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赤血球期熱帯熱マラリア原虫の細胞増殖に必須な血清中脂質成分の代謝・輸送の分子機構

研究報告コード R070000066
整理番号 R070000066
掲載日 2008年4月11日
研究者
  • 三田村 俊秀
研究者所属機関
  • 大阪大学微生物研究所
研究機関
  • 大阪大学微生物研究所
報告名称 赤血球期熱帯熱マラリア原虫の細胞増殖に必須な血清中脂質成分の代謝・輸送の分子機構
報告概要 寄生虫感染症マラリアは、年間3-5億人にものぼる罹患者と200万人以上の死者をだす地球規模の問題である。その臨床症状は、病原因子である原虫が、生活環中の赤血球サイクルに入ることにより生じることから、このステージの原虫細胞の増殖を押さえることが直接の治療・予防となる。熱帯熱マラリア原虫は、人に感染する4種類のマラリア原虫の中で最も悪性である。現在、流行地において、クロロキンやファンシダールなどの抗マラリア薬が使用されているが、薬剤耐性株の出現と蔓延により、それらの有用性が低下してきている。のみならず、今のところ赤血球期熱帯熱マラリア原虫を標的とした有効なワクチンは存在しない。したがって、新規抗マラリア薬創製につながる標的分子の提供は、マラリア研究において重要な課題の一つである。赤血球期熱帯熱マラリア原虫は、細胞増殖と脂質代謝・輸送という生物普遍現象において、モデル生物には見られないユニークな現象を呈する。赤血球サイクルは、メロゾイトと呼ばれる1個の親細胞が非感染赤血球に侵入後、リング、トロフォゾイト、シゾントといわれる形態変化とともに細胞分裂を行い、最終的に1個の感染赤血球内に8‐24個の娘メロゾイト細胞が形成される。そして、赤血球壊裂にともない各娘メロゾイト細胞が放出され、新たな親細胞となりサイクルが繰り返される。この赤血球サイクル維持のために、原虫は、単細胞の下等真核生物でありながら、哺乳動物細胞に代表される多細胞生物に特徴的な血清を要求する。一方、赤血球サイクルの原虫細胞は、そのほとんどの期間を宿主であるヒト赤血球内で成育するため、原虫細胞自身は、原虫そのものの細胞膜、そして寄生液胞・液胞膜、さらには赤血球細胞質・細胞膜、等により、外界から空間的にはっきり隔離された状態にある。このような特殊な環境下で良好な細胞増殖を維持するためには、外界(血流中)から必須な栄養源を細胞内に取り込むために、原虫から見て細胞外に何らかの機構を発達させる必然性が生じる。我々は、これまでに赤血球期熱帯熱マラリア原虫の細胞増殖における血清の役割を知るために、細胞増殖に必須な血清中因子の精製と解析を行ってきた。結果、脂質を保持した精製血清アルブミンが、血清と同等の細胞増殖促進活性を示すこと、また、限られた組み合わせの飽和・不飽和脂肪酸の混合物(パルミチン酸・オレイン酸が至適)が、血清アルブミンに会合した形で細胞増殖必須因子として機能すること、さらに、この必須因子は、赤血球期原虫の細胞周期進行とそれにともなう形態変化に不可欠であること、等を明らかにしてきた。本さきがけ研究では、社会的要求度の高い感染症マラリアの治療・予防に資するという応用的側面と、生物普遍現象における原虫細胞の特異性を明らかにするという学術的意義との両面を考慮に入れ、赤血球期熱帯熱マラリア原虫の細胞増殖に必須な血清中脂質成分の代謝・輸送の分子機構について解析を行った。
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研究分野
  • 微生物感染の生理と病原性
関連発表論文 (1) N. M. Q. Palacpac, Y. Hiramine, S. Seto, R. Hiramatsu, T. Horii, and T. Mitamura, Evidence that Plasmodium falciparum diacylglycerol acyltransferase is essential for intraerythrocytic proliferation. Biochem. Biophys. Res. Commun. 321; 1062-1068, 2004.
(2) N. M. Q. Palacpac, Y. Hiramine, F. Mi-ichi, M. Torii, K. Kita, R. Hiramatsu, T. Horii and T. Mitamura, Developmental-stage-specific triacylglycerol biosynthesis, degradation and trafficking as lipid bodies in Plasmodium falciparum-infected erythrocyte. J. Cell Sci. 117; 1469-1480, 2004.
(3) T. Mitamura and N. M. Q. Palacpac, Lipid metabolism in Plasmodium falciparum-infected erythrocyte; possible new targets for malaria chemotherapy. Microbes Infect, 5; 545-552, 2003.
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/生体と制御研究領域
研究報告資料
  • 三田村 俊秀. 赤血球期熱帯熱マラリア原虫の細胞増殖に必須な血清中脂質成分の代謝・輸送の分子機構. 「生体と制御」研究領域 第一回研究報告会感染症と免疫疾患の発病メカニズムの解明へ新しいアプローチ 要旨集, 2004. p.20 - 22.

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