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界面を反応場とした触媒的脱水縮合反応

研究報告コード R070000098
整理番号 R070000098
掲載日 2008年4月11日
研究者
  • 国嶋 崇隆
研究者所属機関
報告名称 界面を反応場とした触媒的脱水縮合反応
報告概要 「欲しいものだけを作る」化学合成は、原料や試薬などの資源の節約や、副生成物という無駄な廃棄物の削減を実現できる究極的な生産技術である。一方、実用面からは、特別な設備を必要とせず、常温常圧で迅速かつ安全に進行する化学反応が一貫して望まれている。これらはいずれも生産コストに直結するだけでなく、その両立は、環境保護、省資源、省エネルギーなどの観点からも望ましく、化学反応開発を生業とする研究者の目指すべきところでもある。前者の目的として「選択的反応」が有機合成において重要な課題となって久しく、これまでに非常に多くの方法が開発されてきた。しかし、多くの場合、選択性向上のために様々な障害を導入したり、温度を下げたりして無差別な反応を抑制するという方法論が用いられている。このような反応の抑制は、収率低下や、反応時間のむやみな延長を招くため、後者の目的からしばしば外れることになる。つまり、選択的という目的から反応抑制が、迅速という観点からは反応促進が鍵となっており、逆のベクトルを持つ反応制御を両立させようとするところに問題がある。本質的な解決策は、不要な反応を抑えるのではなく、必要な反応だけを促すことである。我々の体の中では、約37℃という一定温度のもと、加熱も冷却も加圧もすることなく、選択的で効率的な反応が行われている。つまり、反応効率化と選択性向上というジレンマが生体反応では見事に解決されており、この仕組みに倣うことは新しい反応システム開発の有力な手段となりうる。生体膜に似た機能を持つミセル-水界面には、両親媒性分子が自発的に集積し(局所濃縮効果)、極性頭部を界面に並べ疎水性部位を内側へ向けて配向する(配向性効果)ので、この現象をうまく利用すれば、化学反応の加速と選択性向上の両方を実現することが理論上は可能であり、古くから多くの研究がなされてきた。しかしながら、主たる溶媒が水であるため、適用できる反応には大きな制約があり、これまでの成功例の多くは加水分解反応、芳香族求核置換反応、光2量化反応などに限られている。中でも界面は、水酸化物イオン濃度が高まることから、加水分解反応場として優れていることが広く認められている。今回演者らは、この加水分解反応の最も対極にある脱水縮合反応が、実はミセルの効果を最大限に活用するのに非常に適していることを初めて明らかにした。つまり、脱水縮合反応の基質となるカルボン酸やアミンの多くが元来、界面集積性を有しており、その反応点が極性頭部として界面に並ぶことに着目して、この性質を利用して反応を促進させることに成功した。脱水縮合反応は、非常に古典的な反応であるが、その生成物であるアミドやエステルは、医薬品、化成品、さらには高分子化合物と、我々の生活を取り巻く製品の中に幅広く存在しており、その効率的な合成法を開発することには非常に大きな意味がある。研究の企画立案にあたっては、演者らが見出した水中で利用できる脱水縮合剤4-(4,6-dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinim chloride(DMT-MM)の開発のなかで明らかにしてきた1,3,5-トリアジン型化合物の特徴的な反応性を利用した(式1)。演者らは、これまで2-chloro-4,6-dimethoxy-1,3,5-triazine(DMT-C1)にある種の3級アミンを触媒として混ぜると、これらが結合した4級アンモニウム塩が発生し、これが水中でカルボン酸とアミンの脱水縮合反応を効率よく起こすことを見出している。そこでこの反応の化学的特徴に基づいて、図1のような界面での脱水縮合反応をデザインした。即ち、両親媒性の脂肪酸塩A、アミンE、および3級アミン触媒Bは、いずれも水中に形成されたミセルの界面に自発的に集積する。一方、脂溶性のDMT C1は疎水性効果でミセル内部に取り込まれるので、アミン触媒Bが非電離型としてミセル内に潜り込めば、両者の濃度が局所的に上がり、それらのカップリング反応が加速される(Step 1:局所濃縮効果)。次に脂肪酸塩Aと得られた縮合剤Cは、それぞれ反応点に負および正電荷を有するのでミセル界面にお互いに引き合いながら密集してなら並ぶ(Step 2)。そのため、局所濃縮効果に加えて、この配向性効果によってさらに反応は加速される。最後のアミド生成段階でも同様の局所濃縮効果が期待される。(Step 3)。
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研究分野
  • 付加反応,脱離反応
  • 不均一系触媒反応
関連発表論文 (1) Unusual Rate Enhancement of Bimolecular Dehydrocondensation to Form Amides at the Interface of Micelles of Fatty Acid Salts. Angew. Chem., Int. Ed. Engl. in press M. Kunishima, H. Imada, K. Kikuchi, K. Hioki, J. Nishida, S. Tani
(2) Development of Novel Polymer-type Dehydrocondensing Reagents Comprised of Chlorotriazines Chem. Commun. 2005, 2698. M. Kunishima, K. Yamamoto, Y. Watanabe, K. Hioki, S. Tani
(3) Substrat-Specific Amidation of Carboxylic Acids in a Liquid-Liquid Two-Phase System Using Cyclodextrins As an Inverse Phase Transfer Catalyst Eur. J. Org. Chem., 2004, 4535. M. Kunishima, Y. Watanabe, K. Terao, S. Tani
(4) Development of a Simple System for Dehydrocondensation Using Solid-Phase Adsorption of a Water-Soluble Dehydrocondensing Reagent (DMT-MM) Chem. Pharm. Bull., 2004, 52, 1223. Y. Watanabe, T. Fuji, K. Hioki, S. Tani, M. Kunishima
(5) Preparation of Weinreb Amides Using 4-(4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium Chloride (DMT-MM) Chem. Pharm. Bull., 2004, 52, 470. K. Hioki, R. Ohkihara, H. Kobayashi, S. Tani, M. Kunishima
(6) 第5版 実験化学講座 第16巻,酸アミドおよび酸イミド,丸善,国嶋崇隆
(7) 第5版 実験化学講座 第16巻,ラクタム,丸善,国嶋崇隆
(8) メディアとしての水の特性を利用したアミド化反応 ファルマシア,Vol. 41, No. 7, pp.654 658, 2005.7,国嶋崇隆
(9) 新規トリアジン型脱水縮合剤の合成と用途開発 和光純報, Vol. 72, No. 2, pp.8 11,2004.4,国嶋崇隆
(10) Substrate-Specific Amidation of Carboxylic Acids Utilizing Cyclodextrin The 3rd Asian Cyclodextrin Conference 天津、中国・2005年5月
(11) 古くて新しい脱水縮合反応 第36回若手ペプチド夏の勉強会 神戸・2003年8月
(12) 生物学的機能を志向した脱水縮合反応 日本薬学会 第124年会 大阪・2004年3月
(13) 新しい脱水縮合反応の開発と応用:反応場と機能を求めて 徳島大学薬学部特別講演会 徳島・2005年10月
(14) トリアジン化合物の特性を利用した新しい脱水縮合反応:反応場と機能を求めて日本薬学会東海支部特別講演会 岐阜・2005年11月
(15) 脂肪酸塩によって形成される分子集合相中でのアミド化反応 日本薬学会 第124年会 大阪・2004年3月 国嶋崇隆, 今田比呂子, 谷昇平
(16) ポリマー非担持式自己重合型脱水縮合剤の開発 日本薬学会 第124年会 大阪・2004年3月 国嶋崇隆, 山本和義, 日置和人, 谷昇平
(17) 環境調和を目指した新しいポリマー型脱水縮合剤の開発 第30回 反応と合成の進歩シンポジウム 札幌・2004年10月 国嶋崇隆 山本和義, 渡辺泰伸, 長谷川ますみ, 日置和人, 谷昇平
(18) ミセル水界面を反応場とするカルボン酸とアミンの脱水縮合反応 第54回 日本薬学会 近畿支部 神戸学院大学・2004年10月 国嶋崇隆, 菊池可菜子, 今田比呂子, 谷昇平
(19) ROMPを利用した固定化トリアジン型縮合剤の開発 日本薬学会 第125年会 東京 2005年 3月 国嶋崇隆, 日置和人, 近藤智仁, 谷昇平
(20) ミセルを反応場とした脱水縮合反応における長鎖アミンの反応加速に関する検討 日本薬学会 第125年会 東京 2005年 3月 国嶋崇隆, 菊池可菜子, 谷昇平
(21) 二分子膜-水界面における膜構成分子のアミド化反応により誘起されるリポソーム膜融合法の開発 日本薬学会 第125年会 東京 2005年 3月 国嶋崇隆, 戸梶雅文, 松岡圭介,西田仁,谷昇平
(22) 分子集合体中での基質選択的縮合反応 日本化学会第86春季年会 船橋 2005年 3月 西田仁,菊池可菜子, 日置和人, 谷昇平, 国嶋崇隆
(23) 水界面での脱水縮合反応を起動力とする新しい膜融合法の開発 第3回次世代を担う有機化学シンポジウム 東京 2005年 5月 国嶋崇隆,戸梶雅文,松岡圭介,西田仁,日置和人,谷昇平
(24) 分子集合体の形成を利用した基質選択的脱水縮合反応 第58回コロイドおよび界面化学討論会 宇都宮 2005年 9月西田仁, 菊池可菜子, 竹本淳一,日置和人, 谷昇平, 国嶋崇隆
(25) DEVELOPMENT OF NOVEL POLYMER-TYPE DEHYDROCONDENSING REAGENTS COMPRISED OF CHLOROTRIAZINES 第42回ペプチド討論会 大阪 2005年 10月 Kazuhito Hioki, Kazuyoshi Yamamoto, Shohei Tani, Munetaka Kunishima
(26) 脂肪酸塩によって形成される分子集合相中でのエステル化反応 第55回 日本薬学会 近畿支部 武庫川女子大学 2005年 10月 国嶋崇隆, 萩原裕美, 日置和人, 谷昇平
(27) ミセル-水界面を反応場とするカルボン酸とアミンの基質特異的脱水縮合反応 第31回 反応と合成の進歩シンポジウム 神戸 2005年 11月 国嶋崇隆, 今田比呂子, 菊池可菜子, 日置和人, 西田仁, 谷昇平
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/変換と制御
研究報告資料
  • 国嶋 崇隆. 界面を反応場とした触媒的脱水縮合反応. シンポジウム2005 環境調和型のエネルギー・物質変換を目指して さきがけタイプ研究報告会 「変換と制御」領域 講演要旨集(第三期研究者)(研究期間2002-2005), 2005. p.63 - 74.

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