Biological Motion Perception in Humans, Neuroscience Letters 344, 41-44, 2003.
(6) Hiraki, K., Dan, N., Shimada, S. and Itakura, S. (2002) A study of intermodal perception using delayed display. International Conference on Infant Studies.
(7) Kobayashi, T., Hiraki, K. and Hasegawa, T. (2002) Intermodal numerical correspondences in 6-month-old infants. International Conference on Infant Studies.
(8) Mugitani, R., Hirai, M., Shimada, S., Hiraki, K. (2002) The audiovisual speech perception of consonants in infants. Proceedings of international conference on infant studies.
(9) Shimada, S., Hiraki, K., Fukushima, H., and Matsuda, G. (2002) Temporary blood flow decrease in human frontal motor areas adapting to delayed visual feedback: A near-infrared spectroscopy study Cognitive neuroscience society annual meeting, San Francisco, CA., 91.
(10) Shimada, S., Hiraki, K., Fukushima, H., Matsuda, G., and Oda, I. (2002) Correlation between prefrontal hemoglobin oxygenation and reaching task performance: A near-infrared spectroscopy study. NeuroImage, 16(2), S39
(11) Komatsu, T., Suzuki, K., Ueda, K., Hiraki, K and Oka, N.: Mutual Adaptive Establishing Meaning Acquisition by Paralanguage Information: Experimental Analysis of Communication Eatablishing Process, The Proceedings of the 24th Annual Meeting of the Cognitive Science Society, 448-553, 2002.
(12) Hiraki, K.: Causality and Prediction, Detection of Delayed Intermodal Contingency in infancy, Emergence and Development of Embodied Cognition, 2, 1-2, 2001.
(13) Suzuki, H., Abe. K., Hiraki, K., Miyazaki, M: Cue-readiness in Insight Problem-solving, Proc. of the 23rd Annual Meeting of the Cognitive Science Society, 1012-1017, 2001.
(14) 松田剛,開一夫,嶋田総太郎,小田一郎:近赤外分光法によるテレビゲーム操作中の脳活動計測,シミュレーション&ゲーミング,13 (1), 21-31.
(15) 鈴木宏昭,宮崎美智子,開一夫:制約論から見た洞察問題解決における個人差,心理学研究,2003 (印刷中).
(16) 有田亜希子,開一夫,神田宗行,石黒浩 (2002) ロボットは話し相手になれる?:インタラクティブなロボットに対する乳児の認識.情報処理学会関西支部大会講演論文集,95-96. (同大会奨励賞受賞)
(17) 小松孝徳,開一夫,岡夏樹:人間とロボットとの円滑なコミュニケーションを目指して,人工知能学会誌,17 (6), 679-686, 2002.
(18) 小松孝徳,鈴木健太郎,植田一博,開一夫,岡夏樹:パラ言語情報を利用した相互適応的な意味獲得プロセスの実験的分析,認知押字,10(1), 121-138, 2002.
(19) 鈴木健太郎,植田一博,開一夫:自律的な行動学習を利用した評価教示の計算論的意味学習モデル,認知科学,Vol.9 No.2, P.200-212, 2002.
(20) 開一夫:心の起源を求めて-認知発達メカニズムの探究-,精神神経学雑誌,第104巻,第2号別冊,133-137, 2002.
研究制度
  • さきがけタイプ 「協調と制御」領域
研究報告資料
  • 開 一夫. 乳幼児における人工物・メディアの発達的認識過程. 「さきがけタイプ」「協調と制御」領域 研究報告会講演要旨集(研究期間2000-2003),2003. p.32 - 42.

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