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大脳小脳連関:小脳は大脳にどんな貢献をしているか-運動制御の観点から

研究報告コード R070000118
整理番号 R070000118
掲載日 2008年4月11日
研究者
  • 筧 慎治
研究者所属機関
  • 東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所
研究機関
  • 東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所
報告名称 大脳小脳連関:小脳は大脳にどんな貢献をしているか-運動制御の観点から
報告概要 大脳と小脳は我々の脳内で1番目・2番目に大きな容積を占める最も重要な部位である。No.1の大脳が我々の高次な認知・思考機能に重要な役割を果たしていることは広く知られている。それに比べてNo.2の小脳は多少なじみが薄いが、運動制御に重要な役割を果たすことが古くから知られていた。特に、速く滑らかな運動に重要で、例えばオリンピックの体操選手の演技は、小脳が最高に活躍する良い例である。大脳の肥大化に並行した小脳の肥大化という系統進化的な事実から、両者が協調的に機能していることは古くから推定されてきた。実際、両者の間には大脳小脳連関[1]という大規模な専用回線があり(図1)、常時密接な情報交換が行われている。しかし従来、大脳は認知・思考等の「高次」脳機能を司り、小脳は大脳の思考を「低次」の運動に具現化・翻訳し、運動野から出力する(図2A)という仮説[1]が支配的であった。つまり、小脳が大脳の様々な領域の共通の下僕として働く収束的関係とする見方が一般的であった。ところが最近、米国Pittsburgh大学のStrick教授のグループによる最新の解剖学的研究[2]により、大脳皮質の異なる部位からの出力は小脳で収束せず、小脳の相異なる部位と閉じたループを形成し、並列ループ構造を取ることが明らかになった(図 2B)。各ループの構造は極めて均一であり、ループの情報処理に共通原理が存在することを強く示唆する。しかし連合野のループは、運動野のループと独立しており、脊髄に運動指令を送ることは不可能である。「小脳における思考の具現化」というスキームではこのループの機能を説明できないことは明らかである。我々は、大脳と小脳の関係を「クライアントとスペシャリストの連携」と見直す着想を得て、小脳がいかなるスペシャリストであるかを実験的に検証し、そこから大脳と小脳が協調して機能するための原理を導き出そうと考えた。そのためには、実際に大脳と小脳の間で交換されるメッセージを解読し、小脳と大脳からどの様な入力を受け取り、それをどの様に変換し出力しているかを分析する必要がある。我々独自の実験系[3,4]が、この分析を可能にする。具体的には、運動課題実行中の動物の脳からニューロン活動を記録し、ニューロン活動に表現された運動パラメータとその座標系を解読する。大脳小脳連関は、基本的に前向き神経結合で構成されるため(図1)、システム全体における情報処理を、分割して段階的に解析できるユニークな構造を持つ。さらに、小脳の神経回路は動物の種類によらず同じであるため、動物実験でも一般性を失わない形で、大脳小脳連関の基本アルゴリズムが調べられるのである。
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研究分野
  • 中枢神経系
関連発表論文 (1) Kakei S, Hoffman DS. Strick PL, Muscles and movement representations in the primary motor cortex. Science 285:2136-2139 (1999)
(2) Kakei S, Hoffman DS, Strick PL, Direction of action is represented in the ventral premotor cortex. Nature Neurosci 4:1020-1025 (2001)
(3) Kakei S, Hoffman DS, Strick PL, Sensorimotor transformations in cortical motor areas. Neurosci Res 46(2003)1-10
(4) Sugiuchi Y, Kakei S, Izawa Y, Shinoda Y, Functional synergies of neck muscles determined by branching patterns of single long descending motor tract axons. Progress in Brain Research 143(2003)403-413
(5) 飯島敏夫、筧 慎治、広瀬秀顕、「超高速光イメージングが明らかにする運動野における神経集団活動の動的変化」.「脳の科学」25(2003)61-70
(6) 筧 慎治、「運動野における運動指令の座標変換」.「脳の科学」24(2002)381-384
(7) Tsunoda Y, Matsui W, Takuwa H, Iijima T, Hoffman DS. Strick PL, Kakei S, Coordinate frames of cerebellar Purkinje cell activities for goal-directed movements. Society for Neuroecience Abstract 34(2004)536.11
(8) Matsui W, Tsunoda Y, Iijima T, Hoffinan DS. Strick PL, Kakei S, Coordinate frames of Purkinje cell activities for motor control. Neurosci Res Suppl 28(2004)98
(9) Tsunoda Y, Takuwa H, Iijima T, Kakei S, Coordinate frames for wrist motor control. Society for Neuroscience Abstract 38(2003)597.8
(10) Takuwa H, Tsunoda Y. Iijima T, Kakei S, Coordinate frames for wrist movement, Neurosci Res Suppl 27(2003)96
(11) Kakei S, Coordinate transformations in the ventral premotor cortex and the primary motor cortex. Neurosci Res Suppl 26(2002)S09-3
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/強調と制御
研究報告資料
  • 筧 慎治. 大脳小脳連関:小脳は大脳にどんな貢献をしているか-運動制御の観点から. さきがけライブ2004 「強調と制御」領域 研究報告会講演要旨集 インタラクションとコミュニケーション ~主観の客観科学を目指して~ (研究期間2001-2004), 2005. p.50 - 57.

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